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俺達は、二人で1つ
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何でも仲良く半分こにする。それが、俺達がずっと昔から決めていたルールだった。
俺達は二人で一つだから、世界でたった一人の家族で兄弟だから。俺にとっても、セイにとっても。
そんな俺達にとって、お嫁さんも二人で分けようねってなるのは至極当然のことで。
二人の好みに合った子を探すってなると、難易度が跳ね上がっちゃうのも仕方ないじゃん。いくら俺達が双子だからっていってもさ、好きになるものが全て一緒なわけないんだからさ。
だって味の好みすら違うんだよ?俺はしょっぱいものが好きだけど、セイは甘いものの方が好きだし。
「で、今回の子も好みに合わなかったから連れてきたってわけ? 僕んところをなんだと思ってんだよ君達」
鬱陶しそうに、透き通った海面のような前髪をかきあげたその表情まで、鬱陶しいって気持ちが全面に押し出されていた。
眉間にいっぱいシワを作って、口を思いっきりへの字に曲げながら、水かきのついた青白い指で、珊瑚や真珠で彩られたテーブルを小刻みに叩く。
ついさっきまではだらしない顔で、眷族の魚達にあの子の衣類を身繕わせたり、部屋へと案内させたりしていたのに。自分のお嫁さん達の前では猫かぶりまくってさぁー……ホント裏表ありすぎだよねぇ。
まぁ、俺達に対しても猫なで声で接せられたらそれはそれで困るんだけどさ、てゆーか引く。
「男女見境ないハーレム?」
「幸せ大家族……だろうか」
「セイは許す。でもソウ、君は駄目だ」
「えー! なんで!? これ以上ないくらい合ってんじゃん!」
もー……セイってばコイツにまで気い使って言葉選んじゃってさー優しすぎない?そういうとこがいいとこなんだけどさぁ。
てゆーか見たまんま、思ったまんまのこと言ったのに怒るとか意味わかんないんだけどー。そんな風に顔しかめてるとシワになっちゃうよ?
「だからだよ! 人を節操ない、ちゃらんぽらんみたいな風に言いやがって!」
「実際そうじゃん! 今まで気に入らなかった子なんて数えるくらいで、今日の子にも開口一番に僕が幸せにしてあげるからね! とかプロポーズしてたくせに!」
「一目惚れしたんだから仕方がないだろ! あんな可憐な子がナシだなんて君達のセンスを疑うね、僕は!」
「ほーらやっぱり節操ないじゃん! 俺達二人で決めたことなんだから仕方ないでしょ!」
俺は結構可愛いなって思ったんだけどさ、今回はセイが違うなって顔してたんだもん。だったらナシでしょ普通。それなのに俺達のセンスがおかしいだなんて失礼しちゃうなぁ。
テーブルから身を乗り出して喚き散らすヤツに、対抗すべく腰を上げようとした俺を、隣に座っていたセイが尻尾で腕を引きながら、宥めるみたいに俺の背中を優しく叩く。
あー……もう分かったよ、分かったからそんなしょんぼりした顔しないでよね!ほら、座ったよ?これでいい?
……俺、子供じゃ無いんだからさ……えらいぞって頭、撫で撫でしなくていいんだけど。
いや、別に嫌じゃないよ?ただ、ほら、タツミの前じゃん?絶対、白けたような目で見られるって、いや案の定見てるし。
「……悪くないよりは良い方が良いに決まってるけどさ。にしても君達酷すぎない? いや、まぁ嫁さんを共有しようとしてる段階でアレだけどさ」
「俺達は二人で一つなんだから、それくらい当然でしょ? そもそも、50人以上囲ってるヤツに言われたくないんだけどー」
セイのことは大好きだし、愛してるけど、家族としてだし。
そもそも俺の好みのタイプ、セイとは真逆の子なんだけど。俺の腕の中に収まるくらい小柄で、仕草とか雰囲気が可愛い感じだと最高だね!
世界で一番格好いいのは、セイに決まってるけどね。
「僕はちゃんと真摯に一人一人を愛してるんだよ! 全力でね! それに大半は君達が連れてきた子なんだからな!」
「それについては感謝してるよ? 一応」
「いつも済まないな。タツミに任せた子はみんな幸せそうに暮らしているから、つい頼ってしまうんだ」
「だろう? やっぱりセイは、僕のことちゃんと分かってるなーメロン食べるかい? 君、甘いの好きだろ?」
ちょっろ。ついさっきまで、鬼みたいな形相してキャンキャン吠えてたくせに。ほんのちょっと持ち上げられただけで、上機嫌になっちゃってさぁ。
いや、セイは素直に思ったままのこと言ってるだけなんだけどね。そういう子だから。
満面の笑みを浮かべるタツミが手を叩くとドレスみたいな尾ひれをなびかせながら、淡いピンク色の魚達が真珠色のお盆を乗せてやってくる。
八切りにされ、食べやすいように皮の上に一口大に切られたメロンが乗ったお皿が並ぶ。セイとタツミの前に。
「ちょっとー俺の分はー?」
甘いのセイほど好きじゃないけどさぁ、のけ者にされるのは凹むんだけどー……
いや、俺の言い方が悪かったのかもしれないけど、これくらいのやり取りいっつもやってんじゃん俺達。
半分こにしようって?嬉しいけどさ、セイそれ好きでしょ?メロンくらい俺、我慢できるよ。
「君はしょっぱい方が好きだろ。生ハムメロンにしてやってるから大人しく待ってろ」
「ホント? やったぁ! タツミ大好き!」
「現金な奴だな君は」
定期的に、俺達の元へと生け贄として捧げられる子達をタツミに紹介したり、安全な場所へと連れていってあげたり。その繰り返しばかりで、俺達のお嫁さん探しは難航していた。ま、条件が条件だけにこうなちゃうのは目に見えてたけどさ。
別に今の生活に不満があるわけでもないし……このまま二人でのんびり暮らすのもいいかな、と思いかけていた時だったんだ。
あの子が、サトルちゃんが俺達の所に来てくれたのは。
俺達は二人で一つだから、世界でたった一人の家族で兄弟だから。俺にとっても、セイにとっても。
そんな俺達にとって、お嫁さんも二人で分けようねってなるのは至極当然のことで。
二人の好みに合った子を探すってなると、難易度が跳ね上がっちゃうのも仕方ないじゃん。いくら俺達が双子だからっていってもさ、好きになるものが全て一緒なわけないんだからさ。
だって味の好みすら違うんだよ?俺はしょっぱいものが好きだけど、セイは甘いものの方が好きだし。
「で、今回の子も好みに合わなかったから連れてきたってわけ? 僕んところをなんだと思ってんだよ君達」
鬱陶しそうに、透き通った海面のような前髪をかきあげたその表情まで、鬱陶しいって気持ちが全面に押し出されていた。
眉間にいっぱいシワを作って、口を思いっきりへの字に曲げながら、水かきのついた青白い指で、珊瑚や真珠で彩られたテーブルを小刻みに叩く。
ついさっきまではだらしない顔で、眷族の魚達にあの子の衣類を身繕わせたり、部屋へと案内させたりしていたのに。自分のお嫁さん達の前では猫かぶりまくってさぁー……ホント裏表ありすぎだよねぇ。
まぁ、俺達に対しても猫なで声で接せられたらそれはそれで困るんだけどさ、てゆーか引く。
「男女見境ないハーレム?」
「幸せ大家族……だろうか」
「セイは許す。でもソウ、君は駄目だ」
「えー! なんで!? これ以上ないくらい合ってんじゃん!」
もー……セイってばコイツにまで気い使って言葉選んじゃってさー優しすぎない?そういうとこがいいとこなんだけどさぁ。
てゆーか見たまんま、思ったまんまのこと言ったのに怒るとか意味わかんないんだけどー。そんな風に顔しかめてるとシワになっちゃうよ?
「だからだよ! 人を節操ない、ちゃらんぽらんみたいな風に言いやがって!」
「実際そうじゃん! 今まで気に入らなかった子なんて数えるくらいで、今日の子にも開口一番に僕が幸せにしてあげるからね! とかプロポーズしてたくせに!」
「一目惚れしたんだから仕方がないだろ! あんな可憐な子がナシだなんて君達のセンスを疑うね、僕は!」
「ほーらやっぱり節操ないじゃん! 俺達二人で決めたことなんだから仕方ないでしょ!」
俺は結構可愛いなって思ったんだけどさ、今回はセイが違うなって顔してたんだもん。だったらナシでしょ普通。それなのに俺達のセンスがおかしいだなんて失礼しちゃうなぁ。
テーブルから身を乗り出して喚き散らすヤツに、対抗すべく腰を上げようとした俺を、隣に座っていたセイが尻尾で腕を引きながら、宥めるみたいに俺の背中を優しく叩く。
あー……もう分かったよ、分かったからそんなしょんぼりした顔しないでよね!ほら、座ったよ?これでいい?
……俺、子供じゃ無いんだからさ……えらいぞって頭、撫で撫でしなくていいんだけど。
いや、別に嫌じゃないよ?ただ、ほら、タツミの前じゃん?絶対、白けたような目で見られるって、いや案の定見てるし。
「……悪くないよりは良い方が良いに決まってるけどさ。にしても君達酷すぎない? いや、まぁ嫁さんを共有しようとしてる段階でアレだけどさ」
「俺達は二人で一つなんだから、それくらい当然でしょ? そもそも、50人以上囲ってるヤツに言われたくないんだけどー」
セイのことは大好きだし、愛してるけど、家族としてだし。
そもそも俺の好みのタイプ、セイとは真逆の子なんだけど。俺の腕の中に収まるくらい小柄で、仕草とか雰囲気が可愛い感じだと最高だね!
世界で一番格好いいのは、セイに決まってるけどね。
「僕はちゃんと真摯に一人一人を愛してるんだよ! 全力でね! それに大半は君達が連れてきた子なんだからな!」
「それについては感謝してるよ? 一応」
「いつも済まないな。タツミに任せた子はみんな幸せそうに暮らしているから、つい頼ってしまうんだ」
「だろう? やっぱりセイは、僕のことちゃんと分かってるなーメロン食べるかい? 君、甘いの好きだろ?」
ちょっろ。ついさっきまで、鬼みたいな形相してキャンキャン吠えてたくせに。ほんのちょっと持ち上げられただけで、上機嫌になっちゃってさぁ。
いや、セイは素直に思ったままのこと言ってるだけなんだけどね。そういう子だから。
満面の笑みを浮かべるタツミが手を叩くとドレスみたいな尾ひれをなびかせながら、淡いピンク色の魚達が真珠色のお盆を乗せてやってくる。
八切りにされ、食べやすいように皮の上に一口大に切られたメロンが乗ったお皿が並ぶ。セイとタツミの前に。
「ちょっとー俺の分はー?」
甘いのセイほど好きじゃないけどさぁ、のけ者にされるのは凹むんだけどー……
いや、俺の言い方が悪かったのかもしれないけど、これくらいのやり取りいっつもやってんじゃん俺達。
半分こにしようって?嬉しいけどさ、セイそれ好きでしょ?メロンくらい俺、我慢できるよ。
「君はしょっぱい方が好きだろ。生ハムメロンにしてやってるから大人しく待ってろ」
「ホント? やったぁ! タツミ大好き!」
「現金な奴だな君は」
定期的に、俺達の元へと生け贄として捧げられる子達をタツミに紹介したり、安全な場所へと連れていってあげたり。その繰り返しばかりで、俺達のお嫁さん探しは難航していた。ま、条件が条件だけにこうなちゃうのは目に見えてたけどさ。
別に今の生活に不満があるわけでもないし……このまま二人でのんびり暮らすのもいいかな、と思いかけていた時だったんだ。
あの子が、サトルちゃんが俺達の所に来てくれたのは。
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