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細マッチョな先輩と恋人同士になった件(ソレイユルート)
今くらい、オレだけに集中してよ
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その後のことは、あんまり。
ただ、機械的に先輩の広い背中にスポンジを当てさせてもらって、残りの自分の体も洗って。多分先輩も洗っていたとは思う。
一緒にお風呂にも浸かれたんだと思う。思うんだけれども、その前の衝撃が強過ぎて、嬉し過ぎて。浸っている内に、気がつけばリビングに戻ってきていたのだ。いつ髪を乾かしたのかも、どうやって着替えたのかも曖昧という散々っぷり。こりゃあ初戦は大惨敗といってもいいだろう。
「……惜しいことをしちゃったな」
「ん? お風呂のこと? 次の機会に取り戻せばいいんじゃない? 今日のが最初で最後って訳じゃあないんだからさ」
「うぇっ」
俯いていた顔を上げれば先輩が居た。飲み物を取りに行ってくれていたようだ。手にしていた新しい麦茶のボトルを俺の前にあるテーブルに置いてから、すぐ隣へと腰を下ろす。なんの躊躇もなく、寄りかかるように幅の広い肩をくっつけてきた。
無意識の内に口から出ちゃっていたなんて。まだ、ぼーっとしてしまっていたみたいだな。それはそれとして。
「……また、一緒に入ってくれるんですか?」
今は聞かれていた気恥ずかしさよりも、確認を取ることの方が。
「うん。むしろ、オレの方から誘おうと思ってた」
緊張で声がおぼつかなかった俺に対して、先輩の返事はあっけらかんとしていた。さも当然と言わんばかりに。
「……ソレイユ先ぱ」
あまりにも自然だったから、あっさりと受け止めることが出来ていた。流れるように距離を詰められて、唇を重ねられていたから。
「……ん、ふ、んん……」
優しく触れ合っている最中、大きな手のひらが添えられた。一方は後頭部に、もう一方は背中に。まだ回数は片手で数えられるほどだけど、多分いつものパターンだ。このまま、優しく押し倒されるパターン。
そう期待していたのだが、俺の予想は中々当たらないらしい。それどころか、またしても上回れてしまった。
「……ベッド、行こうか」
離れていってしまったかと思えばまさかのお誘い。鋭く細められた眼差しの熱さに心を射抜かれなくとも、繋がれた手の微かな震えに気づけなくとも、俺の答えは決まっている。
「……は、はい……お願い、します……」
「……ありがとう」
俺の方こそと、返す間もなく抱き抱えられた。先輩に抱っこしてもらえるのは嬉しい。でも、男心的には少々複雑だ。あんまりにも軽々と抱え上げられてしまうと。
少しは俺も逞しくなれるかな? 先輩がやってるのと同じ練習をこなせたら。そりゃあ、いきなり全部は無理だって分かってるけどさ。
もし、先輩に鍛えて下さいってお願いしたら、コーチになってくれるかな? そしたら、俺も少しはカッコよくなれるかもだし、先輩との時間も増えるし、一石二鳥……
「何、考えてるの?」
呑気な思考を遮ってきた声は鋭くて。
「…………今くらい、オレだけに集中してよ」
か細く訴えてきた声は寂しそうだった。
「ご、ごめんなさ……」
眉間のシワを更に深くして、先輩は俺を目の前のベッドへと横たえた。
優しく下ろしてもらえたかと思えば、勢いよく頭の横に手が置かれた。膝立ちで俺の身体を跨ぎながら、先輩が覆い被さってくる。耳元でベットが鈍く軋む音が聞こえた。
「っ……」
思わず俺は息を飲んでいた。目も瞑ってしまっていた。
「…………」
……あれ? 何も、してきてくれていない? してもらえる流れだったんじゃ?
数分とは言わないが、何かワンアクションを起こせるくらいには十分な時間が経ったハズ。だというのに何も起きない。してもらえていない。キスどころか、手すら握ってもらえない。そんな気配も微塵もない。
ただ、機械的に先輩の広い背中にスポンジを当てさせてもらって、残りの自分の体も洗って。多分先輩も洗っていたとは思う。
一緒にお風呂にも浸かれたんだと思う。思うんだけれども、その前の衝撃が強過ぎて、嬉し過ぎて。浸っている内に、気がつけばリビングに戻ってきていたのだ。いつ髪を乾かしたのかも、どうやって着替えたのかも曖昧という散々っぷり。こりゃあ初戦は大惨敗といってもいいだろう。
「……惜しいことをしちゃったな」
「ん? お風呂のこと? 次の機会に取り戻せばいいんじゃない? 今日のが最初で最後って訳じゃあないんだからさ」
「うぇっ」
俯いていた顔を上げれば先輩が居た。飲み物を取りに行ってくれていたようだ。手にしていた新しい麦茶のボトルを俺の前にあるテーブルに置いてから、すぐ隣へと腰を下ろす。なんの躊躇もなく、寄りかかるように幅の広い肩をくっつけてきた。
無意識の内に口から出ちゃっていたなんて。まだ、ぼーっとしてしまっていたみたいだな。それはそれとして。
「……また、一緒に入ってくれるんですか?」
今は聞かれていた気恥ずかしさよりも、確認を取ることの方が。
「うん。むしろ、オレの方から誘おうと思ってた」
緊張で声がおぼつかなかった俺に対して、先輩の返事はあっけらかんとしていた。さも当然と言わんばかりに。
「……ソレイユ先ぱ」
あまりにも自然だったから、あっさりと受け止めることが出来ていた。流れるように距離を詰められて、唇を重ねられていたから。
「……ん、ふ、んん……」
優しく触れ合っている最中、大きな手のひらが添えられた。一方は後頭部に、もう一方は背中に。まだ回数は片手で数えられるほどだけど、多分いつものパターンだ。このまま、優しく押し倒されるパターン。
そう期待していたのだが、俺の予想は中々当たらないらしい。それどころか、またしても上回れてしまった。
「……ベッド、行こうか」
離れていってしまったかと思えばまさかのお誘い。鋭く細められた眼差しの熱さに心を射抜かれなくとも、繋がれた手の微かな震えに気づけなくとも、俺の答えは決まっている。
「……は、はい……お願い、します……」
「……ありがとう」
俺の方こそと、返す間もなく抱き抱えられた。先輩に抱っこしてもらえるのは嬉しい。でも、男心的には少々複雑だ。あんまりにも軽々と抱え上げられてしまうと。
少しは俺も逞しくなれるかな? 先輩がやってるのと同じ練習をこなせたら。そりゃあ、いきなり全部は無理だって分かってるけどさ。
もし、先輩に鍛えて下さいってお願いしたら、コーチになってくれるかな? そしたら、俺も少しはカッコよくなれるかもだし、先輩との時間も増えるし、一石二鳥……
「何、考えてるの?」
呑気な思考を遮ってきた声は鋭くて。
「…………今くらい、オレだけに集中してよ」
か細く訴えてきた声は寂しそうだった。
「ご、ごめんなさ……」
眉間のシワを更に深くして、先輩は俺を目の前のベッドへと横たえた。
優しく下ろしてもらえたかと思えば、勢いよく頭の横に手が置かれた。膝立ちで俺の身体を跨ぎながら、先輩が覆い被さってくる。耳元でベットが鈍く軋む音が聞こえた。
「っ……」
思わず俺は息を飲んでいた。目も瞑ってしまっていた。
「…………」
……あれ? 何も、してきてくれていない? してもらえる流れだったんじゃ?
数分とは言わないが、何かワンアクションを起こせるくらいには十分な時間が経ったハズ。だというのに何も起きない。してもらえていない。キスどころか、手すら握ってもらえない。そんな気配も微塵もない。
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