上 下
17 / 26

第13話 ~様子が変だ。

しおりを挟む
《ステータスオープン》により俺の規格外なスキル数と称号数が判明、それを知り飛び出していった父上を見送り自主的に修行再開。《隠蔽術》を習得して数日後、父上と母上が揃って帰って来た。出迎えたんだけど母上の様子が少し変、…いつもなら直ぐ様抱き着いてくる筈なのだかそれがない。…どうしたんだ?



挨拶もそこそこに、フラフラと家の中へ入っていく母上。それを見送ってから気付く違和感、…母上の周囲って澱んでいたっけか? 闇とは違うナニカを感じた。怪訝な顔でいると父上が、



「…お前も気付いたかミュゼよ。ルセリナの様子が変なのだ、…いつもの調子ではない。…それにあの澱み、…あれは一体何なのだ?」



そんなことを俺に言ってきた。やっぱりというか流石というか、父上も気付いていたようだ。………父上は平常だよな?













母上は自身の部屋に閉じ籠ったまま出てこず、俺も声を掛けようかと思ったんだけどね。…入りづらいんよ、…そんな雰囲気を扉越しに放ってません? 母上。そんな感じで部屋の前を彷徨いていて気付く、…こんな感じのことを何処かで経験したような? と。修行がてら領地内を走り回っていた時、ゴブリンとかを討伐していた時、……そこらをやっていた時にこのような感じ方をした時があった。



…何だっけかなぁ~、…思い出せないけど思い出さなきゃ駄目な気がする。…山奥の薄汚い場所、…廃墟というか廃教会? …そこでこのような空気に触れたような? …そこでどうしたんだっけ?



そんなことを考えていると父上が現れて、



「ミュゼよ話がある、…俺の執務室へ来なさい。」



と言ってきたので、父上の後に続き執務室へ。そこで父上は俺に向き直り、



「正式にレイチェル・アンデバラン嬢とエジュル・ラングード嬢、この二人がミュゼの婚約者と決まった。準備が済み次第…挨拶をしに行くぞ、まずは公爵閣下の下へと行くのが常識ではある。」



そこで言葉を区切り、視線を母上の部屋の方へ。……その反応を見るに、母上がああなったのは公爵家で…ってことかね? そう考えると最初に向かう先は、



「…が、何やらきな臭さを感じるが故にまずは王都の神殿へと向かう。挨拶と共に婚約者であるエジュル嬢との顔合わせ、そして一応…ミュゼのステータスも見て貰う予定だ。」



…になるでしょうな。母上の様子も変だし、その公爵の下へと行った父上もきな臭いと思っているようだし、…その公爵家でどうなっていたのかね? 気になるわ。



とにかく公爵家のレイチェル嬢よりも先に、まずは神殿のエジュル嬢へと会いに行くこととなった。その段取りを父上と話し合い、三日後に王都の神殿へと向かうことになった。あちらさんも同じく迎える段取りがあると思うから、早馬で俺達が向かうってことを知らせておく。アポなしは失礼だもんな、常識ッスよ常識。













婚約者との面会の件はこれで良いとして、…後は母上のことだがどうしたものか。父上も公爵家へ行って数日間滞在したわけだが、母上のように変な様子は一切ない。父上も少しだけ気分が悪かったみたいだが、家…というか領地に入ったら元に戻ったとか。…しかし母上は長いこと公爵家にて世話になっていたらしく、父上とは違い領地に入っても変なまま。一体全体何なのさ、…確実に公爵家が原因だよね?



父上に公爵家の様子を聞いてみれば、別に変わった所は思い浮かばないとか。ただ公爵閣下の顔色が普段よりも白かったっていうのはあった、それ以外は見知っている公爵閣下そのものだったらしい。他の者も同じで、母上もその時はいつも通りであったようだが、



「…そういえば、最後にミュゼの婚約者であるレイチェル嬢が見送りに出てきたな。暫く見ぬ内に恐ろしい程綺麗になっていた、…溢れだす妖しい魅力がそうさせているのだろうか?」



俺の婚約者であるレイチェル嬢は妖しい魅力に溢れた美少女らしい、……めっちゃ怪しく感じるのは気のせいか?



「…今思えば、彼女の妖しい魅力に毒されて気分が悪くなったような気がする。ルセリナのほんわかオーラも飲み込まれていた? ………ということはレイチェル嬢が原因になるのか? きな臭さを感じたのも彼女が現れてから、…というか妖しい魅力ではなく澱んでいたと考えれば?」



少しずつ思い出しては首を捻る父上。…その言葉を聞く限り婚約者が黒に近いよね? まだよく分からんけどその怪しい娘が婚約者なの? ……大丈夫なんか?



婚約者と決まった以上は挨拶をせねば失礼にあたる、…たとえどんな理由があろうとも。そういうわけできな臭かろうが、レイチェル嬢が極めて怪しかろうが面会はせねばならない。父上も多少の影響はあったようで、…混乱が見られるが先に神殿へ向かうと判断したのは流石と言えよう。多少の混乱があろうともきな臭さを忘れずに向かう先を決めるとは、…父上に対しての尊敬がうなぎ登りだぜ!



…因みに母上のことは様子見ってことで、…ただの体調不良って線もあるし。様子次第で三日後の神殿訪問は留守番となろう、…まぁ当然だよね。







────────────────────







次の日、母上はどうなったかな? …と思った俺は部室の前へ。するとどうだろう、部屋の中からあの雰囲気というか気配というか、そういうものが一切感じなくなったのだ。…どういうことだと思ったけど、母上の安否が最優先。



「…母上、部屋にいらっしゃいますか? …お加減の方はよろしいでしょうか?」



ノックをして扉越しに声を掛ければ、中からバタバタとした音が。本能的に危ないと察知し、扉から離れようと試みたけど一歩及ばず。勢いよく開けられた扉から伸ばされた手、それに捕まって…、



「ああミュゼちゃん、私の可愛いミュゼちゃん! …私を見捨てないでくれていたのね? …嬉しいわ!!」



俺は母上に抱き締められて頬擦りをされていた。いつも以上に力が強い! マジでどうしたんだ!?



「は…母上! 私が母上を見捨てるなんてことはあり得ません! ……ですから力を緩めて、…お願い!!」



母上を侮っていた、…後衛職なのに馬鹿力! ……母上に締め殺されるぅ~!!?













その後ネムとダリア、そして父上の登場により解放された俺。解放されたというか何というか、母上は父上達を見て俺の時と同じようなことを言って喜んだ。あの変だった母上がいつも通りの騒がしさに戻り、呆気に取られながらも素直に喜ぶ父上達。騒がしかろうがやはり母上はこうでないと、よかったよかった。



…で、元に戻った母上に話を聞いてみれば、



「あのね? 最初はいつも通りだったのよ? …でもね? 婚約話が進むにつれて何か変だなって。ミハイルが来た時は消えていたんだけど帰った後はね? …何かこう一気に心が変になっていって、…私は今まで悪夢を見ていたのよ! とびっきりの悪夢をね!!」



恐ろしい悪夢を見ていたという。父上的にはいつもの母上と映っていたみたいだが、内面では変になっていたようだ。それはそれでショックを受けている父上、…仲良し夫婦だもんね?



話を聞く限り、公爵家が可笑しいっていうのは確実だな。その原因が婚約者と決まったレイチェル嬢、…黒に近いってことなんだけどね? …危険であるけど会わねばならない、格下の男爵家はツライですな。唯一の救いは先に神殿へ向かうってこと、……どうなるんでしょうね? ホント。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

残滓と呼ばれたウィザード、絶望の底で大覚醒! 僕を虐げてくれたみんなのおかげだよ(ニヤリ)

SHO
ファンタジー
15歳になり、女神からの神託の儀で魔法使い(ウィザード)のジョブを授かった少年ショーンは、幼馴染で剣闘士(ソードファイター)のジョブを授かったデライラと共に、冒険者になるべく街に出た。 しかし、着々と実績を上げていくデライラとは正反対に、ショーンはまともに魔法を発動する事すら出来ない。 相棒のデライラからは愛想を尽かされ、他の冒険者たちからも孤立していくショーンのたった一つの心の拠り所は、森で助けた黒ウサギのノワールだった。 そんなある日、ショーンに悲劇が襲い掛かる。しかしその悲劇が、彼の人生を一変させた。 無双あり、ザマァあり、復讐あり、もふもふありの大冒険、いざ開幕!

狼の子 ~教えてもらった常識はかなり古い!?~

一片
ファンタジー
バイト帰りに何かに引っ張られた俺は、次の瞬間突然山の中に放り出された。 しかも体をピクリとも動かせない様な瀕死の状態でだ。 流石に諦めかけていたのだけど、そんな俺を白い狼が救ってくれた。 その狼は天狼という神獣で、今俺がいるのは今までいた世界とは異なる世界だという。 右も左も分からないどころか、右も左も向けなかった俺は天狼さんに魔法で癒され、ついでに色々な知識を教えてもらう。 この世界の事、生き延び方、戦う術、そして魔法。 数年後、俺は天狼さんの庇護下から離れ新しい世界へと飛び出した。 元の世界に戻ることは無理かもしれない……でも両親に連絡くらいはしておきたい。 根拠は特にないけど、魔法がある世界なんだし……連絡くらいは出来るよね? そんな些細な目標と、天狼さん以外の神獣様へとお使いを頼まれた俺はこの世界を東奔西走することになる。 色々な仲間に出会い、ダンジョンや遺跡を探索したり、何故か謎の組織の陰謀を防いだり……。 ……これは、現代では失われた強大な魔法を使い、小さな目標とお使いの為に大陸をまたにかける小市民の冒険譚!

世界樹の下で

瀬織董李
ファンタジー
神様のうっかりで死んでしまったお詫びに異世界転生した主人公。 念願だった農民生活を満喫していたある日、聖女の代わりに世界樹を救う旅に行けと言われる。 面倒臭いんで、行きたくないです。え?ダメ?……もう、しょうがないなあ……その代わり自重しないでやっちゃうよ? あれ?もしかしてここ……乙女ゲームの世界なの? プロット無し、設定行き当たりばったりの上に全てスマホで書いてるので、不定期更新です

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

普通の勇者とハーレム勇者

リョウタ
ファンタジー
【ファンタジー小説大賞】に投稿しました。 超イケメン勇者は幼馴染や妹達と一緒に異世界に召喚された、驚くべき程に頭の痛い男である。 だが、この物語の主人公は彼では無く、それに巻き込まれた普通の高校生。 国王や第一王女がイケメン勇者に期待する中、優秀である第二王女、第一王子はだんだん普通の勇者に興味を持っていく。 そんな普通の勇者の周りには、とんでもない奴らが集まって来て彼は過保護過ぎる扱いを受けてしまう… 最終的にイケメン勇者は酷い目にあいますが、基本ほのぼのした物語にしていくつもりです。

騎士志望のご令息は暗躍がお得意

月野槐樹
ファンタジー
王弟で辺境伯である父を保つマーカスは、辺境の田舎育ちのマイペースな次男坊。 剣の腕は、かつて「魔王」とまで言われた父や父似の兄に比べれば平凡と自認していて、剣より魔法が大好き。戦う時は武力より、どちらというと裏工作? だけど、ちょっとした気まぐれで騎士を目指してみました。 典型的な「騎士」とは違うかもしれないけど、護る時は全力です。 従者のジョセフィンと駆け抜ける青春学園騎士物語。

知識スキルで異世界らいふ

チョッキリ
ファンタジー
他の異世界の神様のやらかしで死んだ俺は、その神様の紹介で別の異世界に転生する事になった。地球の神様からもらった知識スキルを駆使して、異世界ライフ

異世界転移物語

月夜
ファンタジー
このところ、日本各地で謎の地震が頻発していた。そんなある日、都内の大学に通う僕(田所健太)は、地震が起こったときのために、部屋で非常持出袋を整理していた。すると、突然、めまいに襲われ、次に気づいたときは、深い森の中に迷い込んでいたのだ……

処理中です...