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マッチョな先輩と恋人同士になった件(サルファールート)

★ ささやかだけれど、大切な

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「名前……ですか?」

「ああ、名前を呼んで欲しいんだ……先輩じゃなくて、サルファーと」

 つい尋ね返してしまっていた。

 だって、そんな簡単な、ささやかなお願いをされるなんて思わなかったからさ。

 でも、先輩にとっては大切らしい。小さく頷いた彼の姿勢は前のめりで、その眼差しは真っ直ぐで、繋がれた手は少しだけ震えていたんだ。

「その……無自覚なのかもしれないが、君は、時々呼んでくれていただろう? ……特に、その……行為の最中に……」

「あっ、う……」

 言われてみれば確かに。訳が分からなくなってしまっている時や、先輩に夢中になってしまっている時に、先輩ってつけ忘れていたかも。敬語もどこかに吹っ飛んでいたかも。しかも、結構な頻度で。ついさっきも。それなのに。

 ……言われなきゃ気づかないって、ホントにどうしようもないな、俺。

 今更ながらな気恥ずかしさに苛まれている間も、先輩はじっと俺を見つめ続けている。

「その時の君は、口調も自然と砕けていて……それが堪らないんだ……君が俺に対して……心を許してくれているような気がして……」

 途切れ途切れになりながらも、想いを紡ぎ続けている。

「君は恋人同士になれる前から……他の三年生に比べて、俺に対して少し丁寧過ぎていただろう? ああ、勿論、それが悪いとは言っていないぞ? 礼儀正しいことは良いことだからな。ただ……だからこそ、時々見せてくれる自然体な君が、余計に嬉しくてな……」

 心にすとんと落ちた気がした。

 まさか、俺が無意識の内に張っていた壁に気づいていたなんて。

 単に年上だからというだけではない。彼に対して抱いている憧れや尊敬の念の大きさから俺は、一歩離れてしまっていた。でも、それが原因で寂しさを感じさせてしまっていただなんて。

 ああ、やっぱり俺は、どうしようもない。そこまで言ってもらえなきゃあ、大切な彼のホントの望みに気づくことが出来なかったんだから。

「……ごめんね、サルファー……恋人なのに、俺……寂しい思いをさせちゃって……」

「っ……い、いや、分かってはいたんだ。君が俺のことを大切に想ってくれてのことだと……ただ、二人っきりの時は、と思っていてな……」

 サルファーは柔らかく微笑んで、繋いでいる手を撫でてくれた。額にそっと口づけてくれた。

「今まで言い出せなかった俺がいけないんだ。君の方からは難しかっただろうからな」

「でも、俺が」

「だから、これから沢山呼んでくれないか?」

 謝罪の言葉を遮って、サルファーが小首を傾げる。微笑む蜂蜜色の瞳が、なんだがとても艶っぽく見えた。

「……サルファー」

「……もう一度、頼む」

「サルファー」

「ああ、シュン……愛してるよ」

「……俺も、愛してる……サルファー」

 想いを交わし合った唇が触れて、自然と吐息が混じっていく。どちらのものか分からなくなるほど深く重ねていく最中、ずっと求めていたものが俺の尻の穴にあてがわれた。
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