49 / 122
今度こそ、両手に花だ!
しおりを挟む
「いや、そうじゃなくて……鍵、かけてないから」
真っ赤な瞳がぱちくり瞬く。誤解? が解けたんだろう。申し訳なさそうに男らしい眉をひそめ、頭を下げてきた。
「すまねぇシュン! また、俺やっちまった……」
手首を握っていた手が離され、握り直される。今度は俺の手を包み込むように、優しく。
大きな手は少し震えていた。握り返すと幅広の肩と一緒にびくりと跳ねる。
おずおずと見つめてくる眼差しに、俺なりの精一杯で微笑みかける。
「いいよ、全然気にしてないから」
「……先輩と一緒だったってことは、上手くいったんだよな?」
「うん、ちゃんと話せたよ。先輩に、俺のこと。ダンが応援してくれたからだよ、ありがとう」
やっと笑顔が戻った。強張っていた頬がふにゃりと緩んで、目尻がとろんと下がっていく。
「へへっ……本当にシュンは俺がいないとダメだよな。まぁ、ずっと側にいてやるから、大船に乗ったつもりでいろよ!」
分厚い胸板を張り、ニカッと開いた口から覗く白い歯。得意げに笑うダンに釣られて俺も笑っていた。
手を繋いだまま、クスクス見つめ合っていると、後ろでチリンと鈴の鳴る音がする。
「鍵、これで合ってるかい?」
振り向いた先にはサルファー先輩が、俺の部屋の鍵を差し出し立っていた。
「はい! ありがとうございます、先輩」
「はいこれ、鍵はかけといたから」
柔らかく微笑む先輩が、俺の手を取り鍵を乗せてくれる。鍵に付けていた銀の鈴のキーホルダーが、再びチリンと音を立てた。
「すみません、助かりました」
「……気にしないでくれ。元はと言えば、ダンのことを煽った俺が悪いから」
俺を見つめていた黄色の瞳がチラリとダンの方を見る。
やっぱり、先輩のことが苦手なんだろうか? 握っている手に力を込め、身を固くしながら、目を三角にしている。
「俺も、君達に同行してもいいだろうか?」
苦いものを噛んだみたいに、ますますダンの表情が渋くなる。俺としては、三人で登校したいんだけどな……
ふと、不満気に細められていた赤とかち合う。何か言いたそうに開いたり閉じたりしていた口から、重く長い溜め息が漏れる。
「……勝手にしろよ」
「え、いいのか?」
吐き出すような肯定に、思わず尋ねていた。不意に伸びてきた大きな手が、俺の頭を撫で回す。
「……シュンは、一緒が良いんだろ? だったら俺もそれで良い」
「ありがとう、ダン!」
「感謝するよ」
「俺の、相棒の、シュンの為だ!」
先輩の為じゃねぇっ!! と俺の手を取り繋いだダンが吠える。意にも介していないのか、笑みを崩さずに先輩が空いている方の手に指を絡めてきた。
これこそ、まさに両手に花だ! 会話に花は咲かなかったけれど。どちらかと話していると、片方が割り込んで、言い合いになって……の繰り返しだったけれど。とにかく、二人と手を繋いで歩けたんだから万々歳だ。
校門に着くとグレイ先生から、今日は仲良しさんだね、良かったね、と微笑まれ、頭を撫でてもらえた。
真っ赤な瞳がぱちくり瞬く。誤解? が解けたんだろう。申し訳なさそうに男らしい眉をひそめ、頭を下げてきた。
「すまねぇシュン! また、俺やっちまった……」
手首を握っていた手が離され、握り直される。今度は俺の手を包み込むように、優しく。
大きな手は少し震えていた。握り返すと幅広の肩と一緒にびくりと跳ねる。
おずおずと見つめてくる眼差しに、俺なりの精一杯で微笑みかける。
「いいよ、全然気にしてないから」
「……先輩と一緒だったってことは、上手くいったんだよな?」
「うん、ちゃんと話せたよ。先輩に、俺のこと。ダンが応援してくれたからだよ、ありがとう」
やっと笑顔が戻った。強張っていた頬がふにゃりと緩んで、目尻がとろんと下がっていく。
「へへっ……本当にシュンは俺がいないとダメだよな。まぁ、ずっと側にいてやるから、大船に乗ったつもりでいろよ!」
分厚い胸板を張り、ニカッと開いた口から覗く白い歯。得意げに笑うダンに釣られて俺も笑っていた。
手を繋いだまま、クスクス見つめ合っていると、後ろでチリンと鈴の鳴る音がする。
「鍵、これで合ってるかい?」
振り向いた先にはサルファー先輩が、俺の部屋の鍵を差し出し立っていた。
「はい! ありがとうございます、先輩」
「はいこれ、鍵はかけといたから」
柔らかく微笑む先輩が、俺の手を取り鍵を乗せてくれる。鍵に付けていた銀の鈴のキーホルダーが、再びチリンと音を立てた。
「すみません、助かりました」
「……気にしないでくれ。元はと言えば、ダンのことを煽った俺が悪いから」
俺を見つめていた黄色の瞳がチラリとダンの方を見る。
やっぱり、先輩のことが苦手なんだろうか? 握っている手に力を込め、身を固くしながら、目を三角にしている。
「俺も、君達に同行してもいいだろうか?」
苦いものを噛んだみたいに、ますますダンの表情が渋くなる。俺としては、三人で登校したいんだけどな……
ふと、不満気に細められていた赤とかち合う。何か言いたそうに開いたり閉じたりしていた口から、重く長い溜め息が漏れる。
「……勝手にしろよ」
「え、いいのか?」
吐き出すような肯定に、思わず尋ねていた。不意に伸びてきた大きな手が、俺の頭を撫で回す。
「……シュンは、一緒が良いんだろ? だったら俺もそれで良い」
「ありがとう、ダン!」
「感謝するよ」
「俺の、相棒の、シュンの為だ!」
先輩の為じゃねぇっ!! と俺の手を取り繋いだダンが吠える。意にも介していないのか、笑みを崩さずに先輩が空いている方の手に指を絡めてきた。
これこそ、まさに両手に花だ! 会話に花は咲かなかったけれど。どちらかと話していると、片方が割り込んで、言い合いになって……の繰り返しだったけれど。とにかく、二人と手を繋いで歩けたんだから万々歳だ。
校門に着くとグレイ先生から、今日は仲良しさんだね、良かったね、と微笑まれ、頭を撫でてもらえた。
10
お気に入りに追加
227
あなたにおすすめの小説
神は眷属からの溺愛に気付かない
グランラババー
BL
【ラントの眷属たち×神となる主人公ラント】
「聖女様が降臨されたぞ!!」
から始まる異世界生活。
夢にまでみたファンタジー生活を送れると思いきや、一緒に召喚された母であり聖女である母から不要な存在として捨てられる。
ラントは、せめて聖女の思い通りになることを妨ぐため、必死に生きることに。
彼はもう人と交流するのはこりごりだと思い、聖女に捨てられた山の中で生き残ることにする。
そして、必死に生き残って3年。
人に合わないと生活を送れているものの、流石に度が過ぎる生活は寂しい。
今更ながら、人肌が恋しくなってきた。
よし!眷属を作ろう!!
この物語は、のちに神になるラントが偶然森で出会った青年やラントが助けた子たちも共に世界を巻き込んで、なんやかんやあってラントが愛される物語である。
神になったラントがラントの仲間たちに愛され生活を送ります。ラントの立ち位置は、作者がこの小説を書いている時にハマっている漫画や小説に左右されます。
ファンタジー要素にBLを織り込んでいきます。
のんびりとした物語です。
現在二章更新中。
現在三章作成中。(登場人物も増えて、やっとファンタジー小説感がでてきます。)
平凡ハイスペックのマイペース少年!〜王道学園風〜
ミクリ21
BL
竜城 梓という平凡な見た目のハイスペック高校生の話です。
王道学園物が元ネタで、とにかくコメディに走る物語を心掛けています!
※作者の遊び心を詰め込んだ作品になります。
※現在連載中止中で、途中までしかないです。
闘乱世界ユルヴィクス -最弱と最強神のまったり世直し旅!?-
mao
BL
力と才能が絶対的な存在である世界ユルヴィクスに生まれながら、何の力も持たずに生まれた無能者リーヴェ。
無能であるが故に散々な人生を送ってきたリーヴェだったが、ある日、将来を誓い合った婚約者ティラに事故を装い殺されかけてしまう。崖下に落ちたところを不思議な男に拾われたが、その男は「神」を名乗るちょっとヤバそうな男で……?
天才、秀才、凡人、そして無能。
強者が弱者を力でねじ伏せ支配するユルヴィクス。周りをチート化させつつ、世界の在り方を変えるための世直し旅が、今始まる……!?
※一応はバディモノですがBL寄りなので苦手な方はご注意ください。果たして愛は芽生えるのか。
のんびりまったり更新です。カクヨム、なろうでも連載してます。
学園と夜の街での鬼ごっこ――標的は白の皇帝――
天海みつき
BL
族の総長と副総長の恋の話。
アルビノの主人公――聖月はかつて黒いキャップを被って目元を隠しつつ、夜の街を駆け喧嘩に明け暮れ、いつしか"皇帝"と呼ばれるように。しかし、ある日突然、姿を晦ました。
その後、街では聖月は死んだという噂が蔓延していた。しかし、彼の族――Nukesは実際に遺体を見ていないと、その捜索を止めていなかった。
「どうしようかなぁ。……そぉだ。俺を見つけて御覧。そしたら捕まってあげる。これはゲームだよ。俺と君たちとの、ね」
学園と夜の街を巻き込んだ、追いかけっこが始まった。
族、学園、などと言っていますが全く知識がないため完全に想像です。何でも許せる方のみご覧下さい。
何とか完結までこぎつけました……!番外編を投稿完了しました。楽しんでいただけたら幸いです。
騎士団で一目惚れをした話
菫野
BL
ずっと側にいてくれた美形の幼馴染×主人公
憧れの騎士団に見習いとして入団した主人公は、ある日出会った年上の騎士に一目惚れをしてしまうが妻子がいたようで爆速で失恋する。
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる