6 / 13
きさらぎ駅お悩み相談室!(2)上
しおりを挟む
今回も目が覚めると、車内は人で溢れており、電車の外は美しい田園風景に変わっていた。
駅に着いた僕は、すぐ電車を降りるや否や、足早に駅長室に向かう。そしてコンコンコンと3回、ドアをノックする。
「はーい」
2日ぶりの兵藤さんの声。僕は例の高級そうなドアを開き、駅長室に入る...
僕が部屋に入ると、さっそく兵藤さんと目が合う。彼は何やら書類仕事をしている最中だったようだ。
すると、いきなり兵藤さんが大きく目を見開き、大きな声を上げる。
「やけに来るのが早いと思ったら、どうしたんだい、朔弥君!顔に絆創膏三つも貼って、それに腕も!とりあえずそこに座って。」
兵藤さんは彼の机の前にある椅子を指差す。言われた通り、僕は椅子に腰かける。兵藤さんも逆に今座っている椅子から立ち上がり、僕の椅子の横の椅子に座り直す。そして僕の背中をさすってくれ、優しく話し始める。
「この前言ってた連中にやられたのかい?」
彼といるとやはり何故か安心する、まるで自分のお爺ちゃんといるみたいだ。
僕はボソボソと、今にも消え入るかのような声で、何があったのかを話し始める...
「はい。僕、昨日友達の女子と買い物に行ったんです、服とか買ったり、新しく出来た店で料理食べたり、本当に楽しい時間でした。それこそ生きていて良かったって思えました。でもその帰り道、彼女と別れてから、偶然、、アイツに会って、それで、、、、うっ、、、」
僕は急いで口を手で押さえる、吐き気がしてきた。気を抜いたら、今すぐこの場に朝食をぶちまけそうだ。
兵藤さんは僕の顔の絆創膏をマジマジと見つめてから、背中をさするのをやめ、再び口を開く。
「そうか、そんな事が。
よし、よく効く軟膏を塗ってあげよう。」
彼はそう言って立ち上がると、椅子の後ろの棚へ行き、ゴソゴソとし始める。
「ここに入れた筈なんだけどなぁ~。これか? いや違う。こっちか?これも違う。そうだこれだ、よし。」
どうやら、軟膏が見つかったらしい。しかしその軟膏は僕のイメージとは全く違った、小さな土製の、まるで梅干し入れのような壺だ。彼はその壺を持ったまま、僕の隣に戻ってくる。そして壺の蓋を開け机に置いて、壺の中に人差し指と薬指を入れる。
「さぁ、これを塗るから絆創膏をとって。」
僕は言われた通りら顔の絆創膏を一つ、また一つと取っていく。兵藤さんは改めて傷を直接見て、顔を曇らせる。
「本当に酷いな、これは。」
自分も初めの頃はそう思った。だが最近ではもう見慣れたもので、それがあたかも普通のことのように思えてしまう。そんな自分がつくづく嫌になる。
「それじゃあ、塗っていくよ。ちょっと染みるだろうけど、まぁ耐えて。」
兵藤さんがはじめに軟膏を塗ったのは、右の頬だった。途端、稲妻のような物が僕を貫く。
「うわぁぁ、、、」
思わず僕は声にならない叫びを上げた。ちょっと染みるなんてレベルじゃ無い。それこそ、蹴られた時より痛いのだ。
「我慢してって言ったのに。さぁ、次も塗っていくよ。」
「ちょ、ちょ、ちょっと!待って下さいよ。それ、めちゃくちゃ痛いじゃ無いですか。」
そう言うと僕は急いで兵藤さんの手を両手で抑える。
「だからさっき、そう言っただろう。全くしょうがないなぁ、ほら、今これ塗った傷口触ってみなさい。」
僕は恐る恐る傷口を触る。が、そこには傷のザラザラとした感じも軟膏のぬるぬる感も無かった。場所を間違えたのかとその周りも触る。しかしやはり傷の跡すら見つからない。
「どうして、、、」
兵藤さんの目を真っ直ぐ見て聞く。
「それはね、これが現世のものでは無いからなんだよ。要するに、改札を通った先にある世界、もっと簡単に言うとあの世の代物だ。」
今回も兵藤さんはゆっくり優しく、説明してくれた。
「あの世、、、」
「そう、本来は君みたいに生きてる人には使っちゃいけないんだけど、今回は特別だ。私達だけの秘密、わかったね?」
僕は首を縦に振った。
その後、僕は兵藤さんに顔や腕など外から見える所の傷に一通り軟膏を塗ってもらった。そのおかげで外から見た痛々しさは消えたが、塗られている間、僕は終始なるべく声は抑えつつもひたすら悲鳴をあげていた。
~A little time later~
軟膏を塗り終えると、兵藤さんは蓋を閉めた壺を元の棚に片付け、僕に待っているようにだけ言って、部屋を出て行ってしまった。
それから待つ事数分。
「待たせたね。」
急に扉が開き、兵藤さんの声が部屋に響き渡る。帰ってきた彼は片手でこの前のカップが二つ載ったお盆を持っていた。
「やっぱり、話をする時はこれがないと。」
そして彼はそのお盆を机の上に一旦置き、それからカップを僕の前とさっきの兵藤さんの椅子の前に並べる。
「今回は前とは違う茶葉でたてたんだ。前のより酸味が弱くて、甘味が強いんだ。」
彼はそう言いながら椅子に座ると、キラキラとした目で僕の方を見る。僕が紅茶を飲むのを楽しみにしているようだ。僕も彼の紅茶は大好きだから、早速カップを手に取り、紅茶を飲む。
確かに前回の紅茶とは違い、今回の紅茶は、かなりフルーティーだ。お茶というより、ジュースを飲んでいるような気分になる。
紅茶を一口飲んでから、また兵藤さんを見る。目の輝きがさっきの倍以上に増していた。紅茶には、僕には想像も出来ない程腕をかけているんだろう。彼の目の輝きで失明する前に早く味を評価しよう。
「確かに今回は、前とは全く違う味で、茶葉ではなくフルーツでも使っているのかと思う程フルーティーでした。」
僕がコメントした途端、彼は今回もガッツポーズをし、僕の手を掴んで、凄い勢いで話し出す。
「そうなんだよ。これはね、海外のエデン果樹園にある林檎の木の葉となるべく甘いが甘過ぎないぐらいの茶葉とを混ぜて、それから・・・・・・長過ぎる為省略☆・・・・・・そうして出来たのが、これ。美味しいだろう。今まででも一番の自信作だ。」
途中から彼が何を言っているかわからなかったが、とにかくこの紅茶が凄いという事だけはわかった。
一通り紅茶について話し終えると彼は、腕を伸ばして一度伸びをする。彼の身体中からポキポキと音がした。そして伸びを終えると彼は少し声のトーンを落とし、再び話し出す。
「それじゃあ、場も和んだ事だし。そろそろ悩み相談するか。」
一気に部屋の雰囲気が変わる。一時期テレビCMでやる気の出るボタンがあったが、まさしくその域だ。彼の一声で部屋全体が真面目な空気で包まれた。
それから彼は僕に質問を始める。
「一つ目、聞いてなかったけど、君はどうして彼が君をイジメるのか理由はわかるのかい?」
彼が僕をいじめる理由、
「それは僕がこう、ナヨナヨしてるから、、、」
「そうじゃない。」
兵藤さんは僕が答え終わる前にそう断言した。そしてその理由を続ける。
「君はナヨナヨなんかしてないよ。だって実際、さっきの軟膏の痛みを耐えきったじゃないか。他の理由を考えてご覧。」
違うと言われ、僕は必死で他の理由を考える。そのために嫌な記憶を呼び覚まし、上條の一言一言をなるべく細かく、鮮明に思い出す。
教室での事、体育館での事、下校中での事、三ヶ月前の事、二週間前の事、そして昨日の事
あった、一つ、理由らしき物。
「ありました、一つだけ。心当たりがあるもの。」
「そうか。それは何だい?」
それから僕は兵藤さんに昨日の帰りに起こった事をここに来た時よりも、より正確に細部にも気を配り説明する。
「昨日、蹴られた時に、あいつ、こう言ってました。蒼空がどうして僕なんかといるんだって、蒼空は僕の幼馴染みで昨日遊びに行ったのも彼女とです。」
一旦区切ってから、僕は続ける
「「蒼空がどうして僕なんかといるんだ」って、可笑しいでしょう!僕は彼女と付き合ってすらいないのに!彼女だって、どうせただ僕を哀れんで一緒に居てくれてるだけなのに!」
いつの間にか僕は感情的になっていた。眼前が歪んで見える、すると、兵藤さんは椅子から立ち上がり、僕の背中に優しく手を置いてくれた。そして、
「男が涙を見せてもいいのは、生まれた時と、親の葬式の時だけだ、前言っただろう。でも教えてくれて、良かった。思い出すのも辛かっただろう...」
その声は、僕が今までかけて貰った言葉の中で、一番優しく聞こえた。親の言葉よりも、先生の言葉よりも。その言葉が、「僕を肯定してくれた」という安堵感を引出し、僕はそのまま机に突っ伏し、泣いた。久しぶりに、人の前で、声を上げて、泣いた。そして僕はそのまま、眠った...
~Next day~
気がつくと、部屋には朝日が差し込み、チュンチュンと鳥がないていた。
「うおっ!やばい!」
僕はガバッと立ち上がる。そこは駅長室の中だった。そうだ、兵藤さんに悩みを聞いてもらって、そしてそのまま号泣して眠ったんだ、僕。
ふと机の下の一枚の書置きが目に入る。書置きには、
「おはよう、今日は、学校を休んでここにいなさい。
あと、大したものじゃないけど、朝食を用意してるからこれを読んだら部屋から出て廊下でも歩いてる駅員に声をかけなさい。
兵藤より。」
と、とても綺麗で、それでいてどこか暖かさがある、そんな文字が書かれていた。
僕はその前に学校に休みの連絡を入れようと、スマホの電源をつける。あの世とこの世の境目ならワンチャンいけると思ったが、案の定、圏外だった。まぁ、無断欠席もたまには悪くないよね...
駅に着いた僕は、すぐ電車を降りるや否や、足早に駅長室に向かう。そしてコンコンコンと3回、ドアをノックする。
「はーい」
2日ぶりの兵藤さんの声。僕は例の高級そうなドアを開き、駅長室に入る...
僕が部屋に入ると、さっそく兵藤さんと目が合う。彼は何やら書類仕事をしている最中だったようだ。
すると、いきなり兵藤さんが大きく目を見開き、大きな声を上げる。
「やけに来るのが早いと思ったら、どうしたんだい、朔弥君!顔に絆創膏三つも貼って、それに腕も!とりあえずそこに座って。」
兵藤さんは彼の机の前にある椅子を指差す。言われた通り、僕は椅子に腰かける。兵藤さんも逆に今座っている椅子から立ち上がり、僕の椅子の横の椅子に座り直す。そして僕の背中をさすってくれ、優しく話し始める。
「この前言ってた連中にやられたのかい?」
彼といるとやはり何故か安心する、まるで自分のお爺ちゃんといるみたいだ。
僕はボソボソと、今にも消え入るかのような声で、何があったのかを話し始める...
「はい。僕、昨日友達の女子と買い物に行ったんです、服とか買ったり、新しく出来た店で料理食べたり、本当に楽しい時間でした。それこそ生きていて良かったって思えました。でもその帰り道、彼女と別れてから、偶然、、アイツに会って、それで、、、、うっ、、、」
僕は急いで口を手で押さえる、吐き気がしてきた。気を抜いたら、今すぐこの場に朝食をぶちまけそうだ。
兵藤さんは僕の顔の絆創膏をマジマジと見つめてから、背中をさするのをやめ、再び口を開く。
「そうか、そんな事が。
よし、よく効く軟膏を塗ってあげよう。」
彼はそう言って立ち上がると、椅子の後ろの棚へ行き、ゴソゴソとし始める。
「ここに入れた筈なんだけどなぁ~。これか? いや違う。こっちか?これも違う。そうだこれだ、よし。」
どうやら、軟膏が見つかったらしい。しかしその軟膏は僕のイメージとは全く違った、小さな土製の、まるで梅干し入れのような壺だ。彼はその壺を持ったまま、僕の隣に戻ってくる。そして壺の蓋を開け机に置いて、壺の中に人差し指と薬指を入れる。
「さぁ、これを塗るから絆創膏をとって。」
僕は言われた通りら顔の絆創膏を一つ、また一つと取っていく。兵藤さんは改めて傷を直接見て、顔を曇らせる。
「本当に酷いな、これは。」
自分も初めの頃はそう思った。だが最近ではもう見慣れたもので、それがあたかも普通のことのように思えてしまう。そんな自分がつくづく嫌になる。
「それじゃあ、塗っていくよ。ちょっと染みるだろうけど、まぁ耐えて。」
兵藤さんがはじめに軟膏を塗ったのは、右の頬だった。途端、稲妻のような物が僕を貫く。
「うわぁぁ、、、」
思わず僕は声にならない叫びを上げた。ちょっと染みるなんてレベルじゃ無い。それこそ、蹴られた時より痛いのだ。
「我慢してって言ったのに。さぁ、次も塗っていくよ。」
「ちょ、ちょ、ちょっと!待って下さいよ。それ、めちゃくちゃ痛いじゃ無いですか。」
そう言うと僕は急いで兵藤さんの手を両手で抑える。
「だからさっき、そう言っただろう。全くしょうがないなぁ、ほら、今これ塗った傷口触ってみなさい。」
僕は恐る恐る傷口を触る。が、そこには傷のザラザラとした感じも軟膏のぬるぬる感も無かった。場所を間違えたのかとその周りも触る。しかしやはり傷の跡すら見つからない。
「どうして、、、」
兵藤さんの目を真っ直ぐ見て聞く。
「それはね、これが現世のものでは無いからなんだよ。要するに、改札を通った先にある世界、もっと簡単に言うとあの世の代物だ。」
今回も兵藤さんはゆっくり優しく、説明してくれた。
「あの世、、、」
「そう、本来は君みたいに生きてる人には使っちゃいけないんだけど、今回は特別だ。私達だけの秘密、わかったね?」
僕は首を縦に振った。
その後、僕は兵藤さんに顔や腕など外から見える所の傷に一通り軟膏を塗ってもらった。そのおかげで外から見た痛々しさは消えたが、塗られている間、僕は終始なるべく声は抑えつつもひたすら悲鳴をあげていた。
~A little time later~
軟膏を塗り終えると、兵藤さんは蓋を閉めた壺を元の棚に片付け、僕に待っているようにだけ言って、部屋を出て行ってしまった。
それから待つ事数分。
「待たせたね。」
急に扉が開き、兵藤さんの声が部屋に響き渡る。帰ってきた彼は片手でこの前のカップが二つ載ったお盆を持っていた。
「やっぱり、話をする時はこれがないと。」
そして彼はそのお盆を机の上に一旦置き、それからカップを僕の前とさっきの兵藤さんの椅子の前に並べる。
「今回は前とは違う茶葉でたてたんだ。前のより酸味が弱くて、甘味が強いんだ。」
彼はそう言いながら椅子に座ると、キラキラとした目で僕の方を見る。僕が紅茶を飲むのを楽しみにしているようだ。僕も彼の紅茶は大好きだから、早速カップを手に取り、紅茶を飲む。
確かに前回の紅茶とは違い、今回の紅茶は、かなりフルーティーだ。お茶というより、ジュースを飲んでいるような気分になる。
紅茶を一口飲んでから、また兵藤さんを見る。目の輝きがさっきの倍以上に増していた。紅茶には、僕には想像も出来ない程腕をかけているんだろう。彼の目の輝きで失明する前に早く味を評価しよう。
「確かに今回は、前とは全く違う味で、茶葉ではなくフルーツでも使っているのかと思う程フルーティーでした。」
僕がコメントした途端、彼は今回もガッツポーズをし、僕の手を掴んで、凄い勢いで話し出す。
「そうなんだよ。これはね、海外のエデン果樹園にある林檎の木の葉となるべく甘いが甘過ぎないぐらいの茶葉とを混ぜて、それから・・・・・・長過ぎる為省略☆・・・・・・そうして出来たのが、これ。美味しいだろう。今まででも一番の自信作だ。」
途中から彼が何を言っているかわからなかったが、とにかくこの紅茶が凄いという事だけはわかった。
一通り紅茶について話し終えると彼は、腕を伸ばして一度伸びをする。彼の身体中からポキポキと音がした。そして伸びを終えると彼は少し声のトーンを落とし、再び話し出す。
「それじゃあ、場も和んだ事だし。そろそろ悩み相談するか。」
一気に部屋の雰囲気が変わる。一時期テレビCMでやる気の出るボタンがあったが、まさしくその域だ。彼の一声で部屋全体が真面目な空気で包まれた。
それから彼は僕に質問を始める。
「一つ目、聞いてなかったけど、君はどうして彼が君をイジメるのか理由はわかるのかい?」
彼が僕をいじめる理由、
「それは僕がこう、ナヨナヨしてるから、、、」
「そうじゃない。」
兵藤さんは僕が答え終わる前にそう断言した。そしてその理由を続ける。
「君はナヨナヨなんかしてないよ。だって実際、さっきの軟膏の痛みを耐えきったじゃないか。他の理由を考えてご覧。」
違うと言われ、僕は必死で他の理由を考える。そのために嫌な記憶を呼び覚まし、上條の一言一言をなるべく細かく、鮮明に思い出す。
教室での事、体育館での事、下校中での事、三ヶ月前の事、二週間前の事、そして昨日の事
あった、一つ、理由らしき物。
「ありました、一つだけ。心当たりがあるもの。」
「そうか。それは何だい?」
それから僕は兵藤さんに昨日の帰りに起こった事をここに来た時よりも、より正確に細部にも気を配り説明する。
「昨日、蹴られた時に、あいつ、こう言ってました。蒼空がどうして僕なんかといるんだって、蒼空は僕の幼馴染みで昨日遊びに行ったのも彼女とです。」
一旦区切ってから、僕は続ける
「「蒼空がどうして僕なんかといるんだ」って、可笑しいでしょう!僕は彼女と付き合ってすらいないのに!彼女だって、どうせただ僕を哀れんで一緒に居てくれてるだけなのに!」
いつの間にか僕は感情的になっていた。眼前が歪んで見える、すると、兵藤さんは椅子から立ち上がり、僕の背中に優しく手を置いてくれた。そして、
「男が涙を見せてもいいのは、生まれた時と、親の葬式の時だけだ、前言っただろう。でも教えてくれて、良かった。思い出すのも辛かっただろう...」
その声は、僕が今までかけて貰った言葉の中で、一番優しく聞こえた。親の言葉よりも、先生の言葉よりも。その言葉が、「僕を肯定してくれた」という安堵感を引出し、僕はそのまま机に突っ伏し、泣いた。久しぶりに、人の前で、声を上げて、泣いた。そして僕はそのまま、眠った...
