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マッチョな先生と恋人同士になった件(グレイルート)

なんつーもんを持ち歩いてんだ、この人は

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「……グレイ先生が、そう言ってたんですか?」

 そこまで言うつもりは、なかったんだろうか。俺が尋ねると、ばつが悪そうにセレストさんが眉間のシワを深くした。

 じっと見つめると、セレストさんの瞳が迷うように泳ぐ。もともと乱れていた髪を、さらにわしゃわしゃかき混ぜてから、両手を軽く上げて降参のポーズを取った。

「……君が卒業するまではな。教職者としてのけじめらしいが……私が思っていた以上に決意が固そうだ。こればかりは君が強請っても無理だろう」

 卒業するまでって……俺が強請っても無理って……そんな……

「で、でも……昨日は俺のこと触ってくれましたよ? 俺が気持ちよくなれたら嬉しいって、喜んでくれて……」

「ふむ……一応、手は出してもらえていたか。だが、結局最後まで致してもらえなかったんだろう? 君だけスッキリさせられて終わったんじゃないか?」

 まるで、見ていたようなもの言いだ。いや、その通りなんだけどさ。

「うっ……」

「図星のようだな。つまりは、そういうことだ。君が卒業するまで、それでやり通すつもりなんだろう」

 じゃあ、ホントに昨日みたいに俺だけのまま過ごさないといけないのか? 俺が卒業するまで、ずっと?

 ますます生殺しになっただけじゃないか。軽いスキンシップだけの関係から、大幅にステップアップ出来たかと思っていたのに。

 セレストさんが、項垂れる俺の背中を、ぽんぽんと叩いてくれる。しばらく宥めてくれた後、不意に手を取られる。白衣のポケットから掌サイズのチューブを取り出したかと思えば、俺に握らせた。

「そこでだ、君にこれを渡しておこう」

「……何ですか、これ?」

 塗り薬、だろうか。見たことのないラベルだ。

 っていうか、何で今? 別に俺、擦り傷も、かぶれもないけれど。

 指に挟んで裏表をくるくる回しながら、しげしげ眺めている俺にセレストさんが答える。今日の天気予報を言うかのように、さも事も無げに。

「潤滑油代わりの軟膏だ。身体に問題ない成分だから安心したまえ」

「……じゅん、かつゆ?」

「最後までヤるつもりなら必須だろう? それとも本気で分かっていないのか?」

 男同士のやり方を、そこまで言われてやっと気づいた。とんでもない物を手渡されたことに。

「なっ……なななんでこんな物、持ち歩いてるんですか!?」

「グレイを焚き付けるつもりで持ってきたんだが、彼に渡しても無意味そうだからな」

 焦ってチューブを取り落としそうになる俺を尻目に、セレストさんはマイペースだ。冷めかけた紅茶をくぴくぴ飲んでいる。
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