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細マッチョな先輩と恋人同士になった件(ソレイユルート)
じゃあ、コレでちゃらってことで
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鼻を擽るシャボンの香り。馴染みしかない、日頃俺が使っているものと同じ香り。
不思議だな……一緒のボディーソープを使ったハズなのに。先輩の方が、いい匂いがする。甘くて、柔らかくて、スゴく落ち着く。
もっとくっついていたくて広い背中へと腕を回した。
驚かせてしまったんだろうか。密着してしまっている鍛え抜かれた逞しい長身から、僅かな震えが伝わってきた。今、先輩、どんな顔をしているんだろう。
一度気になってしまえば、前向きなそわそわ感と、少し後ろ向きな不安感とに同時に襲われてしまう。消化不良に似たモヤモヤ感を解決すべく顔を上げようとしていたところで、擽ったそうな笑い声が頭の上から降ってきた。
「……可愛いなぁ……もー……そんな風に甘えてもらえちゃったら、何にも言えなくなっちゃうじゃん」
蕩けるような笑顔だった。どこもかしこも、ふにゃりと綻んでいた。細長い眉も、タレ目の瞳も、スッと通った眼尻も、形の良い唇も。
まるで、愛しさが、慈しみがあふれているような。その笑顔を向けてもらえるだけで、俺は温かさに包まれていくような感覚を覚えていた。
「……ん? どうしちゃったの、ぽかんとしちゃって……あー……もしかして、また、オレに見惚れてくれちゃってたり?」
最初は不思議そうに。何かを察した途中からは楽しそうに。明るい調子で尋ねながら、先輩が俺の背中を宥めるみたいに、ぽん、ぽんっと軽く叩き始める。
はたと気付いた俺は、図星を突かれたことよりも、申し訳無さが勝っていた。呑気に抱きついてしまっていた腕を慌てて離す。
「あっ、ごめんなさい、俺……」
寂しい思いをさせておいて、自分だけ甘えるなんて。そう思うものの、ただ謝罪の言葉を述べることしか俺には出来ない。いや、それしか浮かばなかった。
「先輩が呼んでくれていたのに気付けなくて……寂しい思いさせちゃってホントにごめんな、さ……い?」
先輩は、途中までは柔らかく微笑んで、俺の言葉を受け止めてくれるように静かに聞いてくれていた。
聞いてくれていたんだが、急に指先でちょんちょんと俺の頬をつついてきた。不思議に思っている間に今度は唇を、続いて自分の口を指し示してきた。えっと、これって、もしかしなくても?
「あ、えっと……あの……」
お詫びに俺からキスして欲しいってこと、だよね?
意図は分かったものの、急に実行出来る勇気が出ない。何の目的もなく、胸の前で両手をわたわたさせてしまっていると、どちらも大きな手のひらに掴まってしまった。
「う、ぁ……」
ゆるりと片方の口端だけを持ち上げて、先輩が微笑む。掴まれた俺の手が、先輩の頬に添えるように導かれていく。しっとりと柔い温もりが、手のひらに触れた。
「シュン……」
俺を呼んでくれた声は、僅かに掠れていて。小さな囁きだったのに、頭の中に響くくらいに大きく聞こえた。
くらくらする。こだまみたいに響いている、甘さを含んだ先輩の声と、騒ぎ始めた心音とが混ざって聞こえて。熱くもないのに、熱に浮かされているみたい。
身体はすでに白旗を上げかけていた。でも、魅力的な先輩の引力は凄まじいもので、その艷やかな微笑みに吸い寄せられるに俺は顔を寄せていた。自分から、先輩へと口付けることが出来ていた。
「ん……イイ子……よく出来ました」
甘く食んだり、擦り寄せたり、先輩みたいに上手くは出来ていなかった。単に押し付けただけだったのに、先輩は嬉しそうに微笑んでくれている。頭をよしよしと撫でてくれている。
「……あ、ありがとう、ございます」
「フフ、じゃあ、コレでちゃらってことで。もう気にしなくてイイからね」
不思議だな……一緒のボディーソープを使ったハズなのに。先輩の方が、いい匂いがする。甘くて、柔らかくて、スゴく落ち着く。
もっとくっついていたくて広い背中へと腕を回した。
驚かせてしまったんだろうか。密着してしまっている鍛え抜かれた逞しい長身から、僅かな震えが伝わってきた。今、先輩、どんな顔をしているんだろう。
一度気になってしまえば、前向きなそわそわ感と、少し後ろ向きな不安感とに同時に襲われてしまう。消化不良に似たモヤモヤ感を解決すべく顔を上げようとしていたところで、擽ったそうな笑い声が頭の上から降ってきた。
「……可愛いなぁ……もー……そんな風に甘えてもらえちゃったら、何にも言えなくなっちゃうじゃん」
蕩けるような笑顔だった。どこもかしこも、ふにゃりと綻んでいた。細長い眉も、タレ目の瞳も、スッと通った眼尻も、形の良い唇も。
まるで、愛しさが、慈しみがあふれているような。その笑顔を向けてもらえるだけで、俺は温かさに包まれていくような感覚を覚えていた。
「……ん? どうしちゃったの、ぽかんとしちゃって……あー……もしかして、また、オレに見惚れてくれちゃってたり?」
最初は不思議そうに。何かを察した途中からは楽しそうに。明るい調子で尋ねながら、先輩が俺の背中を宥めるみたいに、ぽん、ぽんっと軽く叩き始める。
はたと気付いた俺は、図星を突かれたことよりも、申し訳無さが勝っていた。呑気に抱きついてしまっていた腕を慌てて離す。
「あっ、ごめんなさい、俺……」
寂しい思いをさせておいて、自分だけ甘えるなんて。そう思うものの、ただ謝罪の言葉を述べることしか俺には出来ない。いや、それしか浮かばなかった。
「先輩が呼んでくれていたのに気付けなくて……寂しい思いさせちゃってホントにごめんな、さ……い?」
先輩は、途中までは柔らかく微笑んで、俺の言葉を受け止めてくれるように静かに聞いてくれていた。
聞いてくれていたんだが、急に指先でちょんちょんと俺の頬をつついてきた。不思議に思っている間に今度は唇を、続いて自分の口を指し示してきた。えっと、これって、もしかしなくても?
「あ、えっと……あの……」
お詫びに俺からキスして欲しいってこと、だよね?
意図は分かったものの、急に実行出来る勇気が出ない。何の目的もなく、胸の前で両手をわたわたさせてしまっていると、どちらも大きな手のひらに掴まってしまった。
「う、ぁ……」
ゆるりと片方の口端だけを持ち上げて、先輩が微笑む。掴まれた俺の手が、先輩の頬に添えるように導かれていく。しっとりと柔い温もりが、手のひらに触れた。
「シュン……」
俺を呼んでくれた声は、僅かに掠れていて。小さな囁きだったのに、頭の中に響くくらいに大きく聞こえた。
くらくらする。こだまみたいに響いている、甘さを含んだ先輩の声と、騒ぎ始めた心音とが混ざって聞こえて。熱くもないのに、熱に浮かされているみたい。
身体はすでに白旗を上げかけていた。でも、魅力的な先輩の引力は凄まじいもので、その艷やかな微笑みに吸い寄せられるに俺は顔を寄せていた。自分から、先輩へと口付けることが出来ていた。
「ん……イイ子……よく出来ました」
甘く食んだり、擦り寄せたり、先輩みたいに上手くは出来ていなかった。単に押し付けただけだったのに、先輩は嬉しそうに微笑んでくれている。頭をよしよしと撫でてくれている。
「……あ、ありがとう、ございます」
「フフ、じゃあ、コレでちゃらってことで。もう気にしなくてイイからね」
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