~Next day~
気がつくと、部屋には朝日が差し込み、チュンチュンと鳥がないていた。
「うおっ!やばい!」
僕はガバッと立ち上がる。そこは駅長室の中だった。そうだ、兵藤さんに悩みを聞いてもらって、そしてそのまま号泣して眠ったんだ、僕。
ふと机の下の一枚の書置きが目に入る。書置きには、
「おはよう、今日は、学校を休んでここにいなさい。
あと、大したものじゃないけど、朝食を用意してるからこれを読んだら部屋から出て廊下でも歩いてる駅員に声をかけなさい。
兵藤より。」
と、とても綺麗で、それでいてどこか暖かさがある、そんな文字が書かれていた。
僕はその前に学校に休みの連絡を入れようと、スマホの電源をつける。あの世とこの世の境目ならワンチャンいけると思ったが、案の定、圏外だった。まぁ、無断欠席もたまには悪くないよね...
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
瞬間、青く燃ゆ
葛城騰成
ライト文芸
ストーカーに刺殺され、最愛の彼女である相場夏南(あいばかなん)を失った春野律(はるのりつ)は、彼女の死を境に、他人の感情が顔の周りに色となって見える病、色視症(しきししょう)を患ってしまう。
時が経ち、夏南の一周忌を二ヶ月後に控えた4月がやって来た。高校三年生に進級した春野の元に、一年生である市川麻友(いちかわまゆ)が訪ねてきた。色視症により、他人の顔が見えないことを悩んでいた春野は、市川の顔が見えることに衝撃を受ける。
どうして? どうして彼女だけ見えるんだ?
狼狽する春野に畳み掛けるように、市川がストーカーの被害に遭っていることを告げる。
春野は、夏南を守れなかったという罪の意識と、市川の顔が見える理由を知りたいという思いから、彼女と関わることを決意する。
やがて、ストーカーの顔色が黒へと至った時、全ての真実が顔を覗かせる。
第5回ライト文芸大賞 青春賞 受賞作
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
愛することをやめたら、怒る必要もなくなりました。今さら私を愛する振りなんて、していただかなくても大丈夫です。
石河 翠
恋愛
貴族令嬢でありながら、家族に虐げられて育ったアイビー。彼女は社交界でも人気者の恋多き侯爵エリックに望まれて、彼の妻となった。
ひとなみに愛される生活を夢見たものの、彼が欲していたのは、夫に従順で、家の中を取り仕切る女主人のみ。先妻の子どもと仲良くできない彼女をエリックは疎み、なじる。
それでもエリックを愛し、結婚生活にしがみついていたアイビーだが、彼の子どもに言われたたった一言で心が折れてしまう。ところが、愛することを止めてしまえばその生活は以前よりも穏やかで心地いいものになっていて……。
愛することをやめた途端に愛を囁くようになったヒーローと、その愛をやんわりと拒むヒロインのお話。
この作品は他サイトにも投稿しております。
扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID 179331)をお借りしております。
野良インコと元飼主~山で高校生活送ります~
浅葱
ライト文芸
小学生の頃、不注意で逃がしてしまったオカメインコと山の中の高校で再会した少年。
男子高校生たちと生き物たちのわちゃわちゃ青春物語、ここに開幕!
オカメインコはおとなしく臆病だと言われているのに、再会したピー太は目つきも鋭く凶暴になっていた。
学校側に乞われて男子校の治安維持部隊をしているピー太。
ピー太、お前はいったいこの学校で何をやってるわけ?
頭がよすぎるのとサバイバル生活ですっかり強くなったオカメインコと、
なかなか背が伸びなくてちっちゃいとからかわれる高校生男子が織りなす物語です。
周りもなかなか個性的ですが、主人公以外にはBLっぽい内容もありますのでご注意ください。(主人公はBLになりません)
ハッピーエンドです。R15は保険です。
表紙の写真は写真ACさんからお借りしました。
【R18】エリートビジネスマンの裏の顔
白波瀬 綾音
恋愛
御社のエース、危険人物すぎます───。
私、高瀬緋莉(27)は、思いを寄せていた業界最大手の同業他社勤務のエリート営業マン檜垣瑤太(30)に執着され、軟禁されてしまう。
同じチームの後輩、石橋蓮(25)が異変に気付くが……
この生活に果たして救いはあるのか。
※サムネにAI生成画像を使用しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる