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夢でしか会えない友達が出来たんだが?
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「俺はシュン、よろしくな。えっとさっき成功したって言ってたけどライが何かしたのか?」
「うん。夢の中で会う魔術なんだけど、同じ時に寝てないといけないし、魔力の波長が合わないと失敗するって書いてあったから」
「あー……それで俺が来たから驚いたのか」
「うん! ずっと失敗ばかりだったから……」
俺を見つめる丸い瞳が潤んでいく。今にも涙がこぼれてしまいそうだ。
「だ、大丈夫か? えっと……あ、これ使うか?」
慌ててポケットに手を突っ込むと柔らかい布の感触。持ってて良かったハンカチ。いや、毎朝持ったか? って確認してくれていたダン、ありがとう。心の中で手を合わせつつ取り出し、ライに差し出した。
「ありがとう。シュンは優しいね」
よっぽど嬉しかったんだろうか。目元を拭うとライは、ハンカチを大事そうに胸の前で握りしめた。
「その、理由を聞いてもいいか? どうして、そんな術を使ってたのか、さ」
ライが小さく頷く。
「……僕、昔から身体が弱くて、ほとんど病院で過ごしてるんだ」
「ごめん……嫌なこと、話させちゃったな」
「ううん大丈夫。だから、せめて夢の中だけでもいいから友達が欲しくて……ごめんね。僕のわがままに巻き込んじゃって」
小さな眉がしょんぼりと八の字になっていく。頭を下げた華奢な肩は震えていた。別に謝ることじゃないのにな。
「そんなに気にするなよ。確かにびっくりしたけど貴重な体験が出来たし。俺でよかったら友達になろう?」
「ほんとに? ありがとうシュン!」
こぼれるような笑顔を浮かべてライが俺に抱きついてくる。細い腕を首に回してぎゅうぎゅう頬を寄せてくるその姿は、何だか小型犬みたいで可愛らしい。
「ライが入院してる病院教えてよ。夢の中だけじゃなくてさ、ちゃんと会おう?」
「ごめんね、それは無理なんだ……」
途端にライの顔が悲しみに沈んでいく。
「ここでの記憶を持ち越すことは出来ない。目が覚めたら僕も、君も、互いのことは忘れてしまうんだよ」
「そんな、せっかく友達になれたのに……」
「大丈夫、ここに来れば記憶は戻るから。だからまた君に会いに行ってもいいかな?」
「もちろん! 今はまだここでしか会えないけどさ、なんとか方法を見つけて現実でも友達になろう」
「……うん!」
俺達が指切りをして約束すると、急に辺りが真っ暗になってライの姿が見えなくなる。
身体が沈むように重くなり頭がふらつく。まるでテレビの電源を落としたみたいに、俺の意識がぷつりと途切れた。
「うん。夢の中で会う魔術なんだけど、同じ時に寝てないといけないし、魔力の波長が合わないと失敗するって書いてあったから」
「あー……それで俺が来たから驚いたのか」
「うん! ずっと失敗ばかりだったから……」
俺を見つめる丸い瞳が潤んでいく。今にも涙がこぼれてしまいそうだ。
「だ、大丈夫か? えっと……あ、これ使うか?」
慌ててポケットに手を突っ込むと柔らかい布の感触。持ってて良かったハンカチ。いや、毎朝持ったか? って確認してくれていたダン、ありがとう。心の中で手を合わせつつ取り出し、ライに差し出した。
「ありがとう。シュンは優しいね」
よっぽど嬉しかったんだろうか。目元を拭うとライは、ハンカチを大事そうに胸の前で握りしめた。
「その、理由を聞いてもいいか? どうして、そんな術を使ってたのか、さ」
ライが小さく頷く。
「……僕、昔から身体が弱くて、ほとんど病院で過ごしてるんだ」
「ごめん……嫌なこと、話させちゃったな」
「ううん大丈夫。だから、せめて夢の中だけでもいいから友達が欲しくて……ごめんね。僕のわがままに巻き込んじゃって」
小さな眉がしょんぼりと八の字になっていく。頭を下げた華奢な肩は震えていた。別に謝ることじゃないのにな。
「そんなに気にするなよ。確かにびっくりしたけど貴重な体験が出来たし。俺でよかったら友達になろう?」
「ほんとに? ありがとうシュン!」
こぼれるような笑顔を浮かべてライが俺に抱きついてくる。細い腕を首に回してぎゅうぎゅう頬を寄せてくるその姿は、何だか小型犬みたいで可愛らしい。
「ライが入院してる病院教えてよ。夢の中だけじゃなくてさ、ちゃんと会おう?」
「ごめんね、それは無理なんだ……」
途端にライの顔が悲しみに沈んでいく。
「ここでの記憶を持ち越すことは出来ない。目が覚めたら僕も、君も、互いのことは忘れてしまうんだよ」
「そんな、せっかく友達になれたのに……」
「大丈夫、ここに来れば記憶は戻るから。だからまた君に会いに行ってもいいかな?」
「もちろん! 今はまだここでしか会えないけどさ、なんとか方法を見つけて現実でも友達になろう」
「……うん!」
俺達が指切りをして約束すると、急に辺りが真っ暗になってライの姿が見えなくなる。
身体が沈むように重くなり頭がふらつく。まるでテレビの電源を落としたみたいに、俺の意識がぷつりと途切れた。
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