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【新婚旅行編】一日目:羨ましいのは、片方だけじゃなくて
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視界に映ったかと思えば、すぐに何処かへと泳ぎ去っていく魚達。自由気ままな彼らの出演により、姿を変える景色は万華鏡のよう。同じ瞬間、同じ光景が二度と見られることはない。だからこそ、どれだけ眺めていても飽きやしない。
おまけにバアルさんのお陰で、空気の心配もしなくていい。身体もそんなに寒くなってはいない。むしろ快適なくらいだ。お陰様で、捗って仕方がない。バードウォッチングならぬ、フィッシュウォッチングが。
バアルさんも楽しんでいるんだろうか。
『ええ、楽しんでおりますよ』
ふと過ってからすぐに、頭の中で声が響いた。
振り向けば、柔らかく微笑む彼が丸っこい魚と戯れていた。長くて白い彼の指を、餌とでも思っているんだろうか。彼が人差し指を左に動かせば、すかさずついてくる。整えられた爪先を食むように、尖った小さな口を懸命にぱくぱくさせている。
何それ、すっごく羨ましいんですけど。
『ふふ、アオイにも出来ますよ』
緩やかな笑みを浮かべる彼は知る由もないだろう。俺が、両方に対して羨ましがっているだなんて。現に彼は片方だけを、魚と戯れる方法を俺にレクチャーしてくれる。
『どうも、彼らは魔力に惹かれているようでして……ですから、指先に軽く魔力を集中させるだけで、このように……』
魔力の流れが見えない俺でも、視認出来るようにだろう。彼の指先にホタルのような小さな光が灯った。
先程よりも込めた魔力が大きいからか、丸っこい彼だけでなく、他の小魚達まで彼の指先へと一目散に群がっていく。
『ほら、簡単でしょう?』
そう尋ねてくる耳心地のいい低音は、無邪気な子供のように楽しげで、どこか得意気で。けれども細められた瞳には、緩やかな笑みを浮かべた唇には、あふれんばかりの慈愛に満ちていて。
囚われてしまっていた。ただただ見つめてしまっていた。瞬きも、何なら息の仕方さえも忘れてしまうくらい。
また、頭の中で声がクスリと微笑む。ひと回り大きな手から包み込むように、手の甲に重ねられた途端、身体の感覚が戻ってきたような錯覚を覚えた。
『では、ご一緒にしてみましょうか?』
返事をする間もなく、繋いだ手から温かい感覚が流れ込んでくる。彼の魔力と俺の魔力。二つの流れが合わさって、重ねた手から淡い光が漏れ始める。
海面から差し込んでくる白い日差しにも劣らない煌めきに誘われたのは、俺達の周りを行き交っていた魚達だけではなかった。
俺達の頭上を泳ぐように現れた大きなシルエット。形の違うそれらは、見覚えのある形をしていて。
おまけにバアルさんのお陰で、空気の心配もしなくていい。身体もそんなに寒くなってはいない。むしろ快適なくらいだ。お陰様で、捗って仕方がない。バードウォッチングならぬ、フィッシュウォッチングが。
バアルさんも楽しんでいるんだろうか。
『ええ、楽しんでおりますよ』
ふと過ってからすぐに、頭の中で声が響いた。
振り向けば、柔らかく微笑む彼が丸っこい魚と戯れていた。長くて白い彼の指を、餌とでも思っているんだろうか。彼が人差し指を左に動かせば、すかさずついてくる。整えられた爪先を食むように、尖った小さな口を懸命にぱくぱくさせている。
何それ、すっごく羨ましいんですけど。
『ふふ、アオイにも出来ますよ』
緩やかな笑みを浮かべる彼は知る由もないだろう。俺が、両方に対して羨ましがっているだなんて。現に彼は片方だけを、魚と戯れる方法を俺にレクチャーしてくれる。
『どうも、彼らは魔力に惹かれているようでして……ですから、指先に軽く魔力を集中させるだけで、このように……』
魔力の流れが見えない俺でも、視認出来るようにだろう。彼の指先にホタルのような小さな光が灯った。
先程よりも込めた魔力が大きいからか、丸っこい彼だけでなく、他の小魚達まで彼の指先へと一目散に群がっていく。
『ほら、簡単でしょう?』
そう尋ねてくる耳心地のいい低音は、無邪気な子供のように楽しげで、どこか得意気で。けれども細められた瞳には、緩やかな笑みを浮かべた唇には、あふれんばかりの慈愛に満ちていて。
囚われてしまっていた。ただただ見つめてしまっていた。瞬きも、何なら息の仕方さえも忘れてしまうくらい。
また、頭の中で声がクスリと微笑む。ひと回り大きな手から包み込むように、手の甲に重ねられた途端、身体の感覚が戻ってきたような錯覚を覚えた。
『では、ご一緒にしてみましょうか?』
返事をする間もなく、繋いだ手から温かい感覚が流れ込んでくる。彼の魔力と俺の魔力。二つの流れが合わさって、重ねた手から淡い光が漏れ始める。
海面から差し込んでくる白い日差しにも劣らない煌めきに誘われたのは、俺達の周りを行き交っていた魚達だけではなかった。
俺達の頭上を泳ぐように現れた大きなシルエット。形の違うそれらは、見覚えのある形をしていて。
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