28 / 122
先生の淹れてくれた紅茶が美味しすぎるんだが?
しおりを挟む
柔らかく微笑みながら先生が、手前のイスを引いてから俺に勧めてくれる。
「ありがとうございます」
促されるままに腰を落ち着けると頭をよしよし撫でてもらえた。
……嬉しいけれど止めて欲しい。心臓に悪いんですよ! 推しからの唐突な供給は!!
心を鷲掴みにされまくっている俺の現状なんて、グレイ先生は知る由もない。後ろに緩く纏めた群青の髪を揺らしながら、近くの棚からお洒落なデザインの箱と二客のティーカップを取り出している。
先生は紅茶が好きだ。だからだろうな、淹れ方も何だか凝っている。
電気ケトルで沸かしたお湯をカップに注ぎ、少し待ってから捨て、再びカップにお湯を注ぐ。箱から取り出したティーバッグを入れたかと思えば、受け皿でカップに蓋をしてしまった。しばらくしてから、ティーバッグを静かにカップから引き上げた。
ようやく完成らしい。湯気立つティーカップを俺の前と向かいに置いてから、先生も腰掛けた。
「はいどうぞ、召し上がれ。本当は茶葉から入れた方がいいんだろうけど、こっちに慣れちゃうと楽なんだよね」
照れくさそうに微笑みながら、俺に紅茶の入ったカップを勧めた。あれで楽なのか……ものスゴく丁寧に淹れてくれたようにしか見えなかったんだけれど。
「いただきます」
琥珀色っていうのかな? とにかくキレイだ。湯気立つ紅茶を、舌を火傷しないように慎重に口に含む。瞬間、花のような香りがふわりと広がった。さっぱりとした爽やかな味わいがして、スゴく飲みやすい。
「美味しいです! こんなに美味しい紅茶飲んだの初めてです。何の紅茶ですか?」
「君に喜んでもらえて嬉しいな、頑張っていれた甲斐があったよ。これはダージリンって種類の紅茶だよ。お茶請けにチョコレートはどうかな?」
これが最近私のお気に入りなんだ、と青い紙で包まれたチョコレートが六粒ほど入った箱を俺の前に差し出す。
せっかくの推しからのご厚意だ。無下にする訳にはいかない。さらにはお気に入りとくれば、是非ともいただきたいに決まっている。
「ありがとうございます! いただきます」
一粒つまみ、小さな包装紙を開けてから口に含む。テストで疲れていたからだろう。チョコレートの優しい甘さが、脳の隅々にまで染み渡っていく気がするな。
「ふふっ……シュン君は本当に美味しそうに食べてくれるから嬉しいよ。これもどうかな?」
いつの間に用意してくれていたんだろうか。今度は丸い箱に詰まったチョコを差し出された。
何だかデジャブだ。前も思ったけど、俺、餌付けされてないか? いや、推しが喜んでくれるならいくらでも食べますけども。
「えっと……先生、俺に何か話が有るんじゃ……」
「あぁ、ごめんね。つい楽しくなっちゃって」
ほんのり染まった頬を照れくさそうに掻く。小さく咳払いをしてから、見つめてきた眼差しは真剣な色を帯びていた。
「先日、君に絵のモデルを頼んだよね? それで絵を描く前に、もっとシュン君のことを知っておきたくてね。君と少し話しがしたかったんだ」
「ありがとうございます」
促されるままに腰を落ち着けると頭をよしよし撫でてもらえた。
……嬉しいけれど止めて欲しい。心臓に悪いんですよ! 推しからの唐突な供給は!!
心を鷲掴みにされまくっている俺の現状なんて、グレイ先生は知る由もない。後ろに緩く纏めた群青の髪を揺らしながら、近くの棚からお洒落なデザインの箱と二客のティーカップを取り出している。
先生は紅茶が好きだ。だからだろうな、淹れ方も何だか凝っている。
電気ケトルで沸かしたお湯をカップに注ぎ、少し待ってから捨て、再びカップにお湯を注ぐ。箱から取り出したティーバッグを入れたかと思えば、受け皿でカップに蓋をしてしまった。しばらくしてから、ティーバッグを静かにカップから引き上げた。
ようやく完成らしい。湯気立つティーカップを俺の前と向かいに置いてから、先生も腰掛けた。
「はいどうぞ、召し上がれ。本当は茶葉から入れた方がいいんだろうけど、こっちに慣れちゃうと楽なんだよね」
照れくさそうに微笑みながら、俺に紅茶の入ったカップを勧めた。あれで楽なのか……ものスゴく丁寧に淹れてくれたようにしか見えなかったんだけれど。
「いただきます」
琥珀色っていうのかな? とにかくキレイだ。湯気立つ紅茶を、舌を火傷しないように慎重に口に含む。瞬間、花のような香りがふわりと広がった。さっぱりとした爽やかな味わいがして、スゴく飲みやすい。
「美味しいです! こんなに美味しい紅茶飲んだの初めてです。何の紅茶ですか?」
「君に喜んでもらえて嬉しいな、頑張っていれた甲斐があったよ。これはダージリンって種類の紅茶だよ。お茶請けにチョコレートはどうかな?」
これが最近私のお気に入りなんだ、と青い紙で包まれたチョコレートが六粒ほど入った箱を俺の前に差し出す。
せっかくの推しからのご厚意だ。無下にする訳にはいかない。さらにはお気に入りとくれば、是非ともいただきたいに決まっている。
「ありがとうございます! いただきます」
一粒つまみ、小さな包装紙を開けてから口に含む。テストで疲れていたからだろう。チョコレートの優しい甘さが、脳の隅々にまで染み渡っていく気がするな。
「ふふっ……シュン君は本当に美味しそうに食べてくれるから嬉しいよ。これもどうかな?」
いつの間に用意してくれていたんだろうか。今度は丸い箱に詰まったチョコを差し出された。
何だかデジャブだ。前も思ったけど、俺、餌付けされてないか? いや、推しが喜んでくれるならいくらでも食べますけども。
「えっと……先生、俺に何か話が有るんじゃ……」
「あぁ、ごめんね。つい楽しくなっちゃって」
ほんのり染まった頬を照れくさそうに掻く。小さく咳払いをしてから、見つめてきた眼差しは真剣な色を帯びていた。
「先日、君に絵のモデルを頼んだよね? それで絵を描く前に、もっとシュン君のことを知っておきたくてね。君と少し話しがしたかったんだ」
20
お気に入りに追加
227
あなたにおすすめの小説
神は眷属からの溺愛に気付かない
グランラババー
BL
【ラントの眷属たち×神となる主人公ラント】
「聖女様が降臨されたぞ!!」
から始まる異世界生活。
夢にまでみたファンタジー生活を送れると思いきや、一緒に召喚された母であり聖女である母から不要な存在として捨てられる。
ラントは、せめて聖女の思い通りになることを妨ぐため、必死に生きることに。
彼はもう人と交流するのはこりごりだと思い、聖女に捨てられた山の中で生き残ることにする。
そして、必死に生き残って3年。
人に合わないと生活を送れているものの、流石に度が過ぎる生活は寂しい。
今更ながら、人肌が恋しくなってきた。
よし!眷属を作ろう!!
この物語は、のちに神になるラントが偶然森で出会った青年やラントが助けた子たちも共に世界を巻き込んで、なんやかんやあってラントが愛される物語である。
神になったラントがラントの仲間たちに愛され生活を送ります。ラントの立ち位置は、作者がこの小説を書いている時にハマっている漫画や小説に左右されます。
ファンタジー要素にBLを織り込んでいきます。
のんびりとした物語です。
現在二章更新中。
現在三章作成中。(登場人物も増えて、やっとファンタジー小説感がでてきます。)
平凡ハイスペックのマイペース少年!〜王道学園風〜
ミクリ21
BL
竜城 梓という平凡な見た目のハイスペック高校生の話です。
王道学園物が元ネタで、とにかくコメディに走る物語を心掛けています!
※作者の遊び心を詰め込んだ作品になります。
※現在連載中止中で、途中までしかないです。
視線の先
茉莉花 香乃
BL
放課後、僕はあいつに声をかけられた。
「セーラー服着た写真撮らせて?」
……からかわれてるんだ…そう思ったけど…あいつは本気だった
ハッピーエンド
他サイトにも公開しています
騎士団で一目惚れをした話
菫野
BL
ずっと側にいてくれた美形の幼馴染×主人公
憧れの騎士団に見習いとして入団した主人公は、ある日出会った年上の騎士に一目惚れをしてしまうが妻子がいたようで爆速で失恋する。
学園と夜の街での鬼ごっこ――標的は白の皇帝――
天海みつき
BL
族の総長と副総長の恋の話。
アルビノの主人公――聖月はかつて黒いキャップを被って目元を隠しつつ、夜の街を駆け喧嘩に明け暮れ、いつしか"皇帝"と呼ばれるように。しかし、ある日突然、姿を晦ました。
その後、街では聖月は死んだという噂が蔓延していた。しかし、彼の族――Nukesは実際に遺体を見ていないと、その捜索を止めていなかった。
「どうしようかなぁ。……そぉだ。俺を見つけて御覧。そしたら捕まってあげる。これはゲームだよ。俺と君たちとの、ね」
学園と夜の街を巻き込んだ、追いかけっこが始まった。
族、学園、などと言っていますが全く知識がないため完全に想像です。何でも許せる方のみご覧下さい。
何とか完結までこぎつけました……!番外編を投稿完了しました。楽しんでいただけたら幸いです。
モテる兄貴を持つと……(三人称改訂版)
夏目碧央
BL
兄、海斗(かいと)と同じ高校に入学した城崎岳斗(きのさきやまと)は、兄がモテるがゆえに様々な苦難に遭う。だが、カッコよくて優しい兄を実は自慢に思っている。兄は弟が大好きで、少々過保護気味。
ある日、岳斗は両親の血液型と自分の血液型がおかしい事に気づく。海斗は「覚えてないのか?」と驚いた様子。岳斗は何を忘れているのか?一体どんな秘密が?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる