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★ 宣言通りに、満足出来るまで

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「……畏まりました」

 引き締まった腕が俺をベッドへと横たえる。壊れ物を扱っているかのように、ゆっくり丁寧に。

 だというのに、ご自身に関しては少々粗っぽい。手早く脱いだジャケットに、白手袋、ネクタイと次々放り投げていくのだから。

 とはいえ、ふかふかの絨毯の上に散らかることはなかった。手品のごとく、投げた先から消えていったんだ。やっぱり術って便利だよな。

 見事なお手並みを眺めていると、ごく自然にかち合った瞳。俺を捉えた途端に柔らかく微笑んでくれた彼が、静かにベッドの端へ腰を下ろした。

 木材が軋む音を鳴らしながら、鍛え上げられた太ももが仰向きに転がる俺を跨いでいく。水晶のように煌めく羽を広げ、スラリと伸びたシルエットが俺を茜色の光から覆い隠す。

 気がつけば、求めるように腕を伸ばしていた。

「……バアル」

「……はい、貴方様のバアルは此処に」

 ひと回り大きな手のひらが、俺の手を取り繋いでくれる。膝立ちで見下ろしていても、なお高く見える背筋。遠くに感じていた僅かな距離を彼が埋めてくれた。

 額が重なり、唇に熱い吐息が触れて交じる。

「ん……」

 バアルさんと触れ合えた。それだけで心が満たされていく。喜びがあふれていく。

 でも身体は違った。柔らかく微笑む彼から甘やかしてもらっている間も、渇きに似た何かを覚えてしまう。

 きっと俺が欲張りだからだろう。だから、もっと欲しいって……触って欲しいなって思っちゃうんだ。

「んんっ……」

 急にもたらされた刺激。待ち望んでいた、頭の芯まで痺れるような感覚に、ジンと下腹部が疼いてしまう。

 どうやらお見通しだったらしい。俺が訴えなくとも、不満の声を漏らさなくとも。

 キスに夢中になっている内に、肌着の下へと潜り込んでいた細く長い指。整えられたキレイな指先が、俺の乳首に優しく触れてくれている。

「あ、あ、ふ……っ……ぅ……」

 摘まれたまま、しっとりとした指の腹でくにくに転がされたり。ピンッと立った先端を、押し潰すように優しく撫で回されたり。

 とっくに限界間近だったからだろう。熱のこもった眼差しが見守る中、俺は汗ばんだ下着の中をさらにじわりと滲ませてしまっていた。ちょっぴり、イっちゃったんだ。ひたすらに、もどかしい触れ方だったのにさ。

 ぴくぴく小刻みに震えている俺の腰を、大きな手がゆったり撫でてくれる。余韻に浸っているからか、俺の身体は今、貪欲になっているらしい。それだけでも、心地良さへと変換してしまっていたんだ。

 いつもよりもトーンの低い声が甘く囁く。

「可愛いですね……私のアオイは……」

 凛々しい眉を困ったように下げながら、繋いでいた手をエスコートする形で握り直される。

 左手の薬指で光る銀色。柔らかく綻んだ唇が、お揃いの輪に静かに触れた。まるで誓いを立てるみたいに。

 包み込むように両手で撫でてもらえたかと思えば、シワの寄ったシーツへと下ろされた。離れていった手の温もりが恋しいせいだと思う。手のひらで触れている真っ白な生地が冷たくて仕方がない。

 といっても、すぐに気にならなくさせられてしまったんだけれど。胸の内にほんのり過ぎった寂しさもろとも。

「……ですが、先程はしっかり達せられませんでしたよね?」

 肯定も、言い訳もする間もなく、さらけ出されてしまった。慣れた手つきで俺のパンツごと、するりとズボンをずり下ろされて。

「っ……」

 先端からとろとろこぼしたもので、すでにぐしょぐしょに濡れそぼっている俺のもの。収まることなく、びくびく震えている様を見て「ああ、やはり……」とうっそり呟く。

 緩やかな笑みを描いた口元が色っぽい。たくわえられた渋いお髭も相まって、スゴくカッコいい。
 
「申し訳ございませんでした……次は此方も可愛がって差し上げますね……思いっきり気持ちよくなられて下さい」

 ぽーっと見惚れてしまっていたからだ。心の準備が疎かになっていた。

「ひぅっ……」

 竿を優しく握られただけで、唐突にもたらされた直接的な刺激だけで、ぴゅっと漏らしてしまっていたんだ。まぁ、準備が出来ていたところで堪えられたのかって話だが。

 今回も軽くだったからか、大きな手は止まらない。それどころか、やや性急な動きで俺をもう一度導こうとしている。

「あっ、あぁっ……バアルさ、あっ、あ、あ……」

 輪っかにした指がすりすりと先端に近い部分から擦り上げる。何度も何度も繰り返し、カリの段差ばかりを丹念に刺激してくるだけじゃない。

 反対の手のひらで敏感な場所を、ねっとり濡れた先端を、包み込むようにぐりゅぐりゅと撫で回してくれるもんだから堪らない。

 もう、イっちゃ……さっきイったばかりなのに……また、漏らしちゃ……

「どうか、ご遠慮なさらないで……気持ちよくなられていいのですよ……さあ……」

 あっさり見透かされて、囁かれて、すぐだった。

「っ……んっ、んんっ、ふ……ぁ……」

 俺は言葉通りに盛大に放ってしまっていた。キレイな彼の白い手をドロドロに汚してしまったんだ。はしたなく大きく広げた太ももを、びくんっ、びくんっと揺らしながら。

 最近、変だ……俺の身体……どうかしちゃったのかな? バアルさんから……いいよって、言ってもらえただけなのに。

 不意に噛みつくみたいに口づけられた。はっ、はっ、と乱れた息ごと、だらしなく伸ばしていた舌ごと飲み込まれ、絡め取られていく。

「は、んっ、ん……ふ……」

 舌と舌とを擦りつけ合う度に立ててしまう、くちゅ、くちゅ、といやらしい音。頭の芯まで響くような感覚に酔っている最中、また俺の全身が激しい快感の波に飲まれていく。

「んあっ……ぁ……あぁ……」

 思わず縋りつき、握り締めた手の中で、彼のシャツがくしゃりと歪む。シーツの上で藻掻くように足を伸ばしながら、腰をカクカク震わせながら、俺は二度目の深い絶頂を迎えた。

「ふふ、また気持ちよくなられたのですね……」

「う……ぁ……ばある、さ……」

「大丈夫ですよ、沢山致して差し上げますからね。貴方様がご満足頂けるまで、何度も……」

「あっ……あ、ぁ、あぁっ……っ……ぁ……ん……」

 それから俺は、宣言通りに致してもらってしまった。逞しい腕の中で、たっぷり可愛がってもらってしまったんだ。

 よしよしと頭を、頬を撫でられながら。優しく、時には激しいキスを送ってもらいながら。頭の中が真っ白に染まってしまうまで。好きだって、気持ちいいってことしか考えられなくなるまで。
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