407 / 515
第九章
1.手が省(はぶ)ける【2】
しおりを挟む
「魔物の体内から取れる魔法石は岩石状で、そのまま魔物の形はしていないよ。魔法石は基本的に加工して使うんだし」
疑問符を浮かべていた私を見かねてか、ベンダーツさんが楽しそうに話してくれます。
あの魔法石が元魔物だとすると、相当大きなサイズなのではないかと想像してしまいました。そして岩のような原石であれば、削って何かを形作りたくなる気持ちは分からなくもないです。
「魔法石は砕いた欠片すら様々な用途に使われる」
「そうだね。どちらかと言うと、加工する事の方が殆どかな。だって大きいと高額だし、石像に見えても魔法石が生き物だった事を感じ取れない魔力所持者はいないからね。魔力を持っていない人の場合、本当に生きていた人間だった事を知っているのは王都なんかの極一部だけどさ。知らない人も本物過ぎるのは精神衛生上避けたいみたいなんだよねぇ。恩恵に預かっておいて勝手なんだけど」
淡々と話すヴォルに続けるように、ベンダーツさんは手を振って大袈裟に告げました。
でも、ベンダーツさんの言う事は分かります。私が始めて人形の石像を見たのはセントラルの地下でした。
それは本当に生きている人かと思う程の精巧な石像で、怒りや苦しみなどの感情が手に取るように見えたのです。──まぁ、本当に元人間だったのですけど。
「メルは地下魔法石を見たから分かると思うけど、あれはそこらに置けないでしょ。だから加工するの。手を加えないのは強い魔法石だけで、大抵城の地下に安置されるんだよ。あ、加工すると力が濁るとか言われてるけど……真相はどうかな、ヴォル」
「俺に聞くな」
ベンダーツさんの問い掛けに冷たく返すヴォルでした。
魔力所持者だけではなく、魔法石も存在魔力を計測されるみたいです。話し振りからすると、大きさだけではなく質も関係してくるようでした。
「……魔法石って、何処にでもあるのですか?」
「ん~、これは難しいね。確かにあちらこちらにあるけど、俺もまさか地面から魔法石化させる光が溢れて来るなんて知らなかったし。出回っている量を考えると、今回のような大きな周期の現象以外にも、案外小出しに魔法石化光が出ているのかもね。魔力協会が魔法石化させるのは、力のある魔力所持者だけだし」
私の問いに首を竦めるベンダーツさんです。
お互いに地下の魔法石安置所を知っているので、今回が初めて目にした訳ではないと分かっての話し方でした。
でも、魔力協会が作った魔法石だけ──魔力所持者の魔法石だけがそのまま残されるのは不思議です。
「ん?おかしいかな。……だって、魔力協会職員だって魔力所持者なんだよ。精霊に好かれた者って、普通の魔力所持者何人分の魔力持ちだと思う?」
納得していなさそうな私に、御者台から楽しそうにベンダーツさんが振り向きました。
そんなに微笑まれても困ります。そもそも精霊さんに好かれた者と言われても、私はヴォルしか知りませんでした。
「それを大勢が取り囲んで魔法石化するんだ。そうやって魔法石となった精霊に好かれた者は、魔力所持者にとって最早神的扱いだよ。実際には自分達でその命を奪ってるんだけど、そこは触れる事なく石像にして崇め奉るってやつだな。勿論、魔物や盗賊等の手から守る為に周囲に強固な結界を張り巡らせるって手間まで掛けてね」
ベンダーツさんのそれは、呆れを含んだ口調に変わります。
不思議ですが、実際にそうして成り立っている事も事実のようでした。魔力という特別な力とそれを扱う側の考えは、私のような魔力を持たざる者からしてみれば理解不能な問題でしょうか。
疑問符を浮かべていた私を見かねてか、ベンダーツさんが楽しそうに話してくれます。
あの魔法石が元魔物だとすると、相当大きなサイズなのではないかと想像してしまいました。そして岩のような原石であれば、削って何かを形作りたくなる気持ちは分からなくもないです。
「魔法石は砕いた欠片すら様々な用途に使われる」
「そうだね。どちらかと言うと、加工する事の方が殆どかな。だって大きいと高額だし、石像に見えても魔法石が生き物だった事を感じ取れない魔力所持者はいないからね。魔力を持っていない人の場合、本当に生きていた人間だった事を知っているのは王都なんかの極一部だけどさ。知らない人も本物過ぎるのは精神衛生上避けたいみたいなんだよねぇ。恩恵に預かっておいて勝手なんだけど」
淡々と話すヴォルに続けるように、ベンダーツさんは手を振って大袈裟に告げました。
でも、ベンダーツさんの言う事は分かります。私が始めて人形の石像を見たのはセントラルの地下でした。
それは本当に生きている人かと思う程の精巧な石像で、怒りや苦しみなどの感情が手に取るように見えたのです。──まぁ、本当に元人間だったのですけど。
「メルは地下魔法石を見たから分かると思うけど、あれはそこらに置けないでしょ。だから加工するの。手を加えないのは強い魔法石だけで、大抵城の地下に安置されるんだよ。あ、加工すると力が濁るとか言われてるけど……真相はどうかな、ヴォル」
「俺に聞くな」
ベンダーツさんの問い掛けに冷たく返すヴォルでした。
魔力所持者だけではなく、魔法石も存在魔力を計測されるみたいです。話し振りからすると、大きさだけではなく質も関係してくるようでした。
「……魔法石って、何処にでもあるのですか?」
「ん~、これは難しいね。確かにあちらこちらにあるけど、俺もまさか地面から魔法石化させる光が溢れて来るなんて知らなかったし。出回っている量を考えると、今回のような大きな周期の現象以外にも、案外小出しに魔法石化光が出ているのかもね。魔力協会が魔法石化させるのは、力のある魔力所持者だけだし」
私の問いに首を竦めるベンダーツさんです。
お互いに地下の魔法石安置所を知っているので、今回が初めて目にした訳ではないと分かっての話し方でした。
でも、魔力協会が作った魔法石だけ──魔力所持者の魔法石だけがそのまま残されるのは不思議です。
「ん?おかしいかな。……だって、魔力協会職員だって魔力所持者なんだよ。精霊に好かれた者って、普通の魔力所持者何人分の魔力持ちだと思う?」
納得していなさそうな私に、御者台から楽しそうにベンダーツさんが振り向きました。
そんなに微笑まれても困ります。そもそも精霊さんに好かれた者と言われても、私はヴォルしか知りませんでした。
「それを大勢が取り囲んで魔法石化するんだ。そうやって魔法石となった精霊に好かれた者は、魔力所持者にとって最早神的扱いだよ。実際には自分達でその命を奪ってるんだけど、そこは触れる事なく石像にして崇め奉るってやつだな。勿論、魔物や盗賊等の手から守る為に周囲に強固な結界を張り巡らせるって手間まで掛けてね」
ベンダーツさんのそれは、呆れを含んだ口調に変わります。
不思議ですが、実際にそうして成り立っている事も事実のようでした。魔力という特別な力とそれを扱う側の考えは、私のような魔力を持たざる者からしてみれば理解不能な問題でしょうか。
0
お気に入りに追加
404
あなたにおすすめの小説
旦那様の様子がおかしいのでそろそろ離婚を切り出されるみたいです。
バナナマヨネーズ
恋愛
とある王国の北部を治める公爵夫婦は、すべての領民に愛されていた。
しかし、公爵夫人である、ギネヴィアは、旦那様であるアルトラーディの様子がおかしいことに気が付く。
最近、旦那様の様子がおかしい気がする……。
わたしの顔を見て、何か言いたそうにするけれど、結局何も言わない旦那様。
旦那様と結婚して十年の月日が経過したわ。
当時、十歳になったばかりの幼い旦那様と、見た目十歳くらいのわたし。
とある事情で荒れ果てた北部を治めることとなった旦那様を支える為、結婚と同時に北部へ住処を移した。
それから十年。
なるほど、とうとうその時が来たのね。
大丈夫よ。旦那様。ちゃんと離婚してあげますから、安心してください。
一人の女性を心から愛する旦那様(超絶妻ラブ)と幼い旦那様を立派な紳士へと育て上げた一人の女性(合法ロリ)の二人が紡ぐ、勘違いから始まり、運命的な恋に気が付き、真実の愛に至るまでの物語。
全36話
「お前を妻だと思ったことはない」と言ってくる旦那様と離婚した私は、幼馴染の侯爵から溺愛されています。
木山楽斗
恋愛
第二王女のエリームは、かつて王家と敵対していたオルバディオン公爵家に嫁がされた。
因縁を解消するための結婚であったが、現当主であるジグールは彼女のことを冷遇した。長きに渡る因縁は、簡単に解消できるものではなかったのである。
そんな暮らしは、エリームにとって息苦しいものだった。それを重く見た彼女の兄アルベルドと幼馴染カルディアスは、二人の結婚を解消させることを決意する。
彼らの働きかけによって、エリームは苦しい生活から解放されるのだった。
晴れて自由の身になったエリームに、一人の男性が婚約を申し込んできた。
それは、彼女の幼馴染であるカルディアスである。彼は以前からエリームに好意を寄せていたようなのだ。
幼い頃から彼の人となりを知っているエリームは、喜んでその婚約を受け入れた。二人は、晴れて夫婦となったのである。
二度目の結婚を果たしたエリームは、以前とは異なる生活を送っていた。
カルディアスは以前の夫とは違い、彼女のことを愛して尊重してくれたのである。
こうして、エリームは幸せな生活を送るのだった。
【完結】身を引いたつもりが逆効果でした
風見ゆうみ
恋愛
6年前に別れの言葉もなく、あたしの前から姿を消した彼と再会したのは、王子の婚約パレードの時だった。
一緒に遊んでいた頃には知らなかったけれど、彼は実は王子だったらしい。しかもあたしの親友と彼の弟も幼い頃に将来の約束をしていたようで・・・・・。
平民と王族ではつりあわない、そう思い、身を引こうとしたのだけど、なぜか逃してくれません!
というか、婚約者にされそうです!
婚約者が他の女性に興味がある様なので旅に出たら彼が豹変しました
Karamimi
恋愛
9歳の時お互いの両親が仲良しという理由から、幼馴染で同じ年の侯爵令息、オスカーと婚約した伯爵令嬢のアメリア。容姿端麗、強くて優しいオスカーが大好きなアメリアは、この婚約を心から喜んだ。
順風満帆に見えた2人だったが、婚約から5年後、貴族学院に入学してから状況は少しずつ変化する。元々容姿端麗、騎士団でも一目置かれ勉学にも優れたオスカーを他の令嬢たちが放っておく訳もなく、毎日たくさんの令嬢に囲まれるオスカー。
特に最近は、侯爵令嬢のミアと一緒に居る事も多くなった。自分より身分が高く美しいミアと幸せそうに微笑むオスカーの姿を見たアメリアは、ある決意をする。
そんなアメリアに対し、オスカーは…
とても残念なヒーローと、行動派だが周りに流されやすいヒロインのお話です。
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
王子殿下の慕う人
夕香里
恋愛
エレーナ・ルイスは小さい頃から兄のように慕っていた王子殿下が好きだった。
しかし、ある噂と事実を聞いたことで恋心を捨てることにしたエレーナは、断ってきていた他の人との縁談を受けることにするのだが──?
「どうして!? 殿下には好きな人がいるはずなのに!!」
好きな人がいるはずの殿下が距離を縮めてくることに戸惑う彼女と、我慢をやめた王子のお話。
※小説家になろうでも投稿してます
俺の妖精すぎるおっとり妻から離縁を求められ、戦場でも止まらなかった心臓が止まるかと思った。何を言われても別れたくはないんだが?
イセヤ レキ
恋愛
「離縁致しましょう」
私の幸せな世界は、妻の言い放ったたった一言で、凍りついたのを感じた──。
最愛の妻から離縁を突きつけられ、最終的に無事に回避することが出来た、英雄の独白。
全6話、完結済。
リクエストにお応えした作品です。
単体でも読めると思いますが、
①【私の愛しい娘が、自分は悪役令嬢だと言っております。私の呪詛を恋敵に使って断罪されるらしいのですが、同じ失敗を犯すつもりはございませんよ?】
母主人公
※ノベルアンソロジー掲載の為、アルファポリス様からは引き下げております。
②【私は、お母様の能力を使って人の恋路を邪魔する悪役令嬢のようです。けれども断罪回避を目指すので、ヒーローに近付くつもりは微塵もございませんよ?】
娘主人公
を先にお読み頂くと世界観に理解が深まるかと思います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる