5 / 9
4
しおりを挟む
「実りの聖女様に。」
そう言いながら、木で作られたスキや
クワ、スコップを神父様に渡す、
農耕具を作る職人。
「こちらは、朝のとれたて野菜です。
実りの聖女様と神様に感謝します。」
そう言いながら、たくさんの野菜を
カゴに入れ"お裾分け"してくれた
共同畑のリーダー的な男性。
私はここに来て、1年とちょっと過ぎていた。
スラム街の急な変化に、あのでっぷり肥えた
陛下は気づかなかったが、優秀な宰相と
あの美人な聖女様は気づき、護衛を
そっと配置され報告もされていた。
画期的な畑作りなどはすぐさま王都にも、
取り入れられた。
それと同時に、スラム街から始まった
食糧改革の噂と、開発者探し…
"これを開発したものは誰だ?"と
隣国まで噂話が流れ、大袈裟に伝わって
いたらしい。
相変わらずベールで顔を隠し、裏方に
徹していた私は、気づかなかった。
交代で目立たないように護衛さんや
目つきの鋭い、元鎧の騎士に守られていた事に。
「お姉ちゃん、この近くに湖があるんだけど
お姉ちゃんも一緒に行く?」
「食べれる草も生えてるし、根っこごと
少しだけ、持ち帰ってきたらいいんだよね?」
「お姉ちゃん、一部ってどのくらい?」
どう答えようか、迷っていた。
「サファイアも、行ってみたらどうかな?
シスターも一緒に子どもたちと行くし、
もちろんそちらの大人数名もどうだろう?」
神父様は、チラッと元騎士様をみた。
いっさい無駄話をしない元騎士様。
目つきが鋭く、整った眉毛や鼻筋が
通った高い鼻、口もなんだか色っぽさがある
野生的な男らしさ?筋肉質でワイルドな
イケメン。とにかくカッコいい元騎士様。
「は、初めてで不慣れですが、
よろしくお願いします。」
「…あぁ。」
一瞬、目があったのに眉間にしわがより
そっぽ向かれてしまったのだった。
やはり、私みたいな不細工でチビ、
しかも何の力もない私では目を
合わすのも嫌よね……。なんだか凹むわ。
確かに。元騎士団の人たちは、私のせいで
お城を追い出され、仕事もなくなったん
だから恨まれても、しょうがないよね…。
なんだか悲しくなってしまった。
「……ごめんなさい。」
「ん?どうして謝ってるのかな?」
私の頭を撫でながら話す神父様。
「…やっぱり、湖に行くのは…やめます。」
「どうしてだい?ずっと、教会に閉じこもって
いては、心も体も大きくならないよ。」
「わ、私がいると…みんな……ごめん…ぃ。
みんな…に迷惑かかるし…不快になるし…。」
子どもたちだけは、無邪気に懐いてくれる。
神父様やシスター、元騎士団の人たちは
どこかよそよそしく、一歩ひいた態度を
取られている感じがした。
「サファイア。君は綺麗な心の持ち主だし
畑の事や、教会のお手伝いも積極的に
してくれている。君はまだ子どもなのに
気を使いすぎだよ。神様や子どもたちも、
もちろん私もだが、君を愛してるよ。」
「……あ、ありがとうございます。」
"君を愛してる"
"神は、みんな愛してる"
神父様らしい慰め方をしてくれていた。
最初の頃は、この言葉に驚いてしまい
なぜか泣いてしまったのだった。
今では慣れたのか、その言葉がただ
単純に嬉しいって思っていた。
「んんっ。」
目つきの鋭い元騎士様は、喉が
イガイガするのか、軽い咳払いを
繰り返していた。
そう言いながら、木で作られたスキや
クワ、スコップを神父様に渡す、
農耕具を作る職人。
「こちらは、朝のとれたて野菜です。
実りの聖女様と神様に感謝します。」
そう言いながら、たくさんの野菜を
カゴに入れ"お裾分け"してくれた
共同畑のリーダー的な男性。
私はここに来て、1年とちょっと過ぎていた。
スラム街の急な変化に、あのでっぷり肥えた
陛下は気づかなかったが、優秀な宰相と
あの美人な聖女様は気づき、護衛を
そっと配置され報告もされていた。
画期的な畑作りなどはすぐさま王都にも、
取り入れられた。
それと同時に、スラム街から始まった
食糧改革の噂と、開発者探し…
"これを開発したものは誰だ?"と
隣国まで噂話が流れ、大袈裟に伝わって
いたらしい。
相変わらずベールで顔を隠し、裏方に
徹していた私は、気づかなかった。
交代で目立たないように護衛さんや
目つきの鋭い、元鎧の騎士に守られていた事に。
「お姉ちゃん、この近くに湖があるんだけど
お姉ちゃんも一緒に行く?」
「食べれる草も生えてるし、根っこごと
少しだけ、持ち帰ってきたらいいんだよね?」
「お姉ちゃん、一部ってどのくらい?」
どう答えようか、迷っていた。
「サファイアも、行ってみたらどうかな?
