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★ ますます俺は感じやすくなっているらしい

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「畏まりました」

 頭の上では絶賛、くすくすと楽しそうな声が絶えないが、俺にとっては些末なことだった。しなやかな指先が、大きな手のひらが与えてくれる癒しに、溺れきっている俺にとっては。

 ……本格的に駄目になってしまいそうだな。バアルさんの腕の中っていう快適空間にいるんだから、当然といえば当然なんだけどさ。

 撫でやすくする為だろう。俺が羽織っていた、胸元のリボンが特徴的な緑のケープは気がつけば外されていた。

 いつも通り手品のような彼の魔術によって、どこかへと煙のようにポンッと消えていく。

 お陰で俺の服装は、袖の部分が膨らんだシャツと膝上丈のズボンだけになってしまったが、寒さは微塵も感じない。

 むしろポカポカでウキウキだ。ますます彼の体温を、身近に感じられるようになったからな。

 余すことなく全身を撫でられる度に、引き締まった身体へと回している腕から力が抜けていく。連動するみたいに、だんだんと瞼も重くなってしまう。

 もう、このまま夕御飯まで眠ってしまおうか……

 委ねきっていた身体と一緒に、うとうとしている意識も手放そうとした時だった。するりと俺の耳を撫でた指先が、妖しく動いたのは。

「ん……ぁ、バアル……さん?」

 少し、ほんの少しだけど、背筋にあの感覚が走った。ぞくぞくして、身体の奥の方がそわそわしてしまうあの感覚が。

 思わず胸元から顔を離した俺を、申し訳無さそうに眉を下げた彼が迎える。

「失礼致しました……どうかお気になさらず、ゆっくりとお休みになって下さい」

 さっきのは俺の気のせいだったんだろう。なんせ彼は、優しさが服を着て歩いてるような人だ。そんな彼がなんの理由もなく、ちょっかいを出すなんて有り得ないもんな。

「あ……はい、ありがとう、ございます」

 穏やかな微笑みに促され、再び元のポジションに頬を預ける。しばらくして、こっくりこっくりと船を漕ぎ出していた俺を、再びあの感覚が襲った。

「うぅん……あっ、ん……」

 産毛だけを撫でているように指先が行き交う。首のラインを根本から襟足にかけて……何度も、何度も。

「あ、あ……んぅ……ふぁ……っ……」

 じくじくと募っていくもどかしさに、思わず情けなく上ずった声を上げてしまっていた。つい握り締めてしまっていた彼のシャツが、手の中でくしゃりと歪んでいく。

 どうしよう……俺、ますます感じやすくなってるのかな? じゃないとおかしいもんな。説明がつかない。バアルさんは、ずっと優しく撫でてもらっているだけなのに。

 ぐるぐると思考が困惑している真っ最中でも、指の動きは止まらない。

 耳の裏を優しく擽ったり、触れるか触れないかのタッチで背骨を上下になぞったり。俺の弱いところばかりを触れ、追い詰めていく。

 目なんかすっかり覚めてしまっていた。それどころか、男として大事な部分が反応し始めてしまっている。少し前とは別方面で心地よい刺激を、たっぷりいただいているせいで。

「っあ、ぅ……バアルさん……ご、ごめんなさい……」

 色々と限界寸前だった俺は、全部白状することにした。彼なら助けてくれると思ったんだ。自分の身に起こってしまっている現状を伝え、きちんとお願いすれば、きっと。

「……いかがなさいましたか?」

 柔らかい笑みを浮かべた彼は、どこか上機嫌そうだ。触覚をゆらゆら揺らしながら、少し滲んだ俺の目尻を優しく拭ってくれている。

「……撫でて、もらえてるのに……俺、んっ……き、気持ちよく、ぁ……なっちゃって……その……ごめんなさい……」

 絶妙な彼のタッチにより、頭の中が白く塗りつぶされかけているせいだ。伝えたいことの半分も、上手く言葉に出来なかった。

 言葉足らずの訴えに、察しのいい彼も流石に困惑しているんだろう。鼻筋の通った顔はきょとんと固まり、長い睫毛がぱちぱち瞬いている。

 ただでさえ熱い顔に、カッと熱が集まっていくのを感じた。ドキドキと高鳴り続けている鼓動が、シンと静まり返った部屋にまで響いているような……そんな錯覚まで覚えてしまう。

 どうしよう……いっそのこと……え、えっちして欲しいですって言うべきか?

 もう、恥なんかとっくに散々かいてるんだからさ。素直に言った方が……

「……申し訳ございません」
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