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▲お話△

友達

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《……マ……て……》

「(う……ううん……?)」

遠くで、何か聞こえる。

《ユーマ……お……》

「(ん、だ……れ……?)」

誰かが僕を呼んでる……?

《ユーマ!起きろ~!

「は、はいっ‼」

 勢いよく飛び起きると、誰かに頭突きをしてしまった。

《痛っ……》

「ご、ごめん……寝ぼけてて……」

僕は頭をぶつけた方向に手を伸ばす。すると、誰かの頬に触れた。そのままぶつけてしまったところを触って確かめる。

《ユ、ユーマ……》

「ごめん……なさい?」

あれ?でもこの輪郭、どこかで触ったことがあるような……?

《ユーマ、俺だ》

えっ……ええっ‼どうしてここに⁉あれっ、僕まだ寝ぼけているのか⁇いや、寝すぎてもう昼だったとか⁇待って待って、頭突きした相手ってもしかして村長?村長は、この村の長ってことだから……だから……

「えっと……ジークスさん?」

《ああ》

優真は何事もなかったかのように、鼻をすすりながら布団から出て正座をする。

「おはようございます。長様」

《あ、ああ。おはよう、ユーマ》

『ユーマ、それは誤魔化してる?』

そこは言わないで、デリー。

「あの……き、今日はどうしたんですか?長様」

《ユーマ、小僧の様子を見にな》

「ありがとうございます」

ジークスの後ろから顔を出すジギル、メル、ニル。

《ユーマ、ぐっすり寝てた!》

《ぐっすり!》

《スリスリー!》

《ニル、ぐっすりだぞ?》

今度はジークスの前に出てくる三兄弟。

《ユーマにいちゃんのめ、キラキラ~!》

《キラキラ~!》

あ、目開けたままだった。瞑っとかないと。それにしてもキラキラって表現が子どもらしいというか、僕も子どもだけど。

《……もったいない》

「ギル、今なんて?」

《いや、何でもない!》

寂しげな声だったけど、僕何かしたのかな……?

《こらこら、三人とも邪魔するんじゃない》



《ははっ、ジャイールも一家の大黒柱だな》

ジークスたちがまだ話してる間に布団を片付けておこうとユーマが布団を抱えて立ち上がる。しかし、子どもの体のせいで上手く持ち上がらない。

《ユーマ、無理しちゃだめよ?》

あっさりとミューラ姉さんに取られてしまった。

「あ……はい(全然無理していないんだけどな……)」

《ユーマにいちゃん!》

「どうしたの?メル」

《きょうは、リュリュのところに行くの!》

リュリュ?ルルって言いたいのか?だとしたら、

「ルルちゃん?はメルの友達?」

《トモダチ?》

「うん、一緒に遊んだり、お話したりできる仲のいい人のことだよ」

それを教えている僕自身、友達と呼べる人はいなかったんだけど。

《うん!トモダチ~!》

嬉しそうに話すメル。少し羨ましい、かな。

《メルはユーマにルルちゃんを教えてあげたいのよね?》

《うん!》

そっか、メルは優しいね。

《あと、ビビとロディとフィオと……》

「友達、いっぱいだね」

《みんな、なかよしでトモダチなの!》

友達いっぱい、か……

《私も一緒に行くわ。丁度、用事もあるし》

《ねえねもいっしょ~!》

メルは優真の周りを駆けまわる。ジャイール家族と優真を見て安心したジークスは立ち上がり、帰り支度をする。

《……ユーマの顔も見れたし、俺はそろそろ見回りに行こう》

ジークスが家を出ようとすると、ミューラが呼び止める。

《長様》

《どうした、ミューラ》

ミューラは優真に聞こえないよう小さな声で話す。

《ガロス様の様子は?》

《それが、昨日から一言も口をきいてくれなくてな……》

《そうですか……》

「……」

『ユーマ……』

二人の話声は優真に聞こえていた。

《ユーマどうしたの?》

「ううん、何でもないよ。僕もメルの友達に会うの楽しみだなって」

《えへへっ!》

誰にでも相性はあるし、僕は嫌われ慣れてる。……大丈夫。

 

 

 

《いってきま~す!》

《留守番お願いね?》

ジル兄さんとギル、ニルは留守番みたい。

《おう!》

《おう~》

ニルはジル兄さんのまねをして、僕たちを見送る。

《ユーマ》

ギルが僕を呼び止める。

「どうしたの?ギル」

《い……》

「い?」

《行ってこい!》

《こい~》

《あっ、ニル……今まねするなよ~》

僕……初めて、見送りの言葉を言われた気がする。前の家では母親の相手に気付かれないようにしていたから。そっか、もう誰にも見られないように出ていかなくていんだ。

「ギル」

《ん?》

「──いってきます」

優真は微かに目を開き、笑顔でそう言った。

《っ……お、おう!》

優真たちが歩いている背中を見ていたジャイールら三兄弟。ジャイールはふとジギルに目を向けると、目を見開いたまま顔を真っ赤にしていた。

 

 

 

一方、優真たちは手をつないでゆっくりとルルの家に向かっていた。道すがら、優真はメルの話を聞いていた。

《それでね?リュリュ、まっくろくろになったの!》

「そうなんだ。それからみんなで真っ黒になったの?」

《うん!あとね、あとね?》

メルは友達と遊ぶことが何より好きらしい。特にルルという女の子とよく一緒に遊ぶようだ。

《メル、もうすぐルルの家に着くわよ?》

《やった~!》

メルは僕の手を離し、走って行った。

「(メルは家を出てからずっと僕に友達の話をしてたのに、ずっと元気だな……)」

メルはルルの家の前に立つとノックもせずに扉を開けた。扉の開く音を聞いた優真は内心、メルの行動に驚く。

「(今ノックもせずに、扉開けてなかった?ここはプライバシーなんてものは無いと考えた方が良いのかも)」

《ルル~!あそぼ!》

《は~い!》

家の中から女の子の声が聞こえてきた。同時に駆けて来る足音も。

《メル~!》

ルルはメルに抱きつき、二人はそのまま回転する。

『ルルって子は熊の獣人みたいだね。メルとは雰囲気が違って、大人しそう』

《あら、メルちゃん。今日も遊びに来てくれたの》

家の奥から現れたのは熊耳の女性。

《コルネ、急に来ちゃってごめんなさいね?》

僕たちもやっとルルちゃんの家に到着した。ミューラ姉さんと話す女の人の声は、多分ルルちゃんのお母さん……かな。

《良いのよ。うちの子といつも遊んでくれて、私たちも助かってるわ》

ルルはメルと軽くじゃれ合った後、優真に気付いた。

《あ~!》

ルルちゃんは僕の手を取って目が回るほど回転する。この子、日本にいたらメリーゴーランドとかコーヒーカップみたいな回転するアトラクションが好きそう。

「ゆ……優真です。よろしくね」

僕が自己紹介すると、やっと止まってくれた。め、目が……回る。

《わたし、ルル~!》

《ユーマはメルのおにいちゃんなの?》

メルがそう言ったのかな?

「そうだね。僕の方がお兄ちゃんかな」

《そっか~!》

再びルルちゃんは僕の手を取る。え……まさか、また?

《ユーマにいちゃん、あそぼ~》

《あそぼっ!》

メルも優真の手を取り、三人で先ほどより倍の速さで回転した。

「(子どもって、本当に元気……だな)」

メルたちと遊ぶ前に疲れ切ってしまいそうな予感しかしない優真だった。
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