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【新婚旅行編】九日目:とある王様は、まだまだ落ち着けない
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メイクの方もそういった方針で施されているようだ。彼のチャームポイントである透き通った瞳を生かすように……いや、その琥珀色の瞳により魅入られてしまいそうな。引き立てられてはいるものの、あくまでも自然な程度には留められている。
身に纏っている服は、やはりバアルとのお揃いであった。ただ、その形は少し異なっている。バアルよりも線が細く、小柄な彼がカッコよく頼もしく見えるよう、バアルとは違ってスタイルの分かりにくいデザインになっていた。だからといって、服に着られているという感覚はない。此方もヘアメイクと同じで丁度いい塩梅であった。
今までとは雰囲気の異なるアオイ殿に見惚れてしまう。父上達もであろう。皆、ただただ見つめてしまっていた。アオイ殿を不安にさせてしまったのも無理はないであろう。
「あ、れ……? や、やっぱり、失敗? マズっちゃった? やっぱり俺も、バアルと一緒にじゃじゃーんって出て行ってた方が良かったかな?」
「いえ、ちゃんと成功しておりますよ。サプライズのサプライズが」
「え? で、でも、皆さん黙っちゃって……」
「レタリー……!!」
「ひゃ……」
アオイ殿がビクリと小さな肩を揺らす。申し訳なく思ったが、今は確かめたいことが。
「はい、ヨミ様」
「バアルとアオイ殿が送ってくれていたという写真と動画の内容は?」
「バアル様にヘアメイクをして頂けた上にお揃いの衣装も用意して頂けていたので、すぐに脱いでしまうのは勿体ないと、折角だから踊りましょうと、お二人がコルテのヴァイオリンに合わせて踊っていらっしゃる写真と動画でございます」
そんな素敵なことを隠していたとは。これには皆も驚いたのか、見惚れていた状態から戻ってきたようだ。
「わし、見せてもらえておらぬが……」
残念そうに太い眉を下げた父上に続いて、グリムがおずおずと口を開く。
「ぼ、僕とクロウも……」
グリムを宥めるように頭を撫でているクロウも、表情は変わらぬもののその眉間には僅かにシワが寄っていた。レタリーが父上達に向かって頭を下げる。
「申し訳ございません。直に拝見させてもらった後の方が宜しいかと……私の独自の判断により隠しておりました」
「ってことは、この後は共有してもらえるんで?」
ちゃっかりと尋ねてきたクロウにレタリーが頷く。
「ええ、速やかにお送り致します」
「やったぁ! ありがとうございます!」
「おお、楽しみじゃのう」
皆は和気あいあいとしておるが、私の気分はまだまだ落ち着けてはいなかった。ホッとしている様子のアオイ殿に思わず大きな声で呼びかけてしまうほどに。
「アオイ殿!!」
「は、はいっ」
「つまりはっ、今ここで! アオイ殿とバアルのダンスを拝見出来る、ということで宜しいのであろうか?」
アオイ殿がバアルと視線を交わす。微笑むバアルに頷いてから私にも微笑みかけてくれた。
「はい、宜しければ、ですけど……」
「見たいです!」
はい、はいっと元気よく手を上げたグラムに続けてクロウが、父上が、レタリーが続く。アオイ殿は再びバアルに微笑んでから、頑張りますっと気合十分。胸の前で握り拳を作っていた。
「ああ、だがその前に」
「はい……?」
「誠にカッコいいぞ、アオイ殿。あまりの眩さに言葉を失ってしまうほどにな」
「うむ、二人共男前じゃのう!」
私に続くように父上が言葉を重ねた。アオイ殿は少しの間、驚いたように目を瞬かせていたが、すぐさま可愛らしい微笑みを見せてくれた。白い頬がほんのりと赤く染まっていく。
「あ、ありがとうございます……」
身に纏っている服は、やはりバアルとのお揃いであった。ただ、その形は少し異なっている。バアルよりも線が細く、小柄な彼がカッコよく頼もしく見えるよう、バアルとは違ってスタイルの分かりにくいデザインになっていた。だからといって、服に着られているという感覚はない。此方もヘアメイクと同じで丁度いい塩梅であった。
今までとは雰囲気の異なるアオイ殿に見惚れてしまう。父上達もであろう。皆、ただただ見つめてしまっていた。アオイ殿を不安にさせてしまったのも無理はないであろう。
「あ、れ……? や、やっぱり、失敗? マズっちゃった? やっぱり俺も、バアルと一緒にじゃじゃーんって出て行ってた方が良かったかな?」
「いえ、ちゃんと成功しておりますよ。サプライズのサプライズが」
「え? で、でも、皆さん黙っちゃって……」
「レタリー……!!」
「ひゃ……」
アオイ殿がビクリと小さな肩を揺らす。申し訳なく思ったが、今は確かめたいことが。
「はい、ヨミ様」
「バアルとアオイ殿が送ってくれていたという写真と動画の内容は?」
「バアル様にヘアメイクをして頂けた上にお揃いの衣装も用意して頂けていたので、すぐに脱いでしまうのは勿体ないと、折角だから踊りましょうと、お二人がコルテのヴァイオリンに合わせて踊っていらっしゃる写真と動画でございます」
そんな素敵なことを隠していたとは。これには皆も驚いたのか、見惚れていた状態から戻ってきたようだ。
「わし、見せてもらえておらぬが……」
残念そうに太い眉を下げた父上に続いて、グリムがおずおずと口を開く。
「ぼ、僕とクロウも……」
グリムを宥めるように頭を撫でているクロウも、表情は変わらぬもののその眉間には僅かにシワが寄っていた。レタリーが父上達に向かって頭を下げる。
「申し訳ございません。直に拝見させてもらった後の方が宜しいかと……私の独自の判断により隠しておりました」
「ってことは、この後は共有してもらえるんで?」
ちゃっかりと尋ねてきたクロウにレタリーが頷く。
「ええ、速やかにお送り致します」
「やったぁ! ありがとうございます!」
「おお、楽しみじゃのう」
皆は和気あいあいとしておるが、私の気分はまだまだ落ち着けてはいなかった。ホッとしている様子のアオイ殿に思わず大きな声で呼びかけてしまうほどに。
「アオイ殿!!」
「は、はいっ」
「つまりはっ、今ここで! アオイ殿とバアルのダンスを拝見出来る、ということで宜しいのであろうか?」
アオイ殿がバアルと視線を交わす。微笑むバアルに頷いてから私にも微笑みかけてくれた。
「はい、宜しければ、ですけど……」
「見たいです!」
はい、はいっと元気よく手を上げたグラムに続けてクロウが、父上が、レタリーが続く。アオイ殿は再びバアルに微笑んでから、頑張りますっと気合十分。胸の前で握り拳を作っていた。
「ああ、だがその前に」
「はい……?」
「誠にカッコいいぞ、アオイ殿。あまりの眩さに言葉を失ってしまうほどにな」
「うむ、二人共男前じゃのう!」
私に続くように父上が言葉を重ねた。アオイ殿は少しの間、驚いたように目を瞬かせていたが、すぐさま可愛らしい微笑みを見せてくれた。白い頬がほんのりと赤く染まっていく。
「あ、ありがとうございます……」
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