シスターも一緒に子どもたちと行くし、
もちろんそちらの大人数名もどうだろう?」
神父様は、チラッと元騎士様をみた。
いっさい無駄話をしない元騎士様。
目つきが鋭く、整った眉毛や鼻筋が
通った高い鼻、口もなんだか色っぽさがある
野生的な男らしさ?筋肉質でワイルドな
イケメン。とにかくカッコいい元騎士様。
「は、初めてで不慣れですが、
よろしくお願いします。」
「…あぁ。」
一瞬、目があったのに眉間にしわがより
そっぽ向かれてしまったのだった。
やはり、私みたいな不細工でチビ、
しかも何の力もない私では目を
合わすのも嫌よね……。なんだか凹むわ。
確かに。元騎士団の人たちは、私のせいで
お城を追い出され、仕事もなくなったん
だから恨まれても、しょうがないよね…。
なんだか悲しくなってしまった。
「……ごめんなさい。」
「ん?どうして謝ってるのかな?」
私の頭を撫でながら話す神父様。
「…やっぱり、湖に行くのは…やめます。」
「どうしてだい?ずっと、教会に閉じこもって
いては、心も体も大きくならないよ。」
「わ、私がいると…みんな……ごめん…ぃ。
みんな…に迷惑かかるし…不快になるし…。」
子どもたちだけは、無邪気に懐いてくれる。
神父様やシスター、元騎士団の人たちは
どこかよそよそしく、一歩ひいた態度を
取られている感じがした。
「サファイア。君は綺麗な心の持ち主だし
畑の事や、教会のお手伝いも積極的に
してくれている。君はまだ子どもなのに
気を使いすぎだよ。神様や子どもたちも、
もちろん私もだが、君を愛してるよ。」
「……あ、ありがとうございます。」
"君を愛してる"
"神は、みんな愛してる"
神父様らしい慰め方をしてくれていた。
最初の頃は、この言葉に驚いてしまい
なぜか泣いてしまったのだった。
今では慣れたのか、その言葉がただ
単純に嬉しいって思っていた。
「んんっ。」
目つきの鋭い元騎士様は、喉が
イガイガするのか、軽い咳払いを
繰り返していた。
32
お気に入りに追加
139
あなたにおすすめの小説
今日も学園食堂はゴタゴタしてますが、こっそり観賞しようとして本日も萎えてます。
柚ノ木 碧/柚木 彗
恋愛
駄目だこれ。
詰んでる。
そう悟った主人公10歳。
主人公は悟った。実家では無駄な事はしない。搾取父親の元を三男の兄と共に逃れて王都へ行き、乙女ゲームの舞台の学園の厨房に就職!これで予てより念願の世界をこっそりモブ以下らしく観賞しちゃえ!と思って居たのだけど…
何だか知ってる乙女ゲームの内容とは微妙に違う様で。あれ?何だか萎えるんだけど…
なろうにも掲載しております。
逃げて、追われて、捕まって (元悪役令嬢編)
あみにあ
恋愛
平民に生まれた私には、なぜか生まれる前の記憶があった。
この世界で貴族令嬢として生きてきた記憶。
過去の私は貴族社会の頂点に立ち、さながら悪役令嬢のような存在だった。
人を蹴落とし、気に食わない女を断罪し、今思えばひどい令嬢だったと思うわ。
だから今度は平民としての幸せをつかみたい、そう願っていたはずなのに、一体全体どうしてこんな事になってしまたのかしら……。
*****ご報告****
「逃げて、追われて、捕まって」連載版については、2020年 1月28日 レジーナブックス 様より書籍化しております。
****************
サクサクと読める、5000字程度の短編を書いてみました!
なろうでも同じ話を投稿しております。
逃げた先の廃墟の教会で、せめてもの恩返しにお掃除やお祈りをしました。ある日、御祭神であるミニ龍様がご降臨し加護をいただいてしまいました。
下菊みこと
恋愛
主人公がある事情から逃げた先の廃墟の教会で、ある日、降臨した神から加護を貰うお話。
そして、その加護を使い助けた相手に求婚されるお話…?
基本はほのぼのしたハッピーエンドです。ざまぁは描写していません。ただ、主人公の境遇もヒーローの境遇もドアマット系です。
小説家になろう様でも投稿しています。
悪役令嬢に転生したので、推しキャラの婚約者の立場を思う存分楽しみます
下菊みこと
恋愛
タイトルまんま。
悪役令嬢に転生した女の子が推しキャラに猛烈にアタックするけど聖女候補であるヒロインが出てきて余計なことをしてくれるお話。
悪役令嬢は諦めも早かった。
ちらっとヒロインへのざまぁがありますが、そんなにそこに触れない。
ご都合主義のハッピーエンド。
小説家になろう様でも投稿しています。
自己肯定感の低い令嬢が策士な騎士の溺愛に絡め取られるまで
嘉月
恋愛
平凡より少し劣る頭の出来と、ぱっとしない容姿。
誰にも望まれず、夜会ではいつも壁の花になる。
でもそんな事、気にしたこともなかった。だって、人と話すのも目立つのも好きではないのだもの。
このまま実家でのんびりと一生を生きていくのだと信じていた。
そんな拗らせ内気令嬢が策士な騎士の罠に掛かるまでの恋物語
執筆済みで完結確約です。
前世を思い出しました。恥ずかしすぎて、死んでしまいそうです。
棚から現ナマ
恋愛
前世を思い出したフィオナは、今までの自分の所業に、恥ずかしすぎて身もだえてしまう。自分は痛い女だったのだ。いままでの黒歴史から目を背けたい。黒歴史を思い出したくない。黒歴史関係の人々と接触したくない。
これからは、まっとうに地味に生きていきたいの。
それなのに、王子様や公爵令嬢、王子の側近と今まで迷惑をかけてきた人たちが向こうからやって来る。何でぇ?ほっといて下さい。お願いします。恥ずかしすぎて、死んでしまいそうです。
告白さえできずに失恋したので、酒場でやけ酒しています。目が覚めたら、なぜか夜会の前夜に戻っていました。
石河 翠
恋愛
ほんのり想いを寄せていたイケメン文官に、告白する間もなく失恋した主人公。その夜、彼女は親友の魔導士にくだを巻きながら、酒場でやけ酒をしていた。見事に酔いつぶれる彼女。
いつもならば二日酔いとともに目が覚めるはずが、不思議なほど爽やかな気持ちで起き上がる。なんと彼女は、失恋する前の日の晩に戻ってきていたのだ。
前回の失敗をすべて回避すれば、好きなひとと付き合うこともできるはず。そう考えて動き始める彼女だったが……。
ちょっとがさつだけれどまっすぐで優しいヒロインと、そんな彼女のことを一途に思っていた魔導士の恋物語。ハッピーエンドです。
この作品は、小説家になろう及びエブリスタにも投稿しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる