上 下
25 / 40

第24話

しおりを挟む
 エリカとミリカとデートをした次の日、僕は村に戻るための馬車に乗っていた。

 この馬車は、僕が王都に来る時にも乗った、御者が二人いる馬車で、たまたまエストブルに向かうと言うので、乗せてもらっている。
 来る時は盗賊に襲われたりといろいろあったけど、今回は僕しか乗っていない。
 ちなみに僕が壊してしまった場所は修理されていた。
 乗車料は前回助けてもらったからと、少し安くしてくれて、本来なら六千ペリのところ五千ペリにしてくれた。
 僕は迷わず銀貨を五枚渡して乗った。

 一人は慣れたものだと思ってたけど、シャルやエリカ、ミリカと一人でいる時間がすくなかったからか、少し心細く感じる。

「マーレンにはだいたい二時間ほどで到着しますが、途中で休憩などは挟みますか?」

「いえ、僕は大丈夫なので問題ないようならそのまま行ってもらってもいいですよ」

 マーレンというのは、エストブルと王都の間にある街の名前らしい。
 前は、エストブルからマーレンまでは戦闘訓練をするために歩きで行ったし、街の名前を聞く機会もなかったので知らなかったが、ここに来て初めて分かった。

 僕はそのまま馬車に揺られて、マーレンに向かうのだった。


 ***


 あれから約三時間ほど経ってマーレンの入口にたどり着いた。

 最初の予定では二時間ほどという話だったのがなんで一時間も遅くなったのかと言うと、ここに来るまでの途中、モンスターの群れに襲われたからだ。

 前はモンスターと遭遇しなかったから、ここら辺は余りでないのかと思っていたけど、出る時は割と出ると言う。
 出てきたモンスターはゴブリンとウルフと、僕がエストブルからマーレンに行くまでに倒した魔物たちだった。
 一体だけ、他のゴブリンと色と大きさの違う個体がいたが、御者の男性の話だと、そいつはオーガというゴブリンの上位種との事だった。
 ゴブリンを小鬼ということがあるが、オーガは大鬼と呼ばれ、繁殖力以外の全てにおいてゴブリンの上位互換だと。

 さすがに数も多く、僕一人だとまずいかと思ったら、なんと御者の男性も戦っていた。
 男性は主に風の魔法である【エアカッター】を使って敵を切り裂いたり、【ウィンドプレス】という空気の塊を上から叩きつける魔法で圧殺したりしていた。

 戦闘終了後に聞いた話だけど、通常の馬車は護衛なんかを雇わないといけないところ、この馬車は御者の男性が戦えるので、護衛が必要ないとの事。
 一応僕も戦闘には参加していたけど、正直僕は要らなかったんじゃないかと思えるほど、圧倒的な戦いだった。

「それでは、私たちは物資の補給などがあるので、一時間後にエストブルに出発します。それまでに馬車停に来てください」

 マーレンにたどり着いて、休憩ということで一旦馬車を降りた。
 馬車は僕を降ろしてから、どこかに走り去ってしまった。

「とりあえず、昼食でもかるくつまもうかな……」

 そういえば、前に食べたハンバーガーとやらの屋台はどこだったっけ……

 なんかあのハンバーガーって中毒性があるよね。
 毎日はいらないけど、週に一回は食べたくなるような。

 前回を思い出しながら道を歩き、色々な屋台を見て回る。

「あっ、あった! おじさん!」

「ん? おぉ! いつぞやの兄ちゃんじゃねぇか!」

 すると、そう時間も掛からずにハンバーガーのおじさんを見つけることが出来た。

「お久しぶりです、また食べたくなって来ちゃいました」

「嬉しいこといってくれるじゃねぇの! そいじゃ、いくつ買ってくよ?」

「二つください」

「あいよ、そんなら四百ペリだ」

 前回も二つ食べたっけ……
 気がついたら食べ終わってたから、今回はゆっくり味わって食べないと。
 なんて考えつつ、僕はポケットから銅貨を四枚取り出しておじさんに渡す。

「ちょうどね、もうすぐできるから少々お待ちィ!」

 それから五分程でハンバーガー二つを渡された。

 僕はまた、歩きつつハンバーガーを食べる。
 このシャキシャキのレタスと肉、パンと相性のいいソースがたまらないんだよなぁ……

 そして、気づけばまたしてもハンバーガーは二つとも無くなっていた。
 あれ? 味わって食べるのでは……?
 味わうどころか気づいたら無くなってるとか前回と同じなんだけど。
 ……いや、まぁ、あのハンバーガーがそれくらい美味しいってことで。別に僕が学習しないとかそういうことじゃないから……

 その後は、色々な屋台を見て回りつつ、時間を潰して、だいたい一時間経たないくらいで僕は馬車停に戻った。
 すると、もう馬車がいて、待たせてしまったかと思い急いで謝ると、まだ時間になってないから大丈夫だと言われた。

 マーレンを出発してからは何事も無く、無事にエストブルにたどり着けた。

「ここまでありがとうございました。また機会があったらお願いします」

 マーレンからエストブルまでは馬車だと二時間くらいだった。
 まぁ、徒歩五時間を二時間で移動出来るとは、やはり文明の利器に頼った方が楽だよなぁ……

 御者の男性が馬車を進ませ、女性が僕にお辞儀をして去っていった。

 さて、ここまで戻ってきた訳だが、これからどうしようか……
 時間はないことも無いけど、今から村に戻って色々やって戻ってくるってなると時間が足りないような気もする。
 今日は一日ここで泊まって明日の朝イチで村に向かおうかな。

 そうとなったら宿を探さないといけないわけだが、歩いてたら見つかるかな……?
 フォーサイス家にお世話になることも考えたけど、シャルに次会うときは堂々と「僕達付き合ってます」と宣言できるような立場になってからがいいと思ってる。
 だからできるだけ早く爵位を手に入れないと……

 僕は、短期間で爵位を手に入れる方法を考えながら、宿を探した。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

勇者パーティを追放されそうになった俺は、泣いて縋って何とか残り『元のDQNに戻る事にした』どうせ俺が生きている間には滅びんだろう!

石のやっさん
ファンタジー
今度の主人公はマジで腐っている。基本悪党、だけど自分のルールあり! パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のリヒトは、とうとう勇者でありパーティリーダーのドルマンにクビを宣告されてしまう。幼馴染も全員ドルマンの物で、全員から下に見られているのが解った。 だが、意外にも主人公は馬鹿にされながらも残る道を選んだ。 『もう友達じゃ無いんだな』そう心に誓った彼は…勇者達を骨の髄までしゃぶり尽くす事を決意した。 此処迄するのか…そう思う『ざまぁ』を貴方に 前世のDQNに戻る事を決意した、暗黒面に落ちた外道魔法戦士…このざまぁは知らないうちに世界を壊す。

神々の間では異世界転移がブームらしいです。

はぐれメタボ
ファンタジー
第1部《漆黒の少女》 楠木 優香は神様によって異世界に送られる事になった。 理由は『最近流行ってるから』 数々のチートを手にした優香は、ユウと名を変えて、薬師兼冒険者として異世界で生きる事を決める。 優しくて単純な少女の異世界冒険譚。 第2部 《精霊の紋章》 ユウの冒険の裏で、田舎の少年エリオは多くの仲間と共に、世界の命運を掛けた戦いに身を投じて行く事になる。 それは、英雄に憧れた少年の英雄譚。 第3部 《交錯する戦場》 各国が手を結び結成された人類連合と邪神を奉じる魔王に率いられた魔族軍による戦争が始まった。 人間と魔族、様々な意思と策謀が交錯する群像劇。 第4部 《新たなる神話》 戦争が終結し、邪神の討伐を残すのみとなった。 連合からの依頼を受けたユウは、援軍を率いて勇者の後を追い邪神の神殿を目指す。 それは、この世界で最も新しい神話。

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

ズボラ通販生活

ice
ファンタジー
西野桃(にしのもも)35歳の独身、オタクが神様のミスで異世界へ!貪欲に通販スキル、時間停止アイテムボックス容量無限、結界魔法…さらには、お金まで貰う。商人無双や!とか言いつつ、楽に、ゆるーく、商売をしていく。淋しい独身者、旦那という名の奴隷まで?!ズボラなオバサンが異世界に転移して好き勝手生活する!

女神から貰えるはずのチート能力をクラスメートに奪われ、原生林みたいなところに飛ばされたけどゲームキャラの能力が使えるので問題ありません

青山 有
ファンタジー
強引に言い寄る男から片思いの幼馴染を守ろうとした瞬間、教室に魔法陣が突如現れクラスごと異世界へ。 だが主人公と幼馴染、友人の三人は、女神から貰えるはずの希少スキルを他の生徒に奪われてしまう。さらに、一緒に召喚されたはずの生徒とは別の場所に弾かれてしまった。 女神から貰えるはずのチート能力は奪われ、弾かれた先は未開の原生林。 途方に暮れる主人公たち。 だが、たった一つの救いがあった。 三人は開発中のファンタジーRPGのキャラクターの能力を引き継いでいたのだ。 右も左も分からない異世界で途方に暮れる主人公たちが出会ったのは悩める大司教。 圧倒的な能力を持ちながら寄る辺なき主人公と、教会内部の勢力争いに勝利するためにも優秀な部下を必要としている大司教。 双方の利害が一致した。 ※他サイトで投稿した作品を加筆修正して投稿しております

田舎暮らしと思ったら、異世界暮らしだった。

けむし
ファンタジー
突然の異世界転移とともに魔法が使えるようになった青年の、ほぼ手に汗握らない物語。 日本と異世界を行き来する転移魔法、物を複製する魔法。 あらゆる魔法を使えるようになった主人公は異世界で、そして日本でチート能力を発揮・・・するの? ゆる~くのんびり進む物語です。読者の皆様ものんびりお付き合いください。 感想などお待ちしております。

処理中です...