15 / 515
第一章
3.抱き枕になるんだろ【5】
しおりを挟む
「あの……っ、もう朝なので放して頂けませんか?」
振り向く事が出来ないこの状況は、逆に私の真っ赤になっているであろう顔を見られなくて助かります。
「そうだな」
すんなりと解放して頂けました。背中がスッと涼しくなり、寂しさを……感じませんがっ!私は自身の動揺を必死に抑えます。ですがヴォルの方はいつもと変わらず、朝食の用意を始めました。ドキドキしているのは、私だけのようです。何か、モヤモヤします。
「もう出来る」
コッソリついた溜め息を聞き取られ、空腹を訴えていると思われたようです。それはそれで恥ずかしいのですが。
「はい……」
とりあえず返事をしておきました。食事を作ってもらっているのですから、この気まずい空気をいつまでも引き摺る訳にはいきません。いえ、私だけが気まずいのでしょうけど。
「食べるか」
「はい」
目の前に突き出されたお皿には、パンとハムと卵焼きが乗っています。朝はこのような軽食と、ウマウマさんのミルクです。ヴォルは苦いコーヒーを飲みます。木の実を煎って煮出した、黒い飲み物です。私は苦いので飲めません。ウマウマさんは乗り物にもなるし、ミルクも出せるのでとても重宝しています。
「美味しい~」
幸せです。ご飯は食べるだけで幸せになります。そう言えば昨日の夜は少し考え事をしていて、ご飯の味が良く分かりませんでした。残念です。やはり、ご飯を食べる時は考え事をしていては駄目ですね。
「幸せそうに食べるのだな」
「だって、美味しいんですもの。美味しいって、幸せですよ」
二へ~ッて笑ってしまいますが、ヴォルは相変わらずの無表情です。あ、でも少しだけ瞳の奥が優しいですね。これは喜んでいるのでしょうか。自分の作った食事を美味しいと言われて、不機嫌になる人はいないでしょうし。大丈夫でしょう。
「そうか」
「はい」
ニッコリ微笑む私です。昨日一緒の寝具──一つだと狭いので、実際には二つをくっ付けた状態ですが──に寝た事で、何故かあまりヴォルを怖いと思わなくなりました。気のせいでしょうか。
そしていつものようにヴォルが魔法で調理器具を洗浄、乾燥します。私はそれを横目に、ウマウマさんに草をあげていました。
振り向く事が出来ないこの状況は、逆に私の真っ赤になっているであろう顔を見られなくて助かります。
「そうだな」
すんなりと解放して頂けました。背中がスッと涼しくなり、寂しさを……感じませんがっ!私は自身の動揺を必死に抑えます。ですがヴォルの方はいつもと変わらず、朝食の用意を始めました。ドキドキしているのは、私だけのようです。何か、モヤモヤします。
「もう出来る」
コッソリついた溜め息を聞き取られ、空腹を訴えていると思われたようです。それはそれで恥ずかしいのですが。
「はい……」
とりあえず返事をしておきました。食事を作ってもらっているのですから、この気まずい空気をいつまでも引き摺る訳にはいきません。いえ、私だけが気まずいのでしょうけど。
「食べるか」
「はい」
目の前に突き出されたお皿には、パンとハムと卵焼きが乗っています。朝はこのような軽食と、ウマウマさんのミルクです。ヴォルは苦いコーヒーを飲みます。木の実を煎って煮出した、黒い飲み物です。私は苦いので飲めません。ウマウマさんは乗り物にもなるし、ミルクも出せるのでとても重宝しています。
「美味しい~」
幸せです。ご飯は食べるだけで幸せになります。そう言えば昨日の夜は少し考え事をしていて、ご飯の味が良く分かりませんでした。残念です。やはり、ご飯を食べる時は考え事をしていては駄目ですね。
「幸せそうに食べるのだな」
「だって、美味しいんですもの。美味しいって、幸せですよ」
二へ~ッて笑ってしまいますが、ヴォルは相変わらずの無表情です。あ、でも少しだけ瞳の奥が優しいですね。これは喜んでいるのでしょうか。自分の作った食事を美味しいと言われて、不機嫌になる人はいないでしょうし。大丈夫でしょう。
「そうか」
「はい」
ニッコリ微笑む私です。昨日一緒の寝具──一つだと狭いので、実際には二つをくっ付けた状態ですが──に寝た事で、何故かあまりヴォルを怖いと思わなくなりました。気のせいでしょうか。
そしていつものようにヴォルが魔法で調理器具を洗浄、乾燥します。私はそれを横目に、ウマウマさんに草をあげていました。
0
お気に入りに追加
404
あなたにおすすめの小説
旦那様の様子がおかしいのでそろそろ離婚を切り出されるみたいです。
バナナマヨネーズ
恋愛
とある王国の北部を治める公爵夫婦は、すべての領民に愛されていた。
しかし、公爵夫人である、ギネヴィアは、旦那様であるアルトラーディの様子がおかしいことに気が付く。
最近、旦那様の様子がおかしい気がする……。
わたしの顔を見て、何か言いたそうにするけれど、結局何も言わない旦那様。
旦那様と結婚して十年の月日が経過したわ。
当時、十歳になったばかりの幼い旦那様と、見た目十歳くらいのわたし。
とある事情で荒れ果てた北部を治めることとなった旦那様を支える為、結婚と同時に北部へ住処を移した。
それから十年。
なるほど、とうとうその時が来たのね。
大丈夫よ。旦那様。ちゃんと離婚してあげますから、安心してください。
一人の女性を心から愛する旦那様(超絶妻ラブ)と幼い旦那様を立派な紳士へと育て上げた一人の女性(合法ロリ)の二人が紡ぐ、勘違いから始まり、運命的な恋に気が付き、真実の愛に至るまでの物語。
全36話
「お前を妻だと思ったことはない」と言ってくる旦那様と離婚した私は、幼馴染の侯爵から溺愛されています。
木山楽斗
恋愛
第二王女のエリームは、かつて王家と敵対していたオルバディオン公爵家に嫁がされた。
因縁を解消するための結婚であったが、現当主であるジグールは彼女のことを冷遇した。長きに渡る因縁は、簡単に解消できるものではなかったのである。
そんな暮らしは、エリームにとって息苦しいものだった。それを重く見た彼女の兄アルベルドと幼馴染カルディアスは、二人の結婚を解消させることを決意する。
彼らの働きかけによって、エリームは苦しい生活から解放されるのだった。
晴れて自由の身になったエリームに、一人の男性が婚約を申し込んできた。
それは、彼女の幼馴染であるカルディアスである。彼は以前からエリームに好意を寄せていたようなのだ。
幼い頃から彼の人となりを知っているエリームは、喜んでその婚約を受け入れた。二人は、晴れて夫婦となったのである。
二度目の結婚を果たしたエリームは、以前とは異なる生活を送っていた。
カルディアスは以前の夫とは違い、彼女のことを愛して尊重してくれたのである。
こうして、エリームは幸せな生活を送るのだった。
【完結】身を引いたつもりが逆効果でした
風見ゆうみ
恋愛
6年前に別れの言葉もなく、あたしの前から姿を消した彼と再会したのは、王子の婚約パレードの時だった。
一緒に遊んでいた頃には知らなかったけれど、彼は実は王子だったらしい。しかもあたしの親友と彼の弟も幼い頃に将来の約束をしていたようで・・・・・。
平民と王族ではつりあわない、そう思い、身を引こうとしたのだけど、なぜか逃してくれません!
というか、婚約者にされそうです!
婚約者が他の女性に興味がある様なので旅に出たら彼が豹変しました
Karamimi
恋愛
9歳の時お互いの両親が仲良しという理由から、幼馴染で同じ年の侯爵令息、オスカーと婚約した伯爵令嬢のアメリア。容姿端麗、強くて優しいオスカーが大好きなアメリアは、この婚約を心から喜んだ。
順風満帆に見えた2人だったが、婚約から5年後、貴族学院に入学してから状況は少しずつ変化する。元々容姿端麗、騎士団でも一目置かれ勉学にも優れたオスカーを他の令嬢たちが放っておく訳もなく、毎日たくさんの令嬢に囲まれるオスカー。
特に最近は、侯爵令嬢のミアと一緒に居る事も多くなった。自分より身分が高く美しいミアと幸せそうに微笑むオスカーの姿を見たアメリアは、ある決意をする。
そんなアメリアに対し、オスカーは…
とても残念なヒーローと、行動派だが周りに流されやすいヒロインのお話です。
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
王子殿下の慕う人
夕香里
恋愛
エレーナ・ルイスは小さい頃から兄のように慕っていた王子殿下が好きだった。
しかし、ある噂と事実を聞いたことで恋心を捨てることにしたエレーナは、断ってきていた他の人との縁談を受けることにするのだが──?
「どうして!? 殿下には好きな人がいるはずなのに!!」
好きな人がいるはずの殿下が距離を縮めてくることに戸惑う彼女と、我慢をやめた王子のお話。
※小説家になろうでも投稿してます
俺の妖精すぎるおっとり妻から離縁を求められ、戦場でも止まらなかった心臓が止まるかと思った。何を言われても別れたくはないんだが?
イセヤ レキ
恋愛
「離縁致しましょう」
私の幸せな世界は、妻の言い放ったたった一言で、凍りついたのを感じた──。
最愛の妻から離縁を突きつけられ、最終的に無事に回避することが出来た、英雄の独白。
全6話、完結済。
リクエストにお応えした作品です。
単体でも読めると思いますが、
①【私の愛しい娘が、自分は悪役令嬢だと言っております。私の呪詛を恋敵に使って断罪されるらしいのですが、同じ失敗を犯すつもりはございませんよ?】
母主人公
※ノベルアンソロジー掲載の為、アルファポリス様からは引き下げております。
②【私は、お母様の能力を使って人の恋路を邪魔する悪役令嬢のようです。けれども断罪回避を目指すので、ヒーローに近付くつもりは微塵もございませんよ?】
娘主人公
を先にお読み頂くと世界観に理解が深まるかと思います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる