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祈り?

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俺は朝昼晩の三神に毎日毎日、祈っていた。

「朝の神様、昼の神様、晩の神様、
その他色々いるかもしれない神様。
どうか俺のお願いを聞いてくれ。
あの少女を助けてくれ。
まだ目覚めないんだ。
早く目覚めさせてくれ。頼む。
お供えのお酒や旬の食べ物もある。
早く願いを聞いてくれ。」
俺は必死に祈っていた。

「……。」
背後に気配を感じた。
「ゼルン、なんだ?急用か?」

ゼルンは俺の執事。
あの説教が長く、俺をからかう為だけに
お坊ちゃんや、お坊ちゃま呼びする
あの執事だ。
俺より5歳年上なのに、俺より若く見える。
けっして俺が老けてるわけではない、はずだ。
俺は祖父に似ているだけで、顔のつくりが……。

まぁ、兄たちや妹みたいに
余計な女や、子どもたちに囲まれ
きゃーきゃー言われながら
まとわりつかれないだけ
良しとしよう。あれは、うらやまし…
うっ、うるさいだけだ。
仕事の邪魔だ。

俺は32歳、ゼルンは37歳だ。

「いえ、朝の挨拶をしようと思いましたが、
お坊ちゃまは、神様を脅してる最中でしたか。」
「お、脅し?脅してないぞ。」
「では、脅迫ですね。」
ゼンは、すました顔で執事スマイルを
貼り付けていた。

「俺は、健気に神に祈りを捧げていただけだ。」
「はあ~。ハイハイ。冗談は、怖くてイカツイ
顔だけにして下さい。」

「最近、お前生意気だぞ。」
「すみません。以前から生意気で可愛げない
性格なんです。更にわたくしも、
お坊ちゃまのように、面の皮が厚く、
根がよく正直者なんですよ。」
「……。」
こいつの口には負ける。
勝つ気もない。お説教が始まると
早く終われって神頼みする。

ちゃんと聞いとかないと、たまに
「聞いてるんですか?お坊ちゃま。
わたくしは……。」
という感じで確認され、聞き流してるのが
バレると更にお説教という名の話が
かなり長くなる。めんどい奴だ。


ゼルンは、俺が入隊したばかりの頃、
違法売買により、とある貴族に捕らわれていた。
人族と何かの獣人族の混血児の孤児、
それがゼルンだった。

その頃、成人してるとは思えないくらいか弱く、
下手すれば女にも見える容貌だった。
町で買い物中に攫われ、更にとある貴族に
買われたらしい。
いかがわしい行為をされようとすると
頭の回転がいいのと、多少の魔力や
体術が使えるらしく、難をかわしていたらしい。
ちなみに、そのとある貴族は、
ゼルンを助けると同時に壊滅してしまった。

今では、すっかり可愛げなく育ち
遠慮なくネチネチネチネチ説教をたれてくる。
甘やかして育てたのが悪かったのか?

「もう、17年も経つんですね。」
「んっ。あっあぁ、お前が可愛かった時から
可愛げがなくなった年数、ウグッ。」
ドスッ。
うっ。
ゼルンの肘鉄が綺麗に決まった。

可愛い、女の子みたい、などの言葉は
ゼルンにとって禁句である。
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