上 下
432 / 702

★ 結局のところ俺は

しおりを挟む
「んんっ……」

 不意打ちだった。

 優しく指の腹で摘まれた瞬間、駆け抜けていった刺激。腰の辺りから、一気に頭の天辺まで上り詰めた何かが、俺の目の前を白く染めていく。

「んぅ、んっ、んん…………あっ、ぁ……」

 イっちゃった……ちょっと触ってもらえただけなのに。ずっと焦らされてたから、我慢出来なかった。

 よっぽど、だったんだろうか。滲んだ視界は、いまだにパチパチと明滅しているし。全身は、何とも言えない多幸感に震えている。

 反射的に掴んでしまっていた幅広の肩。頼もしくて男らしい、盛り上がった筋肉越しに、大きく広がった半透明の羽がはためいている。

 まだ俺は、息すら整っていなかった。けれども、再開してしまった。

 しっとりとした指先が、また俺にさっきの淡い感覚を思い出させようとしてくる。指の腹で硬い乳首を挟んだまま、力を込めては緩め、また力を込めてを繰り返す。さっき俺が期待していた通りに。

 焦らされてもいないのに、早くも気持ちのいい波に飲まれそうになってしまう。

 ダメだ……さっきイったばっかなのに……また、俺……

「っあ……ま、待って……バアルさ……あぁっ……」

「……何故でしょうか? 御身は大変悦んでいらっしゃるとお見受けしますが」

 バアルさんが、不思議そうに眉毛を下げている。無理もない。

 欲張りな俺の身体は、彼がくれる心地よさにすでに屈しているのだから。こっちも触って欲しいと強請るように、見せつけるように股を開き、腰をヘコヘコ揺らしてしまっているのだから。

「……ずっと、こうして欲しかったのでしょう? 私の指で、沢山触れて欲しかったのではございませんか?」

「それは……そう、ですけど……あっ、でも、イっちゃ……あぁっ……ずっと、乳首だけで……イっちゃってるから……」

 素直に自白した通り、俺は何度も気持ちよくなってしまっていた。

 頭がぼうっとするような甘い声で囁かれながら、両方の乳首を揉むように可愛がってもらう。その度に俺の視界は歓喜の涙で滲み、声は情けなく上擦ってしまう。

 もう、トレーナーはぐしょぐしょだ。一部だけ、すっかり色が変わってしまっている。いまだに硬さを保ったままの俺のものが、内側から押し上げてしまっている部分だけ。

「……では、お止めしましょうか?」

 最後に軽く摘んでから、彼が指を離してしまう。

「あっ……」

 イヤだと思ってしまっていた。物欲しそうな声を上げてしまっていた。自分から、待って欲しいと頼んだくせに。

 ……ああ、そうか。

 結局のところ、俺は彼にドロドロになるまで甘やかして欲しいのだ。その願望を、素直に口にするのは恥ずかしいし……とめどない快楽に溺れるのは、ちょっぴり不安だけれど。

 少し見上げた先で、柔らかい眼差しとかち合う。

 不思議だ。バアルさんは何も言っていない。だけど自然に感じていた恥ずかしさが、不安が和らいでいったんだ。

「……止めないで、下さい……もっと、触って……俺のこと、可愛がって下さい……」

「畏まりました……貴方様のお望みのままに……」

 大人の色気あふれる、目尻のシワが深くなる。

 再び優しく摘んでもらえて、全体を軽く押し潰すように撫で回してもらえて。目の奥が、足の裏が、指先が、ジンと熱を帯びていく。

 首の辺りに感じた、彼の熱い吐息。少し乱れたそれすら、今の俺にとっては心地よさになるらしい。こそばゆさが甘い疼きとなって、俺の頭をますます蕩けさせていく。

「ひぁっ……あ、あっ、いい…………バアルさ、もっと……」

 直接的な言葉で強請ってはいなかった。けれども、俺の胸の内なんてお見通しな彼は、すぐに叶えてくれた。

「はい、此方も触って差し上げますね」

 片方の手が、胸元から下りていく。わざとらしく、手のひらで内股をするりと撫でてから、濡れそぼった俺のものへ指を這わせた。

「っあ……ふ、んぅっ……」

 まだ、幹を握ってもらえただけ。でも、感じまくっている身体には、十分な刺激だったらしい。とぴゅっと漏らしてしまった熱が、彼のしなやかな指を、優しい手のひらを汚してしまう。

 申し訳なく思ったのは、一瞬だった。

「あっ、ん、ふぁ…………あっ、あぁ……」

 すぐに考えられなくされた。気持ちいいってこと以外、考えられなくなってしまったんだ。

 乳首を爪の先で引っ掻くように軽く擽られながら、あそこを根元からカリの段差に向かって扱かれる。時々、指の腹がいいところに、丁度裏筋を擦り上げる度に、腰が大きく跳ねてしまう。

 定期的に軽くイっていても、大きなヤツはくるらしい。

 重たい熱が下腹部からせり上がってきて、全身がバクバクと喚き始める。激しい快感に飲み込まれそうになってしまう。

「あ、あ、あっ……も、くる……んぁっ……きちゃ……バアルさ……また、俺ぇ……」

「大丈夫ですよ……可愛いですよ、アオイ……もっと愛らしい声をお聞かせ下さい……」

 優しい言葉を囁かれ、触れるだけのキスをもらう。いつもならば、心が安らぐそれらがトドメになった。

「ひぅっ……あっ、うぁ…………」

 俺は思いっきり放ってしまっていた。上体を大きく仰け反らせながら、太ももをガクガク揺らしながら。

 けれども、彼の手は止まらない。

 何事も無かったかのように乳首を捏ねるように撫で、震える俺のものをシコシコ慰め続けている。

「あっ、んっ、あっ、あぁ……あっ、あっ……」

 多分、俺の望みは大方叶ったんだと思う。何回も続けてイってしまっていた途中で意識を手放してしまったけれど。

 バアルさんは、ずっと俺を可愛がってくれていたから。いっぱい口づけてくれたから。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

圏ガク!!

はなッぱち
BL
人里から遠く離れた山奥に、まるで臭い物に蓋をするが如く存在する、全寮制の男子校。 敷地丸ごと圏外の学校『圏ガク』には、因習とも呼べる時代錯誤な校風があった。 三年が絶対の神として君臨し、 二年はその下で人として教えを請い、 一年は問答無用で家畜として扱われる。 そんな理不尽な生活の中で始まる運命の恋? 家畜の純情は神に届くのか…! 泥臭い全寮制学校を舞台にした自称ラブコメ。

【完結】身売りした妖精姫は氷血公爵に溺愛される

鈴木かなえ
恋愛
第17回恋愛小説大賞にエントリーしています。 レティシア・マークスは、『妖精姫』と呼ばれる社交界随一の美少女だが、実際は亡くなった前妻の子として家族からは虐げられていて、過去に起きたある出来事により男嫌いになってしまっていた。 社交界デビューしたレティシアは、家族から逃げるために条件にあう男を必死で探していた。 そんな時に目についたのが、女嫌いで有名な『氷血公爵』ことテオドール・エデルマン公爵だった。 レティシアは、自分自身と生まれた時から一緒にいるメイドと護衛を救うため、テオドールに決死の覚悟で取引をもちかける。 R18シーンがある場合、サブタイトルに※がつけてあります。 ムーンライトで公開してあるものを、少しずつ改稿しながら投稿していきます。

『恋愛短編集②』婚約破棄の後には、幸せが待って居ました!

Nao*
恋愛
9/18最新『婚約者の妹より良い成績を取った私は、シスコンの彼の怒りを買い婚約破棄されました。』 規約改定に伴い、今まで掲載して居た恋愛小説(婚約者の裏切り・婚約破棄がテーマ)のSSをまとめます。 今後こちらに順次追加しつつ、新しい話も書いて行く予定です。

兄がいるので悪役令嬢にはなりません〜苦労人外交官は鉄壁シスコンガードを突破したい〜

藤也いらいち
恋愛
無能王子の婚約者のラクシフォリア伯爵家令嬢、シャーロット。王子は典型的な無能ムーブの果てにシャーロットにあるはずのない罪を並べ立て婚約破棄を迫る。 __婚約破棄、大歓迎だ。 そこへ、視線で人手も殺せそうな眼をしながらも満面の笑顔のシャーロットの兄が王子を迎え撃った! 勝負は一瞬!王子は場外へ! シスコン兄と無自覚ブラコン妹。 そして、シャーロットに思いを寄せつつ兄に邪魔をされ続ける外交官。妹が好きすぎる侯爵令嬢や商家の才女。 周りを巻き込み、巻き込まれ、果たして、彼らは恋愛と家族愛の違いを理解することができるのか!? 短編 兄がいるので悪役令嬢にはなりません を大幅加筆と修正して連載しています カクヨム、小説家になろうにも掲載しています。

王妃のおまけ

三谷朱花
恋愛
私、立夏は、異世界に召喚された後輩とたまたま一緒にいたことで、異世界について来ることになった。 ただ、王妃(ヒロイン)として召喚された後輩もハードモードとか、この世界どうなってるの?! 絶対、後輩を元の世界に連れて帰ってやる! ※アルファポリスのみの公開です。 ※途中でリハビリ方法について触れていますが、登場人物に合わせたリハビリになっていますので、万人向けのリハビリではないことをご理解ください。

死に戻りオメガと紅蓮の勇者

渡辺 佐倉
BL
オメガであることが分かったユーリは屋敷で軟禁されて暮らしていた。 あるとき、世界を救った勇者と婚約が決まったと伝えられる。 顔合わせをした勇者は朗らかでとてもやさしい人で…… けれどアルファ至上主義であるこの国の歪みが悲劇を生む。 死んだと思ったユーリは気が付くと性別判定の儀式の前に逆行していることに気が付いたが…… 一度目の人生で引き離された二人が二度目の人生で幸せをつかむ話です。 オリジナル設定のあるオメガバース異世界です。 タイトルの通り死に戻りの物語です。逆行前は不幸な話が続きますのでご注意ください。 勇者と言ってますがこの世界の勇者は魔法使いです。 後半にラブシーンが入る予定なのでR18としています。

政略結婚の約束すら守ってもらえませんでした。

克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 「すまない、やっぱり君の事は抱けない」初夜のベットの中で、恋焦がれた初恋の人にそう言われてしまいました。私の心は砕け散ってしまいました。初恋の人が妹を愛していると知った時、妹が死んでしまって、政略結婚でいいから結婚して欲しいと言われた時、そして今。三度もの痛手に私の心は耐えられませんでした。

【R18】両想いでいつもいちゃいちゃしてる幼馴染の勇者と魔王が性魔法の自習をする話

みやび
恋愛
タイトル通りのエロ小説です。 「両想いでいつもいちゃいちゃしてる幼馴染の勇者と魔王が初めてのエッチをする話」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/902071521/575414884/episode/3378453 の続きです。 ほかのエロ小説は「タイトル通りのエロ小説シリーズ」まで

処理中です...