O Fortuna, velut Luna statu variabilis,(おお、運命の女神よ。移ろう月の如く)

─その国には悪魔が巣食っていた。

始まりは半年ほど前に遡る。高潔で公正な王と強力な貴族が支配する、とある国の怪事。その国で、誇り高き国王軍の兵士たちの失踪が相次いでいた。噂によると隣国に連れ去られたという。国王軍を内側から瓦解させ、隙をついて侵略する意図だと。─少なくとも、日々の生活で手一杯な庶民はそう信じていた。言いがかりをつけられた隣国も黙っている訳にはいかない。そして、各地で争乱という名の小競り合いが始まった。お互い、悪魔にも等しい内通者によって踊らされていることも知らずに。

さて、主人公アドリエンヌ・クレールは国で随一の劇団の看板を背負う人気女優。争乱勃発後も兵士たちを芝居で慰撫し、国王軍きっての「癒しの女神」と言われていた。
そんな折、アディの恋人で国王軍兵士エクトールが行方不明になったと知らされる。身を切られるような苦しみに耐え、アディは自らエクトールを探す旅に出る。

一方エクトールはといえば、後に刷新軍とされるリーダー・ベルトラン元帥の夫人・マノン女侯のもとにいた。優秀な戦士で、見目麗しいエクトールに女侯が敵ながら横恋慕していたのだ。
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