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4、おっチャンとハロルドさん

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赤い髪の男性は心配してくれていた。
聞こえてくるのは、先ほどとは違い
絶妙なイントネーションの日本語だった。
相手から聞こえるのは標準語で、
自分自身が話すのは関西弁。
相手にはどう伝わっているのか
ナオキは不安になっていた。
そのまま伝わってるんだろうか?
「お、俺の言葉は通じてるん…ますか?」
ふっ、と優しく笑う赤い髪の男。
「すごいね、君はこの国の人間では
なさそうなのに、ピンキー語を話してるよ。
ちゃんと通じてるから安心してね。」
「ピンキー語?」

「自己紹介が遅れて申し訳ない。俺は
ピンキー王国、赤竜騎士団所属の
ハロルド・ライアンだ。
よろしければ、君も名前を教えて頂ければ
嬉しく思うんだが、教えてはくれないか?」
「あっ、こちらこそすんません。俺は…
わ、私はナオキと申します。」
「ありがとう、ナオキ。私の事は
ハロルドと気軽に呼んでくれ。」
「あっ、あぁ、わかりました。ハロルドさん。」
「君なら呼び捨てでもいいし、そうだな……。」
ハロルドは、あごに手を当てニヤリと笑った。
「ハロルド兄ちゃんでもいいぞ。」
ナオキは心の中で毒づいた。
ニイちゃんあんたは"アホか?"
"大丈夫かハロルドさんの頭?"
50代の男捕まえて、20代そこそこの
ハロルドさんに"にいちゃん"って
言いにくいわぁぁ。

「ナオキ、君はどこから来たんだ?
まだ、若そうだが年はいくつだ?」
「えっ?」
俺は50代だが、これは正直に答えて
いいんだろうか?
違う世界から来たこと伝えたら、
変な人や残念な人に思われないだろうか?
「すまない。嫌な質問をしてしまった。」
本当にすまなさそうな表情をしている
ハロルドに、どう答えようかさらに
悩んでしまった。

「ち、ちゃう、ちがうねん。こ、ここの国は
初めて来たから、成人年齢や平均寿命も
わからんし、お金も……。」
「お金の事は心配しなくていい。
ナオキ、君はまだ未成年だろう。俺が
成人年齢を言うと無理して、その年齢に
合わしてきそうだ。」

ナオキは、驚いた。未成年?!
ちゃうちゃう、ちゃうねん……。
寒すぎるオヤジギャグは置いといて
えーと、50半ばのおっチャンに
未成年じゃないって、何言うたんのや、
このお方は。
いや、まてよ。異世界にいるみたいやし、
若返ったのか?
そういえば、俺の配信に来てくれた子の中に
BL小説好きな子、おったなぁ。
異世界で活躍するとかなんとか、俺は
そんな感じの世界におんのか?

「ナオキ、やはり具合が悪いのか?」
ハロルドの声がした。
「い、いや。すまん。俺は、ハロルドさんから
見て、どう思われるのか気になって
しまっただ、け、で俺は……。」
ガシッ。
いきなり、両手を掴まれ急接近してくる
ハロルドにナオキは、驚いた。

「魔力を帯びた艶やかな漆黒の髪、
手触りは抜群。」
は、はいぃ?
ハロルドはナオキの頭をクシャクシャと
するように、撫で回してきた。

「瞳の色まで同じ輝くような黒で、
どんな宝石より美しい。しかも君を
ひと目見たときから、お、俺は
君に吸い込まれるような、吸引力。」
「……。」
吸引力?なんじゃそら。
マジで、このニイちゃん大丈夫か?

ガバッ。ぎゅー。
「小さな身体に秘められた溢れ出てる
魅力と魔力、君が魔族や堕天使でも
君に…ナオキに惹かれる自分が止められない。」
そこは、止めろよ。
男に好かれても、嫌ではないけど
なんか残念なイケメンさんやなぁ。

「ハロルドお兄さんが、ナオキのそばに
ずっといてあげるから、安心しろ。」
あー、ありがとう。(棒読み。)
なんだか遠い目をしてしまいそうだ。

「団長~、どこですか?」
「団長、あっ、いた。」
「団長発見。」

団長?この人、やはり偉いさんかあ。
俺、これからどうなるんやぁ?
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