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なんでやねん
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赤鬼の一撃で高さ4メートル程の岩は大破し、サスケとマルの姿が見えなくなりました。
「サスケ!マル!」太郎は叫び、崩れた瓦礫を見つめ呆然としました。
鬼は再び歩き出し太郎の方へ向かってきます。「おいおい。覇気が無いじゃないか。諦めたのか」鬼は薄ら笑いを浮かべながら太郎の前まで来て、襲いかかりました。右腕を振り下ろし負傷している太郎の左腕を狙い、太郎は本能でそれを刀で受け止めました。
「なんだ、まだ戦えるじゃないか。じゃあ遊ぼう」赤鬼は手加減した攻撃で太郎を攻めます。右腕、左腕で交互に突き、太郎はそれを片腕の刀で受け止めます。鋭利な爪と刃が当たり、カキンッという音が何度も鳴ります。しかし、負傷した上に片手の太郎は全てを受けきれず、腕、胸部、腹部などに徐々に傷を負っていきました。そして耐えられなくなった太郎は片膝をつき動きも止まってしまいました。
「もう終わりかな。残念だ」そう言って赤鬼は右腕を振り上げました。
太郎はふぅと息を吐くと歯を噛みしめ、鬼を睨みつけました。最後まで戦うと決めた太郎の精一杯の抵抗でした。その太郎の目を見た鬼はピタッと動きを止めるとそのまま右腕を下ろしました。
「その目は嫌いだ。楽しくない。恐怖や絶望に満ちた顔をしてくれよ」赤鬼は太郎に顔を近付け目の前で言いました。太郎は目をそらさずに鬼を変わらず睨みつけたままです。「お前は今から死ぬんだぞ?オレを殺す為に生まれたとほざいたお前が!」鬼は続けます。太郎はそれでもまばたき1つしません。「助けてくれ、死にたくないって叫べ!」赤鬼は右手を握りしめ太郎の左頬を殴りました。太郎は2メートル後方まで飛ばされ岩に背をぶつけました。うめき声を上げ、立ち上がる事ができない太郎でしたが、それでも睨む事をやめません。
鬼は太郎に向かってまた歩き出しましたが、2歩進んだところで足を止めました。そこでクルッと後ろを向くとそのまま歩いて行き、足を止めたのは気を失っているハナの横でした。赤鬼は左手でハナの胴体を掴み持ち上げました。
「お前、何してん・・・ねん・・・」太郎は刀を支えにしてなんとか立ち上がり、鬼に向かおうとしましたが、殴られた影響が残っていて思うように足が動きません。
「やっぱりこの犬が大事かぁ。人間の殺されるときの顔が好きだが、もう1つ好きな顔があった。それはな、家族、恋人、友、仲間、そういったお前たちが大事にする人を殺された時の顔だ」
「やめろ・・・やめてくれ・・・」太郎涙を浮かべながらは少しずつ前に進みます。
「その顔だ!目の前で仲間が殺されるのを良く見ておけ!どう殺すのがいい?顔を潰すか?そうだ、顔を握りつぶそう。それがいい。もっと最高の顔を見せろ!」赤鬼はそう言ってハナの鼻先からわし掴みにしました。その時、「がああああああ!」と鬼は叫びハナを落としました。「何をしたあ!!」激昂した鬼が落ちたハナを蹴ろうと足を振り上げた時、マルが猛スピードで飛んできてハナを掴みその場から離れました。
ポタ・・・ポタ・・・と鬼の手の平から血が滴り、何かが溶けていくような煙も同じところから出ています。鬼は止まらない血を見て動揺し、困惑した表情で立っています。マルが止まった岩を太郎が見ると、サスケもそこにいて、みんながそこに揃っていました。
「お前ら!!」思わず太郎が叫びます。
「太郎!鬼の手からの血が止まらない!という事は傷が修復できていないということだ!ハナは気絶したままで何もしていない!ならば、考えられるのは鬼の手に傷を与えたのは、コイツの口についたきな粉だ!」マルも叫びます。島に来る直前にみんなで食べた団子とおはぎに使われていたきな粉が、ハナの口の周りについたままでした。
「鬼の弱点がきな粉?そんな事ありえるか?」太郎は一瞬考えましたが、「いや、もうこれしかない。これが無理なら全滅や。全てを懸ける」と決意し、腰の巾着を開けました。最後の1個のおはぎはあんこのおはぎでした。「なんでやねん!」太郎はそう言って愕然としましたが、「あんこのおはぎを残したのは自分や」と思い直しました。この巾着にも他の団子やおはぎがいくつか入っていたことを思い出し、底の方を確認すると、少量でしたがきな粉が残っていました。おはぎのあんこを刀に塗り、その上からきな粉をまぶし、太郎は鬼に向かって歩き出しました。
「サスケ!マル!」太郎は叫び、崩れた瓦礫を見つめ呆然としました。
鬼は再び歩き出し太郎の方へ向かってきます。「おいおい。覇気が無いじゃないか。諦めたのか」鬼は薄ら笑いを浮かべながら太郎の前まで来て、襲いかかりました。右腕を振り下ろし負傷している太郎の左腕を狙い、太郎は本能でそれを刀で受け止めました。
「なんだ、まだ戦えるじゃないか。じゃあ遊ぼう」赤鬼は手加減した攻撃で太郎を攻めます。右腕、左腕で交互に突き、太郎はそれを片腕の刀で受け止めます。鋭利な爪と刃が当たり、カキンッという音が何度も鳴ります。しかし、負傷した上に片手の太郎は全てを受けきれず、腕、胸部、腹部などに徐々に傷を負っていきました。そして耐えられなくなった太郎は片膝をつき動きも止まってしまいました。
「もう終わりかな。残念だ」そう言って赤鬼は右腕を振り上げました。
太郎はふぅと息を吐くと歯を噛みしめ、鬼を睨みつけました。最後まで戦うと決めた太郎の精一杯の抵抗でした。その太郎の目を見た鬼はピタッと動きを止めるとそのまま右腕を下ろしました。
「その目は嫌いだ。楽しくない。恐怖や絶望に満ちた顔をしてくれよ」赤鬼は太郎に顔を近付け目の前で言いました。太郎は目をそらさずに鬼を変わらず睨みつけたままです。「お前は今から死ぬんだぞ?オレを殺す為に生まれたとほざいたお前が!」鬼は続けます。太郎はそれでもまばたき1つしません。「助けてくれ、死にたくないって叫べ!」赤鬼は右手を握りしめ太郎の左頬を殴りました。太郎は2メートル後方まで飛ばされ岩に背をぶつけました。うめき声を上げ、立ち上がる事ができない太郎でしたが、それでも睨む事をやめません。
鬼は太郎に向かってまた歩き出しましたが、2歩進んだところで足を止めました。そこでクルッと後ろを向くとそのまま歩いて行き、足を止めたのは気を失っているハナの横でした。赤鬼は左手でハナの胴体を掴み持ち上げました。
「お前、何してん・・・ねん・・・」太郎は刀を支えにしてなんとか立ち上がり、鬼に向かおうとしましたが、殴られた影響が残っていて思うように足が動きません。
「やっぱりこの犬が大事かぁ。人間の殺されるときの顔が好きだが、もう1つ好きな顔があった。それはな、家族、恋人、友、仲間、そういったお前たちが大事にする人を殺された時の顔だ」
「やめろ・・・やめてくれ・・・」太郎涙を浮かべながらは少しずつ前に進みます。
「その顔だ!目の前で仲間が殺されるのを良く見ておけ!どう殺すのがいい?顔を潰すか?そうだ、顔を握りつぶそう。それがいい。もっと最高の顔を見せろ!」赤鬼はそう言ってハナの鼻先からわし掴みにしました。その時、「がああああああ!」と鬼は叫びハナを落としました。「何をしたあ!!」激昂した鬼が落ちたハナを蹴ろうと足を振り上げた時、マルが猛スピードで飛んできてハナを掴みその場から離れました。
ポタ・・・ポタ・・・と鬼の手の平から血が滴り、何かが溶けていくような煙も同じところから出ています。鬼は止まらない血を見て動揺し、困惑した表情で立っています。マルが止まった岩を太郎が見ると、サスケもそこにいて、みんながそこに揃っていました。
「お前ら!!」思わず太郎が叫びます。
「太郎!鬼の手からの血が止まらない!という事は傷が修復できていないということだ!ハナは気絶したままで何もしていない!ならば、考えられるのは鬼の手に傷を与えたのは、コイツの口についたきな粉だ!」マルも叫びます。島に来る直前にみんなで食べた団子とおはぎに使われていたきな粉が、ハナの口の周りについたままでした。
「鬼の弱点がきな粉?そんな事ありえるか?」太郎は一瞬考えましたが、「いや、もうこれしかない。これが無理なら全滅や。全てを懸ける」と決意し、腰の巾着を開けました。最後の1個のおはぎはあんこのおはぎでした。「なんでやねん!」太郎はそう言って愕然としましたが、「あんこのおはぎを残したのは自分や」と思い直しました。この巾着にも他の団子やおはぎがいくつか入っていたことを思い出し、底の方を確認すると、少量でしたがきな粉が残っていました。おはぎのあんこを刀に塗り、その上からきな粉をまぶし、太郎は鬼に向かって歩き出しました。
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