425 / 515
第九章
4.魔力とは【5】
しおりを挟む
「精霊さんの感情は私には分かりませんが、魔力がなくなると精霊さんも困るのですよね?」
「そうだ。だが自然豊かな土地であれば、存在する力を得られるから問題ない」
「ヴォルティ様。そもそも魔力が大地を巡る力でしたら、酷く増えたり減ったりする事がおかしくはありませんか。更に魔力所持者が、魔法石化現象前の短期間とは言え、意思に反して魔力が放出されるといった影響を受けていた訳ですからね」
私の問いに難なく答えてくれるヴォルですが、ベンダーツさんはまだ疑問の表情を崩していません。
誰が何の為に──人為的な事かは分かっていませんが──、大地の魔力で地上に魔法石が作られる理由は分かっていないのでした。
「魔力に流れがあるのは俺の感覚でも分かる」
「生きている人達を魔法石にする理由は何ですかね?」
魔力を持っているからこそ分かると告げるヴォルです。
確かに、単に溢れて放出してしまった魔力の先が、人の住む集落だったと言うだけならそれほど問題ではありませんでした。
「誰か……何かの思わくがあるのでしょうか。まさか、神などとは有り得ないでしょうがね。ですが地上の生物を無作為に襲うとなると問題です。魔力の暴走ともとれる現象ですので」
ベンダーツさんは非女神信仰者なのか、嫌な顔を隠しません。
女神信仰が大半のこの国で、普通はこんなに声を大にして言えないものでした。
「この大地に巡る魔力が完全に暴走すれば、全ての生命は無に帰するだろうな。光の女神サラフェリナの導きとして受け止める者も少なくないだろうが、俺はごめんだ」
「私もヴォルティ様に同感です。信仰はあくまでも精神的支えですからね。破滅を導く神など不要です」
ヴォルの痛烈な批判に、事も無げにベンダーツさんは首を縦に振ります。
二人して、女神を真っ向から否定していました。
「でも、教会は女神信仰ですよ?」
「あぁ。魔法省も、そしてそれと組織を同じくする魔力協会も女神信仰を掲げている」
世界の多くの人々が女神信仰なのだと、当たり前のようにヴォルは答えます。
実際に魔法石化現象が公になったところで、女神の導きだとして公表してしまう事も出来る訳でした。
「大地の魔力にどれ程魔物が影響を受けるかは分かりませんが、流れに引かれての行動はないのでしょうか」
「流動する魔力に併せた行動か。一ヶ所に留まる魔物もいるが、一定の周期に沿った移動を行う種族も存在する」
「その魔物を追えば、魔力量が増加している地域を判別する事が出来るかも知れませんね。それこそ、この大陸だけでは済みませんが。そうなると行き先は変更なく、マヌサワですね」
魔力の流れを感じるのと同じように、ヴォルは魔物の動きを知る事が出来るのだと告げます。
ベンダーツさんの質問に答えていく形で、流れる魔力を調べる方針が決まったようでした。それを悟ったのか、ヴォルは半ば呆れたように肩を竦めます。
そもそも、私達は無期限の旅をしている訳ではありませんでした。あくまでもセントラルの結界が維持されている間という事になります。
魔力の坩堝を探しに旅に出て、大地の魔法石化現象を知りました。そして私の生まれ育った村、マヌサワ付近にもそれが起きた事を知ったのです。
今はまず、マヌサワ村を確認しに行く事が第一目的になりました。一度にあれもこれも出来ません。一つずつ攻略していくしかありませんでした。
「そうだ。だが自然豊かな土地であれば、存在する力を得られるから問題ない」
「ヴォルティ様。そもそも魔力が大地を巡る力でしたら、酷く増えたり減ったりする事がおかしくはありませんか。更に魔力所持者が、魔法石化現象前の短期間とは言え、意思に反して魔力が放出されるといった影響を受けていた訳ですからね」
私の問いに難なく答えてくれるヴォルですが、ベンダーツさんはまだ疑問の表情を崩していません。
誰が何の為に──人為的な事かは分かっていませんが──、大地の魔力で地上に魔法石が作られる理由は分かっていないのでした。
「魔力に流れがあるのは俺の感覚でも分かる」
「生きている人達を魔法石にする理由は何ですかね?」
魔力を持っているからこそ分かると告げるヴォルです。
確かに、単に溢れて放出してしまった魔力の先が、人の住む集落だったと言うだけならそれほど問題ではありませんでした。
「誰か……何かの思わくがあるのでしょうか。まさか、神などとは有り得ないでしょうがね。ですが地上の生物を無作為に襲うとなると問題です。魔力の暴走ともとれる現象ですので」
ベンダーツさんは非女神信仰者なのか、嫌な顔を隠しません。
女神信仰が大半のこの国で、普通はこんなに声を大にして言えないものでした。
「この大地に巡る魔力が完全に暴走すれば、全ての生命は無に帰するだろうな。光の女神サラフェリナの導きとして受け止める者も少なくないだろうが、俺はごめんだ」
「私もヴォルティ様に同感です。信仰はあくまでも精神的支えですからね。破滅を導く神など不要です」
ヴォルの痛烈な批判に、事も無げにベンダーツさんは首を縦に振ります。
二人して、女神を真っ向から否定していました。
「でも、教会は女神信仰ですよ?」
「あぁ。魔法省も、そしてそれと組織を同じくする魔力協会も女神信仰を掲げている」
世界の多くの人々が女神信仰なのだと、当たり前のようにヴォルは答えます。
実際に魔法石化現象が公になったところで、女神の導きだとして公表してしまう事も出来る訳でした。
「大地の魔力にどれ程魔物が影響を受けるかは分かりませんが、流れに引かれての行動はないのでしょうか」
「流動する魔力に併せた行動か。一ヶ所に留まる魔物もいるが、一定の周期に沿った移動を行う種族も存在する」
「その魔物を追えば、魔力量が増加している地域を判別する事が出来るかも知れませんね。それこそ、この大陸だけでは済みませんが。そうなると行き先は変更なく、マヌサワですね」
魔力の流れを感じるのと同じように、ヴォルは魔物の動きを知る事が出来るのだと告げます。
ベンダーツさんの質問に答えていく形で、流れる魔力を調べる方針が決まったようでした。それを悟ったのか、ヴォルは半ば呆れたように肩を竦めます。
そもそも、私達は無期限の旅をしている訳ではありませんでした。あくまでもセントラルの結界が維持されている間という事になります。
魔力の坩堝を探しに旅に出て、大地の魔法石化現象を知りました。そして私の生まれ育った村、マヌサワ付近にもそれが起きた事を知ったのです。
今はまず、マヌサワ村を確認しに行く事が第一目的になりました。一度にあれもこれも出来ません。一つずつ攻略していくしかありませんでした。
0
お気に入りに追加
405
あなたにおすすめの小説
好きな人の好きな人
ぽぽ
恋愛
"私には10年以上思い続ける初恋相手がいる。"
初恋相手に対しての執着と愛の重さは日々増していくばかりで、彼の1番近くにいれるの自分が当たり前だった。
恋人関係がなくても、隣にいれるだけで幸せ……。
そう思っていたのに、初恋相手に恋人兼婚約者がいたなんて聞いてません。
美しい公爵様の、凄まじい独占欲と溺れるほどの愛
らがまふぃん
恋愛
こちらは以前投稿いたしました、 美しく残酷な公爵令息様の、一途で不器用な愛 の続編となっております。前作よりマイルドな作品に仕上がっておりますが、内面のダークさが前作よりはあるのではなかろうかと。こちらのみでも楽しめるとは思いますが、わかりづらいかもしれません。よろしかったら前作をお読みいただいた方が、より楽しんでいただけるかと思いますので、お時間の都合のつく方は、是非。時々予告なく残酷な表現が入りますので、苦手な方はお控えください。 *早速のお気に入り登録、しおり、エールをありがとうございます。とても励みになります。前作もお読みくださっている方々にも、多大なる感謝を! ※R5.7/23本編完結いたしました。たくさんの方々に支えられ、ここまで続けることが出来ました。本当にありがとうございます。ばんがいへんを数話投稿いたしますので、引き続きお付き合いくださるとありがたいです。この作品の前作が、お気に入り登録をしてくださった方が、ありがたいことに200を超えておりました。感謝を込めて、前作の方に一話、近日中にお届けいたします。よろしかったらお付き合いください。 ※R5.8/6ばんがいへん終了いたしました。長い間お付き合いくださり、また、たくさんのお気に入り登録、しおり、エールを、本当にありがとうございました。 ※R5.9/3お気に入り登録200になっていました。本当にありがとうございます(泣)。嬉しかったので、一話書いてみました。 ※R5.10/30らがまふぃん活動一周年記念として、一話お届けいたします。 ※R6.1/27美しく残酷な公爵令息様の、一途で不器用な愛(前作) と、こちらの作品の間のお話し 美しく冷酷な公爵令息様の、狂おしい熱情に彩られた愛 始めました。お時間の都合のつく方は、是非ご一読くださると嬉しいです。
*らがまふぃん活動二周年記念として、R6.11/4に一話お届けいたします。少しでも楽しんでいただけますように。
有能なメイドは安らかに死にたい
鳥柄ささみ
恋愛
リーシェ16歳。
運がいいのか悪いのか、波瀾万丈な人生ではあるものの、どうにか無事に生きている。
ひょんなことから熊のような大男の領主の家に転がりこんだリーシェは、裁縫・調理・掃除と基本的なことから、薬学・天候・気功など幅広い知識と能力を兼ね備えた有能なメイドとして活躍する。
彼女の願いは安らかに死ぬこと。……つまり大往生。
リーシェは大往生するため、居場所を求めて奮闘する。
熊のようなイケメン年上領主×謎のツンデレメイドのラブコメ?ストーリー。
シリアス有り、アクション有り、イチャラブ有り、推理有りのお話です。
※基本は主人公リーシェの一人称で話が進みますが、たまに視点が変わります。
※同性愛を含む部分有り
※作者にイレギュラーなことがない限り、毎週月曜
※小説家になろうにも掲載しております。
変態婚約者を無事妹に奪わせて婚約破棄されたので気ままな城下町ライフを送っていたらなぜだか王太子に溺愛されることになってしまいました?!
utsugi
恋愛
私、こんなにも婚約者として貴方に尽くしてまいりましたのにひどすぎますわ!(笑)
妹に婚約者を奪われ婚約破棄された令嬢マリアベルは悲しみのあまり(?)生家を抜け出し城下町で庶民として気ままな生活を送ることになった。身分を隠して自由に生きようと思っていたのにひょんなことから光魔法の能力が開花し半強制的に魔法学校に入学させられることに。そのうちなぜか王太子から溺愛されるようになったけれど王太子にはなにやら秘密がありそうで……?!
※適宜内容を修正する場合があります
誰にも言えないあなたへ
天海月
恋愛
子爵令嬢のクリスティーナは心に決めた思い人がいたが、彼が平民だという理由で結ばれることを諦め、彼女の事を見初めたという騎士で伯爵のマリオンと婚姻を結ぶ。
マリオンは家格も高いうえに、優しく美しい男であったが、常に他人と一線を引き、妻であるクリスティーナにさえ、どこか壁があるようだった。
年齢が離れている彼にとって自分は子供にしか見えないのかもしれない、と落ち込む彼女だったが・・・マリオンには誰にも言えない秘密があって・・・。
【完結】愛を知らない伯爵令嬢は執着激重王太子の愛を一身に受ける。
扇 レンナ
恋愛
スパダリ系執着王太子×愛を知らない純情令嬢――婚約破棄から始まる、極上の恋
伯爵令嬢テレジアは小さな頃から両親に《次期公爵閣下の婚約者》という価値しか見出してもらえなかった。
それでもその利用価値に縋っていたテレジアだが、努力も虚しく婚約破棄を突きつけられる。
途方に暮れるテレジアを助けたのは、留学中だったはずの王太子ラインヴァルト。彼は何故かテレジアに「好きだ」と告げて、熱烈に愛してくれる。
その真意が、テレジアにはわからなくて……。
*hotランキング 最高68位ありがとうございます♡
▼掲載先→ベリーズカフェ、エブリスタ、アルファポリス
幸せなお飾りの妻になります!
風見ゆうみ
恋愛
私、アイリス・ノマド男爵令嬢は、幼い頃から家族のイタズラ癖に悩まされ、少しでも早く自立しようと考えていた。
婚約者のロバート・デヴァイスと、家族と共に出席した夜会で、ロバートから突然、婚約破棄を宣言された上に、私の妹と一緒になりたいと言われてしまう。
ショックで会場を出ようとすると引き止められ、さっきの発言はいつものイタズラだと言われる。
イタズラにも程があると会場を飛び出した私の前に現れたのは、パーティーの主催者であるリアム・マオニール公爵だった。
一部始終を見ていた彼は、お飾りの妻を探しているといい、家族から逃げ出したかった私は彼の元へと嫁ぐ事になった。
屋敷の人もとても優しくて、こんなに幸せでいいの?
幸せを感じていたのも束の間、両親や妹、そして元婚約者が私に戻ってこいと言い出しはじめて――。
今更、後悔されても知らないわ!
※作者独自の異世界の世界観であり、設定はゆるゆるで、ご都合主義です。
※誤字脱字など見直して気を付けているつもりですが、やはりございます。申し訳ございません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる