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細マッチョな先輩と恋人同士になった件(ソレイユルート)

嬉しい重み

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 そんなに、怒らせちゃったのかな?

 恐る恐る目を開ければ、いかにもしょんぼりとした先輩と目が合った。

 じっと見下ろしている瞳は今にも泣き出しそうなくらいにしょげてしまっている。鍛え抜かれた筋肉によってガッシリとした肩は力なく下げられていて、眉も八の字。人の良さそうな笑みばかりを浮かべている唇もだ。分かりやすくへの字に歪んでしまっている。

 ただ、その姿勢は目を閉じる前から変わっていなかった。襲われちゃいそうな瞬間のまま、微動だに動いてはいない。ということは、一応そういうことへの姿勢はまだ前向きなんだろうか?

「……ソレイユ、先輩?」

「……内容」

「え……?」

「……何考えてたか、教えてくれるのが先なんじゃないの? 謝るよりさぁ……」

 呼びかけて見れば、返ってきたのは拗ねた声。そうだった。まだ俺は答えていなかったんだった。

「……逞しくなりたいなって、俺も、先輩みたいに。それで、先輩にお願いしたら俺のこと鍛えてくれないかなって、コーチになってくれないかなって考えてました。ごめんなさいっ」

 寂しそうだった表情に驚きが、続けて照れが滲んでいく。ころころと変わっていく様を見つめてしまっていると、長い睫毛が伏せられた。

「……そ、そっか……シュンちゃんなら大歓迎だよっ、苦手なトレーニングもシュンちゃんが一緒なら楽しく頑張れるし」

「やった! 約束ですよ?」

「うん……でも、さ。なんで急にそんな話になってた訳? 逞しくなりたいって」

「……先輩、俺のこと簡単に抱っこしちゃうから」

 当たり前な先輩の疑問に対して、今度は俺が拗ねたような言い方で返してしまっていた。

「あっ、嬉しいんですよっ? 抱っこしてもらえるのは! でも、なんか男としては、その……俺も、先輩にはカッコいいって思われたいから」

 勘違いをされてしまわぬよう、慌てて伝えていたところで気がついた。睨むように瞳を細めて俺を見つめる先輩が、唇を尖らせていることに。

 でも、以前の感情を削ぎ落としたように無機質に感じた、真顔のような迫力はない。なんせ、耳まで真っ赤っ赤なのだ。照れてる、んだよな? 唇尖ってるし。

「……えっと、先輩?」

「そういうところっ」

「はい?」

 察しの悪い俺はまた疑問の声を上げてしまっていた。深くなった眉間のシワに気がついてももう遅い。かといって、先輩みたく上手なフォローが咄嗟に浮かぶ訳もなく。

「ご、ごめんなさ、いっ」

 ただただ謝ることしか出来なかった俺を、何故か先輩は抱き締めてくれた。のしかかられているのだけれど、大して重さを感じない。体重をかけないように気遣ってくれているんだろう。

 とはいえ、何かしらの不満は訴えているつもりのよう。圧を感じる。ぐいぐいと寄せてくれている頬からも、腰に回してぎゅうぎゅうと抱き寄せてくる腕からも。

 だったら先輩の気が済むまでと、されるがままになっていた。しばらくして耳元で聞こえたのは、やっぱり拗ねたような声。

「もう、頑張んなくてもシュンちゃんはカッコいいって…………困っちゃうし、これ以上カッコよくなられると」

「ありがとうございます……でも、俺、頑張りたいです。先輩にもっとカッコいいって思われたいから、もっと俺のこと……好きになって欲しいから」

 擦り寄ってきてくれていた頬は止まってしまった。でも抱き締めてくれている腕の力は。

「すみません、欲張りで」

「っ……んなの、欲張りじゃないでしょ…………嬉しいよ……スゴく」

    ますます力が込められて、密着した温もりが急に重たくなった。ちょっとだけ息苦しいけれど、嬉しくて堪らなかった。
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