15 / 17
Sors immanis et inanis, rota tu volubilis,(恐ろしく、そして虚ろな運命よ、回転する運命の輪よ)
駿馬
しおりを挟む
§誰が、何処へ?
「申し訳ありません」
フランツがジョセフに頭を下げた。
「そんなことより、その男はいったい何者だったんだ?」「それは───」フランツは一息入れて「皆目見当がもつきません」
「まったくどいつもこいつも役立たずだ!」ジョセフが腹立ち紛れに、持っていたグラスを放り投げた。すかさずフランツがグラスを拾う。
扉の外で聞き耳を立てていたマノンはくすりと笑った。一番の役立たずはあなたじゃないの、ジョセフ?
しかし、アドリエンヌを連れ去った男…いったい何者だろうか?尤も女侯の力を使えばすぐにわかることだが。
もし、見つかったらアドリエンヌごとティレジアスのところに連れて行くのもいいわね。「女神」と崇められる女優風情を毛嫌いしていた異国の女神の生贄にする為に。
そういえば、そろそろエクトールの具合もいいころかしら? なかなか辛抱強いから、さすがのティレジアスも手を焼いているかもね。最初に月香の屋敷で秘術を使ったものの、彼の強靭な精神は完全に自分と同調することはなかった。だから、肉体に覚えさせるという荒療治に出たが結果ははかばかしくなかった。万が一、ティレジアスがしくじったら…
そんな一抹の不安を抱えマノンは私室に戻っていった。
「すぐにアドリエンヌを捕らえて、下級娼婦に落としてしまえ!」
ジョセフは怒りのあまり、アドリエンヌをも捕らえる対象とした。ちょうどマノンが考えていたのと同じように。そのあたりはさすが夫婦というところか。
「はっ、かしこまりました。全力を尽くします」
恭しく一礼したフランツはやっとのことで怒れるジョセフの部屋を辞した。
(あのアドリエンヌを攫った男…あれは確かに…)
フランツは遙か昔のことを思い出す。間違いない、あの男だ。
(まだ生きていたのか。では始末せねば…)
彼は自室へと急ぐ。ある人物に火急の手紙を書く為に。
§攫われた女
一方、アディも女侯邸の人間と同じく、いやそれ以上に驚愕していた。
(私はどこに連れて行かれるの?いったいこの人は誰?)
馬車は闇があたりを包むまで休みなく走り続け…止まった。そして、馬を御していた男がぞんざいな口調でアディに声をかける「下りるんだ」。
(そんなこと言っても…この人はいったい誰なの?)
アディの怯えを見て取ったのか男は「腹が減ったろ。食事にしよう」と幾分穏やかに誘いかける。するとその声にどこか安心感を覚え、彼女は用心しつつも馬車から降り、トントンと靴先で荒れた地面を確かめた。──どの辺りだろうか?
男は数々の保存食を携帯していた。改めて観察すると非常にがっしりとした身体付きで、意志の強さを感じられる太い眉と勁烈な目付きが印象的な中年男だ。恐らく軍人…敵か味方かは分からないが、然し不思議と恐怖感は湧いてこない。奇妙な既視感。
携帯食糧はあまり食欲をそそるものではないが、仕方ないだろう。アディは男が渡してくれた干し肉をゆっくりと噛み水筒のぬるい水で流し込んだ。
「ねえ、あなたはいったい誰?」
アディは思い切って訊ねる。すると男は「さあな」とあっさり躱しスキットルの中身をちびちびと舐め始めた。
「私のこと、知ってるの? 私はアドリエ…」
「本名アドリアナ・クヴルール。この国と隣国の者との子だ」
アディは仰天した。アディのルーツを知っているのは拾ってくれたマティスぐらいだ。このことは、エクトールにも告げていない。
「もしかして、あなたはジェラールの?」だが「関係ない」とアディを落胆させる答えが返ってきた。
「せめてあなたの名前だけでも教えてよ」
アディは男をじっと深く強い瞳で見つめて詰問した「それだけ私のことを知ってるのに、私には何一つ知らさないなんて卑怯だわ」。
だが、男は相変わらず黙っているだけだ。アディは名前を聞き出すことは諦め「教えてくれないなら仕方ないわ。それじゃ、今日からあなたのことをカヴァッロと呼ばせて貰おうかしら。隣国の言葉で『馬』を意味するのよ。馬で女を攫ったあなたにはぴったりだわ」
アディは皮肉交じりに言ったが、男は沈黙を続けるのみだ。つまりそれでいい、ということなのだろう。
(カヴァッロ…一体何者なのかしら)
翌日、アディは馬車の中で目を覚ました。まだ早朝にも早い時間だったが、太陽の眩しさで起きてしまったのだ。
(あの男…カヴァッロは?)馬車から降りて辺りを見回すと、近くの林の入り口にシュラフに包まっている男を見つけた。
「ちょっと、起きて!」
アディはカヴァッロに声をかけやや乱暴に身体を揺すった。
「なんだ…?」カヴァッロは薄く目を開くと大儀そうに答える。
「私は追われてるのよ。ここからどこに行くの?」
するとカヴァッロは目をぱちくりさせて不思議そうにアディを見ると信じ難い台詞を言い放った
「それはあんたの問題だ。自分で考えるんだ」
「え? 私を助けてくれたんじゃないの?」
困惑するアディをよそに「結果的に助けたというだけだ」と男はにベもない。
「それじゃ、アドリアナ。元気でな」
カヴァッロはそう挨拶すると逞しい身体を軽々と跳ね上げ馬に跨ると軽快に去っていった。
アディはしばらく呆然としていたが、男がシュラフを残していっているのを見て中を調べた。すると十分の保存食と水が残っている。
(これで食いつなげってことね)
ついこの間までこの国一番の劇団のプリマ・ドンナだった自分が、今では食べるにも事欠くなんて。とはいえ危うく捕縛されるところだったのだ。贅沢は言っていられない。とにかく、今はエクトールが第一だ。彼と再会出来ることを思えばどんな苦労も厭わない。
アディは歩き出した。またしても元帥に会うため──いや、元帥夫人に会うためだ。遠くに街が見える。とりあえずそこまで行ってみよう。
§ティレジアスからの手紙
マノンは今日届いたティレジアスからの手紙に満足した。
やはり「洗脳機械」の前では、どんな豪の者も太刀打ちできないことがこれで証明されたのだ。
ティレジアスの手紙によると、明日にでも傀儡となったエクトールは元帥邸に着く。
そうすると、やらねばならないことがある…
そう、夫にしてベルトラン元帥ジョセフの始末だ。邸内を歩いているとフランツとすれ違った。そのとき彼女は「いいわね?」とだけ問いかけ彼は「仰せのままに」とだけ答えた。
マノンの実家の侯爵家には代々伝わる毒物があった。不思議なことに解剖しても、まったく痕跡が見つからないのだ。
今夜、ジョセフは「突然死」を遂げるだろう。
マノンはエクトールとの新しい生活に望みをかけていた。貴族の家柄であった自分が玉座に座る…これぞマノンと、彼女の祖先がずっと思い描いていたことだった。しかもティレジアスの洗脳のおかげで、エクトールは自分のことを何でも聞く人形と化しているはずだ。身分は王妃ではあっても、実際は女王なのだ。
マノンはその遠くない未来図を思い描いて陰惨な笑みを零した。
§ジョセフ殺害
「まったくここには使えるやつはおらんのか!」夜半、ジョセフが苛立ちを隠せないように、立て続けに強い酒を飲んでいた。
「元帥、あまりお飲みになられますと…」フランツが諌めるも「お前は首を刎ねられたいのか?!」と醜い酔眼を向けて怒声を飛ばす。
忠実なる執事はその台詞にもう少しで笑い出すところだった。実際に首を刎ねられるのは…
「おい、フランツ! もう一杯持って来い」ジョセフが酩酊状態で命ずる。フランツは畏まりましたとグラスに酒を注ぐ際にマノンから渡された白い粉薬を入れた。それは強い酒にあっという間に溶けてゆく。
「飲まなければやってられん…。そうだ、月香…よし、明日は御殿に登るぞ。お前も伴をしろ」ジョセフは月の女神への謁見を所望するとフランツに、もう戻ってもいいと許可を出した。彼は主人に最後の礼を深々とすると自室に戻っていった。
───明日が楽しみだ
そして、次の朝は絹を裂くような女中の悲鳴ではじまったのだった。
「何事だ?!」と首謀者の二人が何食わぬ顔で悲鳴が聞こえた元帥の寝室に駆けつけてみると、そこには確かにジョセフが息絶えてベッドに倒れこんでいた。二人はほかの女中たちに気づかれないように、そっと指を絡ませあった。
「すぐに医者を呼べ」フランツが叫ぶ。マノンはこのような猿芝居に付き合うことができ、心底笑いたかった。それはフランツも同じだっただろう。間もなく医者が呼ばれたが、あっさりと「心不全だろう」ということで片がついてしまった。
(ほんとにうまく行くわね…まるで出来過ぎた芝居か小説のようだわ)
マノンは使用人の手前、空涙を流しながら夫の遺骸にすがりつきその首尾のよさに満足したのだった。
§『犬』
「元帥が死んだそうだ」
「そうか…後手に回っちまったな」
「あの女のことだ。エクトールが到着するまでは、と思っていたが…」
「待ちきれなくて、その前に殺っちまったか」
「しかし、アドリアナの誘拐であの男は思い出したかもしれんな」
「あの女怪に見込まれるほどの男だ。当然思い出しただろう」
「すると、またあの二人が接触するかも知れんな」
「そうすると厄介だな」
「マノンがエクトールを手に入れたところで、厄介払いしてくれればいいのだが」
「そうでなければ…仕方ない。我々が始末するしかないな」
「連中は我々のことも勘付いてる。行動は慎重にな」
「いいな、フランツとあのモノ、二人とも確実に仕留めろ。マノンについては公開処刑がもっとも相応しいだろう」
「了解した」
こうして『犬』たちはそれぞれの持ち場に戻っていった。
「申し訳ありません」
フランツがジョセフに頭を下げた。
「そんなことより、その男はいったい何者だったんだ?」「それは───」フランツは一息入れて「皆目見当がもつきません」
「まったくどいつもこいつも役立たずだ!」ジョセフが腹立ち紛れに、持っていたグラスを放り投げた。すかさずフランツがグラスを拾う。
扉の外で聞き耳を立てていたマノンはくすりと笑った。一番の役立たずはあなたじゃないの、ジョセフ?
しかし、アドリエンヌを連れ去った男…いったい何者だろうか?尤も女侯の力を使えばすぐにわかることだが。
もし、見つかったらアドリエンヌごとティレジアスのところに連れて行くのもいいわね。「女神」と崇められる女優風情を毛嫌いしていた異国の女神の生贄にする為に。
そういえば、そろそろエクトールの具合もいいころかしら? なかなか辛抱強いから、さすがのティレジアスも手を焼いているかもね。最初に月香の屋敷で秘術を使ったものの、彼の強靭な精神は完全に自分と同調することはなかった。だから、肉体に覚えさせるという荒療治に出たが結果ははかばかしくなかった。万が一、ティレジアスがしくじったら…
そんな一抹の不安を抱えマノンは私室に戻っていった。
「すぐにアドリエンヌを捕らえて、下級娼婦に落としてしまえ!」
ジョセフは怒りのあまり、アドリエンヌをも捕らえる対象とした。ちょうどマノンが考えていたのと同じように。そのあたりはさすが夫婦というところか。
「はっ、かしこまりました。全力を尽くします」
恭しく一礼したフランツはやっとのことで怒れるジョセフの部屋を辞した。
(あのアドリエンヌを攫った男…あれは確かに…)
フランツは遙か昔のことを思い出す。間違いない、あの男だ。
(まだ生きていたのか。では始末せねば…)
彼は自室へと急ぐ。ある人物に火急の手紙を書く為に。
§攫われた女
一方、アディも女侯邸の人間と同じく、いやそれ以上に驚愕していた。
(私はどこに連れて行かれるの?いったいこの人は誰?)
馬車は闇があたりを包むまで休みなく走り続け…止まった。そして、馬を御していた男がぞんざいな口調でアディに声をかける「下りるんだ」。
(そんなこと言っても…この人はいったい誰なの?)
アディの怯えを見て取ったのか男は「腹が減ったろ。食事にしよう」と幾分穏やかに誘いかける。するとその声にどこか安心感を覚え、彼女は用心しつつも馬車から降り、トントンと靴先で荒れた地面を確かめた。──どの辺りだろうか?
男は数々の保存食を携帯していた。改めて観察すると非常にがっしりとした身体付きで、意志の強さを感じられる太い眉と勁烈な目付きが印象的な中年男だ。恐らく軍人…敵か味方かは分からないが、然し不思議と恐怖感は湧いてこない。奇妙な既視感。
携帯食糧はあまり食欲をそそるものではないが、仕方ないだろう。アディは男が渡してくれた干し肉をゆっくりと噛み水筒のぬるい水で流し込んだ。
「ねえ、あなたはいったい誰?」
アディは思い切って訊ねる。すると男は「さあな」とあっさり躱しスキットルの中身をちびちびと舐め始めた。
「私のこと、知ってるの? 私はアドリエ…」
「本名アドリアナ・クヴルール。この国と隣国の者との子だ」
アディは仰天した。アディのルーツを知っているのは拾ってくれたマティスぐらいだ。このことは、エクトールにも告げていない。
「もしかして、あなたはジェラールの?」だが「関係ない」とアディを落胆させる答えが返ってきた。
「せめてあなたの名前だけでも教えてよ」
アディは男をじっと深く強い瞳で見つめて詰問した「それだけ私のことを知ってるのに、私には何一つ知らさないなんて卑怯だわ」。
だが、男は相変わらず黙っているだけだ。アディは名前を聞き出すことは諦め「教えてくれないなら仕方ないわ。それじゃ、今日からあなたのことをカヴァッロと呼ばせて貰おうかしら。隣国の言葉で『馬』を意味するのよ。馬で女を攫ったあなたにはぴったりだわ」
アディは皮肉交じりに言ったが、男は沈黙を続けるのみだ。つまりそれでいい、ということなのだろう。
(カヴァッロ…一体何者なのかしら)
翌日、アディは馬車の中で目を覚ました。まだ早朝にも早い時間だったが、太陽の眩しさで起きてしまったのだ。
(あの男…カヴァッロは?)馬車から降りて辺りを見回すと、近くの林の入り口にシュラフに包まっている男を見つけた。
「ちょっと、起きて!」
アディはカヴァッロに声をかけやや乱暴に身体を揺すった。
「なんだ…?」カヴァッロは薄く目を開くと大儀そうに答える。
「私は追われてるのよ。ここからどこに行くの?」
するとカヴァッロは目をぱちくりさせて不思議そうにアディを見ると信じ難い台詞を言い放った
「それはあんたの問題だ。自分で考えるんだ」
「え? 私を助けてくれたんじゃないの?」
困惑するアディをよそに「結果的に助けたというだけだ」と男はにベもない。
「それじゃ、アドリアナ。元気でな」
カヴァッロはそう挨拶すると逞しい身体を軽々と跳ね上げ馬に跨ると軽快に去っていった。
アディはしばらく呆然としていたが、男がシュラフを残していっているのを見て中を調べた。すると十分の保存食と水が残っている。
(これで食いつなげってことね)
ついこの間までこの国一番の劇団のプリマ・ドンナだった自分が、今では食べるにも事欠くなんて。とはいえ危うく捕縛されるところだったのだ。贅沢は言っていられない。とにかく、今はエクトールが第一だ。彼と再会出来ることを思えばどんな苦労も厭わない。
アディは歩き出した。またしても元帥に会うため──いや、元帥夫人に会うためだ。遠くに街が見える。とりあえずそこまで行ってみよう。
§ティレジアスからの手紙
マノンは今日届いたティレジアスからの手紙に満足した。
やはり「洗脳機械」の前では、どんな豪の者も太刀打ちできないことがこれで証明されたのだ。
