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決してかこつけている訳じゃない、暖を求めているだけだ
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何だか今日は妙に肌寒い。大きな窓からは昨日と変わらず燦々と、陽気な日差しが差し込んできているにも関わらず。
だからまぁ、暖を求めて身近な温もりにくっつきたくなってしまうのも仕方がないだろう。うん、仕方がないハズだ。別にかこつけている訳じゃない、決して。
高く広い天井には青い水晶で出来た綺羅びやかなシャンデリアが彩りを添え、床一面には繊細な模様が描かれた絨毯が広がる室内。
お高いアンティークショップや海外の豪邸にでも置いていそうな、背もたれと足の部分に銀の装飾が施されたソファーの上で俺は寛いでいた。
まぁ正確にいえば直ではない。ゆったり腰掛けているバアルさんの逞しいお膝の上で、なのだが。
つい先程天気の話をするノリで、なんか……少し寒いですね、と振った後。
額の触覚をそわそわ揺らし、半透明の羽をはためかせながら、おもむろに両腕を広げた彼からのお誘いに、うっきうきで食いつき今に至る。
広い背中に腕を回し、思いっきり堪能させてもらっている男らしいお胸の筋肉は、相変わらず素晴らしい。
キッチリ着こなした、黒い執事服の上からでも分かる立派な盛り上がりなだけあって、程よい弾力と柔らかさだ。
地球を包み込むレベルの優しさと包容力を備えた彼、バアルさんは嫌な顔一つしない。頬を何度も擦り寄せたり、顔を埋めたりと好き勝手にやらせてもらっているのにさ。
横抱き……所謂お姫様抱っこの形でお邪魔させてもらっている俺を、長く引き締まった腕で包み込んでくれながら微笑んでいる。
穏やかに流れ行く午後のひと時。いつもだったら先生でもある彼に魔術を教わったり、次のデートに向けた軍資金を蓄えるべく、内職に励んだりしている頃だ。
頃なのだが……動きたくない。なんならもう、ずっとこのままがいい。
バアルさんの温もりが心地よすぎるのは勿論。余すことなく全身をゆったり撫で回してくれる、大きな手によってもたらされる癒やしが、拍車をかけているんだ。
一度味わったら抜け出せないという意味ではこたつと一緒、いやそれ以上の魔性の魅力があるな。
一家に一人バアルさん。そうすれば、世界が平和に……いや、それはダメだな絶対。バアルさんは俺だけのバアルさんなんだから。
すっかりお花が咲き乱れているだけでなく、完全に蕩けきった脳みそが、明後日の方向へ羽ばたき始めていた時だった。
「貴方様がそれ程までに夢中になられる、こたつ……というものは、一体どのような代物なのでしょうか?」
穏やかな低音が、まるで俺の心の声と会話するように尋ねてきたのは。
「ふぇ……」
弾かれたように顔を上げ、間抜けな声を漏らした俺を、目が覚めるくらい鮮やかな緑の瞳が見つめる。
整えられた白い髭が渋くてカッコいい口元には、あふれそうな喜びを湛えていた。
「もしかして……こ、声に出てました?」
「はい。アオイ様だけのものである私め……と双璧を成しているようですので、気になってしまいました」
一縷の望みをかけて、尋ねてみたがムダだった。しかも一番聞かれていたら困る部分を引用、というか強調してくる徹底ぶりだ。
「ひぇ……」
事実なんだから否定はしない。けれどもやっぱり顔はどんどん熱くなるし、背中はむずむず擽ったくなってしまう。
耳触りのいい声で得意気に言い放った彼は、その滑らかな白い頬を一切染めることなく、堂々としているもんだから余計に。
「あー……えっと、暖房器具のことです」
いきなり話題を戻したからだろう。宝石のように煌めく緑の瞳を縁取る、白く長い睫毛がぱちぱち瞬く。
いやだって仕方がないじゃないか。聞かれたことにはちゃんと答えるべきだろう、普通。
全然、微塵も誤魔化したり、これ以上の追求を避けるべく先手を打ったんじゃないぞ。
だからまぁ、暖を求めて身近な温もりにくっつきたくなってしまうのも仕方がないだろう。うん、仕方がないハズだ。別にかこつけている訳じゃない、決して。
高く広い天井には青い水晶で出来た綺羅びやかなシャンデリアが彩りを添え、床一面には繊細な模様が描かれた絨毯が広がる室内。
お高いアンティークショップや海外の豪邸にでも置いていそうな、背もたれと足の部分に銀の装飾が施されたソファーの上で俺は寛いでいた。
まぁ正確にいえば直ではない。ゆったり腰掛けているバアルさんの逞しいお膝の上で、なのだが。
つい先程天気の話をするノリで、なんか……少し寒いですね、と振った後。
額の触覚をそわそわ揺らし、半透明の羽をはためかせながら、おもむろに両腕を広げた彼からのお誘いに、うっきうきで食いつき今に至る。
広い背中に腕を回し、思いっきり堪能させてもらっている男らしいお胸の筋肉は、相変わらず素晴らしい。
キッチリ着こなした、黒い執事服の上からでも分かる立派な盛り上がりなだけあって、程よい弾力と柔らかさだ。
地球を包み込むレベルの優しさと包容力を備えた彼、バアルさんは嫌な顔一つしない。頬を何度も擦り寄せたり、顔を埋めたりと好き勝手にやらせてもらっているのにさ。
横抱き……所謂お姫様抱っこの形でお邪魔させてもらっている俺を、長く引き締まった腕で包み込んでくれながら微笑んでいる。
穏やかに流れ行く午後のひと時。いつもだったら先生でもある彼に魔術を教わったり、次のデートに向けた軍資金を蓄えるべく、内職に励んだりしている頃だ。
頃なのだが……動きたくない。なんならもう、ずっとこのままがいい。
バアルさんの温もりが心地よすぎるのは勿論。余すことなく全身をゆったり撫で回してくれる、大きな手によってもたらされる癒やしが、拍車をかけているんだ。
一度味わったら抜け出せないという意味ではこたつと一緒、いやそれ以上の魔性の魅力があるな。
一家に一人バアルさん。そうすれば、世界が平和に……いや、それはダメだな絶対。バアルさんは俺だけのバアルさんなんだから。
すっかりお花が咲き乱れているだけでなく、完全に蕩けきった脳みそが、明後日の方向へ羽ばたき始めていた時だった。
「貴方様がそれ程までに夢中になられる、こたつ……というものは、一体どのような代物なのでしょうか?」
穏やかな低音が、まるで俺の心の声と会話するように尋ねてきたのは。
「ふぇ……」
弾かれたように顔を上げ、間抜けな声を漏らした俺を、目が覚めるくらい鮮やかな緑の瞳が見つめる。
整えられた白い髭が渋くてカッコいい口元には、あふれそうな喜びを湛えていた。
「もしかして……こ、声に出てました?」
「はい。アオイ様だけのものである私め……と双璧を成しているようですので、気になってしまいました」
一縷の望みをかけて、尋ねてみたがムダだった。しかも一番聞かれていたら困る部分を引用、というか強調してくる徹底ぶりだ。
「ひぇ……」
事実なんだから否定はしない。けれどもやっぱり顔はどんどん熱くなるし、背中はむずむず擽ったくなってしまう。
耳触りのいい声で得意気に言い放った彼は、その滑らかな白い頬を一切染めることなく、堂々としているもんだから余計に。
「あー……えっと、暖房器具のことです」
いきなり話題を戻したからだろう。宝石のように煌めく緑の瞳を縁取る、白く長い睫毛がぱちぱち瞬く。
いやだって仕方がないじゃないか。聞かれたことにはちゃんと答えるべきだろう、普通。
全然、微塵も誤魔化したり、これ以上の追求を避けるべく先手を打ったんじゃないぞ。
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