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【新婚旅行編】旅行前日:レアな衣装の効果はテキメン

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 落ちていたブレーカーが上がったかのよう。目の前が明るくなっていく。まだぼんやりとしている視界に、安心したように微笑むバアルさんが映った。

「ああ、良かった……お気づきになられましたか?」

 喜びを過剰摂取する度に膝から崩れ落ちたり、腰が砕けたりしてしまっているのだ。流石にバアルさんも慣れてきたんだろう。心配そうにはしているものの特別焦った様子はない。ごくごく自然に俺に膝枕を提供してくれていた。

 そのお姿は、一瞬だけまともに見れた浴衣姿。透き通るような白い肌に合う鮮やかな緑の衣に、モデル顔負けな均整の取れた長身を包んでいる。

 早くも落ち着いていた心音が駆け出してしまいそう。なんせ、お披露目されてしまっているのだ。しっかりと頼もしいのにくびれた首のラインも、色気を感じる浮き出た鎖骨も。

 こんなの序の口だろう? 朝っぱらに見させてもらっている無防備な肉体美よりは。

 だなんて、頭の隅っこに残っている冷静な俺が突っ込んでくるが、それはそれ、これはこれ。

 常に執事服な彼の浴衣姿ってだけでも、俺にとっては効果テキメン。それにプラスアルファで、素敵なチラリズムまでいただいてしまっているんだぞ? 目の保養のラインなんて、あっさりぶち抜いていくに決まっているだろう!

 内心悶えつつも、俺は片時も目を離すことなくバッチリ堪能してしまっていた。

 返事を返すことなく不躾に見つめてしまっていたのに、バアルさんは穏やかな微笑みを崩さない。それどころか優しく抱き起こしてくれる。

「宜しければ此方をどうぞ……少し温めに淹れておりますので」

 差し出されたのは、花柄のペアカップ。有り難く受け取った、甘い香りが漂ってくるカップからは確かに、じんわりと手のひらに伝わってくる熱さはない。気にせずグビグビと飲めてしまえそうな程よい温度だ。

「ありがとうございます……」

 乾いた喉を通っていく口当りの良い優しい温度。スッキリとした後味の紅茶に、浮かれて荒れ狂っていた気持ちがゆったり凪いでいく。

 白い陶器のティーポットを手に、バアルさんが尋ねてきた。

「お代わりを注ぎましょうか?」

「お願いします」

 飲みやすさのあまり二杯、三杯。バアルさんも、彼の側で浮かんでいるカップの片割れで口を潤しながら、俺の背中を撫でてくれながら、のんびりとしたひと時を過ごしていたのだが。

「ところでアオイ。ヨミ様やグリムさん達にお送りする浴衣のお写真は、此方で宜しいでしょうか?」

「ん、え? ……どれどれ……っ」

 うっかり、まだ残っている紅茶をぶち撒けそうになってしまった。
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