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俺は、騎士団団長のジーン・サントス・ニール。
この国の第3王子だった男。
第2王子だった兄王と、サファイア、
彼女の運命を戻すために、神様と
取引をした。今日も麗しい彼女のそばで
悪いムシがつかないよう、監視……
見守り中だった。
俺にとって特別な彼女は、可愛い上に
性格までいい。自分の事は後回しで、
他の人の為に一生懸命だった。
目が合うだけでも、ニコッと笑いかけて
くれる彼女を、自分のものにしたいと、
狂おしい程の気持ちが日に日に、
強くなっていた。

「実りの聖女様に。」
「こちらは、朝のとれたて野菜です。
実りの聖女様と神様に感謝します。」
野菜を持って来た男性に厳しく見ていた。
邪な気持ちを彼女に持たないように、
しっかりと見張らな……ゴホッ。
見守らないと、可憐な彼女を
傷つけてしまう。
特に男性からの視線を遮るように
用事が終われば、半ば追い出すように
男性を見ていた。いや、少し睨んで
しまったかもしれない。
まあ、可憐な彼女を守るため仕方がない。
          * * *
「お姉ちゃん、この近くに湖があるんだけど
お姉ちゃんも一緒に行く?」
「食べれる草も生えてるし、根っこごと
少しだけ、持ち帰ってきたらいいんだよね?」
「お姉ちゃん、一部ってどのくらい?」
無邪気な子どもたちに真剣に悩む
彼女は、正しく聖女…いや…天使だった。

「サファイアも、行ってみたらどうかな?
シスターも一緒に子どもたちと行くし、
もちろんそちらの大人数名もどうだろう?」
腹黒の神父は、俺をチラッとみた。
おまえに頼まれなくても、俺は彼女を
側で見守る。力強く頷いたのを横目で
確認した、腹黒神父。
この教会に来たその日に、ニヤケついた
腹黒神父にクギを刺されたのだった。
"彼女は、未成年だよ。"
"騎士団長が、犯罪を犯す事のないように、
騎士団長の邪な気持ちが消えますように、
神のお導きがありますように。"
邪な気持ちなどない。
ただ、彼女を守りたいだけだ。
あの時は、そう…思い込もうとしていた。

「は、初めてで不慣れですが、
よろしくお願いします。」
「…あぁ。」
一瞬、神父に対してムカッときたが、
彼女の声で癒され、さらに目があった。
あまりの可愛さに目を合わし続けるのが
難しくなり横を向いてしまった。
変に思われないか心配だった。

「……ごめんなさい。」
「ん?どうして謝ってるのかな?」
か弱い声が聞こえてきたと思ったら
彼女の頭を撫でながら、俺にニヤリと
笑いながら話す腹黒神父がいた。

「…やっぱり、湖に行くのは…やめます。」
急に体調が悪くなったのか?

「どうしてだい?ずっと、教会に閉じこもって
いては、心も体も大きくならないよ。」
俺が言いたいセリフを、腹黒神父……。
「わ、私がいると…みんな……ごめん…ぃ。
みんな…に迷惑かかるし…不快になるし…。」
可憐な彼女がいるから、俺はがんばれる。
可愛すぎる彼女がいるから、嫌な腹黒神父を
まだ、我慢できるんだ。

「サファイア。君は綺麗な心の持ち主だし
畑の事や、教会のお手伝いも積極的に
してくれている。君はまだ子どもなのに
気を使いすぎだよ。神様や子どもたちも、
もちろん私もだが、君を愛してるよ。」
「……あ、ありがとうございます。」

「んんっ。」
くそっ、可愛い笑顔を神父に向けている。
俺にも笑いかけてくれ。
いや、俺だけに笑いかけてくれ。
俺は咳払いを、無駄に繰り返していた。
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