上 下
38 / 122

サルファー先輩のライバルである先輩から、ジュースを奢ってもらったんだが?

しおりを挟む
 不意に名前を呼ばれ顔を上げると、緩いウェーブのかかった短髪の青年が俺の前に立っていた。明るいオレンジ色の髪が陽の光を浴び、きらきら輝いている。

 軍服のラインの色が緑色だから、サルファー先輩と同じ3年生だろう。先輩と比べると細身だが、同じ剣術部なだけあって筋肉の付き方に無駄がない。

 ……ん? オレンジの髪で、先輩の同級生、同じ剣術部、ってことはまさかこの人は………

「はい、そうですけど。もしかして……あなたは、ソレイユ先輩ですか?」

「えっ! シュンちゃん、オレのこと知ってるの? サルフから何か聞いてたりした?」

 タレ目の瞳がパッと見開き、柔らかい笑顔がますます明るくなっていく。何だか嬉しそうだ。

「いえ、聞いてませんけど……お二人は有名なので」

 サルファー先輩とソレイユ先輩はお互いライバルであり、剣術部きっての最強コンビでもある。

 大会の個人戦では一位二位を争い、二人一組のペアで行うタッグ戦においては抜群のコンビネーションで、毎回一位を勝ち取っている。二人共甲乙つけ難い、素晴らしい実力の持ち主だ。

「いやー……シュンちゃんに知っててもらってるなんて光栄だなー。サルフ待ってるんだよね? 良かったらさ、オレとちょっとお話ししない?」

 ソレイユ先輩は俺が返事をする前に隣に腰掛けると、パッケージにオレンジの断面が印刷された缶ジュースを手渡してきた。

「それ、オレのお気に入り。美味しいから飲んでみて。あ、開ける前にちゃんと振ってね? 果肉、沈んでもったいないからさ」

 言われた通りに缶を振ってから、タブを開け口をつける。甘酸っぱいオレンジの味がして緊張で乾いた口の中がさっぱりする。

「スゴく美味しいですね、これ。ありがとうございます」

「でしょ? 寮の前にある自販機でも売ってるからさ、気に入ったんなら買ってみてよ」

 さり気ないウィンクを間近で頂いてしまい、心臓がきゅっと締め付けられる。もうちょっと、ご自身のお顔の良さを自覚して欲しいもんだ。こっちはすぐにときめいちゃうんですよ?

 先輩も、自分の分のジュースを開け、男らしい喉を鳴らしながらぐびぐび飲み始めた。

 見た目の柔らかさと比べて豪快だな。何となく、サルファー先輩に似ている気がする。やっぱり、一緒に居ると似るんだろうか。

「……ところで、ソレイユ先輩。俺にお話しって?」

 先ほどの話題に戻すと、ソレイユ先輩が煽っていたジュースから口を離した。

 じっと俺を見つめたかと思えば、何やら口の端を持ち上げニヤリと笑う。引き締まった長い腕がするりと俺の背に回り、肩を掴まれ抱き寄せられた。

 ……何だか、いい匂いがする。ふわりと香った甘い匂いと、密着してしまった体温にドキドキする。耳元でそっと囁かれ、ますます心臓が大きく跳ねた。

「ねぇ、シュンちゃんさぁ……ぶっちゃけ、サルフとどこまで進んでんの?」
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

神は眷属からの溺愛に気付かない

グランラババー
BL
【ラントの眷属たち×神となる主人公ラント】 「聖女様が降臨されたぞ!!」  から始まる異世界生活。  夢にまでみたファンタジー生活を送れると思いきや、一緒に召喚された母であり聖女である母から不要な存在として捨てられる。  ラントは、せめて聖女の思い通りになることを妨ぐため、必死に生きることに。  彼はもう人と交流するのはこりごりだと思い、聖女に捨てられた山の中で生き残ることにする。    そして、必死に生き残って3年。  人に合わないと生活を送れているものの、流石に度が過ぎる生活は寂しい。  今更ながら、人肌が恋しくなってきた。  よし!眷属を作ろう!!    この物語は、のちに神になるラントが偶然森で出会った青年やラントが助けた子たちも共に世界を巻き込んで、なんやかんやあってラントが愛される物語である。    神になったラントがラントの仲間たちに愛され生活を送ります。ラントの立ち位置は、作者がこの小説を書いている時にハマっている漫画や小説に左右されます。  ファンタジー要素にBLを織り込んでいきます。    のんびりとした物語です。    現在二章更新中。 現在三章作成中。(登場人物も増えて、やっとファンタジー小説感がでてきます。)

平凡ハイスペックのマイペース少年!〜王道学園風〜

ミクリ21
BL
竜城 梓という平凡な見た目のハイスペック高校生の話です。 王道学園物が元ネタで、とにかくコメディに走る物語を心掛けています! ※作者の遊び心を詰め込んだ作品になります。 ※現在連載中止中で、途中までしかないです。

視線の先

茉莉花 香乃
BL
放課後、僕はあいつに声をかけられた。 「セーラー服着た写真撮らせて?」 ……からかわれてるんだ…そう思ったけど…あいつは本気だった ハッピーエンド 他サイトにも公開しています

闘乱世界ユルヴィクス -最弱と最強神のまったり世直し旅!?-

mao
BL
 力と才能が絶対的な存在である世界ユルヴィクスに生まれながら、何の力も持たずに生まれた無能者リーヴェ。  無能であるが故に散々な人生を送ってきたリーヴェだったが、ある日、将来を誓い合った婚約者ティラに事故を装い殺されかけてしまう。崖下に落ちたところを不思議な男に拾われたが、その男は「神」を名乗るちょっとヤバそうな男で……?  天才、秀才、凡人、そして無能。  強者が弱者を力でねじ伏せ支配するユルヴィクス。周りをチート化させつつ、世界の在り方を変えるための世直し旅が、今始まる……!?  ※一応はバディモノですがBL寄りなので苦手な方はご注意ください。果たして愛は芽生えるのか。   のんびりまったり更新です。カクヨム、なろうでも連載してます。

学園と夜の街での鬼ごっこ――標的は白の皇帝――

天海みつき
BL
 族の総長と副総長の恋の話。  アルビノの主人公――聖月はかつて黒いキャップを被って目元を隠しつつ、夜の街を駆け喧嘩に明け暮れ、いつしか"皇帝"と呼ばれるように。しかし、ある日突然、姿を晦ました。  その後、街では聖月は死んだという噂が蔓延していた。しかし、彼の族――Nukesは実際に遺体を見ていないと、その捜索を止めていなかった。 「どうしようかなぁ。……そぉだ。俺を見つけて御覧。そしたら捕まってあげる。これはゲームだよ。俺と君たちとの、ね」  学園と夜の街を巻き込んだ、追いかけっこが始まった。  族、学園、などと言っていますが全く知識がないため完全に想像です。何でも許せる方のみご覧下さい。  何とか完結までこぎつけました……!番外編を投稿完了しました。楽しんでいただけたら幸いです。

騎士団で一目惚れをした話

菫野
BL
ずっと側にいてくれた美形の幼馴染×主人公 憧れの騎士団に見習いとして入団した主人公は、ある日出会った年上の騎士に一目惚れをしてしまうが妻子がいたようで爆速で失恋する。

異世界召喚チート騎士は竜姫に一生の愛を誓う

はやしかわともえ
BL
11月BL大賞用小説です。 主人公がチート。 閲覧、栞、お気に入りありがとうございます。 励みになります。 ※完結次第一挙公開。

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

処理中です...