601 / 804
【新婚旅行編】旅行前日:レアな衣装の効果はテキメン
しおりを挟む
落ちていたブレーカーが上がったかのよう。目の前が明るくなっていく。まだぼんやりとしている視界に、安心したように微笑むバアルさんが映った。
「ああ、良かった……お気づきになられましたか?」
喜びを過剰摂取する度に膝から崩れ落ちたり、腰が砕けたりしてしまっているのだ。流石にバアルさんも慣れてきたんだろう。心配そうにはしているものの特別焦った様子はない。ごくごく自然に俺に膝枕を提供してくれていた。
そのお姿は、一瞬だけまともに見れた浴衣姿。透き通るような白い肌に合う鮮やかな緑の衣に、モデル顔負けな均整の取れた長身を包んでいる。
早くも落ち着いていた心音が駆け出してしまいそう。なんせ、お披露目されてしまっているのだ。しっかりと頼もしいのにくびれた首のラインも、色気を感じる浮き出た鎖骨も。
こんなの序の口だろう? 朝っぱらに見させてもらっている無防備な肉体美よりは。
だなんて、頭の隅っこに残っている冷静な俺が突っ込んでくるが、それはそれ、これはこれ。
常に執事服な彼の浴衣姿ってだけでも、俺にとっては効果テキメン。それにプラスアルファで、素敵なチラリズムまでいただいてしまっているんだぞ? 目の保養のラインなんて、あっさりぶち抜いていくに決まっているだろう!
内心悶えつつも、俺は片時も目を離すことなくバッチリ堪能してしまっていた。
返事を返すことなく不躾に見つめてしまっていたのに、バアルさんは穏やかな微笑みを崩さない。それどころか優しく抱き起こしてくれる。
「宜しければ此方をどうぞ……少し温めに淹れておりますので」
差し出されたのは、花柄のペアカップ。有り難く受け取った、甘い香りが漂ってくるカップからは確かに、じんわりと手のひらに伝わってくる熱さはない。気にせずグビグビと飲めてしまえそうな程よい温度だ。
「ありがとうございます……」
乾いた喉を通っていく口当りの良い優しい温度。スッキリとした後味の紅茶に、浮かれて荒れ狂っていた気持ちがゆったり凪いでいく。
白い陶器のティーポットを手に、バアルさんが尋ねてきた。
「お代わりを注ぎましょうか?」
「お願いします」
飲みやすさのあまり二杯、三杯。バアルさんも、彼の側で浮かんでいるカップの片割れで口を潤しながら、俺の背中を撫でてくれながら、のんびりとしたひと時を過ごしていたのだが。
「ところでアオイ。ヨミ様やグリムさん達にお送りする浴衣のお写真は、此方で宜しいでしょうか?」
「ん、え? ……どれどれ……っ」
うっかり、まだ残っている紅茶をぶち撒けそうになってしまった。
「ああ、良かった……お気づきになられましたか?」
喜びを過剰摂取する度に膝から崩れ落ちたり、腰が砕けたりしてしまっているのだ。流石にバアルさんも慣れてきたんだろう。心配そうにはしているものの特別焦った様子はない。ごくごく自然に俺に膝枕を提供してくれていた。
そのお姿は、一瞬だけまともに見れた浴衣姿。透き通るような白い肌に合う鮮やかな緑の衣に、モデル顔負けな均整の取れた長身を包んでいる。
早くも落ち着いていた心音が駆け出してしまいそう。なんせ、お披露目されてしまっているのだ。しっかりと頼もしいのにくびれた首のラインも、色気を感じる浮き出た鎖骨も。
こんなの序の口だろう? 朝っぱらに見させてもらっている無防備な肉体美よりは。
だなんて、頭の隅っこに残っている冷静な俺が突っ込んでくるが、それはそれ、これはこれ。
常に執事服な彼の浴衣姿ってだけでも、俺にとっては効果テキメン。それにプラスアルファで、素敵なチラリズムまでいただいてしまっているんだぞ? 目の保養のラインなんて、あっさりぶち抜いていくに決まっているだろう!
内心悶えつつも、俺は片時も目を離すことなくバッチリ堪能してしまっていた。
返事を返すことなく不躾に見つめてしまっていたのに、バアルさんは穏やかな微笑みを崩さない。それどころか優しく抱き起こしてくれる。
「宜しければ此方をどうぞ……少し温めに淹れておりますので」
差し出されたのは、花柄のペアカップ。有り難く受け取った、甘い香りが漂ってくるカップからは確かに、じんわりと手のひらに伝わってくる熱さはない。気にせずグビグビと飲めてしまえそうな程よい温度だ。
「ありがとうございます……」
乾いた喉を通っていく口当りの良い優しい温度。スッキリとした後味の紅茶に、浮かれて荒れ狂っていた気持ちがゆったり凪いでいく。
白い陶器のティーポットを手に、バアルさんが尋ねてきた。
「お代わりを注ぎましょうか?」
「お願いします」
飲みやすさのあまり二杯、三杯。バアルさんも、彼の側で浮かんでいるカップの片割れで口を潤しながら、俺の背中を撫でてくれながら、のんびりとしたひと時を過ごしていたのだが。
「ところでアオイ。ヨミ様やグリムさん達にお送りする浴衣のお写真は、此方で宜しいでしょうか?」
「ん、え? ……どれどれ……っ」
うっかり、まだ残っている紅茶をぶち撒けそうになってしまった。
42
お気に入りに追加
463
あなたにおすすめの小説
侯爵令息セドリックの憂鬱な日
めちゅう
BL
第二王子の婚約者候補侯爵令息セドリック・グランツはある日王子の婚約者が決定した事を聞いてしまう。しかし先に王子からお呼びがかかったのはもう一人の候補だった。候補落ちを確信し泣き腫らした次の日は憂鬱な気分で幕を開ける———
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
初投稿で拙い文章ですが楽しんでいただけますと幸いです。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
ちっちゃくなった俺の異世界攻略
鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた!
精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!
婚約者の浮気相手が子を授かったので
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ファンヌはリヴァス王国王太子クラウスの婚約者である。
ある日、クラウスが想いを寄せている女性――アデラが子を授かったと言う。
アデラと一緒になりたいクラウスは、ファンヌに婚約解消を迫る。
ファンヌはそれを受け入れ、さっさと手続きを済ませてしまった。
自由になった彼女は学校へと戻り、大好きな薬草や茶葉の『研究』に没頭する予定だった。
しかし、師であるエルランドが学校を辞めて自国へ戻ると言い出す。
彼は自然豊かな国ベロテニア王国の出身であった。
ベロテニア王国は、薬草や茶葉の生育に力を入れているし、何よりも獣人の血を引く者も数多くいるという魅力的な国である。
まだまだエルランドと共に茶葉や薬草の『研究』を続けたいファンヌは、エルランドと共にベロテニア王国へと向かうのだが――。
※表紙イラストはタイトルから「お絵描きばりぐっどくん」に作成してもらいました。
※完結しました
【R-18】♡喘ぎ詰め合わせ♥あほえろ短編集
夜井
BL
完結済みの短編エロのみを公開していきます。
現在公開中の作品(随時更新)
『異世界転生したら、激太触手に犯されて即堕ちしちゃった話♥』
異種姦・産卵・大量中出し・即堕ち・二輪挿し・フェラ/イラマ・ごっくん・乳首責め・結腸責め・尿道責め・トコロテン・小スカ
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
貧乏大学生がエリート商社マンに叶わぬ恋をしていたら、玉砕どころか溺愛された話
タタミ
BL
貧乏苦学生の巡は、同じシェアハウスに住むエリート商社マンの千明に片想いをしている。
叶わぬ恋だと思っていたが、千明にデートに誘われたことで、関係性が一変して……?
エリート商社マンに溺愛される初心な大学生の物語。
王妃だって有休が欲しい!~夫の浮気が発覚したので休暇申請させていただきます~
ぽんぽこ@書籍発売中!!
恋愛
【書籍発売記念!】
1/7の書籍化デビューを記念いたしまして、新作を投稿いたします。
全9話 完結まで一挙公開!
「――そう、夫は浮気をしていたのね」
マーガレットは夫に長年尽くし、国を発展させてきた真の功労者だった。
その報いがまさかの“夫の浮気疑惑”ですって!?貞淑な王妃として我慢を重ねてきた彼女も、今回ばかりはブチ切れた。
――愛されたかったけど、無理なら距離を置きましょう。
「わたくし、実家に帰らせていただきます」
何事かと驚く夫を尻目に、マーガレットは侍女のエメルダだけを連れて王城を出た。
だが目指すは実家ではなく、温泉地で有名な田舎町だった。
慰安旅行を楽しむマーガレットたちだったが、彼女らに忍び寄る影が現れて――。
1/6中に完結まで公開予定です。
小説家になろう様でも投稿済み。
表紙はノーコピーライトガール様より
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる