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どうやら図星のご様子だ
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俺の分は、この二つで十分ですからと。俺ばっかりじゃ平等じゃないでしょう、と説得すれば渋々ながらも納得してくれた。再び画面をスクロールしてもらう。
とにもかくにも彼の好みを探さなければ。新しい形の物が出てくる度に、彼の反応を窺ってみるものの芳しくない。スタイリッシュというか、スポーティーというか。そういう系は好みではないらしい。
となれば可愛い系か。バアルさん、カラフルなのとかフリルが満載な服とか好きだもんな。でも、男用でそんなランジェリーなヤツあるんだろうか。
「あ……」
あった。噂をすればなんとやら、突然ジャンルが切り替わったかのよう。あれよあれよと表示されていく。
布地がレースのボクサータイプだったり。ブーメランタイプの上の部分にフリルをあしらった花柄だったり。おっと、これならイケるのでわ?
「い、意外と可愛い系もあるんですね……バアルさんは、やっぱりこういうのが……好き、ですか?」
「…………」
眼の前の光に浮かぶ画面から、黙ったままの彼へと視線を移す。映ったのは、頬をほんのりと染めたバアルさん。渋いお髭が素敵な口元を手で覆い、触覚と羽を揺らしている。
図星のご様子だ。かわいい。照れていらっしゃる。
良かった。これなら喜んでもらえそう。顔が熱を持つ気恥かしさも、彼の為ならば些細なもんだ。バアルさんに喜んでもらえるなら、どんなリクエストだって。
「どれが良いですか? 遠慮しないで選んで下さいね」
「……畏まりました」
彼が指差したのは、レース生地のボクサータイプ。とはいえ大事な部分も透けてはおらず、丈の長さも普段穿いてるのと変わらない。えっちな下着初心者な俺にとってハードル低めなヤツだ。これは、明らかに。
「……遠慮、してません?」
「…………」
またしても図星のご様子。目を逸らされてしまった。なんともバツが悪そう。穏やかな笑みばかりが浮かぶ唇が、若干歪んでしまっている。
「俺だって、リクエスト応えたいです。バアルさんが応えてくれたんですから」
鍛え上げられた胸元に身を寄せれば、僅かに震えていた羽がはためき出す。緑の瞳が、戸惑いがちに俺を見つめた。
「バアル……」
「っ…………お嫌な時は、無理せず正直に申し上げて下さいね?」
「はいっ」
よし、ここまでくればこっちのもんだ。心の中でガッツポーズをしながら、彼が選んでくれるのを待つ。
「……では、此方をお願いできますか?」
長い指先にご指名されたのは、ウェスト部分にフリルのついたブーメランパンツだった。色は白をベースにした小さなオレンジの花柄。こちらも別に透けてなく、尻もちゃんと隠せているので大丈夫そう。
「はい。色は、これでいいんですか?」
「ええ。貴方様こそ宜しいのでしょうか?」
「はい、バアルさんのと色と柄が違うだけですし」
可愛らしいフリルがついてはいるけれど。それを除けば、お揃いみたいなもんだろ。そういうことにしておこう。
じっと見つめてくる優しい眼差し。若葉を思わせる緑の瞳は心配そうな光を宿していたものの、すぐさま安心したように細められた。
流石、俺の心の内もお見通しなバアルさん。俺が無理をしていないことが分かったんだろう。
「ってことで、もう一枚選んでくださいよ。それで、やっと平等なんですから」
「……左様でございますね」
小さく頷いた彼が、宙に浮かぶ画面へと視線を移す。吟味するのかと思ったけれど、決まっていたみたい。おずおずと指し示したのは、ちょっぴりハードル高めなお品だった。
ブーメランタイプよりも少ない布地は、濃い緑のレース。お陰様で薄っすら透けて見えていらっしゃる。腹筋シックスパックなマネキンさんの灰色な肌が。股間が、尻が。
そして残りは紐。両腰にレースと同色の細い紐が結ばれている。リボン結びなそれは軽く引くだけで解けてしまうだろう。
「が、頑張りますね」
「……無理はしなくていいのですよ?」
「いや、でも、これだって……バアルさんの紐パンと布面積は変わらないですし」
……透けてるけど。
「……透けておりますが」
今度は俺の番だった。図星どころか、まんま心の声を読み取られてしまった。
「っ……で、でも喜んでくれますよね? 俺に……穿いて欲しいんですよね?」
「それは、そう……ですが……」
「じゃあ、買いましょう! 色は緑でいいんですよね? 緑にしますね!」
引き締まった首まで真っ赤に染めて、羽をはためかせているバアルさん。これは是非とも期待に応えたい。となれば行動あるのみだ。何かを言われる前に、丸め込まれる前に、このまま押し切ってしまおう。
彼の見様見真似で、購入ボタンらしきものにタッチする。カートのアイコンに表示されていた数字が、3から4へと変わった。
「さぁ、購入手続きしましょうか?」
「……畏まりました」
とにもかくにも彼の好みを探さなければ。新しい形の物が出てくる度に、彼の反応を窺ってみるものの芳しくない。スタイリッシュというか、スポーティーというか。そういう系は好みではないらしい。
となれば可愛い系か。バアルさん、カラフルなのとかフリルが満載な服とか好きだもんな。でも、男用でそんなランジェリーなヤツあるんだろうか。
「あ……」
あった。噂をすればなんとやら、突然ジャンルが切り替わったかのよう。あれよあれよと表示されていく。
布地がレースのボクサータイプだったり。ブーメランタイプの上の部分にフリルをあしらった花柄だったり。おっと、これならイケるのでわ?
「い、意外と可愛い系もあるんですね……バアルさんは、やっぱりこういうのが……好き、ですか?」
「…………」
眼の前の光に浮かぶ画面から、黙ったままの彼へと視線を移す。映ったのは、頬をほんのりと染めたバアルさん。渋いお髭が素敵な口元を手で覆い、触覚と羽を揺らしている。
図星のご様子だ。かわいい。照れていらっしゃる。
良かった。これなら喜んでもらえそう。顔が熱を持つ気恥かしさも、彼の為ならば些細なもんだ。バアルさんに喜んでもらえるなら、どんなリクエストだって。
「どれが良いですか? 遠慮しないで選んで下さいね」
「……畏まりました」
彼が指差したのは、レース生地のボクサータイプ。とはいえ大事な部分も透けてはおらず、丈の長さも普段穿いてるのと変わらない。えっちな下着初心者な俺にとってハードル低めなヤツだ。これは、明らかに。
「……遠慮、してません?」
「…………」
またしても図星のご様子。目を逸らされてしまった。なんともバツが悪そう。穏やかな笑みばかりが浮かぶ唇が、若干歪んでしまっている。
「俺だって、リクエスト応えたいです。バアルさんが応えてくれたんですから」
鍛え上げられた胸元に身を寄せれば、僅かに震えていた羽がはためき出す。緑の瞳が、戸惑いがちに俺を見つめた。
「バアル……」
「っ…………お嫌な時は、無理せず正直に申し上げて下さいね?」
「はいっ」
よし、ここまでくればこっちのもんだ。心の中でガッツポーズをしながら、彼が選んでくれるのを待つ。
「……では、此方をお願いできますか?」
長い指先にご指名されたのは、ウェスト部分にフリルのついたブーメランパンツだった。色は白をベースにした小さなオレンジの花柄。こちらも別に透けてなく、尻もちゃんと隠せているので大丈夫そう。
「はい。色は、これでいいんですか?」
「ええ。貴方様こそ宜しいのでしょうか?」
「はい、バアルさんのと色と柄が違うだけですし」
可愛らしいフリルがついてはいるけれど。それを除けば、お揃いみたいなもんだろ。そういうことにしておこう。
じっと見つめてくる優しい眼差し。若葉を思わせる緑の瞳は心配そうな光を宿していたものの、すぐさま安心したように細められた。
流石、俺の心の内もお見通しなバアルさん。俺が無理をしていないことが分かったんだろう。
「ってことで、もう一枚選んでくださいよ。それで、やっと平等なんですから」
「……左様でございますね」
小さく頷いた彼が、宙に浮かぶ画面へと視線を移す。吟味するのかと思ったけれど、決まっていたみたい。おずおずと指し示したのは、ちょっぴりハードル高めなお品だった。
ブーメランタイプよりも少ない布地は、濃い緑のレース。お陰様で薄っすら透けて見えていらっしゃる。腹筋シックスパックなマネキンさんの灰色な肌が。股間が、尻が。
そして残りは紐。両腰にレースと同色の細い紐が結ばれている。リボン結びなそれは軽く引くだけで解けてしまうだろう。
「が、頑張りますね」
「……無理はしなくていいのですよ?」
「いや、でも、これだって……バアルさんの紐パンと布面積は変わらないですし」
……透けてるけど。
「……透けておりますが」
今度は俺の番だった。図星どころか、まんま心の声を読み取られてしまった。
「っ……で、でも喜んでくれますよね? 俺に……穿いて欲しいんですよね?」
「それは、そう……ですが……」
「じゃあ、買いましょう! 色は緑でいいんですよね? 緑にしますね!」
引き締まった首まで真っ赤に染めて、羽をはためかせているバアルさん。これは是非とも期待に応えたい。となれば行動あるのみだ。何かを言われる前に、丸め込まれる前に、このまま押し切ってしまおう。
彼の見様見真似で、購入ボタンらしきものにタッチする。カートのアイコンに表示されていた数字が、3から4へと変わった。
「さぁ、購入手続きしましょうか?」
「……畏まりました」
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