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病院
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産婦人科、夜の待合室の空気に
暗雲が立ち込めていた。
息苦しくなる位の濃厚な暗雲。
S.SO←蘇我真也 32歳 そがしんや
S.A←朝竹誠一 32歳 あさたけせいいち
コメントK←ケンジ 22歳
コメントS←さくら 20歳
コメントA←あかね 24歳
ケンジ目線
この男がさくらの初めてを奪い、
お腹の中の子の父親かぁ。
なぜ、ここまでさくらを放置してるんがぁ、
なんちゃわからんがぁ、さくらは絶対渡さん。
こげんなオトコが、さくらを悲しませた。
こげんなオトコになんか、さくらは…。
さくらは俺が幸せにしちゃる。
さくらっ。
誠一目線
この男がさくらの夫?
さくらが妊娠?
しかも、もうすぐ赤ちゃんが、生まれてくる。
もう、手遅れなのか?
さくら。想いが通じあったのに…。
手離したくない。
彼女のおかげで、暖かくて愛しく思える
感情を知ったのに…。
俺は遅すぎたのか。
もっと早く見つけていれば…。
さくら。もうダメなのか?
俺は何もかも捨てて、今度は今度こそ
君を守りたい。
蘇我目線
「本当にいいのか?」
思わず声を出して確認してしまった。
ずっと探していた彼女が、実の父親に
反対され手切れ金まで渡された。
だが彼女は、受け取らず全て返した。
遠くに追いやられたにも関わらず、
彼女は土地勘もない所で、自分の力で
立ち上がり、まわりの優しい人に
恵まれながらここまで来た。
大企業の社長の座を捨て彼女のそばに
居るためこれを準備したのか?
しかも、俺まで誘うのか?
美味しいネタだが……。
本当にいいのか、わからなくなってきた。
俺は何度も、書いては消してまた、
書いては訂正し直していた。
編集長として力を入れて、仕上げに入った。
カタカタカタカタ……。
パソコンを打つ音だけが、夜の産婦人科の
待合室に響いていた。
あかねと父母、曽祖父母たちはこの
空気に耐えきれず、もう閉まっている売店や
自販機の所に避難した。
兄や祖父母は自宅で待機していた。
出産準備品のカバンと、差し入れの
お弁当を大量に兄嫁たちが、
持って来てくれたが、兄夫婦たちには
まだ小さな子どもが居るので、
さくらの顔を見て安心したのか
「きばちょーねぇ。(頑張ってね。)」
と言い残し帰っていった。
赤ちゃんが産まれてから、順番に
お見舞いに行く予定だった。
顔を合わせをして、さくらを見た朝竹誠一と
蘇我真也はなんとも言えない表情だった。
ケンジはいつも以上にピリピリし、
無言で威嚇していた。
「せっかくだけぇ弁当、よろっで(みんなで)
食べたよーやぁ。まんじゅーもあっでぇ。」
「ひいじーちゃん…。」
「深夜のお弁当いいですねぇ。豪華。」
「ゴチになりまーす。」
「いただきます。」
蘇我真也と編集者の男女は、大量の重箱に
入った豪華な手作りお弁当に感動していました。
発芽玄米や炊き込み御飯のおにぎりや
赤飯のおにぎりもありました。
「美味い。これはなんだ?歯ごたえがいい。」
「マイタケとナズナの佃煮風じゃな。」
「ナズナ?草?」
朝竹誠一は曽祖父母笑われながらも、
お弁当に入れられた山菜や食材の
話をしながら、勧められるまま食べていました。
「ちなみに こちゃぁ、オオバコとおかひじきの
"和えもん"じゃな。」
「こでぇも、食ってけぇ。ムカゴの甘煮じゃ。
ムカゴは、山芋の葉の付け根にできる、
こんまい(小さい)丸っこい芽じゃよ。」
「こでぇは、マタタビとウドの甘辛煮じゃな。」
朝竹だけではなく、蘇我たちも"またたび"に
注目し、頭の中に猫を思い浮かべていた。
そうとは知らない、曽祖父母は"若いもん"に
山菜を教えるのが楽しいようで、
お弁当に入れられたおかず一つ一つを
説明していた。
「山ノ上さーん。」
「「「「「はい。」」」」」」
看護師の呼びかけに、ケンジの
家族は反応した。
「あっ。すみません。」
謝られた。
「前回のアンケートで立ち会いを
希望されていますが、
さくらさんのお父様は?」
何故か曽祖父が立ち上がろうとしたが、
「はい、俺です。」
「じゃあ、説明しますね。お父様は
こちらにどうぞ。」
ケンジは、誠一をちらっと睨んだあと、
みんなに「行ってくる。」
と言い産室に入って行った。
暗雲が立ち込めていた。
息苦しくなる位の濃厚な暗雲。
S.SO←蘇我真也 32歳 そがしんや
S.A←朝竹誠一 32歳 あさたけせいいち
コメントK←ケンジ 22歳
コメントS←さくら 20歳
コメントA←あかね 24歳
ケンジ目線
この男がさくらの初めてを奪い、
お腹の中の子の父親かぁ。
なぜ、ここまでさくらを放置してるんがぁ、
なんちゃわからんがぁ、さくらは絶対渡さん。
こげんなオトコが、さくらを悲しませた。
こげんなオトコになんか、さくらは…。
さくらは俺が幸せにしちゃる。
さくらっ。
誠一目線
この男がさくらの夫?
さくらが妊娠?
しかも、もうすぐ赤ちゃんが、生まれてくる。
もう、手遅れなのか?
さくら。想いが通じあったのに…。
手離したくない。
彼女のおかげで、暖かくて愛しく思える
感情を知ったのに…。
俺は遅すぎたのか。
もっと早く見つけていれば…。
さくら。もうダメなのか?
俺は何もかも捨てて、今度は今度こそ
君を守りたい。
蘇我目線
「本当にいいのか?」
思わず声を出して確認してしまった。
ずっと探していた彼女が、実の父親に
反対され手切れ金まで渡された。
だが彼女は、受け取らず全て返した。
遠くに追いやられたにも関わらず、
彼女は土地勘もない所で、自分の力で
立ち上がり、まわりの優しい人に
恵まれながらここまで来た。
大企業の社長の座を捨て彼女のそばに
居るためこれを準備したのか?
しかも、俺まで誘うのか?
美味しいネタだが……。
本当にいいのか、わからなくなってきた。
俺は何度も、書いては消してまた、
書いては訂正し直していた。
編集長として力を入れて、仕上げに入った。
カタカタカタカタ……。
パソコンを打つ音だけが、夜の産婦人科の
待合室に響いていた。
あかねと父母、曽祖父母たちはこの
空気に耐えきれず、もう閉まっている売店や
自販機の所に避難した。
兄や祖父母は自宅で待機していた。
出産準備品のカバンと、差し入れの
お弁当を大量に兄嫁たちが、
持って来てくれたが、兄夫婦たちには
まだ小さな子どもが居るので、
さくらの顔を見て安心したのか
「きばちょーねぇ。(頑張ってね。)」
と言い残し帰っていった。
赤ちゃんが産まれてから、順番に
お見舞いに行く予定だった。
顔を合わせをして、さくらを見た朝竹誠一と
蘇我真也はなんとも言えない表情だった。
ケンジはいつも以上にピリピリし、
無言で威嚇していた。
「せっかくだけぇ弁当、よろっで(みんなで)
食べたよーやぁ。まんじゅーもあっでぇ。」
「ひいじーちゃん…。」
「深夜のお弁当いいですねぇ。豪華。」
「ゴチになりまーす。」
「いただきます。」
蘇我真也と編集者の男女は、大量の重箱に
入った豪華な手作りお弁当に感動していました。
発芽玄米や炊き込み御飯のおにぎりや
赤飯のおにぎりもありました。
「美味い。これはなんだ?歯ごたえがいい。」
「マイタケとナズナの佃煮風じゃな。」
「ナズナ?草?」
朝竹誠一は曽祖父母笑われながらも、
お弁当に入れられた山菜や食材の
話をしながら、勧められるまま食べていました。
「ちなみに こちゃぁ、オオバコとおかひじきの
"和えもん"じゃな。」
「こでぇも、食ってけぇ。ムカゴの甘煮じゃ。
ムカゴは、山芋の葉の付け根にできる、
こんまい(小さい)丸っこい芽じゃよ。」
「こでぇは、マタタビとウドの甘辛煮じゃな。」
朝竹だけではなく、蘇我たちも"またたび"に
注目し、頭の中に猫を思い浮かべていた。
そうとは知らない、曽祖父母は"若いもん"に
山菜を教えるのが楽しいようで、
お弁当に入れられたおかず一つ一つを
説明していた。
「山ノ上さーん。」
「「「「「はい。」」」」」」
看護師の呼びかけに、ケンジの
家族は反応した。
「あっ。すみません。」
謝られた。
「前回のアンケートで立ち会いを
希望されていますが、
さくらさんのお父様は?」
何故か曽祖父が立ち上がろうとしたが、
「はい、俺です。」
「じゃあ、説明しますね。お父様は
こちらにどうぞ。」
ケンジは、誠一をちらっと睨んだあと、
みんなに「行ってくる。」
と言い産室に入って行った。
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