12 / 122
何やら、幼なじみと先輩の様子がおかしいんだが?
しおりを挟む
……一体どういう状況なんだこれは。
右側で歩くダンは俺の肩に腕を回し、隙あらば俺を自分の方に引き寄せようとする。かたや先輩はというと、俺の腰に腕を回してダンの動きを牽制している。
普段の俺だったら両手に花、いや両手に雄っぱいとか最高だ! とか諸手を挙げて喜ぶところだが……正直、二人の様子が普段と違いすぎて素直に喜べない。
……本当にどうしたんだ? 二人ともずっと無言だし。これじゃあ、まるで連行されてるみたいだぞ。
「なぁ、相棒。昨日の埋め合わせなんだけどよ、今日の放課後でもいいか?」
「えっ? あ、あぁ……別に、大丈夫だけど……本当に何もないぞ? 俺の部屋」
「……シュンの部屋だから意味があるんだよ……それに明日は実力テストがあるだろ? 一緒にテスト勉強しようぜ!」
最初の方は声が小さく聞き取りづらかったが、勉強に関しては大賛成だ。実力テストには、魔力の実技テストもあったはずだからな。ダンに教えてもらっておいた方がいいだろう。
……なんせ、魔力のまの字も知らないんだからな。俺、この世界の人間じゃないし。
「いいよ、俺も助かるし。実技テストが……ちょっと不安なんだ」
「シュンは昔から魔力の操作が苦手だったよな。仕方ねぇなー……俺がばっちり教えてやるからよ! そのかわり、数学は頼んだぞ」
「分かった。じゃあ、放課後に」
「シュン、昨日の事なんだが」
俺達の会話に突如、先輩が割り込んでくる。
「君さえ良ければ、正式に剣術部に入らないか? 君は筋がいいから、きっと強くなれるはずだ。それに、筋力を鍛えれば魔力の操作も上達しやすいだろう? もちろん、最後まで俺がしっかりサポートするよ」
俺が口を挟む余地もなく、トントン拍子に話が進んでいく。
でも、まぁ確かに先輩の言う通りだ。この世界で筋肉は正義なのだから、鍛えておくに超したことはないだろう。推しが直々にとあれば、断る理由なんて有る訳がない。
「あ、ありがとうございます。えっと……じゃあ、まずは体験入部って形でもいいですか?」
「あぁ、もちろんそれで構わないよ。明日はテストで疲れているだろうから……明後日の放課後からでどうかな?」
「俺は大丈夫ですけど……先輩はいいんですか? 俺の都合に合わせてしまって」
「俺が好きでやっていることだから、シュンが気にすることはないよ」
そう言って、優しく微笑みかけてくれる。流石の威力だ。花が咲くような笑顔に自然と心臓が高鳴ってしまう。
「先輩っ、俺の相棒を、むやみに誑かさないでくれませんか?」
「うわっ」
不意に、肩に回されている太い腕に力が込められた。真っ赤な瞳を鋭く細め、先輩を睨みつけるダンの視線からは、ありありと敵意に近い何かが伝わってくる。
……ダン、怒ってる……よな? 絶対。でも、何でだろう? 今の先輩との会話の流れで、イラッとくる箇所なんか有ったか? 無いよな?
あと、たぶらかすって……何だ? 俺、ただ先輩に剣術部に誘われただけだよな?
「確かに、俺はシュンに対して特別な好意を抱いてはいるが……決して誑かしてなどいないよ」
「おわっ」
今度は腰に回された方の腕が力を込め、俺を引き寄せようとする。見上げれば、また先輩が……あの笑っているようで笑っていない微笑みを、ダンに向かって浮かべていた。
何か今、さらっとすごいことを告白された気がするな。しかし、今そんなことを気にしてる余裕は、俺にはない。
右側で歩くダンは俺の肩に腕を回し、隙あらば俺を自分の方に引き寄せようとする。かたや先輩はというと、俺の腰に腕を回してダンの動きを牽制している。
普段の俺だったら両手に花、いや両手に雄っぱいとか最高だ! とか諸手を挙げて喜ぶところだが……正直、二人の様子が普段と違いすぎて素直に喜べない。
……本当にどうしたんだ? 二人ともずっと無言だし。これじゃあ、まるで連行されてるみたいだぞ。
「なぁ、相棒。昨日の埋め合わせなんだけどよ、今日の放課後でもいいか?」
「えっ? あ、あぁ……別に、大丈夫だけど……本当に何もないぞ? 俺の部屋」
「……シュンの部屋だから意味があるんだよ……それに明日は実力テストがあるだろ? 一緒にテスト勉強しようぜ!」
最初の方は声が小さく聞き取りづらかったが、勉強に関しては大賛成だ。実力テストには、魔力の実技テストもあったはずだからな。ダンに教えてもらっておいた方がいいだろう。
……なんせ、魔力のまの字も知らないんだからな。俺、この世界の人間じゃないし。
「いいよ、俺も助かるし。実技テストが……ちょっと不安なんだ」
「シュンは昔から魔力の操作が苦手だったよな。仕方ねぇなー……俺がばっちり教えてやるからよ! そのかわり、数学は頼んだぞ」
「分かった。じゃあ、放課後に」
「シュン、昨日の事なんだが」
俺達の会話に突如、先輩が割り込んでくる。
「君さえ良ければ、正式に剣術部に入らないか? 君は筋がいいから、きっと強くなれるはずだ。それに、筋力を鍛えれば魔力の操作も上達しやすいだろう? もちろん、最後まで俺がしっかりサポートするよ」
俺が口を挟む余地もなく、トントン拍子に話が進んでいく。
でも、まぁ確かに先輩の言う通りだ。この世界で筋肉は正義なのだから、鍛えておくに超したことはないだろう。推しが直々にとあれば、断る理由なんて有る訳がない。
「あ、ありがとうございます。えっと……じゃあ、まずは体験入部って形でもいいですか?」
「あぁ、もちろんそれで構わないよ。明日はテストで疲れているだろうから……明後日の放課後からでどうかな?」
「俺は大丈夫ですけど……先輩はいいんですか? 俺の都合に合わせてしまって」
「俺が好きでやっていることだから、シュンが気にすることはないよ」
そう言って、優しく微笑みかけてくれる。流石の威力だ。花が咲くような笑顔に自然と心臓が高鳴ってしまう。
「先輩っ、俺の相棒を、むやみに誑かさないでくれませんか?」
「うわっ」
不意に、肩に回されている太い腕に力が込められた。真っ赤な瞳を鋭く細め、先輩を睨みつけるダンの視線からは、ありありと敵意に近い何かが伝わってくる。
……ダン、怒ってる……よな? 絶対。でも、何でだろう? 今の先輩との会話の流れで、イラッとくる箇所なんか有ったか? 無いよな?
あと、たぶらかすって……何だ? 俺、ただ先輩に剣術部に誘われただけだよな?
「確かに、俺はシュンに対して特別な好意を抱いてはいるが……決して誑かしてなどいないよ」
「おわっ」
今度は腰に回された方の腕が力を込め、俺を引き寄せようとする。見上げれば、また先輩が……あの笑っているようで笑っていない微笑みを、ダンに向かって浮かべていた。
何か今、さらっとすごいことを告白された気がするな。しかし、今そんなことを気にしてる余裕は、俺にはない。
40
お気に入りに追加
227
あなたにおすすめの小説
神は眷属からの溺愛に気付かない
グランラババー
BL
【ラントの眷属たち×神となる主人公ラント】
「聖女様が降臨されたぞ!!」
から始まる異世界生活。
夢にまでみたファンタジー生活を送れると思いきや、一緒に召喚された母であり聖女である母から不要な存在として捨てられる。
ラントは、せめて聖女の思い通りになることを妨ぐため、必死に生きることに。
彼はもう人と交流するのはこりごりだと思い、聖女に捨てられた山の中で生き残ることにする。
そして、必死に生き残って3年。
人に合わないと生活を送れているものの、流石に度が過ぎる生活は寂しい。
今更ながら、人肌が恋しくなってきた。
よし!眷属を作ろう!!
この物語は、のちに神になるラントが偶然森で出会った青年やラントが助けた子たちも共に世界を巻き込んで、なんやかんやあってラントが愛される物語である。
神になったラントがラントの仲間たちに愛され生活を送ります。ラントの立ち位置は、作者がこの小説を書いている時にハマっている漫画や小説に左右されます。
ファンタジー要素にBLを織り込んでいきます。
のんびりとした物語です。
現在二章更新中。
現在三章作成中。(登場人物も増えて、やっとファンタジー小説感がでてきます。)
平凡ハイスペックのマイペース少年!〜王道学園風〜
ミクリ21
BL
竜城 梓という平凡な見た目のハイスペック高校生の話です。
王道学園物が元ネタで、とにかくコメディに走る物語を心掛けています!
※作者の遊び心を詰め込んだ作品になります。
※現在連載中止中で、途中までしかないです。
闘乱世界ユルヴィクス -最弱と最強神のまったり世直し旅!?-
mao
BL
力と才能が絶対的な存在である世界ユルヴィクスに生まれながら、何の力も持たずに生まれた無能者リーヴェ。
無能であるが故に散々な人生を送ってきたリーヴェだったが、ある日、将来を誓い合った婚約者ティラに事故を装い殺されかけてしまう。崖下に落ちたところを不思議な男に拾われたが、その男は「神」を名乗るちょっとヤバそうな男で……?
天才、秀才、凡人、そして無能。
強者が弱者を力でねじ伏せ支配するユルヴィクス。周りをチート化させつつ、世界の在り方を変えるための世直し旅が、今始まる……!?
※一応はバディモノですがBL寄りなので苦手な方はご注意ください。果たして愛は芽生えるのか。
のんびりまったり更新です。カクヨム、なろうでも連載してます。
学園と夜の街での鬼ごっこ――標的は白の皇帝――
天海みつき
BL
族の総長と副総長の恋の話。
アルビノの主人公――聖月はかつて黒いキャップを被って目元を隠しつつ、夜の街を駆け喧嘩に明け暮れ、いつしか"皇帝"と呼ばれるように。しかし、ある日突然、姿を晦ました。
その後、街では聖月は死んだという噂が蔓延していた。しかし、彼の族――Nukesは実際に遺体を見ていないと、その捜索を止めていなかった。
「どうしようかなぁ。……そぉだ。俺を見つけて御覧。そしたら捕まってあげる。これはゲームだよ。俺と君たちとの、ね」
学園と夜の街を巻き込んだ、追いかけっこが始まった。
族、学園、などと言っていますが全く知識がないため完全に想像です。何でも許せる方のみご覧下さい。
何とか完結までこぎつけました……!番外編を投稿完了しました。楽しんでいただけたら幸いです。
騎士団で一目惚れをした話
菫野
BL
ずっと側にいてくれた美形の幼馴染×主人公
憧れの騎士団に見習いとして入団した主人公は、ある日出会った年上の騎士に一目惚れをしてしまうが妻子がいたようで爆速で失恋する。
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる