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第9話 ~遭遇
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ーティルー
上空から俺に向けて落下してくるバッタ、自慢のジャンプ攻撃なんだろうが既に見切っている。バッタの着地点ギリギリで避け、その横っ面に蹴りを一発。ひっくり返るバッタを一瞥し、背後の気配に集中する。俺の隙を突いたつもりのようだが甘い、ジャンプ頭突きを繰り出してきたウサギには裏拳をプレゼント。その一撃で地面に落ちたウサギの耳を掴み上げ、バッタに思いっきり投げつける。
それにより絡み合ってもがく2匹を無視して、他にもいる魔物…もう1匹のウサギに殴りかかりラッシュ。殴る蹴るの暴行にてウサギを殺し、未だもがいている2匹に視線を向ける。…む、既に復帰していたか。だがまぁ…問題ない、傷付いた魔物など恐れるに足らず。俺は数本の投げナイフを構え、2匹の動きを注視する。先に動いたのはバッタ、懲りもせずにジャンプ攻撃ね。
「…残念ながら、…ただの的だ!」
手元の投げナイフを上空のバッタに全て投擲、4本中1本外したが残りの3本は命中。バッタはそれにより宙で息絶えたようで、受け身もなく勢いのまま地面に叩きつけられた。その直後、ウサギの頭突き攻撃が迫ってくるも勢いがない。脅威を感じなかったが故、避けずに腹で受けきる。ウサギの革服は角の一撃を防ぎきる、なかなかに丈夫じゃないか! 自身の装備に満足しつつ、ウサギの身体を抑え付けて膝蹴りを繰り出す。…もういっちょ膝蹴り、2発目は抑え付けなしだからウサギは宙に浮き上がる。俺は軽く跳び、ウサギを踵落としで追撃する。それがトドメとなり、地面に落ちたウサギは動かなくなった。
現れた魔物達を全て倒し、俺は自作装備の具合に改めて満足する。久々の戦闘を、とのことで草原に来たわけだが…、
「ふむ、…いい感じだな!」
先の戦闘に自作装備の出来の良さ、自然と笑みを浮かべてしまうのは仕方がない。それに気付けば周囲が薄暗くなってきた、夕方から夜に移り変わる時間帯なわけね。暗闇で視界が利かなくなる前に、シアルの街に戻りますか。夜での活動は危険だからな、準備もしていないし。…金が貯まり次第、夜での活動の為に何かしらを買おうかね? ぼんやりそう考えていると、
「なぁアンタ、…剥ぎ取りしねぇの?」
なんて声が聞こえた、……そういえば剥ぎ取りし忘れていたわ。
謎の声からの指摘、それを聞いた俺は周囲を見渡す。俺を中心に魔物の死体が多数転がっている、剥ぎ取りもせずに戦っていたが故の状況。う~ん…、中心にいる俺ってば悪役? なんて考えてしまう。戦闘に集中していて忘れていたよ、剥ぎ取りをしなければ勿体ないよな? あのままだったらこの状況をスルーして帰っていたところだ、指摘してくれた者に感謝を。そう思い、声の主へ振り向き礼を言う。
「教えてくれて助かった、あのままだったら忘れていたよ。危うく素材を無駄にするところだった。」
相手を見てみれば、赤髪ツンツンのイケメン。そのイケメンは周囲を見ながら…、
「いやいや、忘れるってどうよ? この俺でさえ忘れることはない…って顔恐っ!?」
そう言いながら近付いてきて、俺の顔を見た瞬間に一歩後ずさる。まぁ俺は悪党顔だし、周囲は薄暗いからな。…その反応は仕方なし、うん…仕方がないのだ。
そんな感じで出会った俺達、俺的に初めて出会った同類? のPC冒険者。とりあえず互いに自己紹介をする、…でこのツンツン君の名はライアンでソロの前線組らしい。…前線組が何故こんな所に、俺は一瞬そう思った。そう思ったが考えてみれば、この先にノーシュ山があるわけで。そこから街へ戻る途中と考えれば、ここにいるのは可笑しくはないか。そんなことを考えている俺に、
「え~と…、ティルでいいんだっけ? …それにしてもスゲェな! この数…お前が一人で殺ったんだろ?」
周囲の惨劇を見て、ライアンは驚きつつもそう声を掛けてくる。前線組のソロである彼に言われても、嫌味にしか聞こえないのだが。前線組ということは強いってことだろ? しかもソロときた。しかもここは草原故に、出てくる魔物は最弱。彼も当然これぐらいは出来ると見る、そう考えると別に俺が凄いわけではなく…、
「別に凄くはないだろ、…ここの魔物は最弱なのだから。」
そう、俺が凄いわけではなく魔物が弱いだけ。別に謙遜はしていない、普通にそう思っている。
「そりゃそうだけどさ、それでもスゲェよ。…俺もそうだけど、前線組にもこれ程の無双キャラなんていないぜ? ティルみたいな戦闘スタイルもいねぇし、うん…スゲェ。」
俺みたいな奴がいない? …嘘だろう? …だってこんなに弱いんだぜ? 動きをきちんと見て、装備もきちんと整えれば難しいことなんかないと思うけど。
…まぁおだてられて悪い気はしない、…が時間が押しているからな。早くしないと更に暗くなって、剥ぎ取りがままならなくなる。
「ふーん、…そんなに凄いことだとは思わんけど。まぁそれはいいとして、早く剥ぎ取らないと暗くなる。なぁライアン、暇なら剥ぎ取りを手伝ってくれないか? お前には不必要かもしれんが、剥ぎ取り素材をやるからさ。」
俺がそう提案すると、ライアンはニッと笑みを浮かべて、
「いいぜ、喜んで手伝わせて貰うよ。少しでも金になる物は頂くがモットーだし、何かお前といれば面白いことが起きそうな予感がするからな!」
と言って、快く引き受けてくれた。…ライアン、なかなかに好人物のようだな。
まずは二人がかりで、周囲に転がっている死体を集めようと思っていたのだが…、
ガサガサ…ッ!
草を揺らす音が聞こえた、そちらに目を向けると、
『…グルルゥゥゥゥゥッ!!』
眼をギラつかせて涎を垂らす狼? が現れた、…なかなかに強そうだ。
「…新手か!?」
「キターーーーーーーーーッ!!」
直ぐ様体勢を整える俺と飛び跳ねて喜ぶライアン、対照的な二人がそこにいた。
まず、戦闘へ入る前に〈鑑定〉だな。
《ユニーク》【草原狼】 LV10
北の草原を縄張りとする大型の狼、獲物の横取りを狙う狡猾さを持つ。強力な牙と爪を持ち、素早い身のこなしから繰り出される攻撃は脅威。余程の事がない限り、獲物を譲ることをオススメする。
…強っ! 最弱の地でLV10って何だよ、かなりの強敵じゃないか。《ユニーク》ってあるけど、これはあれだな? 所謂フィールドボスの一種ってことだよな、きっと…。そうなると、かなりの強敵であると考えられる。見た目も強そうだしな、これは覚悟を決めて…、
「遂に…、遂に来たぜこの時が! 会いたかったぜユニーク野郎! 俺はお前という存在を待っていたぁっ!!」
覚悟を決めて戦おうと構える俺よりも早く、ライアンは雄叫びを上げてスラリと2本の剣を抜く。その2本の剣を狼に向け、更に吠える。
「この俺ライアンの双剣がお前を討つ! そしてこの俺が…! F.E.O最初のユニーク討伐者に、俺の名を永遠に刻み付けてやる! 覚悟しろ、狼野郎!!」
…覚悟を決める以前の問題だ、…ライアンがうるさい。しかも相手は強敵、ここは協力して戦うのが吉と考えるが、
「いっくぜぇぇぇぇぇっ!狼野郎ぉぉぉぉぉっ!!」
ライアンの奴、俺が提案をする前に突撃しやがった。…俺はどうすべきだ?
狼がどう動くか分からんのに突撃していったが、…もしかしてライアンの奴は馬鹿なのか? いや、それでも前線組のソロだからそれを補う程の戦闘力が…、って攻撃が避けられている。流石はLV10のユニーク狼、身のこなしがそこらの雑魚とは違う。…というかライアンの攻撃、無駄に単調で隙の大きいものが多い。そんなんじゃ全然…、ライアンの連続攻撃に追撃も余裕で避けられているな。狼も強いんだろうけど、それ以上にライアンがダメダメであるような…。
避けられていても攻撃を続けるライアン、スタミナがあるようだ。
「やるじゃねぇかよ狼野郎! だが…まだだ! まだ俺はいける筈だぁぁぁぁぁっ!!」
息を乱さずに連撃を繰り出すも当たらない、あれ程の連撃を軽く避け続ける狼が凄い。俺も乱入して援護といきたいところだが、ライアンの攻撃は隙が大きいし範囲も広い。俺が乱入しても邪魔になるだけだし、こちらのことを考えて攻撃…なんてことをライアンが出来るとは思わない。第三者的に見てそう判断が出来る、…やはりライアンはソロなんだと分かる光景だ。
しかし狼の奴は何故に反撃をしないのか、見てる分には反撃する隙が多くあるのだが。
「チクショォォォォォッ! 何で当たらないんだよぉっ! いい加減当たれよぉぉぉぉぉっ!!」
ライアンが連撃の最後に渾身の一撃らしきモノを繰り出すが…、狼の奴はバックステップでそれを避ける。そしてこの大振りな一撃の為に、ライアンは最大の隙を狼に晒し…、
『グルァァァァァッ!!』
それを見逃さず、狼の奴は一気にライアンにへと飛び掛かった。急所の一つである首めがけて飛び掛かる狼に対し、ライアンは何も出来ない。…狼の奴はこれを狙っていたのか!? 急所が晒け出されるこの隙を! 無駄な攻撃をせずに、一撃必殺のこの瞬間を狙って!
そして驚く俺の前でライアンは、
「ヘルプミィィィィィィィィィ…ギャアアアァァァァァァッ!!!」
回避も防御も出来ず、遅すぎる助けを叫んでいる途中で首筋を噛まれて消えてしまった。消えるまでもがいていたわけだが、…かなり痛そうだった。それよりも急所を一撃かよ、この狼…《ユニーク》だけあるな。…とりあえずライアンよ、…安らかに眠れ。単騎で突撃せずに、俺と協力をして戦えば違った結果になったかもしれんのに。少し馬鹿だったな、いや…かなりの馬鹿か? そんなことを考えている俺に対し、
『グルルゥゥゥゥゥ…ッ!!』
狼の奴は俺を標的としたらしい、…こいつはヤバイか? …まぁ俺の場合、そう簡単には殺られはしないぜ? あまり参考にはならなかったけど、狼の動きはこの目で見たしな!
俺は狼が動く前に、素早く投げナイフを取り出し連続で投擲する。しかし流石は狼、ライアン戦で見せた動きにて余裕で避けていく。ストックは十分にある、投げ惜しみはせずに投げまくるも当たりはしない。隙のないように立ち回って投げているつもりでも、少しの隙は必ず出るわけで。投げナイフをアイテムボックスから取り出す際の僅かな隙、そこを狙って狼は一息に襲い掛かってきた。
『ガルゥァァァァァッ!!』
狼の動きに注視しながら立ち回っていたが故、俺は横に転がりそれを避けることに成功。追撃されぬように直ぐ様起き上がり、取り出した投げナイフを構え直した。
狼から視線を外すことが出来ない、外せば好機と見て直ぐに飛び掛かってくるだろう。
「…チッ! …下手な行動は狼に好機を与えてしまう、…どうしたものか。」
投擲して気付いたが投げナイフは隙が大きく、何よりも攻撃の一つも掠りはしなかった。ストックが無駄にあるとはいえ、当たらぬ攻撃を続けてはいたずらに体力を消費するだけ。時間を掛けて完全に夜となれば、俺の勝ち目は確実になくなる。…そう考えれば我が道は一つ、…やるしかないだろう接近戦。隙のない攻撃手段はコレしかない、ライアンの結末を見た後だから不安だがな。
そうと決まれば…、
「…シャラァッ!」
俺は一気に狼の懐へ飛び込み、様子見程度に拳を突き出す。たぶん避けられ……、
『ギャンッ!!』
ないだと! 俺のストレートは狼の顔に吸い込まれ、奴はバウンドをして吹っ飛んだ。俺のスピードもやるもんだね、狼に匹敵するみたいだ。…それとも狼の奴が油断していただけ? 何にせよ、当たるんなら力を込めて殴り付ければよかった。だって起き上がった狼の眼、怒りに染まっているんだもの。本気になったっぽい、…その前に大ダメージを与えたかったぜ!因みに俺は最初から本気である、まぁとにかく…仕切り直しだな!
元から本気の俺と本気になった狼、互いに正面からぶつかり合った。俺は周囲にある物を利用しながら戦い、狼は野生の本能で戦う。俺は草葉や土を撒き上げながら拳に蹴りと喧嘩スタイルで戦う、それに多少惑わされつつも狼は的確に襲い掛かってくる。落ちている小石なども蹴り上げながら果敢に攻めるも、それを掻い潜って鋭い爪を繰り出してくる。狼はまだまだ余裕があり、対して俺は少々厳しい状況。されど、…諦めるわけにはいかない。
小細工をしながら戦ってはいるが、決め手に欠ける。それどころか、徐々に追い詰められている。的確な攻撃の狼、俺はいつの間にか防戦で手一杯。要所要所でポーションを飲んではいるが、このままでは…。狼をどうにかして惑わさなければ、俺は確実に殺られてしまう。…どうすれば! 狼から目を離さずに考える俺は、自身の足下にて転がっている死体に気付く。
…………狼ってことは嗅覚に優れている、どんなに小細工を施しても的確な攻撃の狼。…奴が臭いで俺の動きを察知していると考えれば! …ゲームとはいえやりたくはないが、負けたくはないからな。やるしかねぇだろ、勝つ為にはよ! 俺は隙を見て足下の死体を掴み上げ、投げナイフで切り裂きそれを自身に擦り付ける。当然血塗れになるがそれでいい! …俺の臭いは血の臭いで消えたぜ? …狼さんよぉっ! 第2ラウンドといこうや!
俺自身の臭いは血で消えた、そして血の臭いはこの場に漂っている。無駄なリアル感だとは思う、しかし俺はそれで燃える。気が昂るというか、闘争心に火が付くというか。ああ…、俺は戦っているんだと実感出来る。…狼の攻撃は先程までとは違い、外れることが多くなってきた。やはりコイツは、臭いで俺という存在を特定していたのだろう。自身を血で染めた甲斐があったというもの、…気持ち悪いけど。
嗅覚を惑わしても、奴には眼と野生の本能がある。その眼で、その本能で俺を捉えて攻め立ててくる。しかし俺も負けてはいない、嗅覚を惑わしたせいか…狼にも隙が出てくる。それを見逃さずに殴り付けて、蹴り上げてダメージを与えていく。互いに止まらぬ攻撃攻撃攻撃…、俺の意地と野生の本能がぶつかり合う。
一歩も譲らない戦いが続いたが、…次第に俺の方が押されてきた。俺の体力はまだある、…が精神力の方が削り取られていると自覚。だがそれでも…、俺はまだ……!
ガクンッ!
…何!? 体力はまだある筈なのに、思いの外…思いの外、ダメージを受けすぎてガタがきているというのか。攻撃の為に一歩踏み出そうとした瞬間、崩れるように膝をついてしまった。
「クソ…ッ!このままでは…!」
この瞬間を逃す程、奴は決して甘くはない。案の定、狼は殺るつもりで飛び掛かってくる。
『グルァァァァァッ!!』
狙いはやはり首筋、一撃必殺を狙ってきたか! 脳裏にはライアンの殺られた姿が…。それを思い浮かべた俺は、咄嗟に左腕で首筋をガードした。
その直後にガブリ…ッ! 狼の強力な牙が俺の左腕に食らい付く。
「……!?」
凄まじい衝撃と共に、弁慶の泣き所を強打したかのような痛みが!? …これは痛い! 痛いがこれで怯むわけにはいかない! …俺は最後まで戦いきってやる、…ここまで戦い抜いたんだからな! 俺の左腕を食い千切らんとする狼を、自分の体重をかけて左腕ごと地面に叩き付けた。
『…ガァァァァァッ!?』
叩き付けた瞬間、狼の噛み付く力が弛んだ。俺はその隙を見逃さず、狼の口から左腕を引き抜いた。
そして逃すものかと、地面を割る勢いで右の拳が狼を突く。
『ギャウンッ!!?』
そしてその一撃は、運良くクリティカルになったようだ。狼は涎を撒き散らしながら、地面の上でのたうつ。咄嗟の一撃、…渾身の一撃が随分と効いているようだな。まぁクリティカルだし、形勢逆転といったところか。互いにボロボロであり、たぶん俺の方がヤバイ。だが俺には…、素早くミドルポーションを取り出し飲む。俺には回復薬というアドバンテージがある、…狼にはない。ポーションを飲みすぎたせいか、効き目は悪くちょいと気持ち悪い。薬酔いというヤツだろうか? …少しふらつくが構わない。勝つ為だ、…この程度は我慢せねば。
俺はふらつきながらも、のたうつ狼を抑え込んで馬乗りとなる。そして…、
「危なかったが…、俺の勝ちだな…!」
そう呟いて全力で拳を振るい、《ユニーク》である狼を倒した。…気が付けばもう夜となり、周囲は真っ暗。集中しすぎて気付かなかったわけだが、よくもまぁ…狼の姿を捉えられたものだ。色々と思うことがある、…が早くこの場から離れなければ魔物が涌いてくるかもしれん。せっかく勝ったのに、雑魚に殺られるのは勘弁。さっさと素材を回収し、シアルの街にへと戻らねば。そう思い行動しようとした時、
テレッテッテッテー♪
という軽快な音と共に、
『いつもFree Emblem Onlineをお楽しみ下さり、真にありがとうございます。
ただいま、北の草原の《ユニークモンスター》である【草原狼】が討伐されました。
それに伴い、北の草原の《ユニークモンスター》の出現は無くなり、代わりに《レアモンスター》の出現が解放されました。
詳しくは公式ホームページの更新をお待ち下さい。』
という知らせが入った。…《レアモンスター》ねぇ、気が向いたら調べてみますか。運営から知らせが届いた後、俺は手早く狼と転がる死体から素材を剥ぎ取り、フラフラとしながら街へ戻った。
余談ではあるが、運営からの知らせに気付かなかった男がいる。…先程ティルと出会い、草原狼に殺られて死に戻ったライアンである。そのライアンだが…、
「ァァァァァァァァァッ!!?」
ティルと出会い草原狼に遭遇した場所にて、ラージドッグとバットに集られていた。デスペナのせいでもあるが、…それにより再び死に戻ったのであった。
──────────────────────
ステータス
名前:ティル
種族:人間
性別:男
LV8(+3)
HP:120/130(+20)
MP:50/60(+10)
STR:38(+20)/57〔+19〕
DEF:24(+10)/52〔+28〕
INT:18(+7)
AGL:25(+10)/35〔+10〕
DEX:60(+35)/65〔+5〕
MED:29(+15)
LUK:41(+20)
【SP】35(+5)
【スキル】
〈投擲〉LV13(+8)〈喧嘩殺法〉LV14(+9)〈鑑定〉LV18(+15)〈採取〉LV3〈鍛冶〉LV25(+24)
【控えスキル】
〈調合〉LV19(+18)〈話術〉LV8(+7)〈威圧〉LV6(+5)〈集中〉LV14 NEW! 〈木工〉LV15 NEW!〈皮革〉LV13 NEW!〈裁縫〉LV16 NEW!〈装飾〉LV18 NEW!〈細工〉LV12 NEW!〈職人の手先〉LV23 NEW!〈不屈〉LV14 NEW!〈単身〉LV10 NEW!〈夜目〉LV6 NEW!
【固有スキル】
〈俺流〉LV15(+9)
【称号】
繋がる絆
職人達の弟子 NEW!
一人働き NEW!
ユニークを狩りし者 NEW!
【装備】
鉄の投げナイフ+2×823〔STR+6〕
ラビットレザーセット+2(特殊)〔STR+13・DEF+28・AGL+10〕
アイアンカフス+2〔DEX+5〕
【アイテムボックス】
専用自作職人セット×1・ポーション+4×5・ミドルポーション-2×2・etc
【所持金】
1,890G
上空から俺に向けて落下してくるバッタ、自慢のジャンプ攻撃なんだろうが既に見切っている。バッタの着地点ギリギリで避け、その横っ面に蹴りを一発。ひっくり返るバッタを一瞥し、背後の気配に集中する。俺の隙を突いたつもりのようだが甘い、ジャンプ頭突きを繰り出してきたウサギには裏拳をプレゼント。その一撃で地面に落ちたウサギの耳を掴み上げ、バッタに思いっきり投げつける。
それにより絡み合ってもがく2匹を無視して、他にもいる魔物…もう1匹のウサギに殴りかかりラッシュ。殴る蹴るの暴行にてウサギを殺し、未だもがいている2匹に視線を向ける。…む、既に復帰していたか。だがまぁ…問題ない、傷付いた魔物など恐れるに足らず。俺は数本の投げナイフを構え、2匹の動きを注視する。先に動いたのはバッタ、懲りもせずにジャンプ攻撃ね。
「…残念ながら、…ただの的だ!」
手元の投げナイフを上空のバッタに全て投擲、4本中1本外したが残りの3本は命中。バッタはそれにより宙で息絶えたようで、受け身もなく勢いのまま地面に叩きつけられた。その直後、ウサギの頭突き攻撃が迫ってくるも勢いがない。脅威を感じなかったが故、避けずに腹で受けきる。ウサギの革服は角の一撃を防ぎきる、なかなかに丈夫じゃないか! 自身の装備に満足しつつ、ウサギの身体を抑え付けて膝蹴りを繰り出す。…もういっちょ膝蹴り、2発目は抑え付けなしだからウサギは宙に浮き上がる。俺は軽く跳び、ウサギを踵落としで追撃する。それがトドメとなり、地面に落ちたウサギは動かなくなった。
現れた魔物達を全て倒し、俺は自作装備の具合に改めて満足する。久々の戦闘を、とのことで草原に来たわけだが…、
「ふむ、…いい感じだな!」
先の戦闘に自作装備の出来の良さ、自然と笑みを浮かべてしまうのは仕方がない。それに気付けば周囲が薄暗くなってきた、夕方から夜に移り変わる時間帯なわけね。暗闇で視界が利かなくなる前に、シアルの街に戻りますか。夜での活動は危険だからな、準備もしていないし。…金が貯まり次第、夜での活動の為に何かしらを買おうかね? ぼんやりそう考えていると、
「なぁアンタ、…剥ぎ取りしねぇの?」
なんて声が聞こえた、……そういえば剥ぎ取りし忘れていたわ。
謎の声からの指摘、それを聞いた俺は周囲を見渡す。俺を中心に魔物の死体が多数転がっている、剥ぎ取りもせずに戦っていたが故の状況。う~ん…、中心にいる俺ってば悪役? なんて考えてしまう。戦闘に集中していて忘れていたよ、剥ぎ取りをしなければ勿体ないよな? あのままだったらこの状況をスルーして帰っていたところだ、指摘してくれた者に感謝を。そう思い、声の主へ振り向き礼を言う。
「教えてくれて助かった、あのままだったら忘れていたよ。危うく素材を無駄にするところだった。」
相手を見てみれば、赤髪ツンツンのイケメン。そのイケメンは周囲を見ながら…、
「いやいや、忘れるってどうよ? この俺でさえ忘れることはない…って顔恐っ!?」
そう言いながら近付いてきて、俺の顔を見た瞬間に一歩後ずさる。まぁ俺は悪党顔だし、周囲は薄暗いからな。…その反応は仕方なし、うん…仕方がないのだ。
そんな感じで出会った俺達、俺的に初めて出会った同類? のPC冒険者。とりあえず互いに自己紹介をする、…でこのツンツン君の名はライアンでソロの前線組らしい。…前線組が何故こんな所に、俺は一瞬そう思った。そう思ったが考えてみれば、この先にノーシュ山があるわけで。そこから街へ戻る途中と考えれば、ここにいるのは可笑しくはないか。そんなことを考えている俺に、
「え~と…、ティルでいいんだっけ? …それにしてもスゲェな! この数…お前が一人で殺ったんだろ?」
周囲の惨劇を見て、ライアンは驚きつつもそう声を掛けてくる。前線組のソロである彼に言われても、嫌味にしか聞こえないのだが。前線組ということは強いってことだろ? しかもソロときた。しかもここは草原故に、出てくる魔物は最弱。彼も当然これぐらいは出来ると見る、そう考えると別に俺が凄いわけではなく…、
「別に凄くはないだろ、…ここの魔物は最弱なのだから。」
そう、俺が凄いわけではなく魔物が弱いだけ。別に謙遜はしていない、普通にそう思っている。
「そりゃそうだけどさ、それでもスゲェよ。…俺もそうだけど、前線組にもこれ程の無双キャラなんていないぜ? ティルみたいな戦闘スタイルもいねぇし、うん…スゲェ。」
俺みたいな奴がいない? …嘘だろう? …だってこんなに弱いんだぜ? 動きをきちんと見て、装備もきちんと整えれば難しいことなんかないと思うけど。
…まぁおだてられて悪い気はしない、…が時間が押しているからな。早くしないと更に暗くなって、剥ぎ取りがままならなくなる。
「ふーん、…そんなに凄いことだとは思わんけど。まぁそれはいいとして、早く剥ぎ取らないと暗くなる。なぁライアン、暇なら剥ぎ取りを手伝ってくれないか? お前には不必要かもしれんが、剥ぎ取り素材をやるからさ。」
俺がそう提案すると、ライアンはニッと笑みを浮かべて、
「いいぜ、喜んで手伝わせて貰うよ。少しでも金になる物は頂くがモットーだし、何かお前といれば面白いことが起きそうな予感がするからな!」
と言って、快く引き受けてくれた。…ライアン、なかなかに好人物のようだな。
まずは二人がかりで、周囲に転がっている死体を集めようと思っていたのだが…、
ガサガサ…ッ!
草を揺らす音が聞こえた、そちらに目を向けると、
『…グルルゥゥゥゥゥッ!!』
眼をギラつかせて涎を垂らす狼? が現れた、…なかなかに強そうだ。
「…新手か!?」
「キターーーーーーーーーッ!!」
直ぐ様体勢を整える俺と飛び跳ねて喜ぶライアン、対照的な二人がそこにいた。
まず、戦闘へ入る前に〈鑑定〉だな。
《ユニーク》【草原狼】 LV10
北の草原を縄張りとする大型の狼、獲物の横取りを狙う狡猾さを持つ。強力な牙と爪を持ち、素早い身のこなしから繰り出される攻撃は脅威。余程の事がない限り、獲物を譲ることをオススメする。
…強っ! 最弱の地でLV10って何だよ、かなりの強敵じゃないか。《ユニーク》ってあるけど、これはあれだな? 所謂フィールドボスの一種ってことだよな、きっと…。そうなると、かなりの強敵であると考えられる。見た目も強そうだしな、これは覚悟を決めて…、
「遂に…、遂に来たぜこの時が! 会いたかったぜユニーク野郎! 俺はお前という存在を待っていたぁっ!!」
覚悟を決めて戦おうと構える俺よりも早く、ライアンは雄叫びを上げてスラリと2本の剣を抜く。その2本の剣を狼に向け、更に吠える。
「この俺ライアンの双剣がお前を討つ! そしてこの俺が…! F.E.O最初のユニーク討伐者に、俺の名を永遠に刻み付けてやる! 覚悟しろ、狼野郎!!」
…覚悟を決める以前の問題だ、…ライアンがうるさい。しかも相手は強敵、ここは協力して戦うのが吉と考えるが、
「いっくぜぇぇぇぇぇっ!狼野郎ぉぉぉぉぉっ!!」
ライアンの奴、俺が提案をする前に突撃しやがった。…俺はどうすべきだ?
狼がどう動くか分からんのに突撃していったが、…もしかしてライアンの奴は馬鹿なのか? いや、それでも前線組のソロだからそれを補う程の戦闘力が…、って攻撃が避けられている。流石はLV10のユニーク狼、身のこなしがそこらの雑魚とは違う。…というかライアンの攻撃、無駄に単調で隙の大きいものが多い。そんなんじゃ全然…、ライアンの連続攻撃に追撃も余裕で避けられているな。狼も強いんだろうけど、それ以上にライアンがダメダメであるような…。
避けられていても攻撃を続けるライアン、スタミナがあるようだ。
「やるじゃねぇかよ狼野郎! だが…まだだ! まだ俺はいける筈だぁぁぁぁぁっ!!」
息を乱さずに連撃を繰り出すも当たらない、あれ程の連撃を軽く避け続ける狼が凄い。俺も乱入して援護といきたいところだが、ライアンの攻撃は隙が大きいし範囲も広い。俺が乱入しても邪魔になるだけだし、こちらのことを考えて攻撃…なんてことをライアンが出来るとは思わない。第三者的に見てそう判断が出来る、…やはりライアンはソロなんだと分かる光景だ。
しかし狼の奴は何故に反撃をしないのか、見てる分には反撃する隙が多くあるのだが。
「チクショォォォォォッ! 何で当たらないんだよぉっ! いい加減当たれよぉぉぉぉぉっ!!」
ライアンが連撃の最後に渾身の一撃らしきモノを繰り出すが…、狼の奴はバックステップでそれを避ける。そしてこの大振りな一撃の為に、ライアンは最大の隙を狼に晒し…、
『グルァァァァァッ!!』
それを見逃さず、狼の奴は一気にライアンにへと飛び掛かった。急所の一つである首めがけて飛び掛かる狼に対し、ライアンは何も出来ない。…狼の奴はこれを狙っていたのか!? 急所が晒け出されるこの隙を! 無駄な攻撃をせずに、一撃必殺のこの瞬間を狙って!
そして驚く俺の前でライアンは、
「ヘルプミィィィィィィィィィ…ギャアアアァァァァァァッ!!!」
回避も防御も出来ず、遅すぎる助けを叫んでいる途中で首筋を噛まれて消えてしまった。消えるまでもがいていたわけだが、…かなり痛そうだった。それよりも急所を一撃かよ、この狼…《ユニーク》だけあるな。…とりあえずライアンよ、…安らかに眠れ。単騎で突撃せずに、俺と協力をして戦えば違った結果になったかもしれんのに。少し馬鹿だったな、いや…かなりの馬鹿か? そんなことを考えている俺に対し、
『グルルゥゥゥゥゥ…ッ!!』
狼の奴は俺を標的としたらしい、…こいつはヤバイか? …まぁ俺の場合、そう簡単には殺られはしないぜ? あまり参考にはならなかったけど、狼の動きはこの目で見たしな!
俺は狼が動く前に、素早く投げナイフを取り出し連続で投擲する。しかし流石は狼、ライアン戦で見せた動きにて余裕で避けていく。ストックは十分にある、投げ惜しみはせずに投げまくるも当たりはしない。隙のないように立ち回って投げているつもりでも、少しの隙は必ず出るわけで。投げナイフをアイテムボックスから取り出す際の僅かな隙、そこを狙って狼は一息に襲い掛かってきた。
『ガルゥァァァァァッ!!』
狼の動きに注視しながら立ち回っていたが故、俺は横に転がりそれを避けることに成功。追撃されぬように直ぐ様起き上がり、取り出した投げナイフを構え直した。
狼から視線を外すことが出来ない、外せば好機と見て直ぐに飛び掛かってくるだろう。
「…チッ! …下手な行動は狼に好機を与えてしまう、…どうしたものか。」
投擲して気付いたが投げナイフは隙が大きく、何よりも攻撃の一つも掠りはしなかった。ストックが無駄にあるとはいえ、当たらぬ攻撃を続けてはいたずらに体力を消費するだけ。時間を掛けて完全に夜となれば、俺の勝ち目は確実になくなる。…そう考えれば我が道は一つ、…やるしかないだろう接近戦。隙のない攻撃手段はコレしかない、ライアンの結末を見た後だから不安だがな。
そうと決まれば…、
「…シャラァッ!」
俺は一気に狼の懐へ飛び込み、様子見程度に拳を突き出す。たぶん避けられ……、
『ギャンッ!!』
ないだと! 俺のストレートは狼の顔に吸い込まれ、奴はバウンドをして吹っ飛んだ。俺のスピードもやるもんだね、狼に匹敵するみたいだ。…それとも狼の奴が油断していただけ? 何にせよ、当たるんなら力を込めて殴り付ければよかった。だって起き上がった狼の眼、怒りに染まっているんだもの。本気になったっぽい、…その前に大ダメージを与えたかったぜ!因みに俺は最初から本気である、まぁとにかく…仕切り直しだな!
元から本気の俺と本気になった狼、互いに正面からぶつかり合った。俺は周囲にある物を利用しながら戦い、狼は野生の本能で戦う。俺は草葉や土を撒き上げながら拳に蹴りと喧嘩スタイルで戦う、それに多少惑わされつつも狼は的確に襲い掛かってくる。落ちている小石なども蹴り上げながら果敢に攻めるも、それを掻い潜って鋭い爪を繰り出してくる。狼はまだまだ余裕があり、対して俺は少々厳しい状況。されど、…諦めるわけにはいかない。
小細工をしながら戦ってはいるが、決め手に欠ける。それどころか、徐々に追い詰められている。的確な攻撃の狼、俺はいつの間にか防戦で手一杯。要所要所でポーションを飲んではいるが、このままでは…。狼をどうにかして惑わさなければ、俺は確実に殺られてしまう。…どうすれば! 狼から目を離さずに考える俺は、自身の足下にて転がっている死体に気付く。
…………狼ってことは嗅覚に優れている、どんなに小細工を施しても的確な攻撃の狼。…奴が臭いで俺の動きを察知していると考えれば! …ゲームとはいえやりたくはないが、負けたくはないからな。やるしかねぇだろ、勝つ為にはよ! 俺は隙を見て足下の死体を掴み上げ、投げナイフで切り裂きそれを自身に擦り付ける。当然血塗れになるがそれでいい! …俺の臭いは血の臭いで消えたぜ? …狼さんよぉっ! 第2ラウンドといこうや!
俺自身の臭いは血で消えた、そして血の臭いはこの場に漂っている。無駄なリアル感だとは思う、しかし俺はそれで燃える。気が昂るというか、闘争心に火が付くというか。ああ…、俺は戦っているんだと実感出来る。…狼の攻撃は先程までとは違い、外れることが多くなってきた。やはりコイツは、臭いで俺という存在を特定していたのだろう。自身を血で染めた甲斐があったというもの、…気持ち悪いけど。
嗅覚を惑わしても、奴には眼と野生の本能がある。その眼で、その本能で俺を捉えて攻め立ててくる。しかし俺も負けてはいない、嗅覚を惑わしたせいか…狼にも隙が出てくる。それを見逃さずに殴り付けて、蹴り上げてダメージを与えていく。互いに止まらぬ攻撃攻撃攻撃…、俺の意地と野生の本能がぶつかり合う。
一歩も譲らない戦いが続いたが、…次第に俺の方が押されてきた。俺の体力はまだある、…が精神力の方が削り取られていると自覚。だがそれでも…、俺はまだ……!
ガクンッ!
…何!? 体力はまだある筈なのに、思いの外…思いの外、ダメージを受けすぎてガタがきているというのか。攻撃の為に一歩踏み出そうとした瞬間、崩れるように膝をついてしまった。
「クソ…ッ!このままでは…!」
この瞬間を逃す程、奴は決して甘くはない。案の定、狼は殺るつもりで飛び掛かってくる。
『グルァァァァァッ!!』
狙いはやはり首筋、一撃必殺を狙ってきたか! 脳裏にはライアンの殺られた姿が…。それを思い浮かべた俺は、咄嗟に左腕で首筋をガードした。
その直後にガブリ…ッ! 狼の強力な牙が俺の左腕に食らい付く。
「……!?」
凄まじい衝撃と共に、弁慶の泣き所を強打したかのような痛みが!? …これは痛い! 痛いがこれで怯むわけにはいかない! …俺は最後まで戦いきってやる、…ここまで戦い抜いたんだからな! 俺の左腕を食い千切らんとする狼を、自分の体重をかけて左腕ごと地面に叩き付けた。
『…ガァァァァァッ!?』
叩き付けた瞬間、狼の噛み付く力が弛んだ。俺はその隙を見逃さず、狼の口から左腕を引き抜いた。
そして逃すものかと、地面を割る勢いで右の拳が狼を突く。
『ギャウンッ!!?』
そしてその一撃は、運良くクリティカルになったようだ。狼は涎を撒き散らしながら、地面の上でのたうつ。咄嗟の一撃、…渾身の一撃が随分と効いているようだな。まぁクリティカルだし、形勢逆転といったところか。互いにボロボロであり、たぶん俺の方がヤバイ。だが俺には…、素早くミドルポーションを取り出し飲む。俺には回復薬というアドバンテージがある、…狼にはない。ポーションを飲みすぎたせいか、効き目は悪くちょいと気持ち悪い。薬酔いというヤツだろうか? …少しふらつくが構わない。勝つ為だ、…この程度は我慢せねば。
俺はふらつきながらも、のたうつ狼を抑え込んで馬乗りとなる。そして…、
「危なかったが…、俺の勝ちだな…!」
そう呟いて全力で拳を振るい、《ユニーク》である狼を倒した。…気が付けばもう夜となり、周囲は真っ暗。集中しすぎて気付かなかったわけだが、よくもまぁ…狼の姿を捉えられたものだ。色々と思うことがある、…が早くこの場から離れなければ魔物が涌いてくるかもしれん。せっかく勝ったのに、雑魚に殺られるのは勘弁。さっさと素材を回収し、シアルの街にへと戻らねば。そう思い行動しようとした時、
テレッテッテッテー♪
という軽快な音と共に、
『いつもFree Emblem Onlineをお楽しみ下さり、真にありがとうございます。
ただいま、北の草原の《ユニークモンスター》である【草原狼】が討伐されました。
それに伴い、北の草原の《ユニークモンスター》の出現は無くなり、代わりに《レアモンスター》の出現が解放されました。
詳しくは公式ホームページの更新をお待ち下さい。』
という知らせが入った。…《レアモンスター》ねぇ、気が向いたら調べてみますか。運営から知らせが届いた後、俺は手早く狼と転がる死体から素材を剥ぎ取り、フラフラとしながら街へ戻った。
余談ではあるが、運営からの知らせに気付かなかった男がいる。…先程ティルと出会い、草原狼に殺られて死に戻ったライアンである。そのライアンだが…、
「ァァァァァァァァァッ!!?」
ティルと出会い草原狼に遭遇した場所にて、ラージドッグとバットに集られていた。デスペナのせいでもあるが、…それにより再び死に戻ったのであった。
──────────────────────
ステータス
名前:ティル
種族:人間
性別:男
LV8(+3)
HP:120/130(+20)
MP:50/60(+10)
STR:38(+20)/57〔+19〕
DEF:24(+10)/52〔+28〕
INT:18(+7)
AGL:25(+10)/35〔+10〕
DEX:60(+35)/65〔+5〕
MED:29(+15)
LUK:41(+20)
【SP】35(+5)
【スキル】
〈投擲〉LV13(+8)〈喧嘩殺法〉LV14(+9)〈鑑定〉LV18(+15)〈採取〉LV3〈鍛冶〉LV25(+24)
【控えスキル】
〈調合〉LV19(+18)〈話術〉LV8(+7)〈威圧〉LV6(+5)〈集中〉LV14 NEW! 〈木工〉LV15 NEW!〈皮革〉LV13 NEW!〈裁縫〉LV16 NEW!〈装飾〉LV18 NEW!〈細工〉LV12 NEW!〈職人の手先〉LV23 NEW!〈不屈〉LV14 NEW!〈単身〉LV10 NEW!〈夜目〉LV6 NEW!
【固有スキル】
〈俺流〉LV15(+9)
【称号】
繋がる絆
職人達の弟子 NEW!
一人働き NEW!
ユニークを狩りし者 NEW!
【装備】
鉄の投げナイフ+2×823〔STR+6〕
ラビットレザーセット+2(特殊)〔STR+13・DEF+28・AGL+10〕
アイアンカフス+2〔DEX+5〕
【アイテムボックス】
専用自作職人セット×1・ポーション+4×5・ミドルポーション-2×2・etc
【所持金】
1,890G
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