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【新婚旅行編】とある兵団長と彼の部下達は、かつての死地へと再び赴く

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 私達が踏みしめているのは、ほんの少し前までは「裁きの大地」と恐れられていた地。我が国の民ならば誰でも知っている、足を踏みいれてはならぬ地。

 この地では、我らが神が、我らを守る為に地中深くへと宿した「業火の炎」が絶えず燃え続けていた。天すら見放した、罪に穢れた人間達の魂を燃やし続けていた。

 いつの日か、彼等の罪が燃え尽きてまっさらになり、無へと帰れるように。新たな生命へと転生出来るように。

 それ故に、この地では昼夜問わず真っ赤な炎が這い回り、空は真っ黒に塗り潰されていた。魂達の罪が燃やされることにより生まれる「穢れ」が、私達の生命の源である魔力を奪わんとする災いが、空を覆い隠していたからだ。

 無論、そのような地に生命が宿る余地などある訳がなかった。ひび割れた大地と燃え盛る炎、夜闇よりも恐ろしい暗黒の空、響き続けている魂達の嘆きと懺悔。それらはまさに、地獄と呼べる光景だった。

 しかし、浄化の炎へと至る為には、地の果てを目指す為には、必ずやこの地を通らなければならなかった。穢れに魔力を奪われながら行く道程は、死地へと赴くのと同意であっただろう。

 度々裁きの大地へと遠征に来ていた私達ですら、何度死線をくぐったことか。

「……だというのに。ほんの僅かな間に、この地も随分と変わったものだ」

 思わず口にしていた呟きが、澄んだ空気の中へと溶けていく。

 穢れが満ちていた空は真っ青に晴れ渡っている。薄汚れ、ひび割れていた灰色の大地は肥沃な茶色へと。平穏を取り戻した地には、ほとんど失われていた魔力が戻ってきていた。新たな命が芽吹き始めていた。

 ああ、遠く見回しただけでも、ちらほらと目に止まるではないか。鮮やかな緑が、淡いピンクや薄紫の小さな花が。

 それもこれも、全ては遠目でも雄大な白い大樹のお陰。

 空を覆うように広く、高く、白い枝葉を伸ばし、星の形をした白い花を満開に咲き誇らせている、我らが神が私達に贈ってくれた最後の贈り物。天より落ちてくる魂達を余すことなく受け止めて、何の痛みも苦しみもなく罪を、穢れを浄化してくれている魔力の花のお陰だ。
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