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闇の中で 二

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暗い、寒い、気持ち悪い。
私はまた、こんな所に閉じ込められるのか?

キズだらけで、指一本動かすにも
力が入らないほど、何人?何十人とも
朝昼晩がわからないほど、気持ち悪い
行為をされた日々?永久の闇に
落ちたんだと思えた。

何かが破壊された音がした。
「大丈夫か?」
大丈夫じゃない。
「生きてるか?」
これが続くなら、殺してくれ。
「女と見間違いそうだな。」
…うるさい。お前も…私に…するのか?
もう、終わらせてくれ。
「そーっと、運び出せ。」
……?身体が痛い。

自分の人生が終わったと思ったら、
明るい部屋の見知らぬ部屋、
柔らかな寝床に寝ていた。
気絶しただけなのか?
こんな自分に理由価値があると
思ってくれた危篤な方に、売られたのか?
どうせ愛玩道具にされるんだろう。
まぁ、今だけは何も考えたくない。

再び起きた時、自分の状況を
確認してみた。
手当てされ、鈍い痛みはあるが、
なんだかやたらと、眠い。
ここは、どこなんだ?
嫌な臭いがは、しない。
身体が綺麗になってる気がする。
着心地が良い、上質なゆったりとした服。

金持ちの部屋か?
家具は、落ち着く色で揃えられている。
なんだここは?
やはり、起きれない。
しかも、眠い。
誰も触らないでくれ。
嫌だ。気持ち悪い。吐きそうだ。

また繰り返してるんだと、気づいた。
俺は、2歳年下の騎士団に入りたての
ミーナに助けられた。
人身売買に拐われた俺は、ミーナの
騎士団の部屋に、数日、
寝かされていたらしい。
最初は、医務室だったらしいが、
むさ苦しい騎士団が出入りする為、
うなされるのが酷い私を、自室で
看病してくれたみたいだった。

あまりの錯乱ぶりに、数日は薬で
押さえられ、意識がもどれば、
人の良さそうな医師に、少しずつ
会話をした。
自分は、俺が意識がない時に
看病してくれたみたいで、
申し訳なく思った。

数ヶ月後、慣れた位にあの人身売買組織は
私を助け出してくれた当日、壊滅したらしい
と聞かされた。
芋づる式に数日、実質3日で各地に囚われた
人や色んな種族が、解放されたそうだ。

私はこの先、どうするかわからなかった。
数年呆けていた気がする。
騎士団の団長になったミーナは、
私より2歳年下だった。
親も知らない私は、何をしてるんだろうと
落ち込んだ。
友達でいいから、ここに居たらいいって
言ってくれた。
嫌な事もされない、身分もかなり上
王子と知った時、驚きより恐怖が
私を襲った。礼儀も言葉遣いも、
横柄な態度を取り続けた私に、
笑ってくれただけだった。

仕事が欲しいって言うと、友達で
いいって言われたから、
それじゃあ、嫌だと、訴えた。
少し考え、ニヤリって笑われた気がした。
"相談役、専属執事"
私の仕事が決まった瞬間だった。
対等に扱ってくれる人。
私は、心からこの国の第五王子
その人自身の人柄に惹かれた。
ミーナ・レジェン・カセンドラー
その人が私、ゼルンの主人だ。

名付けも、私の主人が考えてくれたらしい。

また、暗闇だ。
私はゼルン。
意識がハッキリしてきた。
俺は、怪しい暗闇に囚われたんだ。
打ち勝たなければならない。
確かこんな時、楽しい事を考えながら
闇を切り裂くんだよな。

楽しいこと。
ミーナちゃん、お坊ちゃん、おぼっちゃま
読み書きも、教わり最初にかいたのが、
ミーナ。
かけた事が嬉しくて、自分がもらった物に
"ミーナ"って書きまくったなぁ。

服や下着、靴下にも名前を書いた。
洗濯から戻ってきた場所は、
私のところじゃなく、"ミーナ"
本人のところだった。
あの時の、あの顔。
プフッ。

闇が薄くなった気がした。
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