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花束

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長兄上様がお帰りになられてから数日が経ちますが、私は体調を崩しベッドの住人です。

暇で暇で仕方のない私は、刺繍を行なっております。本はマーサに止められたのです。

現在ハンカチに刺繍を施しております。父上様のハンカチを縫っているところです。

マーサが「旦那様方に縫われてはいかがですか?」と提案してきたので暇だししてみようと思いましたの。
貴族令嬢として裁縫は必須条件らしいですし、丁度いいかなって思ったので。

ふぅー、父上様の分も終わったわ。


「お嬢様、ハロルド様とトール様のお越しです。いかがされますか?」

「お連れして。」

「ビアンカ!元気か~?」

「また、体調を崩したと聞いた。全く、公爵令嬢として自己管理をもっと徹底すべきであろう。」


今日も2人はいつもどうりね~。兄上様達にハンカチ渡してしまおうかしら。


「兄上様方、お越しいただきありがとうございます。私、刺繍をしておりまして兄上様に縫ってみたのですが受け取っていただけますか?」

「ビアンカが縫ったのか!?勿論貰うぞ!」

「……貰ってやってもいい。…」

「お受け取り下さい。恥ずかしいので、自室に戻ってから御覧になって下さい。」


転生してから誰かにプレゼントするなんて初めてだからなんだか恥ずかしいわ。思わず頬が赤くなる。

その後、ハロルド兄上様は帰ってしまわれた。トール兄上様は、


「はい。これ、今日剣術の稽古の時に咲いてたの見つけて摘んできたんだ。外に出られなくても花の香りだけでもと思ったんだ。」


と後ろに隠し持っていた花束を私にくださいました。
嬉しくて頬が緩んでいると、悪戯っ子のような顔をした


コソッ。
「実はな、この花を渡そうって行ったのハロルド兄上なんだぜ。」


とニヤニヤしながら私に教えて下さいました。今私の顔は淑女にあるまじき形相をしているでしょう。それ程までに驚いているのです。嫌いな者に花束をなんて…











2人が帰った後、マーサがベット横の棚の上に花瓶を用意し生けてくれました。綺麗なオレンジ色の百合の花です。
トール兄上様は私が花が好きで花言葉を調べるのが好きだと知っているので、きっとこの花にも意味があるはずだわ。


「マーサ、私この花言葉が知りたいの。そこのテーブルにある3列目の上から7段目にあると思うのだけど取ってくださらない?」

「ええ、承知しました、お嬢様。」


その本を貰い、鼻歌を歌いながら百合の花を探す。


「ふふふ。お嬢様嬉しそうですね。お身体が冷えないようハーブティをお持ち致しますわ。」


マーサが部屋からいなくなり、しばらくして百合の花言葉が分かりました。
白色なら、"純潔"、"威厳"、"純粋"とかだった気がするわ。中々有名だったわね。

オレンジ色はどんな意味があるのかしら?……

……………






ふぅ、やっぱり私って嫌われているのかしら?
"華麗"、"愉快"、"軽率"極め付けには、"憎悪"という意味があるらしい。
はぁ、花言葉なんて調べなければ良かったわ。流石に私の心も折れるわよ。もう寝てやる!!


目を瞑り夢の中へと沈み込む。月の光がビアンカを照らす。ビアンカの頬に涙が流れた…
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