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【新婚旅行編】一日目:貴方様と共に見たい景色があるのです

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 色彩豊かな海を楽しんだ俺達は、次なる探検へと挑んでいた。以前、プラネタリウムにてバアルさんと一緒に見ようと約束していた場所。海の底を目指していた。

 まぁ、あの時は、もう一回バアルさんとプラネタリウムに行きたかったっていうか、デートしたいっていう口実だったんだけどさ。

 まさか、その時の約束がこのような形で果たされることになるとは。

『お約束致しましたよね? プラネタリウムで、今度は海底を見に参りましょうと……ですから、どうか、ご一緒して頂けないでしょうか? 貴方様と共に見たい景色があるのです』

 そうお願いされて差し出された手を、取らない選択肢なんて俺にはなかった。そりゃあ、もう、前のめりで握ったさ。何度も頷きながらな。

 目尻のシワを深め、手を握り返してくれた彼は『では、参りましょう』と俺の手を引きながら濃い青に向かって潜り始めた。それが、今から少し前のことって訳で。

 バアルさんの術が守ってくれているからだろう。もはや、白く差し込んでいた日差しすら届かなくなっているにも関わらず、俺の視界が暗くなることはない。鮮やかな魚達と戯れていた時のように、はっきりと見えている。さっきよりも、一段と青色が強くなっただけって感じだ。

 バアルさんは俺と手を繋いだまま、揃えた足をイルカの尾のようにうねらせて海水を蹴り進んでいる。彼の白い肌は、周囲に溶け込むように青く染まっている。

 というか、馴染んでしまっている。彼の場合、髪の毛も、お髭も、日差しを浴びれば透き通ってしまうような白だからだろう。お陰で、海に住まう幻想的な種族感が増している。漂う二本の触角や、ヒレのように揺らめいている半透明の羽も相まってさ。

 ……ホントに、キレイでカッコいいよな。

 目的地の海底ではなく、隣で泳ぐ彼ばかりを見てしまっていると少し真剣そうな眼差しがこちらを向いた。凛と細められていた瞳が、途端にゆるりと微笑んでくれる。少し、泳ぐスピードを緩めながら彼が尋ねてきた。

『お加減はいかがでしょうか? 何か、御身に不調はございませんか?』

 今のところは特に何も。そう考えたのが伝わったんだろう。頭の中で安心したような声が『左様でございますか』と呟いた。

『術を施させて頂いているとはいえ、只今の深さは本来ならば、繊細な貴方様が耐えられるようなものでは……少しでも違和感を感じましたら、すぐに仰って下さいね』

 それもそうか。いくらバアルさんの術が完璧でも、俺は彼みたく強くはないもんな。そもそも、生身では到底行けない場所へと向かっているんだ。気をつけておくに越したことはない。

 分かりましたっ、と心の中で大きく答えながら頷いてみせる。

『え、ええ……宜しくお願い致します』
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