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★【新婚旅行編】一日目:納得出来ない
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「ふふ、えらい? 俺、男だけど……ちゃんとバアルのこと、受け入れられたよ……」
「ええ、ええ……」
透明な膜の中で緑の瞳が揺れている。高い鼻先を擦り寄せてくれながら、大きな手のひらが、俺の頬を優しく撫でてくれる。
本当ならば、もう少し馴染ませた方がいいんだろう。でも、堪え性のない俺は強請ってしまっていた。はしたなく、引き締まった腰に足を絡めて抱き寄せていた。
「じゃあ……今度は、一緒に気持ちよくなろう?」
返ってきたのは言葉ではなく、口づけだった。噛みつくように口を塞がれて、貪るように奥に奥にと腰を打ちつけられた。
「んうっ、んっ、ん……ふ、ぁ……あっ、んん……」
キングサイズよりも大きくて丈夫そうなベッドが悲鳴を上げている。一緒に、と誘ったにも関わらず、俺は早くも何度目かの絶頂に達していた。
いや、達し続けている。乾いた音を鳴らしながら、彼が激しく腰を振る度に。
俺としては愛しい温もりに抱きついているつもりなんだが、実際は出来ているのか。よく分からない。また身体の感覚がボヤけている。ずっと気持ちいいってことしか。
ほんの一分が、一時間も経ってしまっているような。終わりのみえない心地よさの幕切れは、意外にもあっけなかった。
不意にお腹の中が熱くなっていく。彼のもの以外の熱が広がっていく。意識が遠のいていく最中「愛しております」と言ってもらえた気がした。
目を開けた途端に映った柔らかい笑顔。普段だったら心臓に悪い、カッコよくてキレイな微笑が、今日はなんだかスゴくホッとした。
「アオイ……私の愛しい妻……お加減はいかがでしょうか? 痛いところはございませんか?」
「ん……大丈夫だよ……気持ちよかった……」
腕枕をしてくれていた彼は安心したみたい。目尻のシワを深めて、大きな手で頬を撫でてくれた。額にキスをしてくれた。
「お飲み物をご用意致しましょうか? お腹は空いてはおりませんか? 何か食べやすい物をご用意して」
そう、気持ちよかった。それは確かだ。だって、ずっと、それしか感じていなかったから。でも、だからこそ。
「……アオイ? やはり何処か不調が……」
「納得出来ない……」
「はい?」
「俺、全然分かんなかった……初めてバアルの全部を受け入れられたのに……バアルが俺の中で気持ちよくなってくれたのに……気持ちいいってことしか分かんなかった……」
「っ……あ、アオイ……」
「最後の方なんて、完全に気を失っちゃってたし……もっと、ちゃんと、バアルを感じたかった……もっと、余裕を持ってバアルのこ、と……」
捲し立てていた口に、ふと感じた柔らかな温もり。キスをしてもらえていた。わざとらしいリップ音が鳴らされるまで、気がつけなかったけど。
しっとりと柔い指先が目尻を撫でて、耳の方へと伸びてくる。触れるか触れないかの加減で、耳の裏をなぞられただけ。なのに、たっぷりと愛してもらった後だからだろう。燻っていた火が再び勢いを取り戻すかのように、淡い感覚を呼び起こされてしまっていた。
「……では、分かるまで致して差し上げましょうか? もとより、今宵は朝まで貴方様を離さない心づもりでおりました故」
「は、はぃ……お願い、しまふ……」
とんでもないことを、お願いしてしまったかもしれない。ゆるりと細められた瞳の艶っぽさに、心を鷲掴みにされてしまったとはいえ。
「ええ、ええ……」
透明な膜の中で緑の瞳が揺れている。高い鼻先を擦り寄せてくれながら、大きな手のひらが、俺の頬を優しく撫でてくれる。
本当ならば、もう少し馴染ませた方がいいんだろう。でも、堪え性のない俺は強請ってしまっていた。はしたなく、引き締まった腰に足を絡めて抱き寄せていた。
「じゃあ……今度は、一緒に気持ちよくなろう?」
返ってきたのは言葉ではなく、口づけだった。噛みつくように口を塞がれて、貪るように奥に奥にと腰を打ちつけられた。
「んうっ、んっ、ん……ふ、ぁ……あっ、んん……」
キングサイズよりも大きくて丈夫そうなベッドが悲鳴を上げている。一緒に、と誘ったにも関わらず、俺は早くも何度目かの絶頂に達していた。
いや、達し続けている。乾いた音を鳴らしながら、彼が激しく腰を振る度に。
俺としては愛しい温もりに抱きついているつもりなんだが、実際は出来ているのか。よく分からない。また身体の感覚がボヤけている。ずっと気持ちいいってことしか。
ほんの一分が、一時間も経ってしまっているような。終わりのみえない心地よさの幕切れは、意外にもあっけなかった。
不意にお腹の中が熱くなっていく。彼のもの以外の熱が広がっていく。意識が遠のいていく最中「愛しております」と言ってもらえた気がした。
目を開けた途端に映った柔らかい笑顔。普段だったら心臓に悪い、カッコよくてキレイな微笑が、今日はなんだかスゴくホッとした。
「アオイ……私の愛しい妻……お加減はいかがでしょうか? 痛いところはございませんか?」
「ん……大丈夫だよ……気持ちよかった……」
腕枕をしてくれていた彼は安心したみたい。目尻のシワを深めて、大きな手で頬を撫でてくれた。額にキスをしてくれた。
「お飲み物をご用意致しましょうか? お腹は空いてはおりませんか? 何か食べやすい物をご用意して」
そう、気持ちよかった。それは確かだ。だって、ずっと、それしか感じていなかったから。でも、だからこそ。
「……アオイ? やはり何処か不調が……」
「納得出来ない……」
「はい?」
「俺、全然分かんなかった……初めてバアルの全部を受け入れられたのに……バアルが俺の中で気持ちよくなってくれたのに……気持ちいいってことしか分かんなかった……」
「っ……あ、アオイ……」
「最後の方なんて、完全に気を失っちゃってたし……もっと、ちゃんと、バアルを感じたかった……もっと、余裕を持ってバアルのこ、と……」
捲し立てていた口に、ふと感じた柔らかな温もり。キスをしてもらえていた。わざとらしいリップ音が鳴らされるまで、気がつけなかったけど。
しっとりと柔い指先が目尻を撫でて、耳の方へと伸びてくる。触れるか触れないかの加減で、耳の裏をなぞられただけ。なのに、たっぷりと愛してもらった後だからだろう。燻っていた火が再び勢いを取り戻すかのように、淡い感覚を呼び起こされてしまっていた。
「……では、分かるまで致して差し上げましょうか? もとより、今宵は朝まで貴方様を離さない心づもりでおりました故」
「は、はぃ……お願い、しまふ……」
とんでもないことを、お願いしてしまったかもしれない。ゆるりと細められた瞳の艶っぽさに、心を鷲掴みにされてしまったとはいえ。
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