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【新婚旅行編】一日目:見た目にもキレイで、充実なラインナップ
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白い手によって、銀のワゴンからテーブルへと並べられていくお皿。一皿目には、赤、緑、黄、オレンジ、白、色とりどりの野菜が盛られている。
おもちゃのように小さく可愛らしい人参やカブっぽいもの。馴染みのあるミニトマトやブロッコリー、アスパラガスにパプリカ。それらは、見た目からして瑞々しくて新鮮そのもの。おしゃれに盛り付けられた野菜にディップする為のソースが、白くて小さな器をたっぷり満たしている。
二皿目は、細長い長方形の皿。正方形が四つ並んでいるように仕切られており、その一つずつに何かしらの料理が盛り付けられている。
何かしらと表現したのは、一切料理名が分からないからだ。何かキレイで美味しそうとしか。なんせ、何の具材を使っているのかすら、分からないものもあるからな。
俺が分かるのは、左端のサーモンのお刺身が玉ねぎといっしょにマリネされているやつ。上に乗っている小さな黒い粒の正体は分からない。
後は、お肉。隣の四角にはキレイな赤身のローストビーフが五、六枚ほど、バラのように盛り付けられている。その隣は鴨っぽいお肉とハム、かな? 高そうな。ハムの端っこ? 背中? には黒胡椒がまぶされている。この二種類が、どちらも四切れずつ。
最後の四角に盛られた分からないヤツは、何かムースっぽいもの。一センチ幅くらいにスライスされた長方形の断面が、淡いピンクと緑の二色の層に分かれていて、見た目にも楽しい一品だ。
もう一つも見た目がデザートっぽい。こっちはゼリーみたい。ただ、ゼリーに入っているのは果肉ではない。ムースと同様にスライスされている断面には、キャベツっぽいものとお肉っぽいものが詰まっている。こちらは、どちらも二切れずつ盛られていた。
二つのお皿の内容だけでも、軽食とは思えない充実なラインナップ。だというのに三皿目、というか大きなバスケットには、山のようにパンが盛られているのだ。
どれも、ついついつまんでしまいそうな小さめのサイズが有り難い。定番なロールパンにクロワッサン。ローストビーフやらサーモンを乗せてアレンジしても良さそうな、スライスされたフランスパン。チョコチップがふんだんに練り込まれたものもある。
パンだけでなく、塗るものの種類も豊富だ。バターに蜂蜜、ピーナッツバター。ジャムなんて、イチゴ、ブルーベリー、マーマレードと三種類もあるんだからな。
「贅沢ですね……」
つい口に出してしまってから気づく。当たり前かと。だって、こちらはヨミ様達の、王族御用達のホテルなんだからと。
「左様でございますね。ルームサービスにおいても、ホテル内のレストランと同様のメニューを頼めるのですから」
緩やかな笑みを浮かべながら、俺の隣へと腰を下ろしたバアルさん。長身な彼の重みを受けて、座り心地のいいソファーが沈んだ。
鍛え抜かれた分厚い胸板も、くびれた腰も、今はシンプルな白いカッターシャツに包まれている。ただ、大人の色気漂う鎖骨は、緩められた襟元から見えてしまっているけれども。
シワ一つない黒いズボンを纏う、しなやかな足を行儀よく揃えてから、長い腕がさり気なく俺の肩を抱き寄せる。彼から香ってくるハーブの匂いが濃くなった。
はしゃぎ始めた心音が伝わってしまいそう。だというのに、彼はわざわざ耳元で囁いてくる。穏やかな低音が、俺の鼓膜を擽った。
「……アオイは、どちらのお品が気になりますか?」
「え、えっと、お肉も食べたいんですけど……この、デザートみたいな見た目の料理が、気になってます……」
……危なかった。つい変な声を上げてしまいそうに。
バアルさんには、俺をときめかせようなんて気はさらさらないんだろう。窺うように見つめていた緑の瞳は、すでに俺から離れてしまっている。
四種類の料理が盛られた皿から、俺が指し示したムースっぽいものとゼリーっぽいものを、フォークで小皿へと移してくれた。取り分けてくれた小皿を俺の手元へと、それから手のひらを上にしてムースっぽいものを指し示した。
おもちゃのように小さく可愛らしい人参やカブっぽいもの。馴染みのあるミニトマトやブロッコリー、アスパラガスにパプリカ。それらは、見た目からして瑞々しくて新鮮そのもの。おしゃれに盛り付けられた野菜にディップする為のソースが、白くて小さな器をたっぷり満たしている。
二皿目は、細長い長方形の皿。正方形が四つ並んでいるように仕切られており、その一つずつに何かしらの料理が盛り付けられている。
何かしらと表現したのは、一切料理名が分からないからだ。何かキレイで美味しそうとしか。なんせ、何の具材を使っているのかすら、分からないものもあるからな。
俺が分かるのは、左端のサーモンのお刺身が玉ねぎといっしょにマリネされているやつ。上に乗っている小さな黒い粒の正体は分からない。
後は、お肉。隣の四角にはキレイな赤身のローストビーフが五、六枚ほど、バラのように盛り付けられている。その隣は鴨っぽいお肉とハム、かな? 高そうな。ハムの端っこ? 背中? には黒胡椒がまぶされている。この二種類が、どちらも四切れずつ。
最後の四角に盛られた分からないヤツは、何かムースっぽいもの。一センチ幅くらいにスライスされた長方形の断面が、淡いピンクと緑の二色の層に分かれていて、見た目にも楽しい一品だ。
もう一つも見た目がデザートっぽい。こっちはゼリーみたい。ただ、ゼリーに入っているのは果肉ではない。ムースと同様にスライスされている断面には、キャベツっぽいものとお肉っぽいものが詰まっている。こちらは、どちらも二切れずつ盛られていた。
二つのお皿の内容だけでも、軽食とは思えない充実なラインナップ。だというのに三皿目、というか大きなバスケットには、山のようにパンが盛られているのだ。
どれも、ついついつまんでしまいそうな小さめのサイズが有り難い。定番なロールパンにクロワッサン。ローストビーフやらサーモンを乗せてアレンジしても良さそうな、スライスされたフランスパン。チョコチップがふんだんに練り込まれたものもある。
パンだけでなく、塗るものの種類も豊富だ。バターに蜂蜜、ピーナッツバター。ジャムなんて、イチゴ、ブルーベリー、マーマレードと三種類もあるんだからな。
「贅沢ですね……」
つい口に出してしまってから気づく。当たり前かと。だって、こちらはヨミ様達の、王族御用達のホテルなんだからと。
「左様でございますね。ルームサービスにおいても、ホテル内のレストランと同様のメニューを頼めるのですから」
緩やかな笑みを浮かべながら、俺の隣へと腰を下ろしたバアルさん。長身な彼の重みを受けて、座り心地のいいソファーが沈んだ。
鍛え抜かれた分厚い胸板も、くびれた腰も、今はシンプルな白いカッターシャツに包まれている。ただ、大人の色気漂う鎖骨は、緩められた襟元から見えてしまっているけれども。
シワ一つない黒いズボンを纏う、しなやかな足を行儀よく揃えてから、長い腕がさり気なく俺の肩を抱き寄せる。彼から香ってくるハーブの匂いが濃くなった。
はしゃぎ始めた心音が伝わってしまいそう。だというのに、彼はわざわざ耳元で囁いてくる。穏やかな低音が、俺の鼓膜を擽った。
「……アオイは、どちらのお品が気になりますか?」
「え、えっと、お肉も食べたいんですけど……この、デザートみたいな見た目の料理が、気になってます……」
……危なかった。つい変な声を上げてしまいそうに。
バアルさんには、俺をときめかせようなんて気はさらさらないんだろう。窺うように見つめていた緑の瞳は、すでに俺から離れてしまっている。
四種類の料理が盛られた皿から、俺が指し示したムースっぽいものとゼリーっぽいものを、フォークで小皿へと移してくれた。取り分けてくれた小皿を俺の手元へと、それから手のひらを上にしてムースっぽいものを指し示した。
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