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▲お話△
素直になりなさい
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昨日訓練を始めて、第一ステップと称した神木、グレースの鞭攻撃から回避していた優真。途中ガロスによって愛の鞭に変わって特訓終了時には動けずガロスに抱えてもらっていた。グレースは内心やり過ぎたと思い今日の訓練を止めようかと思案する……がしかし、
「よろしく、お願いします」
優真は昨日と同じ早朝にグレースの下へやってきた。優真を連れてきたガロスも人間が獣人よりも柔いことを知っているからか、優真の隣にいるが何も言わず視線に心配の色が窺える。
『私が言うのもなんですが、大丈夫ですか?ユーマ』
「あはは……まあ、大丈夫です。全身筋肉痛なだけですから」
それを大丈夫と言えない気がするが、やる気と根性があることが分かったので、こちらとしても鍛えがいがありそうだと内心ほくそ笑む。
『では、昨日の続きからはじめましょうか』
「はい」
優真が返事をした直後、グレースは蔓の猛攻撃を浴びせる。否、浴びせようとしたが、蔓に当たった感触がなかった。視界を遮っていた砂嵐がなくなるにつれ、数メートル先の小さな影と、その正体に目を見開いた。
「うっ、す、砂が……」
優真がかすり傷を付けつつも、その小さな両足を地に立っていた。昨日の状況より違う、現状にグレースは再度動きを確認しようと蔓の連続攻撃を仕掛ける——刹那、
『!』
優真の閉ざされていたはずの両の目が開かれ、目前の蔓を捉えていた。そして、攻撃を避けつつ、次の向かってくる蔓に視線を向けている。さらには連撃を次々と回避していた。
『目が……!?(しかも初日より飛躍的に動けるようになっている……)』
原因を探るように優真を見つめる。優真はその視線を感じ取ったのか、グレースと視線が交差した。グレースは一瞬目を見開き、興味深そうに笑みを深める。そして、同時に生まれた隙を見過ごすはずもなく蔓は優真の死角から足に巻き付いて逆さづりにした。
「しまっ……」
『ふふ、油断は禁物ですよ』
優真を地面に下ろすと優真も瞳を閉じ“それら”が解けた。
『それにしても、索敵魔法“の上に付与魔法”ですか……面白いことをしましたね』
そう、通常武器や自分自身にかけるはずの付与魔法。それを優真は魔法自体に上乗せする斜め上の発想をやってのけていた。実は、この方法は今の今まで誰も考えたことがなかったものであることを優真は知らない。
「きっかけは、ガロスさんとの会話だったんです——ま、まあ!頑張れば御神木様だってユーマのことを認めて、ご加護をくださるかもしれないしな!——って。僕の現状、索敵魔法と生体感知の両方を同時に扱うのは難しくて……それで、ガロスさんの言っていた御神木様のご加護のように魔法としてではなく、付与すれば索敵に生体感知が上乗せされて、より魔法が強化されるのではないかと思って昨夜やってみたんです。そしたら、成功して、加えて視覚的に捉えられるようにもなりました」
『視覚的に……もしや』
「……はい、僕」
「目が見えるようになったかもしれません」
『なった“かも”というのは?』
「えっと、それが……どう言っていいのか……」
僕はこの感覚をどう言えばいいのかわからず、伝えあぐねる。通常、目が見えるのは、眼に映った情報を視神経から脳に伝達することで情報を取得して“見える”ことになる。正直、理科的なことを覚えるのは苦手だったけど、そうだったはず。でも、この付与魔法付き索敵魔法を使うと、視覚で捉えているはずなのに、頭では“そうじゃない”と訴えている。
「目で見えているはずなのに、そうじゃないように感じるみたいな……」
『ふむ……では一度、先程の付与付き索敵魔法で私を見てみてください』
(神木様を……?)
僕の戸惑った様子に気付いたのか、神木様は僕の頭を撫でる。
『大丈夫ですよ』
「……やってみます」
先ほどやったように索敵魔法の上に生体感知の付与魔法をかけ、閉じていた目を開けた。グレースが優真の目の前にいるはずだと真っ直ぐ前をみる。そこにはやはりグレースの優しい魔力が白く、色濃く漂い、濃淡のある白黒シルエットにみえた。しかし、その奥から、目の前にいるグレースと同じ質の魔力が莫大で威圧的ではないものの、自分が包まれている感覚だった。
「わぁ……」
『何がみえますか?』
「人……のシルエットがみえます。でも、白い靄ではっきりみえないんですけど、あ、でも同じ靄がずっと森の奥からも感じます」
みたままを告げるとグレースは二、三度頷き優真の眉間に人差し指で突いた。
「あっ」
途端に優真の視界が歪み、霧散する。霧散したすぐは気付かなかったが、冷静になるにつれ一つの原因が浮かんだ。
『何が、分かりましたか?』
「あっ、えっと……」
先程のシルエット、神木のいた方に視線を向ける。
「神木様はここじゃなくて——あそこ、ですか?」
僕が遠くを指差すと、風がさざめき立った。本能的に瞳を閉じる。
『……』
神木様は何も言わない。不安に駆られ、周囲の風はより風圧が増して聞こえる。回答が間違っていた、ということだろうか……?
「神木、様……?」
優真が恐る恐る発した言葉にグレースは我に返る。一気に風が止むと、優真はほっと肩を撫でおろした。
『“雲が人のように見える”とは、こういうことです。この森の核であり、本体は木なので身動きは取れない。だからこうして動物を依り代にしたり、人型をとって意識だけでも移動させているのですが……ちょっと脅かし過ぎましたね』
そういうと、グレースは優真の手を取る。
「え……」
『手の震え、早い呼吸、それに手足の冷えまでさせてしまいました』
「そ、そんなこと」
ない、と言おうとした時、優真に触れていたグレースの手から温もりを感じた。その温もりに意思よりも体が早く、ゆるりと浸っていた。
『やはり』
「っ……」
弁明しようが、この状況からそうであることは明らかである。一瞬抵抗しようとした優真の手はゆっくり下へとおりていった。
「(ど、どうしよう……お手を煩わせているのに、もう少しこうしていたいと思ってしまう。いけない、いけないのに……)」
『……とある地域では』
と、突然誰にともなく話し出すグレース。優真は声のする方へ顔を上げる。
『とある地域では、人も神も近しい存在であると言います。つまりは家族だと』
グレースは優真の頭を撫でる。優しいその触れ方に思わず口端が緩まる。
『ユーマも、私の大事な子。煩わしいなどと誰が思いましょうか』
「ですが…………んむっ」
グレースは優真の頬を少し摘まみ、中心へと寄せた。
『素直になりなさい、ユーマ』
「……」
優真は抵抗をやめ、グレースの裾を引く。撫でられていた手を下させ、一歩近づき、頭を押し当てる。それが現在できる精一杯の譲歩だと分かったグレースは緩く優真を抱きしめる。抱きしめがてら、押し当てられた頭を撫でる手はやめられない。傍から見れば周囲に白い小さな花が見えるくらいの喜んでいるグレースだが、内心は身悶えていた。そうか、これが猫が懐かれたときの愛いさなのか、とでも言うように舞い踊る気持ちを抑えていた。
△▲△▲△▲
ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ごめんなさぁーいm(__)m
しばらく出せてなかったですぅうぅぅ……
今回は可愛さいっぱい?いっぱい!にしてみました!
どんどん投稿遅れる気がする……
「よろしく、お願いします」
優真は昨日と同じ早朝にグレースの下へやってきた。優真を連れてきたガロスも人間が獣人よりも柔いことを知っているからか、優真の隣にいるが何も言わず視線に心配の色が窺える。
『私が言うのもなんですが、大丈夫ですか?ユーマ』
「あはは……まあ、大丈夫です。全身筋肉痛なだけですから」
それを大丈夫と言えない気がするが、やる気と根性があることが分かったので、こちらとしても鍛えがいがありそうだと内心ほくそ笑む。
『では、昨日の続きからはじめましょうか』
「はい」
優真が返事をした直後、グレースは蔓の猛攻撃を浴びせる。否、浴びせようとしたが、蔓に当たった感触がなかった。視界を遮っていた砂嵐がなくなるにつれ、数メートル先の小さな影と、その正体に目を見開いた。
「うっ、す、砂が……」
優真がかすり傷を付けつつも、その小さな両足を地に立っていた。昨日の状況より違う、現状にグレースは再度動きを確認しようと蔓の連続攻撃を仕掛ける——刹那、
『!』
優真の閉ざされていたはずの両の目が開かれ、目前の蔓を捉えていた。そして、攻撃を避けつつ、次の向かってくる蔓に視線を向けている。さらには連撃を次々と回避していた。
『目が……!?(しかも初日より飛躍的に動けるようになっている……)』
原因を探るように優真を見つめる。優真はその視線を感じ取ったのか、グレースと視線が交差した。グレースは一瞬目を見開き、興味深そうに笑みを深める。そして、同時に生まれた隙を見過ごすはずもなく蔓は優真の死角から足に巻き付いて逆さづりにした。
「しまっ……」
『ふふ、油断は禁物ですよ』
優真を地面に下ろすと優真も瞳を閉じ“それら”が解けた。
『それにしても、索敵魔法“の上に付与魔法”ですか……面白いことをしましたね』
そう、通常武器や自分自身にかけるはずの付与魔法。それを優真は魔法自体に上乗せする斜め上の発想をやってのけていた。実は、この方法は今の今まで誰も考えたことがなかったものであることを優真は知らない。
「きっかけは、ガロスさんとの会話だったんです——ま、まあ!頑張れば御神木様だってユーマのことを認めて、ご加護をくださるかもしれないしな!——って。僕の現状、索敵魔法と生体感知の両方を同時に扱うのは難しくて……それで、ガロスさんの言っていた御神木様のご加護のように魔法としてではなく、付与すれば索敵に生体感知が上乗せされて、より魔法が強化されるのではないかと思って昨夜やってみたんです。そしたら、成功して、加えて視覚的に捉えられるようにもなりました」
『視覚的に……もしや』
「……はい、僕」
「目が見えるようになったかもしれません」
『なった“かも”というのは?』
「えっと、それが……どう言っていいのか……」
僕はこの感覚をどう言えばいいのかわからず、伝えあぐねる。通常、目が見えるのは、眼に映った情報を視神経から脳に伝達することで情報を取得して“見える”ことになる。正直、理科的なことを覚えるのは苦手だったけど、そうだったはず。でも、この付与魔法付き索敵魔法を使うと、視覚で捉えているはずなのに、頭では“そうじゃない”と訴えている。
「目で見えているはずなのに、そうじゃないように感じるみたいな……」
『ふむ……では一度、先程の付与付き索敵魔法で私を見てみてください』
(神木様を……?)
僕の戸惑った様子に気付いたのか、神木様は僕の頭を撫でる。
『大丈夫ですよ』
「……やってみます」
先ほどやったように索敵魔法の上に生体感知の付与魔法をかけ、閉じていた目を開けた。グレースが優真の目の前にいるはずだと真っ直ぐ前をみる。そこにはやはりグレースの優しい魔力が白く、色濃く漂い、濃淡のある白黒シルエットにみえた。しかし、その奥から、目の前にいるグレースと同じ質の魔力が莫大で威圧的ではないものの、自分が包まれている感覚だった。
「わぁ……」
『何がみえますか?』
「人……のシルエットがみえます。でも、白い靄ではっきりみえないんですけど、あ、でも同じ靄がずっと森の奥からも感じます」
みたままを告げるとグレースは二、三度頷き優真の眉間に人差し指で突いた。
「あっ」
途端に優真の視界が歪み、霧散する。霧散したすぐは気付かなかったが、冷静になるにつれ一つの原因が浮かんだ。
『何が、分かりましたか?』
「あっ、えっと……」
先程のシルエット、神木のいた方に視線を向ける。
「神木様はここじゃなくて——あそこ、ですか?」
僕が遠くを指差すと、風がさざめき立った。本能的に瞳を閉じる。
『……』
神木様は何も言わない。不安に駆られ、周囲の風はより風圧が増して聞こえる。回答が間違っていた、ということだろうか……?
「神木、様……?」
優真が恐る恐る発した言葉にグレースは我に返る。一気に風が止むと、優真はほっと肩を撫でおろした。
『“雲が人のように見える”とは、こういうことです。この森の核であり、本体は木なので身動きは取れない。だからこうして動物を依り代にしたり、人型をとって意識だけでも移動させているのですが……ちょっと脅かし過ぎましたね』
そういうと、グレースは優真の手を取る。
「え……」
『手の震え、早い呼吸、それに手足の冷えまでさせてしまいました』
「そ、そんなこと」
ない、と言おうとした時、優真に触れていたグレースの手から温もりを感じた。その温もりに意思よりも体が早く、ゆるりと浸っていた。
『やはり』
「っ……」
弁明しようが、この状況からそうであることは明らかである。一瞬抵抗しようとした優真の手はゆっくり下へとおりていった。
「(ど、どうしよう……お手を煩わせているのに、もう少しこうしていたいと思ってしまう。いけない、いけないのに……)」
『……とある地域では』
と、突然誰にともなく話し出すグレース。優真は声のする方へ顔を上げる。
『とある地域では、人も神も近しい存在であると言います。つまりは家族だと』
グレースは優真の頭を撫でる。優しいその触れ方に思わず口端が緩まる。
『ユーマも、私の大事な子。煩わしいなどと誰が思いましょうか』
「ですが…………んむっ」
グレースは優真の頬を少し摘まみ、中心へと寄せた。
『素直になりなさい、ユーマ』
「……」
優真は抵抗をやめ、グレースの裾を引く。撫でられていた手を下させ、一歩近づき、頭を押し当てる。それが現在できる精一杯の譲歩だと分かったグレースは緩く優真を抱きしめる。抱きしめがてら、押し当てられた頭を撫でる手はやめられない。傍から見れば周囲に白い小さな花が見えるくらいの喜んでいるグレースだが、内心は身悶えていた。そうか、これが猫が懐かれたときの愛いさなのか、とでも言うように舞い踊る気持ちを抑えていた。
△▲△▲△▲
ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ごめんなさぁーいm(__)m
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