「結婚しよう」

まひる

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第九章

4.魔力とは【5】

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「精霊さんの感情は私には分かりませんが、魔力がなくなると精霊さんも困るのですよね?」

「そうだ。だが自然豊かな土地であれば、存在する力を得られるから問題ない」

「ヴォルティ様。そもそも魔力が大地を巡る力でしたら、酷く増えたり減ったりする事がおかしくはありませんか。更に魔力所持者が、魔法石化現象前の短期間とは言え、意思に反して魔力が放出されるといった影響を受けていた訳ですからね」

 私の問いに難なく答えてくれるヴォルですが、ベンダーツさんはまだ疑問の表情を崩していません。
 誰が何の為に──人為的な事かは分かっていませんが──、大地の魔力で地上に魔法石が作られる理由は分かっていないのでした。

「魔力に流れがあるのは俺の感覚でも分かる」

「生きている人達を魔法石にする理由は何ですかね?」

 魔力を持っているからこそ分かると告げるヴォルです。
 確かに、単にあふれて放出してしまった魔力の先が、人の住む集落だったと言うだけならそれほど問題ではありませんでした。

「誰か……何かの思わくがあるのでしょうか。まさか、神などとは有り得ないでしょうがね。ですが地上の生物を無作為に襲うとなると問題です。魔力の暴走ともとれる現象ですので」

 ベンダーツさんは非女神信仰者なのか、嫌な顔を隠しません。
 女神信仰が大半のこの国で、普通はこんなに声をだいにして言えないものでした。

「この大地に巡る魔力が完全に暴走すれば、全ての生命は無にするだろうな。光の女神サラフェリナの導きとして受け止める者も少なくないだろうが、俺はごめんだ」

「私もヴォルティ様に同感です。信仰はあくまでも精神的支えですからね。破滅を導く神など不要です」

 ヴォルの痛烈な批判に、事も無げにベンダーツさんは首を縦に振ります。
 二人して、女神を真っ向から否定していました。

「でも、教会は女神信仰ですよ?」

「あぁ。魔法省も、そしてそれと組織を同じくする魔力協会も女神信仰をかかげている」

 世界の多くの人々が女神信仰なのだと、当たり前のようにヴォルは答えます。
 実際に魔法石化現象がおおやけになったところで、女神の導きだとして公表してしまう事も出来る訳でした。

「大地の魔力にどれ程魔物が影響を受けるかは分かりませんが、流れに引かれての行動はないのでしょうか」

「流動する魔力にあわせた行動か。一ヶ所に留まる魔物もいるが、一定の周期に沿った移動をおこなう種族も存在する」

「その魔物を追えば、魔力量が増加している地域を判別する事が出来るかも知れませんね。それこそ、この大陸だけでは済みませんが。そうなると行き先は変更なく、マヌサワですね」

 魔力の流れを感じるのと同じように、ヴォルは魔物の動きを知る事が出来るのだと告げます。
 ベンダーツさんの質問に答えていく形で、流れる魔力を調べる方針が決まったようでした。それを悟ったのか、ヴォルは半ばあきれたように肩をすくめます。
 そもそも、私達は無期限の旅をしている訳ではありませんでした。あくまでもセントラルの結界が維持されている間という事になります。
 魔力の坩堝るつぼを探しに旅に出て、大地の魔法石化現象を知りました。そして私の生まれ育った村、マヌサワ付近にもそれが起きた事を知ったのです。
 今はまず、マヌサワ村を確認しに行く事が第一目的になりました。一度にあれもこれも出来ません。一つずつ攻略していくしかありませんでした。
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