【完結】気が付いたらマッチョなblゲーの主人公になっていた件

白井のわ

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【番外編】皆とバレンタイン12

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 制服を脱ぐことすらもなんだか億劫で、ふかふかのベッドにダイブするように勢いよく倒れこむ。

 今日は、スゴい一日だったな……月並みだけど、とびきりいい夢でも見てたんじゃないかってくらいに。

 胸がいっぱいで、思い出すだけで、また、顔が熱くなってしまう。

 夕飯は……もう、いいか。お腹が空いたらもらったチョコを食べればいいし。

 みんなへのお返しはどうしようかな……ソレイユ先輩は、俺がくれるものなら何でも嬉しいって言ってくれたけど。

 今までは、コンビニに置いてあるホワイトデーのコーナーから適当に選んでただけだからな……

 それよりは、やっぱり下手でも手作りの方が喜んでもらえるのかな?

 まだ一ヶ月あるんだし。今から練習すれば、それなりには……

 甲高いチャイムの音が、俺の思考を現実へと引き戻す。……こんな時間に一体誰だろう?



「なんだ、ダンか。どうしたんだ?」

 ドアの隙間から見えた、馴染みのある人物にホッとしたのもつかの間だった。

 俯いたまま入ってきた彼の逞しい腕が急に伸びてきて、瞬く間に全身をすっぽりと閉じ込められてしまった。

「ダン? ホントにどうしたんだ?」

「……お前、一人だけか? 先輩と一緒じゃねぇのか?」

 そう尋ねるダンの声は、とてもか細く、不安気で……いつもの明るい彼との落差に胸が苦しくなってしまう。

 少しでもその憂いを取り除こうと、広い背中に腕を回してから出来るだけ優しい声色で尋ねてみる。

「……先輩ってどっちのことだ? サルファー先輩とは修練場で別れたし、ソレイユ先輩なら部屋まで送ってはもらったけど……」

 俺の肩をそっと掴んでゆっくり離したダンは、そっか……と安心したように微笑んだ。

 けれども、ソレイユ先輩もかよ……と、すぐさま顔をしかめた。まるで苦いものでも噛んだみたいだ。

「まぁ、取り敢えず上書きだけしとくか」

 肺の中身を全部出しきるような溜め息とともに、そうぼやくと俺の頬にごつごつした手を添える。

 ごく自然に、そうするのが当たり前かのようにスムーズに口づけられてしまった為、抵抗も出来ず。

 されるがままに何度も唇を食まれてしまった。

「ふ……ん、んっ……ぁ……ちょっ、だから、いきなりするなって……」

「悪い悪い、先に言わねぇといけないんだったな。すっかり忘れてたぜ」

 悪戯っぽく笑う彼は、さっきの沈んだ表情なんてウソのように明るくて。色々と疑問が浮かぶものの、まぁ、ダンが元気になったみたいだからいいかと呑み込んだ。

「えっと……上がってくだろ? いつも通り冷凍物しかないから大した物は出せないけどさ」

「おう。どーせそんなことだろうと思って、作ってきたから心配しなくていいぜ?」

 ビニール袋から取り出されたタッパーの一つには唐揚げが、もう一つには野菜炒めとお握りがみっちり詰まっている。

 現金なもので、さっきまでは全くなかった食欲が、目の前の美味しそうなご飯に釣られて一気に湧いてきてしまった。

「やった! ダン、大好き!」

「……やれやれ、俺も大好きだぜ」

 思わず飛びついてしまった俺を、しょうがねぇなぁと笑ったダンが優しく抱き止めてくれた。
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みんなの感想(2件)

るんるんるん

愛がいっぱいで
読んでいてこちらまで幸せになります〜

ずっとみんなでいちゃいちゃしてて欲しいです 笑

白井さんの作品大好きです〜💛
素敵な作品読ませて頂けて幸せです✨
ありがとうございます✨✨

2023.05.25 白井のわ

此方こそ読んで頂きありがとうございます!

いちゃいちゃ書くのが大好きなので、そのように言ってもらえてとても嬉しいです! 励みになります!

引き続き楽しんで頂けると幸いです。

解除
コウ
2023.04.02 コウ

めっちゃタイプです✨
マッチョ系大好きでこれから
どういうストーリーになるのかとっても楽しみです!

応援しています😊

2023.04.02 白井のわ

ありがとうございます! 楽しみにしていただけてとても嬉しいです! 応援、とても励みになります!

毎日更新していく予定ですので、お暇な時に楽しんでいただけると幸いです。

解除

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