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俺って……一体、何なんだ?

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 モデルって、ただ指定されたポーズをとってるだけでいいんだと思っていたけど……違うんだな。

 でも、言われてみれば、人物画っていうか肖像画だっけ? そんなのはモデルの内面を描くとかなんとか聞いたことがあるな。

 だったら、先生が俺のことを知りたいって思うのも分かるな。ゲーム内でも、真剣に絵に向き合ってて……カッコよかったもんな。

「何でもいいんだ。好きなものや嫌いなもの君の家族や友達のこととかね。言える範囲でいいから教えてくれないかな?」

 だんまりしたまま俺が思考を飛ばしていたせいだ。困っているように思われたんだろう。柔らかく微笑み、俺が答えやすいように例を上げてくれる。

 ……好きなもの、か……雄っぱいです! とは流石に言えないな。

「……筋トレが好きですね。ものっていうか、ことですけど」

「いや、構わないよ、ありがとう。確かに君のスタイルからは日頃の努力が伺えるね。カッコいいよ」

「あ、ありがとうございます……」

 まさかの好反応だ。好きだけど無難かな? と思って答えたのに。優しいお世辞だとは分かっているが、渋い声で褒められるとドキドキしてしまうな。

「じゃあ、何か嫌いなものはあるかい?」

「嫌い…………怖いものは、苦手ですね……ホラー映画とか。もし、見たら……その日は絶対に一人で眠れないですね……」

 ホラーという言葉に思考を引っ張られたからだろう。思い出してしまった。心霊系番組のいわくつきなお写真を。イヤすぎる奇跡的なタイミング、チャンネルを変えた瞬間に見てしまった、お分かりいただけただろうか? っていうお写真を。

「……へぇ、可愛いね。もし、眠れない日があったら電話しておいで。私で良ければ君が眠れるまで話し相手になるよ」

 またしても甘く囁かれ、おまけに魅力的過ぎる優しいお誘いまでしてもらえ、俺の心臓は破裂寸前だ。バクバク暴れてしまっている。

「いいんですか? そんなこと言われたら俺、すぐ電話しちゃいますよ?」

「構わないよ。シュン君ならいつでも大歓迎さ」

「っ……あ、ありがとう、ございます……」

 冗談めかして言ってみても、大人の包容力とさり気ないウィンクにあっさり撃沈する始末だ。対応が神過ぎるな……好きです!!

「じゃあ、次はご家族のことを聞いてもいいかな?」

「……あ、はい勿論。家族は両親と妹が……」

 そこで、はたと気づく。いやちょっと待て、それは俺がいた世界での話だ。

 ……この世界の俺に家族はいるのか?

 自分の好きなゲームの世界、その世界に来たという喜びで見えていなかった問題。一度考え始めれば、沼にハマるみたいにズブズブと囚われていってしまう。

 そもそも俺は、どうやってこの世界に来たんだ?

 てっきり流行りの転生か何かかと思ったけど、死んだ記憶なんて俺には無い。もともとこの世界にいた誰かに成り代わったとか? 見た目は2次元風とはいえ、ベースは完全に俺だけど。

 だったら……その誰かは今、どうなってるんだ?

 ……俺は、一体なんなんだ?

「シュン君!」

 先生が呼ぶ声にハッと我に返った。いつの間にか俺の隣に移動していた先生が、心配そうな眼差しを俺に向けている。
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