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もし、サルファー先輩に嫌われたら俺は……

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 何でだろう? さっきまで暖かかったのに、急に寒気がしてきたんだが。何だか空気も張り詰めているというか、ピリピリするな……

 ……先輩は先輩で急に俯いてしまったし。どうしたんだろう? 何か、気に障ることをしてしまったんだろうか?

「……えっと、先輩?」

 どうやら、気のせいだったらしい。恐る恐る話し掛け、顔を上げてくれた先輩は、いつも通りの爽やかな笑顔を浮かべていたんだから。

「……すまない。少し動揺してしまった。気にしないでくれ。それじゃあ、君の部屋にお邪魔してもいいだろうか?」

「はい、じゃあ行きましょうか」




 先輩と手を繋ぎ、他愛のない話に花を咲かせながら、帰ってきた寮の自室。お馴染みの折り畳み式ローテーブルを広げ、クッションを並べる。

 よし完成、と振り返れば、後ろで見守っていた先輩と目が合う。鍛え上げられた大きな体躯が、どこか落ち着きなくそわそわ揺れていた。

「俺、お茶入れてくるんで適当に座ってて下さい」

「……俺も何か手伝おうか?」

「大丈夫ですよ。冷蔵庫から麦茶出すだけなんで」

 どうぞ、と促すと、畏まったようにちょこんと腰を下ろし、姿勢を正した。

 早く戻った方がいいかもな。手早く棚から硝子のコップを二個取り出し、冷えた麦茶を注いで先輩のもとへ急ぐ。

 ローテーブルを挟んで先輩の反対側に移動し、テーブルにコップを置いてから座った。

「ありがとう。喉が乾いていたから助かるよ」

 よほど喉が乾いていたんだろうか。男らしい喉を鳴らしながら、コップに入った麦茶を一気に飲み干していく。

「おかわり、持ってきましょうか?」

「すまない、お願いしてもいいだろうか?」

 照れくさそうに指で頬をかく先輩からコップを受け取り再び台所へ。コップに麦茶を注ぎなおしてから、またおかわりしやすいように今度はピッチャーも一緒に持っていく。

 まだいっぱいあるんでどうぞ、と手渡すと再び先輩は、並々についでいた麦茶をひと息で飲み干した。

「ふぅ……生き返ったよ。ありがとう」

「いいえ、どういたしまして。それで、その先輩。少し、長くなるんですけど……俺の話を聞いてもらってもいいですか?」

「ああ、是非聞かせて欲しい。君に関する大事な話なんだろう?」

「……はい、ありがとうございます」

 柔らかい微笑みに背中を押され、昨日先生とダンにした話を同じように先輩にも話した。

 ソレイユ先輩と話したことで、少し緊張が和らいでいたのかもしれない。思ってたよりもスムーズに話すことが出来たんだ。

 先輩は時折驚いた表情をしながらも、最後まで真剣に俺の話に耳を傾けてくれた。

「……という訳なんです」

 何とか全て話すことが出来た。が、先輩の反応を見るのが怖い。俯いた顔を上げることが出来ない。

 ……変なやつだと思われるのは別に構わない。ただ、もし先輩に嫌われてしまったら……俺は……

「……そうか。それで君からは、今まで感じたことのない魔力の気配がしたんだな」
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