ティレジアスの手紙によると、明日にでも傀儡となったエクトールは元帥邸に着く。
そうすると、やらねばならないことがある…
そう、夫にしてベルトラン元帥ジョセフの始末だ。邸内を歩いているとフランツとすれ違った。そのとき彼女は「いいわね?」とだけ問いかけ彼は「仰せのままに」とだけ答えた。
マノンの実家の侯爵家には代々伝わる毒物があった。不思議なことに解剖しても、まったく痕跡が見つからないのだ。
今夜、ジョセフは「突然死」を遂げるだろう。
マノンはエクトールとの新しい生活に望みをかけていた。貴族の家柄であった自分が玉座に座る…これぞマノンと、彼女の祖先がずっと思い描いていたことだった。しかもティレジアスの洗脳のおかげで、エクトールは自分のことを何でも聞く人形と化しているはずだ。身分は王妃ではあっても、実際は女王なのだ。
マノンはその遠くない未来図を思い描いて陰惨な笑みを零した。
§ジョセフ殺害
「まったくここには使えるやつはおらんのか!」夜半、ジョセフが苛立ちを隠せないように、立て続けに強い酒を飲んでいた。
「元帥、あまりお飲みになられますと…」フランツが諌めるも「お前は首を刎ねられたいのか?!」と醜い酔眼を向けて怒声を飛ばす。
忠実なる執事はその台詞にもう少しで笑い出すところだった。実際に首を刎ねられるのは…
「おい、フランツ! もう一杯持って来い」ジョセフが酩酊状態で命ずる。フランツは畏まりましたとグラスに酒を注ぐ際にマノンから渡された白い粉薬を入れた。それは強い酒にあっという間に溶けてゆく。
「飲まなければやってられん…。そうだ、月香…よし、明日は御殿に登るぞ。お前も伴をしろ」ジョセフは月の女神への謁見を所望するとフランツに、もう戻ってもいいと許可を出した。彼は主人に最後の礼を深々とすると自室に戻っていった。
───明日が楽しみだ
そして、次の朝は絹を裂くような女中の悲鳴ではじまったのだった。
「何事だ?!」と首謀者の二人が何食わぬ顔で悲鳴が聞こえた元帥の寝室に駆けつけてみると、そこには確かにジョセフが息絶えてベッドに倒れこんでいた。二人はほかの女中たちに気づかれないように、そっと指を絡ませあった。
「すぐに医者を呼べ」フランツが叫ぶ。マノンはこのような猿芝居に付き合うことができ、心底笑いたかった。それはフランツも同じだっただろう。間もなく医者が呼ばれたが、あっさりと「心不全だろう」ということで片がついてしまった。
(ほんとにうまく行くわね…まるで出来過ぎた芝居か小説のようだわ)
マノンは使用人の手前、空涙を流しながら夫の遺骸にすがりつきその首尾のよさに満足したのだった。
§『犬』
「元帥が死んだそうだ」
「そうか…後手に回っちまったな」
「あの女のことだ。エクトールが到着するまでは、と思っていたが…」
「待ちきれなくて、その前に殺っちまったか」
「しかし、アドリアナの誘拐であの男は思い出したかもしれんな」
「あの女怪に見込まれるほどの男だ。当然思い出しただろう」
「すると、またあの二人が接触するかも知れんな」
「そうすると厄介だな」
「マノンがエクトールを手に入れたところで、厄介払いしてくれればいいのだが」
「そうでなければ…仕方ない。我々が始末するしかないな」
「連中は我々のことも勘付いてる。行動は慎重にな」
「いいな、フランツとあのモノ、二人とも確実に仕留めろ。マノンについては公開処刑がもっとも相応しいだろう」
「了解した」
こうして『犬』たちはそれぞれの持ち場に戻っていった。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
【完結】新しい我輩、はじめます。
コル
ファンタジー
魔界を統一した魔王デイルワッツ、次に人間界を支配するために侵攻を開始する。
そんな時、人間界で「天使の剣を抜いたものが勇者となり魔王を討つべし」とお触れが出た。
これを聞いたデイルワッツは自分の魂と魔力を人間の体に移し、自ら剣の破壊と勇者を始末しようと儀式に紛れ込むがなかなか剣を抜けるものは出てこなかった。
見物人にも儀式参加となりデイルワッツの順番が回っきてしまう、逃げるに逃げれなくなってしまい仕方なく剣を掴んだ瞬間に魔力を吸われ剣に宿る精霊エリンが具現化し剣が抜けてしまった。
剣を抜いた事により勇者と認められ魔王討伐の命が下る……がその魔王は自分自身である。
自分が自分を討ちに行く謎の冒険記はじめます。
【完結済】
・スケルトンでも愛してほしい![https://www.alphapolis.co.jp/novel/525653722/331309959]
・私が勇者を追いかける理由。[https://www.alphapolis.co.jp/novel/525653722/132420209]
※この作品は「小説家になろう」さん、「カクヨム」さん、「ノベルアップ+」さんとのマルチ投稿です。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
闘人鬼
ジャンマル
ファンタジー
鬼と人の間に生まれた子、シズル。彼は人の愛情。そして鬼の親心を感じて育った。
大政奉還。それは開国を意味していた。日の国の人が魔族と交わした契約は、人の世。日の国の存在を外に出さない代わりの共存。しかし――開国をする、そう聞いた魔族は人に対して戦争を持ち掛ける。これは人が人であるため、魔族が魔族であり続けるための――二つの種が未来へ足を向けるための戦争だった。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
私を選ばなかったくせに~推しの悪役令嬢になってしまったので、本物以上に悪役らしい振る舞いをして婚約破棄してやりますわ、ザマア~
あさぎかな@電子書籍二作目発売中
恋愛
乙女ゲーム《時の思い出(クロノス・メモリー)》の世界、しかも推しである悪役令嬢ルーシャに転生してしまったクレハ。
「貴方は一度だって私の話に耳を傾けたことがなかった。誤魔化して、逃げて、時より甘い言葉や、贈り物を贈れば満足だと思っていたのでしょう。――どんな時だって、私を選ばなかったくせに」と言って化物になる悪役令嬢ルーシャの未来を変えるため、いちルーシャファンとして、婚約者であり全ての元凶とである第五王子ベルンハルト(放蕩者)に婚約破棄を求めるのだが――?
私は聖女らしいので初恋のヒロインを奪ってもいいですよね?
永久保セツナ
ファンタジー
【最終話まで毎日21時更新】
主人公・愛別璃玖(あいべつ りく)は漫画の登場人物であるイケメン女子、ベルガモール・エヴァンに初恋をこじらせている。
しかしベルガモールは漫画の中で男と結ばれてしまう。
以来、璃玖はベルガモールとの破れた初恋を引きずり、恋愛ができなくなってしまう。
そんなある日、璃玖はひょんなことから漫画の世界に聖女として召喚されてしまう。
その世界線では、ベルガモールはまだ男と結ばれる前だった――。
これは同担拒否の女主人公が初恋を奪い返すため、推しと仲良くしながら相手役の男を妨害するこじらせた恋のおはなし。
幼妻は、白い結婚を解消して国王陛下に溺愛される。
秋月乃衣
恋愛
旧題:幼妻の白い結婚
13歳のエリーゼは、侯爵家嫡男のアランの元へ嫁ぐが、幼いエリーゼに夫は見向きもせずに初夜すら愛人と過ごす。
歩み寄りは一切なく月日が流れ、夫婦仲は冷え切ったまま、相変わらず夫は愛人に夢中だった。
そしてエリーゼは大人へと成長していく。
※近いうちに婚約期間の様子や、結婚後の事も書く予定です。
小説家になろう様にも掲載しています。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる