カエルは考える

農村

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どうして?

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ぼくは外を見ないようになっていた。

外を見ると何か心が痛むのだ。
何故痛むのか忘れてしまったが、とにかく見たくないのだ。
ぼくのことだから、大した理由ではないと思うのだが。

それに雨もずっと降り続いている。
何故かは忘れてしまった。
もうずいぶんと前だった気がする。


最近、黄色い生き物は毎日ここにいる。
ずっと黒い四角いものの前にいる。
テレビというそうだ。
そう呟いていたことがあった。

テレビの前でボーッと座っていることが多くなった。
前は暫く帰ってこない時間があったのだが、どうしたんだろうか?

最近はエサもくれないし
お風呂も動かすことがない。
水も上から飛んでこない。

ぼくも寝る時間が増えて、あまり気にしなくなっていたが、段々と透明なこの箱も汚くなっていた。

「もう、ずっと雨...気持ちも暗くなっちゃうね。カエルさん」

久しぶりにぼくと目があった。
前と違い、生気のない瞳だ。

「もう君にあげられるエサがないよ...自分のことでいっぱいいっぱいだ」

何か悲しそうな顔をしている。

「ごめんね」

黄色い生き物はいきなりスッと立ち上がった。
こちらに真っ直ぐに歩いてきて、透明な箱をつかんだ。

見ないようにしていたカーテンの奥まで連れていかれた。
カーテンが勢いよく開かれ、外の景色が目一杯に広がった。
今まで隙間からしか見れなかった景色が目の前にあった。

ガラガラと窓が開く。
雨が降る音が大音量で耳に届いた。
うるさいだけのその音は止まることなく響いた。

ぼくの家の屋根が取り外される。
風がびゅうびゅうと透明な箱の中まで侵入してくる。
震えがとまらない。
ぼくはそこまで寒さに強くない。

黄色い生き物はぼくをつまんだ。
冷たい地面に両足がふれる。

またその冷たさに体が震える。

「いってらっしゃい」

ぼくは暖かさを求め、両足をはねあげた。
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