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重たい目覚め

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 ここは……何処だ? 真っ暗で何も見えない。聞こえない。

 身体が怠い……まるで全身筋肉痛になったみたいだ。指先一つも動かせそうにない。どうしちゃったんだ? 俺の身体……

 それだけじゃないな……喉の乾きも酷い。胃の中もからっぽで、酷い空腹感に襲われる。まるで、何日も飲まず食わずだったみたいな……

「…………? …………ん……!」

 ……誰、だろう? ……誰かの声がする……聞き覚えがあるような……

 くっついたみたいに離れない、重たい瞼を無理矢理こじ開ける。ぼんやりとした視界の端に、見覚えのある赤い髪が映った。

 驚きに見開いた夕日よりも鮮やかな赤が俺を捉える。

「……シュン? シュンッ! 良かった、目が覚めたんだな! 俺のこと、分かるか?」

「……ダン? 俺は、一体?」

 頭が重たく、ぼーっと霞む。思い出そうにも何も浮かびやしない。

 すっかり安心したように微笑むダンは、今にも泣いてしまいそうだ。それに、何だかスゴくやつれてしまっている。

「ダン……だいじょ……」

 身体を起こそうと力を入れるが上手くいかない。ぐらりとふらついてしまう。 

 筋肉が固まってしまっているみたいだ。それに、声も何だか掠れて……

 慌てたダンが素早く俺を抱き止め、肩を支えてくれた。心配そうに見つめる彼の一言にますます疑問がつのっていく。

「無理すんな……お前、丸二日間寝たきりだったんだぞ?」

「え……それって、どういう」
「シュンちゃん! 良かった……本当に良かったよ……」

 オレンジの頭がすごい勢いで俺の腰目掛けて飛び付いてきた。頬を濡らし、嗚咽混じりの声で何度も良かった……と繰り返し口にしながら抱き締めてくる。

「……ソレイユ先輩?」

 いつもなら柔らかいウェーブがかかっている彼の髪はボサボサだ。

 ホントに何があったんだ? 何で二人共こんな……

 困惑している俺の耳に聞き慣れない音が聞こえた。

 規則正しい電子音。思わず目を向けた先には心拍や血圧を測る機械が、俺と繋がった医療機器や点滴がベッドの側を占領していた。

 俺の部屋だよな……俺の部屋なのに。

 何で? ……何で、生命維持装置が? もしかして、俺……死にかけて?

 背筋がぞわりと震えてくる。二人の様子と無機質な機械達に、ようやく実感が湧いてきたんだ。

 もし、今、目覚めることが出来ていなかったら、皆に二度と会えなかったんじゃないかって……
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