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一章
十話
しおりを挟む視点違います気をつけてええ笑
アルファポリスもMMO系小説ブーム来いやあああ笑
読みたいのに全然無かったから俺が書いたよふおおおお笑
人気出ろmmorpg系いいいぃ笑笑
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元PK厨。
この【イニティウムオンライン】に酷似した世界では強奪を繰り返す彼、キャラクターネーム【セツリ】は正体分からない敵へと向かって駆けつつ、物見として飛翔する八咫烏を撃ち墜としながら肉薄を続ける。
魔法スキルを自身に付与しており、移動速度はケタ違い。
数キロ程離れていた距離は、数分も満たないうちに相手を視認できるまでに迫る。
黒のロングコートを身に纏う男。
恐らくアイツが使い魔を飛ばしていた張本人だと決定付ける。
その男の後ろに控える2人。
見た目からして、剣士の類い。だが、その2人が動く様子はない。剣士系ならば遠距離攻撃に気をつかう事もない。
3人のうち誰が提案したのかは知らないが、3人で確実に向かって倒しにくれば楽に戦えただろうにと3人に嘲笑を向ける。
(馬鹿なヤツらだねぇ……)
以前もそんなヤツを見かけた。
【セツリ】が1人だからといって、はじめは大人数でふくろにしようとしないヤツら。
とはいえ。大人数で向かってこようが、【セツリ】は負けるつもりがない。どちらだろうが構わないんだが、大人数の方が手数も多いだろうし、勝ち目は上がるだろうになとは思う。
黒のロングコートを着た男。
彼はフードを目深く被っており、顔が一切見えない。
得物は長剣。あの無駄にどデカイ長剣を使うジョブなんてたった1つ。
彼のジョブはグラディエーター【剣闘士】確定。
(僕も舐められたもんだ)
しかも、相手のジョブは【イニティウムオンライン】公式サイトが公にPvPでは向いていないと公言していたグラディエーター【剣闘士】だ。
舐めてるとしか思えない。
PKを長くやっていた【セツリ】は小さな怒りと、憤りを感じる。
視認してみれば、着ている装備は良さげに見える。
持ってる剣だって質が良さそうだ。
ミッションでは高名なプレイヤーだったのかもしれないがこれはミッションモンスター討伐ではない。PvPだ。
ミッションでの経験なんて一切当てにならない。
ミッションでそこそこ強いと自覚している者は大概、PvPでもそこそこ強いなんて勘違いをする。
それは間違いだ。それなら逆だってあり得る筈なのにそれは頭に無いのだから。
PvPで最強と呼ばれる者ですら、ミッションではあまり役に立たないなんて話は有名。であれば、逆も然り。
ミッションでいくら強かろうが、PvPでは雑魚も同然。
言ってみれば良い装備をぶら下げただけのカモだ。
そんな奴らに限って負けた時に面白おかしく罵声を浴びせてくる。その瞬間が【セツリ】は楽しみで仕方がない。
男が剣を抜き、構えを取る。
遠く離れた場所からスキルを発動したところで、避けて下さいと言ってるようなもの。
ディレイ時間が惜しくなるだけというのを知らないのか。
構えからしてグラディエーター【剣闘士】用スキル——ウルフファング。
まだ男と【セツリ】の距離は100m以上ある。
余裕で避けれる。
さぁ、撃てよ。
避けてやるから、撃ってこいよ。
【セツリ】は待ちわびる。
ウルフファングを放たれると同時に肉薄してやる。
ディレイが生まれ、スキルの1つとして僕に当てる事なくお前は沈むのだと。一切疑わずにその時を待つ。
そして、男がスキルを放った——。
PKを繰り重ねてきた【セツリ】にとって、どんな大技だろうが、100m以上も間があれば避けるなんて行為は児戯に等しい。
危なげなく放たれたウルフファングを避け、そのまま肉薄してスキルをあの男に叩き込む。それで終わり。脳内でそのシュミレートは出来ていた。
不備はなかった。しかし——。
ウルフファングを避けた【セツリ】の目の前。
まるでそこに避けると知っていたかのように、投げナイフが眼前に存在していた。時間が止まる。
(……は?!)
ナイフの速度。正確さ。
それら全てが【セツリ】の想像を上回る。
グラディエーター【剣闘士】に投擲のスキルは存在しない。しかも、これはあまりに【命中度】が高過ぎる。
頭の中が掻き乱される。
わけがわからなくなる。
それでも、避けなければいけない事だけは分かった。
まるで空間転移。
空間跳躍。そんな事象が起こったと錯覚するレベル。
そんな事を考えてる間にもナイフは額に近づく。
手にするサーベルで撃ち落とす? いや、時間が足らない。
慌てて身体を捻り、回避。危険をいちはやく察知していた本能がそれを可能とした。
そして漸く時間が動き出す。
大技であるウルフファングで注意を惹き、本命はあのナイフ。
なるほど、少し舐めすぎていたかも知れないと反省するも、これ以上何かがあるとは考え難い。
ウルフファングによるディレイの回復はまだだろう。
これでチェックメイト——。
(嘘、だろッ?!)
ナイフを避けた先に、まるで狙ったかのように1投目よりか僅かに遅れて2投目のナイフが逼迫していた。
ウルフファングを囮として、相手が避ける場所を予測し、そこにナイフを投擲。しかも、そのナイフを避けた先すらも予測し、2投目を当てにくる。
それらの行為はあまりに、慣れ過ぎていた。
ここで己の考えを改める。相手はミッション勢ではない。間違いなく、やり慣れたPvP勢。対人慣れをしてるのならば、事前に対策をしている可能がある。
油断したまま無用意に突っ込むのはマズイとやっと理解し、1投目の投擲を避けるべく捻った身体を無理やり、もう1度捻る。
ゴキリと鈍い音が身体から聞こえてくるが、気にしてる場合ではない。
とりあえず距離を取って。
そんな事を考える折。
近くから声が聞こえる。
ほとんど耳元で。
聞き慣れない声だった。
男の声。100mは離れていたと言うのに、一瞬で距離を詰められたのだと。そんな事は理解しようにも頭が拒否する。あり得ないと。早過ぎると。
「——これでチェックメイトだ」
大きな長剣は既に仕舞われており、無手。
いや、右拳に何やらスキルが付与されている。
先ほどウルフファングを放ってきた男その者だった。
「……くそ、がッ!!!」
拳はもう目の前に迫っている。
身体はもう避ける行為を容認してくれない。物理的に、あの2投を避けた事ですら奇跡に近かったというのに。
今は手段は選んでられない。
ディレイがあまりに長く、1日に1度レベルでしか使えない緊急離脱用スキルだが、使うしかなかった。
それで自分のジョブがバレてしまうとしても。
シノビ【忍者】用緊急離脱スキル——
「空蝉ッ!!!!」
直近30分を範囲として、自身がいた場所に転移する離脱用スキル。しかも、これは【魔法のスクロール】で出回った事がないスキルとしてかなり有名。
【セツリ】のジョブがシノビ【忍者】とバレるだろうが、それでもここで無様に終わる事だけは容認出来なかった。
転移場所を指定。
ここから25m離れた先。
丁度、あるスキルがギリギリ使える効果範囲内を狙って転移。
「なるほど、シノビか」
感嘆めいた声が聞こえてくるが、それを気にする時間すら惜しい。上からだとかそんな事を言うつもりはない。
こと、この場においてあの男は間違いなく格上だったのだから。
ザクリとサーベルを地面に突き刺す。
言早に一言。
だが、【セツリ】が何をしようとしたのか理解したのか、タイミングを合わせるように男も長剣を抜いて突き刺し一言。
「『影縛りッ!!!』」
「魔力対抗ッ!!」
直後、上手くカウンターが決まり、本来ならば男が影縛りによって拘束される筈だったというのに、【セツリ】が逆にその場に拘束。
シノビ【忍者】用スキル——影縛りの効果は12秒。
カウンターすら決めてくるとは思ってもおらず、眼を見張るも。
12秒間が終わるまで自身の周囲に近づけさせまいと更にスキルを行使。影縛りは幸いにも1日の使用回数に制限がある代わりにディレイは殆ど存在しない。
【セツリ】の足下が妖しく光る。
スキル発動兆候。
両手で筒を作るようにし、口元へ持っていく。
そしてスキルを発動。
「火遁の術ッ!!!!」
ゴゥと炎が吹き上がるようにして燃え上がり、【セツリ】を中心として業火が燃え盛る。炎の壁が一時的に生まれるが、【セツリ】もそれだけであの色々とオカシイ男が手詰まりになるとは思えない。
インベントリから飲料型ドーピングアイテムを取り出し、一息に飲み干す。
課金アイテムの1つ。
短期決戦用ドーピングアイテム——【ティルナの雫】。
【イニティウムオンライン】に存在したとされる女神の名前を持った飲料型ドーピングアイテム。
効果は10分間、筋力、魔力、移動速度諸々が通常の1.5倍。
ディレイなどに関しては2分の1まで下がる逸品。
しかし防御力が大幅に低下し、効果時間中は装備変更が不可となり、10分を過ぎれば大幅なステータス低下に襲われる諸刃の剣。
防御力に関しては恐らくあってないようなものだからと割り切る。ナイフ然り、先ほどの拳然り。
多分、一撃一撃が【セツリ】にとって必殺に昇華されている。
【イニティウムオンライン】時代のレベル差か。
装備差か。はたまた両方か。
目の前にいた男はPvPの廃人クラスと認識を改め、サーベルに力を込める。
廃人クラスを負かして、愉悦に浸れればどれ程快感だろうか。
その考え1つのために【セツリ】は前に進む。
欲望に恐ろしいまでに忠実。それが彼という人間なのだ。
再度起こるスキル発動兆候。
「くははっ、いいねいいね。こーゆーギリギリの戦闘。アドレナリンドバドバだよ! ふははっ」
窮地に追い込まれてるというのに笑う。
へらへらと、愉悦に口を歪ませ嗤い叫ぶ。
「霧散しろ、爆裂しろ、爆散しろおおおおオォォ!! 『爆遁の術ッ!!!』」
スキル名を叫ぶ声が月夜に響く。
だからこそ、男は耳を疑った。
70%の確率で使用者すら巻き込むスキルをここで使うのか、と。
叫ぶ声に呼応するかのように赤味を帯びた球体が無数に生まれ、周囲一帯を目にも留まらぬ速さで埋め尽くす。
しかも、それら1つ1つがちょっとの衝撃で起爆する爆弾。
質量爆破を行う通称、自爆技【爆遁の術】。
男は気付いていないが、【セツリ】は【ティルナの雫】を飲んでいる。つまり、威力は通常の1.5倍。
運悪く巻き込まれれば使用者も、骨すら残らない。
「運が良ければ戦いの続きの再開だねぇ!!」
影縛りのカウンターに足下を拘束されながらも哄笑を響かせる。
「いっくよぉー! はいドーーーーン!!!」
笑い声。
逡巡なく行使されるスキル。
朧月夜浮かぶ砂漠の夜の下。
爆発という傍迷惑極まりない一輪の爆音の花が咲き誇る——。
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