186 / 435
マッチョな先輩と恋人同士になった件(サルファールート)
あーんしても、いいですか?
しおりを挟む
俺が不可抗力な二度寝をしている内に、先輩は一人で後始末をすませてしまっていた。
とはいえ、勝手にパンツを履き替えさせるのは躊躇ったらしい。起きてすぐに身体の調子を心配されながら、水を手渡されながら「後で着替えてくれ」と謝られた。
俺としては、先輩に着替えさせてもらうのも大抵の内に入るみたい。想像しても、一切イヤじゃなかったからな。だから、言葉で伝えて行動でも、俺の下着が入っている引き出しの場所を教えたんだが。
「っ……そんな大切なことを平然と頼まないでくれ……嬉しいんだが、君は俺のことを信用し過ぎだぞ! 俺が君の寝込みを襲うとか……考えないのか?」
「俺の寝込みを先輩が? ……襲ってくれるんですか?」
「ぐ、ぅ……そんな嬉しそうな顔もしないでくれ……っ」
俺的には美味しいシチュエーションなんだが。勘弁してくれと、今でも必死に抑えてるんだぞと。顔を真っ赤にして涙目で請われてしまえば、一旦引かざるをえなかった。
また別の機会に提案してみることにしよう。先輩の反応的には好感触だし。俺の為に我慢してるって感じだし。
そんなやり取りをしている内にお腹が空いて。そう言えば何時だっけと端末で時間を確認すれば、すでに十時を回っていた。
「ちょっと多めに食べておきます? 朝ご飯兼昼食になっちゃいますし」
「そうだな。食べて、少しゆっくりしたら出かけようか……その、デートに……」
「はいっ」
本日のラインナップは冷凍炒飯に、グラタン。それから、買ってて良かったサラダチキン。
先輩は、その筋骨隆々な身体を維持しているだけあって、やっぱり食生活も出来るだけ気を遣っているよう。サラダチキンを見せれば、嬉しそうに目を輝かせていた。
レンジでチンして、グラスにお茶も注いで準備万端。さり気なく隣に座ろうと、お皿を隣同士に並べようとして、先輩から先を越された。
「シュン……隣、座るだろう?」
ローテーブルの左端に寄って座った先輩から、手招きされたのだ。そんでもって、空いている右側に来てくれと言わんばかりに、カーペットをぽん、ぽんっと叩いて示してくれたのだ。
「はいっ」
俺は二人分のお皿を手に、喜び勇んで隣に腰を下ろした。一緒にいただきますをしてから、先輩は早速サラダチキンの包みを開け、俺は熱々のグラタンをスプーンで掬った。
エビの入ったシンプルなグラタンは、相変わらず普通に美味しい。チーズの塩気とホワイトソースのまったりとしたコクを味わいながら、ふと思う。
先輩から直々に招いて頂けたのだ。今ならば、憧れのアレが出来るかもしれない。させてもらえるかもしれない。
「サルファー先輩……お願いがあるんですけど……」
「ん? なんだ?」
サラダチキンを片手に先輩が微笑む。
少し膨らんだ頬をもくもくと動かしながら俺を見つめる眼差しは、何でも言ってくれと言わんばかり。応えてくれる気満々だ。
まだ俺が、どんなお願いをするのかも知らないのになぁ……
「先輩に……あーんってしたいんですけど……」
先輩の優しさにほっこりしつつ切り出した途端、一気に彼の頬が色づいていく。
幅広の肩が大きく跳ねたかと思えば、入ってはいけないところにチキンが入ったのか。行儀正しく伸ばしていた背を曲げ、むせ始めた。
「だ、大丈夫ですかっ?」
筋肉で盛り上がった背を撫でながら、お茶を差し出す。
幸いなことに、そこまで酷くはなかったらしい。お茶を一息に飲み干した時には、もう咳は収まっていた。
「ありがとう……その、すまない……君があんまりにも可愛いことを言うもんだから……」
「じゃあ……してもいいですか?」
「あ、ああ……よろしく頼む」
言い出しっぺのくせに、いざ出来るとなったら緊張してしまう。背筋を伸ばして待つ、先輩の口元へ運ぶスプーンが震えてしまう。
それでも何とか差し出せた銀の匙を、エビを乗せたグラタンを先輩がゆっくり口に含んだ。
高鳴る鼓動が煩い。つい俺は見つめ続けてしまっていた。頬が、尖った喉が動く様を、瞬きも忘れて。
「……美味しいですか?」
蜂蜜色をした瞳が微笑んだ。
「ああ、美味いな……君に食べさせてもらっているから、余計に美味しく感じるよ」
こういうところがズルいのだ。さっきは、むせるほど慌てていたのに。
「ははっ照れているのか? 可愛いな……」
嬉しい言葉をくれるどころか、頭まで撫でてくれるのだから。蕩けるような笑顔を向けてくれるのだから。
「なぁ、シュン……今度は俺がしてみてもいいか?」
「は、はい……お願いします」
いそいそとスプーンを手に、グラタンを掬った先輩が「ほら、あーん」と俺の口元へと運んでくれる。
……確かに。自分で食べた時は普通の美味しさだったのに。先輩からっていう特別が加わった途端に、幸せな味が口いっぱいに広がったんだ。
とはいえ、勝手にパンツを履き替えさせるのは躊躇ったらしい。起きてすぐに身体の調子を心配されながら、水を手渡されながら「後で着替えてくれ」と謝られた。
俺としては、先輩に着替えさせてもらうのも大抵の内に入るみたい。想像しても、一切イヤじゃなかったからな。だから、言葉で伝えて行動でも、俺の下着が入っている引き出しの場所を教えたんだが。
「っ……そんな大切なことを平然と頼まないでくれ……嬉しいんだが、君は俺のことを信用し過ぎだぞ! 俺が君の寝込みを襲うとか……考えないのか?」
「俺の寝込みを先輩が? ……襲ってくれるんですか?」
「ぐ、ぅ……そんな嬉しそうな顔もしないでくれ……っ」
俺的には美味しいシチュエーションなんだが。勘弁してくれと、今でも必死に抑えてるんだぞと。顔を真っ赤にして涙目で請われてしまえば、一旦引かざるをえなかった。
また別の機会に提案してみることにしよう。先輩の反応的には好感触だし。俺の為に我慢してるって感じだし。
そんなやり取りをしている内にお腹が空いて。そう言えば何時だっけと端末で時間を確認すれば、すでに十時を回っていた。
「ちょっと多めに食べておきます? 朝ご飯兼昼食になっちゃいますし」
「そうだな。食べて、少しゆっくりしたら出かけようか……その、デートに……」
「はいっ」
本日のラインナップは冷凍炒飯に、グラタン。それから、買ってて良かったサラダチキン。
先輩は、その筋骨隆々な身体を維持しているだけあって、やっぱり食生活も出来るだけ気を遣っているよう。サラダチキンを見せれば、嬉しそうに目を輝かせていた。
レンジでチンして、グラスにお茶も注いで準備万端。さり気なく隣に座ろうと、お皿を隣同士に並べようとして、先輩から先を越された。
「シュン……隣、座るだろう?」
ローテーブルの左端に寄って座った先輩から、手招きされたのだ。そんでもって、空いている右側に来てくれと言わんばかりに、カーペットをぽん、ぽんっと叩いて示してくれたのだ。
「はいっ」
俺は二人分のお皿を手に、喜び勇んで隣に腰を下ろした。一緒にいただきますをしてから、先輩は早速サラダチキンの包みを開け、俺は熱々のグラタンをスプーンで掬った。
エビの入ったシンプルなグラタンは、相変わらず普通に美味しい。チーズの塩気とホワイトソースのまったりとしたコクを味わいながら、ふと思う。
先輩から直々に招いて頂けたのだ。今ならば、憧れのアレが出来るかもしれない。させてもらえるかもしれない。
「サルファー先輩……お願いがあるんですけど……」
「ん? なんだ?」
サラダチキンを片手に先輩が微笑む。
少し膨らんだ頬をもくもくと動かしながら俺を見つめる眼差しは、何でも言ってくれと言わんばかり。応えてくれる気満々だ。
まだ俺が、どんなお願いをするのかも知らないのになぁ……
「先輩に……あーんってしたいんですけど……」
先輩の優しさにほっこりしつつ切り出した途端、一気に彼の頬が色づいていく。
幅広の肩が大きく跳ねたかと思えば、入ってはいけないところにチキンが入ったのか。行儀正しく伸ばしていた背を曲げ、むせ始めた。
「だ、大丈夫ですかっ?」
筋肉で盛り上がった背を撫でながら、お茶を差し出す。
幸いなことに、そこまで酷くはなかったらしい。お茶を一息に飲み干した時には、もう咳は収まっていた。
「ありがとう……その、すまない……君があんまりにも可愛いことを言うもんだから……」
「じゃあ……してもいいですか?」
「あ、ああ……よろしく頼む」
言い出しっぺのくせに、いざ出来るとなったら緊張してしまう。背筋を伸ばして待つ、先輩の口元へ運ぶスプーンが震えてしまう。
それでも何とか差し出せた銀の匙を、エビを乗せたグラタンを先輩がゆっくり口に含んだ。
高鳴る鼓動が煩い。つい俺は見つめ続けてしまっていた。頬が、尖った喉が動く様を、瞬きも忘れて。
「……美味しいですか?」
蜂蜜色をした瞳が微笑んだ。
「ああ、美味いな……君に食べさせてもらっているから、余計に美味しく感じるよ」
こういうところがズルいのだ。さっきは、むせるほど慌てていたのに。
「ははっ照れているのか? 可愛いな……」
嬉しい言葉をくれるどころか、頭まで撫でてくれるのだから。蕩けるような笑顔を向けてくれるのだから。
「なぁ、シュン……今度は俺がしてみてもいいか?」
「は、はい……お願いします」
いそいそとスプーンを手に、グラタンを掬った先輩が「ほら、あーん」と俺の口元へと運んでくれる。
……確かに。自分で食べた時は普通の美味しさだったのに。先輩からっていう特別が加わった途端に、幸せな味が口いっぱいに広がったんだ。
0
お気に入りに追加
129
あなたにおすすめの小説
小さい頃、近所のお兄さんに赤ちゃんみたいに甘えた事がきっかけで性癖が歪んでしまって困ってる
海野
BL
小さい頃、妹の誕生で赤ちゃん返りをした事のある雄介少年。少年も大人になり青年になった。しかし一般男性の性の興味とは外れ、幼児プレイにしかときめかなくなってしまった。あの時お世話になった「近所のお兄さん」は結婚してしまったし、彼ももう赤ちゃんになれる程可愛い背格好では無い。そんなある日、職場で「お兄さん」に似た雰囲気の人を見つける。いつしか目で追う様になった彼は次第にその人を妄想の材料に使うようになる。ある日の残業中、眠ってしまった雄介は、起こしに来た人物に寝ぼけてママと言って抱きついてしまい…?
保育士だっておしっこするもん!
こじらせた処女
BL
男性保育士さんが漏らしている話。ただただ頭悪い小説です。
保育士の道に進み、とある保育園に勤めている尾北和樹は、新人で戸惑いながらも、やりがいを感じながら仕事をこなしていた。
しかし、男性保育士というものはまだまだ珍しく浸透していない。それでも和樹が通う園にはもう一人、男性保育士がいた。名前は多田木遼、2つ年上。
園児と一緒に用を足すな。ある日の朝礼で受けた注意は、尾北和樹に向けられたものだった。他の女性職員の前で言われて顔を真っ赤にする和樹に、気にしないように、と多田木はいうが、保護者からのクレームだ。信用問題に関わり、同性職員の多田木にも迷惑をかけてしまう、そう思い、その日から3階の隅にある職員トイレを使うようになった。
しかし、尾北は一日中トイレに行かなくても平気な多田木とは違い、3時間に一回行かないと限界を迎えてしまう体質。加えて激務だ。園児と一緒に済ませるから、今までなんとかやってこれたのだ。それからというものの、限界ギリギリで間に合う、なんて危ない状況が何度か見受けられた。
ある日の紅葉が色づく頃、事件は起こる。その日は何かとタイミングが掴めなくて、いつもよりさらに忙しかった。やっとトイレにいける、そう思ったところで、前を押さえた幼児に捕まってしまい…?
怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人
こじらせた処女
BL
幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。
しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。
「風邪をひくことは悪いこと」
社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。
とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。
それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?
勇者の股間触ったらエライことになった
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
勇者さんが町にやってきた。
町の人は道の両脇で壁を作って、通り過ぎる勇者さんに手を振っていた。
オレは何となく勇者さんの股間を触ってみたんだけど、なんかヤバイことになっちゃったみたい。
童貞が建設会社に就職したらメスにされちゃった
なる
BL
主人公の高梨優(男)は18歳で高校卒業後、小さな建設会社に就職した。しかし、そこはおじさんばかりの職場だった。
ストレスや性欲が溜まったおじさん達は、優にエッチな視線を浴びせ…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる