異世界でリサイクルショップ!俺の高価買取り!

理太郎

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「アラタさん、なんだかスッキリした、いいお顔になりましたね」

「うむ、さっきの鏡の通信だろうな。好いた女子と話すだけで、あれだけ気を変えれるとはな。面白い男だ」

アラタとカチュアの会話を見ていたサリーとバルデスは、アラタのどこか迷いが晴れた様子を感じとっていた。

「喜ばしい事です。海に出たら逃げ場はありませんから」

「まるで帰って来れないような言い方だな、サリーよ?」

「・・・そのようなつもりはありません。ですが、シャノンさんが言う程、すんなり国王を説得できるとは思っておりません。私はむしろ説得できずに、戦闘になる可能性が高いと思っております」

バルデスと視線を合わせず、前を向いて淡々と話すサリーに、バルデスは顔を向けた

「サリーよ、確かにそうだ。私もそう思う。だが、シャノンは最善を尽くすという意味でああ言ったのだろう。我々も覚悟を決めておく必要はあるが、戦わずにすむのであれば、その道を行こうではないか」

「はい。バルデス様。失言をお許しください」

バルデスに向き直り頭を下げるサリー。
しかしバルデスは、フッと笑みをこぼし、サリーの肩に軽く手を置いた。

「サリーよ、私も同じ考えだと言ったであろう?謝罪は不要だ」

「はい。バルデス様」

目を細め、サリーはニコリと笑って言葉を返した。





「さて、ビリージョーさん、こっちの方針も決まった事だし、そろそろ城に行きますか?」

「そうだな。リンジー達には早いうちに会っておかなければならない。城に行けば会えるのか?」

写しの鏡を木箱にしまうと、シャノンが城行きの確認をする。

「今はずっと城にいるみたいですよ。なんせ、この数週間で一気に話しが進みましたからね。あたしも大海の船団が、大型客船を造ってるのは知ってましたけど、まさか帝国の要人とクルーズに出るなんて、全く思いもしなかったですもん。いよいよ大臣派の旗色が悪くなってきたんで、大臣の警護もかねて固まってるみたいですね」

「そうか。じゃあ城に行くしかないな。シャノンさん、すまないが馬車を頼めるか?」

「いつでも大丈夫ですよ。一台押さえてますから」

アラルコン商会の跡取り娘は、予想通りと言うように得意げな顔で、人差し指を立てて見せた。






「あのよ、魔道剣士ってなんだ?なんとなく想像はつくけど、クインズベリーじゃ聞かない言葉だな」

アラルコン商会の宿を出て、城へ向かう馬車の中、ディリアンがシャノンに話しかけた。
7人乗っているため、普通より少し大きめの馬車だ。団体客を迎えに行ったりする時に使っているようだが、今回はシャノンが城へ行く事を予想し、前日のうちに押さえておいたのだ。

腰が深く沈むソファは、乗り心地が良くそれぞれが快適にくつろいでいた。

「ん?えっと、魔道剣士?」

ここまでほとんど話していないディリアンから、話しかけられるとは思っていなかったのか、シャノンの反応が一瞬遅れ、質問をそのまま聞き返した。

「そうだ。ラミール・カーンがどうとか話していただろ?少し気になっていたんだ」

「そういや、そんな話ししたね。えっとね、あたしもリンジーさんから聞いた話しだから、実際に見た事はないんだけどね。リンジーさんの話しだと、魔道具を使って戦う剣士らしいよ。一口に魔道具って言っても種類が多すぎるでしょ?それこそ魔法使いなら、自分だけのオリジナルを作るのは珍しくないし。ラミール・カーンと仲間達は、魔道具を駆使して戦う剣士らしいよ」

シャノンの説明を黙って聞いていたディリアンは、一言、めんどくせぇ、呟いて天井を仰ぎ見た。

「ん、めんどくさい?」

「・・・想像するとよ、それすげぇ面倒なタイプだぞ。正面からは来ないだろうな。俺は戦いたくねぇや」

頭の後ろで手を組んでそのまま背もたれに体を預けると、ディリアンはそれきり黙ってしまった。

シャノンはもう少し詳しい話しを聞きたそうにディリアンを見るが、目を閉じて話しかけるなという空気を出しているディリアンに、肩をすくめるしかなかった。

「・・・シャノンさん、ディリアンの言う事も一理あるかもしれないよ」

ディリアンから話しを引き継ぐように、レイチェルが自分の考えを話し始めた。

「魔道具には撹乱する物も沢山あるからね。姿を隠して攻撃してくるヤツもいるだろう。ディリアンは魔道剣士がそういう戦い方をするとふんでるんだ」

シャノンは納得がいったかのように、両手を打ち合わせた。

「なるほどねぇ・・・撹乱やら、姿を隠すやら、そんなのばかりだったら確かに面倒だよね」

「・・・う~ん、それは俺も苦手なタイプだな」

シャノンに同調するアラタに、レイチェルが大きく頷いた。

 「あぁ、確かにアラタの戦い方ではな。アラタ、正面からの戦いならキミに勝てる者はそうはいない。だったら遠距離攻撃なら勝てるか?と思うが、それがそうでもない。偽国王との戦いでそれが分かったよ。闇の波動を躱しながら距離を詰めていくんだから、遠距離なら勝てるというものでもない。だが、幻惑、撹乱、こういったものはアラタには苦手なものだろうな」

「ハッキリ言うなぁレイチェルは。でも、そうだな・・・確かに俺の戦い方じゃ、そういうヤツを相手にした時、どう戦えばいいか分からないな」

自分の拳に目を落とし眉を寄せるアラタに、やや高く軽い調子の声がかけられる。

「悩む事かね?アラタ、貴様には光の力とやらがあるのだろう?ならばそれで・・・」

シャクールの一言は、アラタ自身が気付いていない、光の力の可能性を示したものだった。


「なんだ?試した事がなかったのか?いかんなそれでは。己の力だろう?色々試して可能性を探るべきだ。少なくとも私はそうした。それがこの力だ」

ソファーに座ったまま、シャクールは右手の人差し指をアラタの向けると、爪の先からパリパリと弾ける青い雷が目に映った。

「バルデス家に伝わる雷魔法だ。継承しただけではないぞ。私はこの雷魔法の可能性を追求した。その結果、先人達が鍛え研鑽したこの雷を、私が最高傑作に作り上げた自負がある。アラタよ、与えられた力の上でぼんやりしていては成長はないぞ。私は今でも可能性を探っている」

「・・・すごいな」

自分の力に全く迷いのない自信を見せるバルデスに、アラタは驚き、そして感心していた。
四勇士として10年もの間、国を護って来たという確固たる裏付けが、シャクールの自信の源になっているのだろう。

アラタは自分の拳にもう一度目をやる。

可能性か・・・・・
俺にもできるだろうか?

いや、信じて見よう。俺もまだまだ強くなれるはずだ。



「お!見えて来たぞ」

窓から外を見て、ビリージョーが声を上げる。

青い屋根に石造りの白い外壁、海に囲まれたサンドリーニ城が近づいて来た。
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